和訳 PRINCE “The Sacrifice of Victor”

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f0134963_19590940.png今回は、今後も重点的に訳していきたいと思っているプリンスの信仰に関わる(やる人が少ないというのが主な理由w)曲の中から、前回紹介した『Sign “O” The Times』から5年後のアルバム『Love Symbol』(1992)のエンディング曲「The Sacrifice of Victor」。


男性(♂)と女性(♀)を融合させ、聖なる数字と言われる7を組み合わせたプリンスのマーク(Love Symbol)は、「Closs(十字架)」のニューヴァージョンという意味あいを持ち、



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このアルバムのジャケットの中面、曲目の上の「The Jews」も、一般的には「ユダヤ人」のことを指しますが、元々は「神の民」の意味であり、ここではプリンスのバンド「The New Power Generation(NPG)」のことを指しているようです。

ユダヤ人のことを「聖書の民」というように、この曲に登場する「The book of Victorの民」が「NPG」なんだということでしょう。プリンスはこのタイトルのライブビデオや、「写真集」も発売しています。


Scrifice(犠牲)や、Victor(勝者)は、ともにキリスト教の重要なテーマですが、一般的なキリスト教では、イエスが十字架に架かったことを、人間の罪を償うための神の計画であると考え、イエスを神に捧げられた犠牲「神の小羊」と呼び、その犠牲によって救済されたと考えます。人間は自力で救済されることはなく、「キリストの業」による救済が必要だと考えるんですね。でも、キリスト教には、彼らが理想とする「善」のために多くの犠牲者を作り出し、「神の国」を作るために戦争を繰り返したという負の歴史も・・・


プリンスの「Scrifice(犠牲)」や「Victor(勝者)」の考え方はそれとは違うということが、この「The Sacrifice of Victor」に表現されているようで、NPGのゴスペルといった感じでしょうか。

CDの英詞は、2=to など、いつものプリンス表記に加え、文字を反転させた鏡文字や、眼のイラストになっている「I」など、普段よりもさらに読みにくくなっているのですが、下記は、それらすべてを通常の表記に戻し(鏡文字の部分の英語は大文字にし、和訳は「」をつけてます)、CDにはないコーラス部分の歌詞も加えました。



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また、CD訳詞では最初のパラグラフの最後の行、「良かったら、第1章から始めたい」のあと、「学校を終了しなさい ーー 別の世界があることを自分の子供に教えなさい」という鏡文字があるのですが、ここは上記のように縦のレイアウトになっている鏡文字で、歌われていない詩なので、

FINISH SCHOOL — TEACH YOUR BABY THERE WILL BE ANOTHER WORLD
学校を終えて、あなたの子供に別の世界があることを教えなさい。

下記の歌詞和訳には含めませんでした。他にも、SCHOOL、CONSPIRACY、PLYMOUTH、THANK YOUなど歌われていない「鏡文字」があるのですが、それらは、前後の詩の意味を知る上で重要なので、歌われている、いないに関わらず、「」内で訳しました。


ライブ動画しかなかったので、歌詞と少し違いますが、
プリンス史上もっとも独創性に溢れたヘアスタイルをお楽しみくださいw




"The Sacrifice Of Victor"


What is sacrifice?

(We s... we s... we s... we sacrifice)

犠牲って何?

(僕たちや・・みんなの・・人類みんなの犠牲についてだよ)


NPG in mass attack, Sonny, please.

ソニー、言ってやれよ。NPGが受けた集団攻撃のことを(*1)


(we sacrifice)

(みんなの生け贄)


Church if you will, please turn to the book of Victor (We s, We s)

We like to start at the top if you don't mind

教会に行くとしたら、「勝者の書」を開いてほしい(僕たちのね)

一緒に、最初の章から始めたいんだ


(we sacrifice)

(Don't say it, preacher)

(神の子羊)

(伝道者はそんなこと言わないで)


I was born on a blood stained table

Cord wrapped around my neck

Epileptic 'til the age of seven - TRUE

I was sure heaven marked the deck


僕は血まみれの分娩台の上で生まれた

首にはへその緒が巻きついてて

てんかんの発作も7歳まであって「事実」

僕の生まれた場所は、天から苦難を定められていたに違いなかった


I know joy lives ‘round the corner

{Joy for sale down on the corner}

One day I'll visit her I'm gonna

{Out on my block I'm just a loner}

When she tell me everything {tell me}

That's when the angels sing {sacrifice}

That's when the victory is sho 'nuff

{sho 'nuff down with the sacrifice}  

(we sacrifice)

