『地獄の黙示録』:コッポラと『闇の奥』

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[追記あり]

地獄の黙示録について、少しは理解できたはずなのですが、原作と言われる『闇の奥』については、まだ、わからない点が多くて・・・


今後、『闇の奥』を読み返したときに、なにか参考になるかも・・という理由で、コッポラが原作にアンダーラインを引いた箇所などを、『地獄の黙示録・3Disc-コレクターズ・エディション」のミリアス・インタビューとブックレットから、メモしておきます。(また、前回アップした「ミリアス・インタビュー」も大幅に追記して、再投稿しました。)


英文は、こちらの「ORIGINAL TEXT」

日本語は、藤永茂訳の『闇の奥』から。


アンダーラインは、コッポラがインタビュー内で読み上げたり、ペーパーバックに赤線が引いてあった箇所です。


We penetrated deeper and deeper into the heart of darkness. It was very quiet there. At night sometimes the roll of drums behind the curtain of trees would run up the river and remain sustained faintly, as if hovering in the air high over our heads, till the first break of day. Whether it meant war, peace, or prayer we could not tell. The dawns were heralded by the descent of a chill stillness; the wood-cutters slept, their fires burned low; the snapping of a twig would make you start.


僕らは深く、より深く、闇の奥へ入り込んで行った。死んだような静けさだった。夜中に、時々、樹々のカーテンの向こう側で鳴る太鼓のひびきが河を上がって来ることもあったが、それは、われわれの頭上はるかの大気のなかでたゆたうかのように、空か白むまで、仄かに残っていた。その太鼓の音が、戦いを意味したのか、平和を意味したのか、それとも祈祷であったのか、知る由もなかった。その音が絶えて、冷たい静寂が降りて来ると、ほどなく朝が明けるのだった。木こりたちは眠りをとり,焚き火も燃え尽きかけて、誰かが焚き火の小枝を一本ポキンと祈る音にもハッと驚かされることにもなる。


We were wanderers on a prehistoric earth, on an earth that wore the aspect of an unknown planet. We could have fancied ourselves the first of men taking possession of an accursed inheritance, to be subdued at the cost of profound anguish and of excessive toil.


いうなれば、僕らは、見知らぬ遊星のような様相を帯びた地球、歴史以前の地球の上を彷徨っていたのだ。僕らは、深甚な苦痛と過酷な労役の末に手が届いた、ある呪われた遺産を所有しようとする最初の人間たちのように、自分らを思い描くこともできたかもしれぬ。


But suddenly, as we struggled round a bend, there would be a glimpse of rush walls, of peaked grass-roofs, a burst of yells, a whirl of black limbs, a mass of hands clapping of feet stamping, of bodies swaying, of eyes rolling, under the droop of heavy and motionless foliage. The steamer toiled along slowly on the edge of a black and incomprehensible frenzy. The prehistoric man was cursing us, praying to us, welcoming us―who could tell?


ところがだ。船が、流れの曲がり角をやっとこ回り終えたところで、重く、動きのない樹々の繁みの垂れ下がった陰に、突然、イグサ造りの壁や尖った草葺き屋根がチラリと見え、ほとばしる叫び声が聞こえ、黒い肢体の群れが乱舞し、手を打ち、足を踏み鳴らし、からだを揺さぶり、目玉をぎょろぎょろさせているのが、視界に飛び込んできた。この黒々とした不可解な狂乱のへりをスレスレに、船はゆっくりと遡航の骨折りを続けた。あの先史時代の人間たちが、僕らを呪っていたのか、折っていたのか、それとも、喜び迎えていたのかーー誰が分かるだろうか? 


We were cut off from the comprehension of our surroundings; we glided past like phantoms, wondering and secretly appalled, as sane men would be before an enthusiastic outbreak in a madhouse. We could not understand because we were too far and could not remember because we were travelling in the night of first ages, of those ages that are gone, leaving hardly a sign―and no memories.


