オリバー・ストーン監督の『スノーデン』を観にいった。

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日曜日、オリバー・ストーン監督の『スノーデン』を観にいった。


スノーデンの事件や、彼が告発したことについては知っていたけど、この映画では、リンゼイという彼女のことも描かれていて、事件後、彼女がスノーデンを追ってモスクワに渡っていたことに驚いた。


スノーデンは愛国者精神をもつ、ちょっと保守寄りなタイプ。でも、彼女のリンゼイはリベラルで、オバマ大統領誕生を喜び、写真やアートやダンスが大好き。共にアメリカを信じ、プーチンにも共産主義にも、シンパシーを感じることなどありえなかったふたりが、今はロシアで暮らしている。


アメリカでこの映画が公開になったのは、大統領選挙中。映画では、オバマ元大統領の責任についても触れられているけど、むしろ、オバマによって、ブッシュ時代よりもさらに大きくなってしまった大統領の権力をトランプに与えるなんて・・という不安が大きかったのだと思う。当時のストーン監督も反トランプだった。


それが、日本公開直前のインタビューで、「トランプ大統領もあながち悪くない」「トランプを良い方向にとらえよう」と語っているのは、トランプ大統領が、ここまでCIAの圧力に屈せず、就任後、その解体に着手している点がみられたからでしょう。


ストーン:「映画はスノーデン氏の証言に基づいてつくっています。彼が09年に横田基地内で勤務していた頃、スノーデン氏は、日本が米国の利益に背いて同盟国でなくなった場合に備えて、日本のインフラに悪意のあるソフトウェアを仕込んだ、とも述懐しています。これは戦争行為でしょう・・・

「ヒラリー・クリントン氏が勝っていれば危険だったと感じていました。彼女は本来の意味でのリベラルではないのです。米国による新世界秩序を欲し、そのためには他国の体制を変えるのがよいと信じていると思います。ロシアを敵視し、非常に攻撃的。彼女が大統領になっていたら世界中で戦争や爆撃が増え、軍事費の浪費に陥っていたでしょう。第3次大戦の可能性さえあったと考えます」

「そのリベラルと呼ばれてきた人たちが、ものすごい介入主義者と化しています。リベラルと言われるクリントン氏をみればわかります。民主党は中道右派となり、左派を真に代表していません」


→朝日新聞インタビュー


映画のスノーデンには、ストーン監督が考える「真のリベラル」の姿が投影されていると思う。そして、ちょっと意外なことに、これは、監督が考える「愛の映画」でもあるけど、ストーン監督が「本当のリベラル」ではないという、現在のリベラル女性に、果たしてこの「愛」が通じるだろうか。


スノーデンは自分が作ったシステムが、自分が想像もしなかったことに使われて疑問を感じ始めた。


日本で、民主的な選挙によって選ばれた民主党政権ができたと同時に、メディアから激しい批判にあい、叩き潰されたのが、2009年。スノーデンがスパイウェアを仕込んだ時期と、政権、メディア、大手企業がこれまでとは別次元で一体化した時期はちょうど重なっている。


原爆が生み出されたのは、ナチスの脅威だったはずなのに、すでに空爆で陥落寸前だった日本に落とされることになったように、テロリストと戦うために設計されたスパイソフトが、世界でもっともスムーズに使われているのも日本・・・ヨーロッパでは注目されたスノーデンの事件は、軍事を情報もすべてアメリカに牛耳られている日本では、特に話題になることもなく、過去3回廃案になった共謀罪も、もうすぐ制定されそうになっている。


彼らも、私たちも、「テロ防止のためならネット監視もやむを得ないのでは?」「悪いことしていないならネット監視されてもいいのでは?」という考えに強く反対をする理由はなく、米国では、主流派のリベラルが、私たちの味方である、オバマ大統領が、自分たちに不利になるような運用をするわけがない。という考えが上回った。


映画を観た当日、トランプ大統領が難民の受け入れを一時的に停止したことで、アメリカ各地の空港で大勢が入国を拒否され、反トランプの抗議活動が激しさを増したことがニュースになっていた。移民国家であるアメリカで、これに不安を感じている人が大勢いることが、とてもよくわかるニュースだった。


ストーン監督はどんな政権になろうとも変わることのない「軍産複合体」を敵だと感じているけど、現代のリベラルにとって、911から始まったイラク戦争への反省から支持を集めたヒラリーやオバマは、これまでの戦争とは違う、新たなリベラル十字軍であって、今までのものとは全く違う。ヒラリーや、オバマの失策を責めることは、ようやく退治した悪魔を蘇らせることになるのだと思っている。


ウーマンズ・マーチで、メディアで大きく取り上げられた人々と、イスラムの価値観はとてつもなく大きくかけ離れているし、イスラム教徒の国を破壊したアメリカが、イスラム教徒の権利を守るだなんて、本当に不思議な理論だけど、都市部を中心にした移民共同体にとって、Islam Ban(イスラム禁止)への反対は、強力なパワーをもつことでしょう。


「テロ防止のためならネット監視もやむを得ないのでは?」「悪いことしていないならネット監視されてもいいのでは?」という問いに反対することができなかったリベラルは、ストーン監督にとっては、「真のリベラル」ではなく、


ハリー・ポッターの作者で、トランプ批判を繰り返してきたJ.K.ローリングが言うような、


もしあなた方が単にその言動があなた方の気に障ったからというだけの理由で、あなた方の意見と反対の意見を持つ人の言論の自由を奪おうとするのなら、あなた方は既に全く同じ理由で他人を牢獄に入れ、拷問し殺すことを正当化するような専制的な暴君達と同じ側に立っているのです。・・・もし私の(トランプ氏の言動等によって生じた)不快感がトランプ氏の訪英を禁止にすることを正当化され得るのであれば、私にも(私の)フェミニズム、トランスジェンダーの人々の権利の為の戦いあるいは普通選挙によって不快な思いをしている人々に対して、あなた側は単に自分が不快な思いをしているというだけの理由でこれら(フェミニズムetc.)の主張を展開する運動家を抑圧してはなりませんと論ずる道徳的根拠は無いということになってしまいます。


という原則を重視する人がいない理由も、よくわかったような気がする。


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私には、メディア戦略によって、子供から、知識人やアーティストたちまで、ドイツを制圧したヒトラーと、巨大メディアから蛇蝎ように扱われているトランプが似ているようには思えず、どちらかといえば、カダフィや、アサドのような独裁者にみえるし、トランプ側にだけ、嘘ニュースがあったとも思わない。


選挙が終わっても、まだトランプ降ろしをあきらめず、トランプが失脚さえすれば、安泰だと思えるなんて、ユダヤ人がいなくなったら、ドイツ人はみんな幸せ。と同じじゃない?ナチだなんて「差別用語」を使うのは、すごくナチぽくない?って思ったけど、


そこには、スノーデンが悩んだ視点はまったく存在しない。


ヒラリーが言う「善」が負けたら、彼らが「ナチス」になってしまう。


負けた方が、「ナチス」になるのだ。


巨大メディアを味方にし、弱肉強食の世界で生き残った勝者たちに、声なき声を味方にしようとした独裁者が勝てるわけがないように思えてきた。


反トランプが勝利することで、世界の多様性も、日本文化が消えていく不安もより増したけど・・・






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by yomodalite | 2017-01-30 12:10 | 映画・マンガ・TV | Trackback | Comments(0)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


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