(help me)

(Don't say it, preacher)


幸せがすぐそこにあるんだってことはわかってる

(角を曲がれば、幸せなんて大安売り)

いつの日か、僕はそれを手に入れる

(周囲に壁をつくってしまう一匹狼でも)

そのときすべては明らかになり

天使は歌い

勝利は確実となる

(生贄は捧げ尽くした)

(神の小羊)

(私を救って)

(伝道者はもうそんなこと言わないで)


Mama held up her baby for protection

From a man with a strap in his hand

REMEMBER WHAT I WANT

Ask the Victor 'bout pain and rejection

You think he don't when he do understand


手に皮のむちを持った男から身を守るために

ママは幼い我が子を差し出した

「あのとき、僕が望んでいたのは・・」

痛みや拒絶される気持ちについては、勝者に聞くといい

君はそんなことわかりっこないと思っているけど、そうじゃない


(Chorus)


1967 in a bus marked public schools

Rode me and a group of unsuspecting political tools

Our parents wondered what it was like to have another color near

So they put their babies together to eliminate the fear

We sacrifice yes we did

Fighting one another, All because of color

The angel of hate - she taught me how to kick her

If she called me anything but Victor (LIKE NIGGER?)

If the only thing that tells me is father time

Then sacrifice is the mutha sublime - We love it


1967年、公立学校のスクールバス

僕は、そうとは知らず政治の道具にされた連中と乗っていた

僕たちの親たちは、肌の色が違う人種に近づくのはどういうものかと思い

恐怖心を消すために、子供たちを一緒にしたんだ

僕らは犠牲だった。そう生贄にされたんだ

他の人種と争いあった、すべては肌の色ゆえにね

憎しみが、自分を勝者以外の名前で呼ぶとき「ニガーとか」

憎悪の天使は、私(憎しみ)を蹴り飛ばせと教えてくれた。

自分をわかってくれるのが死神だけだったとしても

犠牲はこの上なく崇高で、僕らはそれが大好きなんだ


Listen mutha - we sacrifice

(don't... don't... don't say it preacher)

(we sacrifice)

(Well, well, well, well)

(What is sacrifice?)

Hold yo' text, deacon


聞いてくれよ、母ちゃん、みんなのための犠牲なんだ

(ダメ、ダメ、伝道者は「神の子羊」だなんて言うな)

(僕らのための犠牲)

(そう、そう)

(何が犠牲だって?)

助祭さん、しっかりと紙に書いてくれよ


Never understood my old friends laughing ― MD & A

They got high when everything else got wrong ― (SCHOOL)

Dr. King was killed ― (CONSPIRACY) ― and the streets

They started burnin' ― (PLYMOUTH)

When the smoke was cleared, their high was gone

Education got important, so important to Victor

A little more important than ripple and weed

Bernadette's a lady― (THANK YOU) ― and she told me (what she say?)

"Whatever you do son, a little discipline is what you need”


古い友人たちが笑っていることが理解できなかったけど、幻覚剤のせいだった(*2)

すべてが間違っていたとき、みんなはハイになっていた「学校でのこと」

キング牧師は「陰謀によって」殺され

街中は暴動が燃え盛り「プリマスと同じ」(*3)

煙が消えて視界がクリアになると、彼らの興奮も治まった

教育はすごく大事だよ。勝者にとっては特に

お酒やマリファナよりもう少し大事なもの

ベルナデッドという女性ー「感謝」(*4)

ー彼女が僕に教えてくれた(彼女はなんと言った?)

「何をするにしてもね、多少の修練が必要なのよ」


Is what you need, you need to sacrifice"

I know joy lives 'round the corner

{Joy for sale down on the corner}

One day I'll visit her I'm gonna

{Out on my block I'm just a loner}

When she tell me everything {tell me}

That's when the angels sing {sacrifice}

That's when the victory is sho 'nuff {sho 'nuff down with the sacrifice}


君が必要とするもの、君には犠牲が必要なんだ

幸せがすぐそこにあるんだってことはわかってる

(角を曲がれば、幸せなんて大安売り)

いつの日か、僕はそれを手に入れる

(周囲に壁をつくってしまう一匹狼でも)

そのときすべては明らかになり(教えて)

天使は歌い(犠牲)

勝利は確実となる(生贄は捧げ尽くした)


(we sacrifice)

(what is sacrifice?)

