HIStoryと黙示録:マイケルと神話 ①

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ここまで、ティーザーに引用された映画に潜む《黙示録》や《神話》を探ってきましたが、今回は、マイケルが遺したものから・・・


⭐️ ⭐️ ⭐️


「聖杯伝説」や「アーサー王と円卓の騎士」と呼ばれる神話の中には、登場する騎士たちがもつ様々な《聖剣》が登場します。アーサー王の剣《エクスカリバー》はもっとも有名なものですが、その代表的な伝説には、


湖の乙女から魔法の剣を受け取る

石に刺さった剣を抜いて王になる


という2つがあります。


ジャクソンズ時代のVictoryツアー(1984年)のオープニングでは、騎士に扮したランディが、舞台に置かれた石から剣を抜くことで、勝利(Victory)を宣言していましたよね。






(聖剣のシーンは1:20〜)




ジャクソンズは、ロックの殿堂入りもした素晴らしいグループなんですけど、マイケルの作品を見続けていると、そのクオリティの差に・・なんだかほっこりしてしまいますw このときの演出は、『スターウォーズ』の影響が色濃いものでしたが、でも、ジャクソンズに限らず、欧米人はホント《聖剣》が大好きで、同時代にチャートを席巻し、マイケルとも縁が深いTOTOのアルバムも、聖剣のオンパレードです。



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(1978~1988年までのTOTOのアルバムジャケット)




では、HIStory期のマイケルの「聖剣」や「王冠」の意味は何だったのでしょうか?



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これは、以前も紹介したマイケルの専属画家デイヴィッド・ノーダールによって、HIStoryの約1年前に完成した絵「The Triptych」。



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右側は、騎士として任命を受けている様子が描かれています。これは、叙任の儀式は、主君の前に跪く騎士の肩を、主君が長剣の平で叩くという伝統に沿っているもので、




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中世をテーマにしたロマンス絵画で有名な英国の画家、Edmund Leightonが、1901年に描いた「The Accolade(騎士の爵位授与)」(この絵の騎士は《鷲》と《月》のシンボルですね)という絵にも同じような場面が描かれていますが、




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騎士の爵位授与は、現代の英国でも基本的に同じスタイルで行われていて、これは、英国の俳優で、スタートレックやX-Menでもおなじみのパトリック・スチュワートが2010年に「騎士(Sir)」の称号を受けたときのもの。彼のように、ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーで永年活躍した人にはこの称号がよく与えられているんですが、ちなみに叙勲していない「ジョブズ」のものは、これの合成写真ですからね(苦笑)。




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念のため、弁明しておくとw、私はフリーメーソンの肩をもっているわけではありません(笑)。


ある団体はずっと「悪の組織」で、ある団体はずっと「善の組織」なんてことは、歴史においては一度もなく、どんな崇高な志をもって生まれた組織も、必ず腐敗していく。それだけは、長い歴史の中で唯一確かな真実といっていいことで、そこを無視した単純な陰謀論は、メディアの嘘と同じように大きな問題だ、と思っているだけです


ということをご了承いただいたうえで、


マイケルの絵に戻りますが、左側は、王としての戴冠ですね。



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左右ともに《獅子》が背景になっています。キリスト教では、ユダ族のライオンといえば、イエスを指しているのですが、世界中のあらゆる国で、王者や、勇者を象徴するシンボルになっています。




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そして、中央には、聖剣をもつマイケルが描かれ、Dancing the Dream』の詩「ARE YOU Listening?」の一部が書き入れてあります(→[和訳]ARE YOU Listening?)


また背景には《竜》が描かれていますが、黙示録で、大天使ミカエルが戦うのも、円卓の騎士達が戦うのも《竜》です。剣には二匹の蛇がデザインされているようで、これは、エクスカリバーと同類のデザインのように見えます。以前も書きましたが、この金色のマントが「スペードの形」になっていることも、意味があると思います。(→http://nikkidoku.exblog.jp/16382196/)


これらの絵から、「HIStory」製作時、マイケルは騎士に任命されて、竜退治に行き、成功して、王になり、竜を退治した聖剣によって、王国を治める。ことを、自らに課していたように思えるのですが、しかし、当然のことながら、マイケルの騎士の任命は、実際に起こったことではなく、彼の内面をあらわすものですよね。


この絵に書かれた詩には、


僕は粒子 僕は波
光の速度で回転して、変動し、先導する
僕は王子になり、悪党になり、あらゆることを行動し
宇宙では、天の川のその中で、熱狂そのものにもなる・・・


という内容があります。


あらゆるものになる。というメッセージは、映画『ムーンウォーカー』で、子供たちの優しいお兄さんでありながら、妖しげな酒場に行き、犯罪に巻き込まれると、スーパーカーで逃げるのではなく、スーパーカー自体に変身(!)し、少女が捉えられると、助けるためにロボットへと変化し(!)、そこから宇宙船になって彼方に去ったと思いきや、セクシーなロックスターとして舞い戻る(!)とか、マイケルの世界ではよくあることですよね(笑)