僕らを取り巻くものへの理解から、僕らは断ち切られてしまっていた。狂人病院の中の熟狂的な狂躁に直面した正気の人間のように、僕らは仰天し、心中ぞっとしながら、まるで亡霊のように、その場を滑り抜けていったのだ。理解もできなければ、記憶をたどることもできなかった。なぜなら、僕らはあまりにも遠い所に来てしまったのであり、原始時代の夜を、ほとんど何の痕跡もーー何の記憶も残していない遠くに去ってしまった時代の夜を、いま旅しているのだったから。


“The earth seemed unearthly. We are accustomed to look upon the shackled form of a conquered monster, but there―there you could look at a thing monstrous and free. It was unearthly, and the men were―No, they were not inhuman. Well, you know, that was the worst of it―this suspicion of their not being inhuman. It would come slowly to one. They howled and leaped, and spun, and made horrid faces; but what thrilled you was just the thought of their humanity―like yours―the thought of your remote kinship with this wild and passionate uproar.


 『大地は大地とは思えぬ様相を呈していた。屈服した怪物が繋がれた姿なら、僕らも見慣れているが、しかし、あそこではーーあそこでは自由なままの怪物を目の当たりにすることができるのだ。この世のものとも思えないーーそして、あの男たちもーーいや、彼らは人間でないのではなかった。分かるかい、彼らも人間でなくはないのだという疑念ーーこれが一番厄介なことだった。その疑念は、じわじわと追って来る。彼らは、唸りを上げ、跳ね上がり、ぐるぐる回り、すさまじい形相をひけらかす。だが、こちらを戦慄させるのは、彼らも人間だーー君らと同じようなーーという想い、眼前の熱狂的な叫びと、僕らは、遥かな血縁で結ばれているという想念だ。


Ugly. Yes, it was ugly enough; but if you were man enough you would admit to yourself that there (上記の写真はここから)was in you just the faintest trace of a response to the terrible frankness of that noise, a dim suspicion of there being a meaning in it which you―you so remote from the night of first ages―could comprehend. And why not? The mind of man is capable of anything―because everything is in it, all the past as well as all the future.


醜悪、そう、たしかに醜悪だった。しかし、もし君に十分の男らしさがあれば、君のうちにも、ほんの微かとはいえ、あの喧噪のおぞましいまでの率直さに共鳴する何かがあることを認めるのじゃないかな。そのなかには、君にもーー原始時代の夜から遠く遠かに離れてしまった君にも理解できる意味が込められているのではないか、という朧げな疑念だ。考えてみれば何も驚くにあたらない。人間の心は何でもやれるーーなぜなら、そのなかに、過去のすべて、未来のすべて、あらゆるものが入っているのだから。


What was there after all? Joy, fear, sorrow, devotion, valour, rage―who can tell?―but truth―truth stripped of its cloak of time. Let the fool gape and shudder―the man knows, and can look on without a wink. But he must at least be as much of a man as these on the shore. He must meet that truth with his own true stuff―with his own inborn strength. Principles won’t do. Acquisitions, clothes, pretty rags―rags that would fly off at the first good shake. No; you want a deliberate belief. An appeal to me in this fiendish row―is there? Very well; I hear; I admit, but I have a voice, too, and for good or evil mine is the speech that cannot be silenced. Of course, a fool, what with sheer fright and fine sentiments, is always safe. Who’s that grunting? You wonder I didn’t go ashore for a howl and a dance? Well, no―I didn’t. Fine sentiments, you say? Fine sentiments, be hanged! I had no time. I had to mess about with white-lead and strips of woolen blanket helping to put bandages on those leaky steam-pipes―I tell you. I had to watch the steering, and circumvent those snags, and get the tin-pot along by hook or by crook. There was surface-truth enough in these things to save a wiser man.