(we sacrifice)

{S.A.C.R.I.F.I.C.E}

(we sacrifice) (joy around the corner)

Hey Wendy, how come we... (we sacrifice)

'scuse me y'all (we sacrifice)

We don't don't mean to take up yo time (joy around the corner)

But we got something

Heavy on our minds (we sacrifice)

Yes, we do (we sacrifice)


(僕らの犠牲)

(犠牲って何だよ?)

(僕らのための犠牲)

(ギ・セ・イ)

(僕らのための生贄)(幸せはすぐそこにある)

ねぇウェンディ、どうして僕たちは・・(僕らのための生贄)(*5)

みんな、どうかわかってほしい(僕らのための犠牲)

僕たちは、君の時間を奪うつもりはない(幸せはすぐそこにある)

僕らは、ただ何かを得たいだけなんだ

精神にズシンと来るようなもの

そう、僕らは何かしたいんだよ


Sometimes, you gotta leave the one you love

Somebody, anybody, everybody wave your hand

Around the corner, there's another sacrifice (joy around the corner)

But you got to do the best you can y'all (we sacrifice)

Say you got to go through it (go through it)

You got to go through it all (go through it all)

High glory, yeah

Sell it, don't tell it, don't tell me (joy around the corner)

...nice at my feet


時に君は愛する人を残していかなければならないだろう

あらゆる人々、誰もが君に手を振る

角を曲がれば、もうひとりの犠牲者(幸せはすぐそこに)

でも、君たちみんなができるかぎりのことをしなくちゃならない

やり遂げなければならないと自分に言い聞かせて(すべてやり遂げる)

君はすべてをやり遂げないとならない(すべてやり遂げる)

輝かしい栄光

そんなのは売り払い、そんなことは語らず

僕にも言わないでくれ(幸せはすぐそこにある)

・・・素晴らしいことはすぐそこまで来ている


Lord I might get tired,

But I, I've got to keep on (we sacrifice)

Walkin' down this road, (we sacrifice)

Keep on walkin' down this road (joy around the corner)

When I reach my destination (we sacrifice)

My name will be Victor


Amen


主よ、僕は疲れ果ててしまうかもしれない

それでも、僕は、僕は続けなければならない(僕たちのための犠牲)

この道を歩き続けて(僕たちのための犠牲)

ずっと歩いていく(幸せはすぐそこにある)

僕が目的地に着いたとき(僕たちのための犠牲)

僕の名前は「勝者」になっているだろう


アーメン


(訳:yomodalite)


日本語解釈に苦労したところがたくさんあります。ご意見、ご指摘等いつでも大歓迎です。


_____________


(*1)NPGは、The New Power Generationの略で、プリンスのバンドやレーベルの名前。それまでのバンド「ザ・レボリューション」から「NPG」になったのは1991年。ソニーは当時メンバーだった、ソニー・T(トンプソン)のことだと思う。


(*2)Plymouth(プリマス)

マサチューセッツ州の港町で、1620年、イギリスからの入植者ピルグリム・ファーザーズ(ピューリタン/清教徒)がメイフラワー号で上陸した記念地。彼らはここから原住民であるインディアンたちを虐殺することで、アメリカ開拓を成し遂げていった。


(*3)MD & Aは、経営観測分析の意味ですが、ここでは似た発音で、俗にエクスタシーと言われる「MDMA」のことを指していると思う。


(*4)Bernadette's a lady フランスの聖女ベルナデッド・スピルーのことを想像させる。病弱で読み書きもできなかった14歳の彼女の前に聖母マリアが現れ、マリアから処女でありながら、イエスを懐胎した話を聞いたというもの。彼女が聖母と出会った場所は「ルルドの泉」として巡礼地となり、後にシスターとなった彼女は35歳で亡くなった54年後に列聖された。彼女の人生は『聖少女』として映画にも描かれている。ただ、ここでプリンスが聞いたと言っているのは聖ベルナデッドの逸話とは「真逆」で、無学や純潔、聖母=処女懐胎を想像するベルナデッドという名の女性から、プリンスが考える「教育」の重要性について聞いた、という構成のようであり、


また、10歳の頃両親が離婚し、母が再婚したあとは、父親の元に転がり込んだプリンスは、その後親戚の家を転々とするのですが、友人アンドレの母親ベルナデッド・アンダーソンの元で暮らすようになった。この女性への感謝という意味も大きいと思われる。


(*5)Hey Wendy, how come we... (we sacrifice) 1986年にバンドを離れた(プリンスが解雇した)ウェンディ・メルヴォワンに言っているのだと思う



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by yomodalite | 2016-09-26 09:30 | 現代文化・音楽・訳詞 | Trackback | Comments(0)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


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