でも、彼の詩をいくつも訳していると気づくことですが、多くの場合で、主語や代名詞が変化していくという特徴があります。(これは、ウィラとエレノアの会話でも指摘されています→)


この詩も、このあと、「思索者や、探求者であり、露や、陽の光や、嵐であり、現象となり、砂漠であり、海であり、空でもあり、それらは原始の自己であり・・・」


それは、あなたも、僕もそうなのだ、と。


「あらゆるものになる」というのは、マイケルの信条というだけでなく、私たちへのメッセージでもあるわけです。これは、ティーザーが「自己神格化」だと誤解されたことにも通じることだと思いますがそれは最終的な「ティーザー解読」に再度書くこととして、


次回は、この絵の背景に描かれている、マイケルの《竜》とは?・・・について。






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Commented by kuma at 2016-02-24 16:03 x
yomodaliteさん

いつも楽しく、時に息切れしながら(自分の理解がついていかない部分もあるので...笑&汗)拝読しております。楽しくても息切れしてても、刺激になることは確かですが・・・。

今回、
>彼の詩をいくつも訳していると気づくことですが、多くの場合で、主語や代名詞が変化していくという特徴があります。

という部分に、はたと膝を打つような思いがありました。載せてくださった動画にある、Victoryツアーのオープニング曲、Wanna Be Startin' Somethin’。この曲は、映画『This Is It』でも一番最初に出てくる曲で、マイケルがサッと右手を挙げたあの場面に魅せられた私は、一時来る日も来る日もこれを聞いてました。で、歌詞を読み直したら、かなり印象が違ったんです。
Commented by kuma at 2016-02-24 16:30 x
I said you wanna be startin' somethin'
You got go be startin' somethin'
出だしを見ると、何か新しいことを始めよう、という曲なのかなと思うのですが、
You're stuck in the middle and the pain is thunder
とあるので、新しいことを始めたいんだけど、いろいろ障害があるのかな、と思う。かと思えば、
I Took My Baby To The Doctor
で、結局マイ・ベイビー(彼女かな)は頭がおかしいと周りで噂されるようになる。

この時点で、新しい何かを始めたいは誰なのか。I
なのか、Youなのか。Youだとしたら、どうしてYou wanna be startin' から始まらず、そのまえにI saidがつくのか。そもそも、新しいこと何かとは良いことなのか、悪いことなのか。わからないことが頭に渦巻くわけですが、さらにそのあと、
You're a vetetable
このyouって、新しい何かを始めようとしていたyouと同じなの?となり、最後の
Yes, I believe in me so you believe in you
に至ることには、もう頭がカオス状態です。

結局、IとYouがどういう人なのか、どっちの側にいるのか。マイケルはIとYou、どっちなのか、わからないままでした。すごく納得がいかなかったのですが、もしかしたら、それこそ作詞家マイケルの意図だったのかも知れませんね。
Commented by kuma at 2016-02-24 16:44 x
この記事を含め、HIStoryについての一連の記事を読んで、マイケルが、自分の作品を、決してわかりやすい物語に落とし込まないようにしていることを感じ、私が「わからない!」と思い、今も思い続けていることは、表現者としての彼の意図に沿ったことなのかな、と感じたりしました。

そういう多重的な視点の、ある意味難解な作品を、コンサートの冒頭に持ってきているんですね。ちっとも難解な感じのしない、素敵なリズムとメロディーにのせて。
動画で言うと、「勝利」という名のコンサートが、「石に刺さった剣を抜いて王になる」とうい明快な場面から始まったあとにこの曲が出てくることも、興味深い対比を感じますね。
Commented by yomodalite at 2016-02-25 11:22
>Victoryツアーのオープニング曲、Wanna Be Startin' Somethin’・・・歌詞を読み直したら、かなり印象が違ったんです。

ですよねぇ。。私もずっと、楽しくて踊りたくなるマイケルワールドの始まりにぴったりの曲だと単純に思っていて、マイケルのこともエンターテイメント界の優等生で、家族で安心してお楽しみくださいっていう感じのショーをする人だと思っていた時期があったんですが、英詞を読んだら、すごく印象が変わって驚いたことが昨日のことのように思い出せるって感じです(笑)。

この主語は誰?っていつも悩んで、順列・組み合わせみたいに、幾通りも考えられて・・・My Babyも、《彼女》のような場合と、人の内面にいる《子供の魂》みたいな場合とか、色々パターンがあるし・・
Commented by yomodalite at 2016-02-25 11:22
>結局、IとYouがどういう人なのか・・マイケルはIとYou、どっちなのか・・それこそ作詞家マイケルの意図だったのかも知れませんね。

ダンシングザドリームには「I YOU we」(http://nikkidoku.exblog.jp/17766448/)という詩もあるしね。。子供が聴いても、ずっと大人になってから聴いても、そのときそのときのその人の成長度合いによって、さまざまな深読みができるって、本当に若いときから、めちゃくちゃ老成してる人だよねぇ・・

