映画『ジャニス:リトル・ガール・ブルー』

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今住んでいる大阪の家は、これまで以上に映画館が近いせいもあって、この機会にできる限り映画は劇場で、という気持ちが強くて、ミュージシャンを主役にした映画の場合は特にそう思う。映画を観に行くというより、ライブよりも良い席でステージが見られるような気がするし、映画としてハズレだったこともないから。

『ミスター・ダイナマイト』も、『AMY エイミー』も、映画で初めて彼らに会えたような気がしたけど、ジャニス・ジョプリンのことも、それまでCDを聞いていたわけでも、親しみを持っていたわけではなく、これが初めての出会いだった。

平凡な家庭に生まれた3人兄弟の長女であるジャニスは、家族の中でも学校でも、妹や弟より浮いた存在。それでもその歌声は人々を一瞬で魅了し、天才シンガーとして一気に階段を駆け上がっていく彼女は、モントレー・ポップ・フェスティバル(1967)や、ウッドストック(1969)といった60年代の歴史的な音楽祭で大成功を収めていく。

驚いたというか、ある意味、当時からそうだったんだと思ったのは、ジャニスがウーマン・リブの団体から非難されたというエピソード。ジャニスは自分ほど女性の自由な表現を追求して成功したアーティストはいないと思っている。当然そうだと思う。彼女に勇気をもらった人は数知れないだろう。それでも、女性運動家たちはジャニスのバンドは男性ばかりだと非難した。

生前最後のテレビ放送では、酷いいじめに遭っていた高校時代の同窓会に出席すると語っていた。実際に出席した同窓会はテレビカメラに収められることになり、そこには、スターとして故郷に帰った彼女を冷たく迎える同級生たちの様子が映し出された。

ジャニスが27歳という若さで亡くなったのは、それからわずか数ヶ月後のこと。

これまで彼女の歌を意識して聞いたことはなかったのだけど、映画の中で流れる曲はどれも聞いたことがあって、冒頭から息をのむぐらい惹きこまれてしまうものばかりだった。でも、映画のタイトルにもなっている「リトル・ガール・ブルー」は、ジャニスが創った曲ではない。

それは古いブルースのようで、私はニーナ・シモンの曲としてこの曲を知っていたけど、映画の一番最後に流れた曲がそれと同じ曲だということに最初は気づかなかった。

少女の絶望を歌った『Little Girl Blue』は、ニーナのデビューアルバム(1958)のタイトル曲で、ジャニスの曲は3枚目で、生前に発売された最後のアルバム『I Got Dem Ol' Kozmic Blues Again Mama!』(1969)に入っている。

本当に差別が激しかった時代に黒人として生まれ、正統的なクラシックピアノの教育をうけたニーナには絶望した少女を過去のものにするような黒人のプライドと未来がある。

ジャニスの「リトル・ガール・ブルー」は、彼女の傷口から絞り出したかのような他の曲と比べると、どこか明るさが感じられるけど、絶望はより深く、ジャニスの人生と死がそのまま歌われているように感じる。

亡くなったとき、「27クラブ」に入会してしまったと言われたエイミーには他にも選択肢があったのかもしれない。それでも彼女は、迷いながらもジャズを選んだ。でも「27クラブ」を創設してしまったひとりであるジャニスには、本当にそれ以外になかったように思えた。

大声で差別を訴えることができて、居場所も与えられている「マイノリティ」と違って、本当に誰にもわかってもらえない少女の絶望をわかってくれたのは、彼女だけだ。
誰もジャニスにはなれないけど、なりたいとも言えないだろう。
たったひとりっきりの孤独に耐えられる人なんて、どこにもいないから。


Nina Simone - Little girl blue





Janis Joplin - Little Girl Blue




Sit there, hmm, count your fingers.
What else, what else is there to do ?
Oh and I know how you feel,
I know you feel that you're through.
Oh wah wah ah sit there, hmm, count,
Ah, count your little fingers,
My unhappy oh little girl, little girl blue, yeah.

座って、指を折りながら数えてみる
自分にいったい何ができるの?
感じるのは、ただ年を重ねてしまったということ
座って数えてみる
小さな指を折って
不幸で、哀しい私の少女時代

Oh sit there, oh count those raindrops
Oh, feel 'em falling down, oh honey all around you.
Honey don't you know it's time,
I feel it's time,
Somebody told you 'cause you got to know
That all you ever gonna have to count on
Or gonna wanna lean on
It's gonna feel just like those raindrops do
When they're falling down, honey, all around you.
Oh, I know you're unhappy.

座って、雨粒を数える
ただ落ちてくる雨粒を数えるぐらいしかなくて
誰もがそう言う
何をしても無駄なんだと
できることといえば、雨の雫を数えるぐらいなんだと・・





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by yomodalite | 2016-10-21 06:00 | 映画・マンガ・TV | Trackback | Comments(0)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


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