あそこには、いったい何かあったのだろう? 喜びか、恐怖か、悲嘆か、獣身か、勇気か、怒りかーー誰が分かろう?ーーしかし、真実というものーー時という覆いをはぎ取られた裸の真実がたしかにあった。馬鹿な奴どもは仰天し震え上がるに任せておこう。ーー男たるものは、その真実を知っている。瞬ぎもせずにそれを直視できる。だが、それには、河岸にいた連中たちと少なくとも同じぐらい赤裸の人間でなければならぬ。その真実に自分の本当の素質をもってーー生まれながらに備わった力で立ち向かわねばならないのだ。主義? そんなものは役に立たぬ。あとから身につけたもの、衣装、見た目だけの服、そんなボロの類いは、一度揺さぶられると、たちまち飛び散ってしまう。そんなものじゃない、一つのしっかりした信仰が必要なのだ。この悪魔じみた騒ぎのなかに、訴えてくるものがあるかって? よかろう。僕にはそれが聞こえる。認めよう。しかし、僕には僕の声もある。そして、それは、善きにしろ、悪しきにしろ、黙らせることのできない言葉なのだ。いうまでもないが、馬鹿者なら、すっかり腰を抜かしてしまうとか、繊細な感情とかいうやつのおかけで、いつも安全だ。誰だ、そこでぶつくさ言っているのは? お前は、岸に上がって、一緒に叫んだり、踊ったりはしなかったじゃないか、と言うんだな? そう、たしかにーー僕はそうしなかった。繊細な感情からかって? 冗談じゃない。繊細な感情なんて糞食らえ! そんな暇はなかったのだ。いいかね。漏れ出した蒸気管に包帯をするのを手助けするために、僕は白鉛と裂いた毛布を持って右往左往していたし、舵取りを見張り、河床の倒木を避けて通り、どうにかこうにかポンコツ蒸気船を勤かすことで精一杯だったのだ。こうした事どもには、馬鹿よりはましな男であれば何とか款ってもらえるに十分な、表面的な真理があるものだ。


And between whiles I had to look after the savage who was fireman. He was an improved specimen; he could fire up a vertical boiler. He was there below me, and, upon my word, to look at him was as edifying as seeing a dog in a parody of breeches and a feather hat, walking on his hind-legs. A few months of training had done for that really fine chap. He squinted at the steam-gauge and at the water-gauge with an evident effort of intrepidity―and he had filed teeth, too, the poor devil, and the wool of his pate shaved into queer patterns, and three ornamental scars on each of his cheeks. He ought to have been clapping his hands and stamping his feet on the bank, instead of which he was hard at work, a thrall to strange witchcraft, full of improving knowledge.


その上、祈りを見ては、罐焚きの役の蛮人の監督もしなければならなかった。彼はいわゆる教化蛮人のひとりで、直立ボイラーの焚き方を心得ていた。僕のすぐ足許で働いていたのだが、それを見ていると、半ズボンをはいて羽根付きの帽子をかぶり、うしろ脚で立ち歩きの曲芸をしている大そっくりで、結構、感心させられたよ。まったく健気な野郎で、教カ月の訓練でこれだけになった。何か恐ろしいものに無理に勇気をふるって立ち向かうようにして、気圧計と水量計を薮睨みして見張っている。この哀れな小悪魔ーー彼は歯を研いで鋭くしていたし、頭の縮れ毛は奇妙なパターンに剃り込み、両頬には刀傷が飾りに三筋入れてあった。彼なども、やはり、あの河岸で、手をたたき、足を踏み鳴らしているほうが柄にあっていたのだろう。それだのに、教化のための知識を詰め込まれ、奇態な魔法のとりこになって、懸命になって働いている。教化されたことで、彼は有用になった。藤永茂訳 p96 - 100)


※光文社古典新訳文庫・黒原敏行訳(p89 - 93)



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“我々は闇の中に入っていく
そこは静かだった
夜、時々木々の後ろから
聞こえる太鼓の音が
川を上りかすかに漂った
夜明けまで我々の頭上で
舞っているかのように
戦争、平和、祈り・・・
我々には分からなかった”
(DVDの日本語字幕より)




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by yomodalite | 2016-03-09 17:38 | 映画・マンガ・TV | Trackback | Comments(0)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


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