>「勝利」という名のコンサートが、「石に刺さった剣を抜いて王になる」とうい明快な場面から始まったあとにこの曲が出てくることも、興味深い対比を感じますね。

そうそう、でもって、その次の「Things I Do For You」も、「あなたのために」と、「僕のため」っていうのを、またまたそんな感じになってて・・・マイケルは「自己と他者」についてすごく考えてるんだけど、「heaven is HERE」(http://nikkidoku.exblog.jp/20103916/)のように、常に自分と他人を分けない。そーゆー哲学的な考えを、物語的に理解すると、まちがいの元っていうことがよくあるように思う。。
Commented at 2016-02-26 23:48 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by yomodalite at 2016-02-27 19:03
>はじめまして。思い切って書いております。これは個人的な意見です。

鍵コメさん、はじめまして。素敵なコメントありがとうございます!!!
ときどき、なにか清水の舞台から飛び降りるかのごとく、決心をされてコメントを書いてくださったような気配を感じることがあって・・・こちらの不徳の致すところと反省してはいるんですけど(笑)、本当に「思い切って」くださって嬉しい限りです!


>ティーザーにマイケルの左目、右目は?
>それはフォルトナのラストにあったりします。サブリミナルで《デンジャラスの文字》がわかりますが、意図的にサブリミナルでサブリミナルを消している気がします。故に非公開コメントにしました。

まず、意図的にサブリミナルにしているものを、指摘するのは・・という点で「非公開コメント」にされた、という点に関して、

確かに、サブリミナル映像を、広告や洗脳目的、あるいはイタズラのような意味で使う場合、見る人が意識しないぐらいの極わずかな秒数の映像を差し込むことで、潜在意識に働きかけようとするわけですから、仕掛けた側は気付かれたくない、と思うのが普通です。

でも、マイケルが私たちファンに見せる映像に、潜在意識に刷り込みたいという欲求はあっても、その意図や目的を知られたくない、とか、知られてマズいことは一切ないと思うんです(まぁ、サブリミナルだとわかると、すぐにイルミナティだ悪の組織だというような困ったちゃんは多いですが・・・)。

私は、ファンが「これは何だろう?」と気づいたら、それがなにかわかるまで探ってみようとすることを、マイケルが望んでいないとは思えません。むしろ、そうやって、何度も見てくれることこそ、彼が望んだことではないでしょうか。だって、これは「作品」として創ったもので、彼が公認して発売されたビデオに収録されている映像ですから・・

というわけなので、「非公開」の理由がそういうことであれば、とりあえず、お名前は伏せさせていただきますが、内容に関しては、シェアさせていただくということで、ご了承いただけないでしょうか・・=*^-^*=・・というか、伺う前にシェアしちゃってますけど・・・\(^▽^)/
Commented by yomodalite at 2016-02-27 19:05
>ラスト、マイケルの身体が白く光って星になって四方に散ってゆきます。
>この散りゆく瀬戸際の白い光を、コマ送りで見てみて下さい。マンミラのシングルに使われている写真の右目があるんです。一瞬なのでスローだとはじめはなかなか確認できないかもしれません。


このスローにしなくて見えない部分については、『意志の勝利』でこのSFを引用したときに、わたしも書きたかったんですが・・・

ただ、「Leave Me Alone」のSFや、デンジャラスのアルバムジャケットの間に《デンジャラスの文字》があるのはわかるんですが、《右目》は、全く気がつかなくて、私には《別のもの》が見えるんですね。

このコメント欄では、動画の確認がしにくいですし、この部分に関しては、他にも「色々なものが見える」という方がおられるようですし・・最近「HIStoryツアーのオープニング」を分解したときも、私には気がつかなかったことがたくさんありましたので、

このあと、「Dangerousツアー・オープニング(Brace Your Self)」という記事をアップしますので、そちらで、是非またお考えをおきかせいただけませんか?


>フォルトナとティーザーは対で「運命と自由意志」を表現されているのかなと、ひとつの可能性として思っています。・・・

ホントそうですね。とても変化しているようでいて、驚くほど一貫性があるというのは、マイケルからはよく感じることですし、「You Rock My World」にはトランプも登場して、そことの繋がりも感じたり・・


>マイケルは永遠の謎で、考えているとそれがマイケルの贈り物のひとつである気がします。

同感っ!!!


>タロットカードのソードのエースは剣と王冠のイラストなので、私はタロットの物語とマイケルの夢をつい考えてしまいます。

そうそう、タロットにも、剣がすごくいっぱい出てきますよねぇ・・ソードのカードは全部で14枚? あと王冠が出てくるのは、キングとクイーン、それとナイトもやっぱり気になりますね。。
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by yomodalite | 2016-02-24 12:42 | ☆MJアカデミア | Trackback | Comments(8)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


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