HIStoryと黙示録:『地獄の黙示録』②

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①の続き・・・


欧米で、ほとんどの人が知っている典型的な神話といえば、《アーサー王と円卓の騎士》と、《聖杯探し》。これらは、どれが原型なのかわからないほど膨大な量の物語があり、また、お互いが混じり合うことで、《英雄》と《探求》の物語を形成していて、それは、イエスの英雄化にも、影響を与えてきました。


ハリウッドでは、ヒーローを描く物語が無数にありますが、それらは、与えられた試練を乗り越えて、どう成長していくかという《通過儀礼》がテーマになっています。そして、その通過儀礼のもっとも大きな要素は、私たちの国では、ほとんど見られない《父殺し》。


宗教学者の島田裕巳氏は、「アメリカ映画は、父を殺すためにある」と言う。父殺しという《通過儀礼》を果たすことによって、英雄(ヒーロー)へと生まれかわるのだと。また、映画評論家の町山智浩氏は、ヒーロー物語と父殺しの関係について、「ユダヤ・キリスト教では、聖書は神を「父」、キリストをその「息子」として描いていて、その父子関係が世界理解の基本になっている。イギリスに反抗して独立したアメリカという国は、常に自分を父と戦った息子としてイメージせざるを得ない」のだと指摘しています。


そして、父殺しは、『スターウォーズ』を思い出してもらうとわかりやすいのですが、歴史や、未来や、神話を舞台にした映画では《王殺し》の物語へと変化します。


元サーファーのランスは、「ディズニーランドよりも素敵なところが他に?」と書かれた手紙を読んで、「あるさ、ここにある」と答えますが、『地獄の黙示録』のジャングル・クルーズは、真実を求める「探索」の物語であり、カーツという《王》を殺しに行く物語でありながら、若者を成長させる通過儀礼にはならず、ここには、誰ひとり《ヒーロー》がおらず、誰もがみんな間違っていて、旅の果てには、《答え(聖杯)》も《宝(聖杯)》も見つからない。


『地獄の黙示録』は、戦いや、王殺しを行うだけでなく、実際の歴史や、これまでの黙示録に基づく物語、神話、王殺しの物語、アーサー王や、聖杯探しといった騎士道物語や、宝探しのすべてを 解体” した物語で、とてもシリアスではあるものの、ある意味、それらのパロディになっているんですね。


この構造は、マイケルのショートフィルムに、とても大きな影響を与えているので、そういった例を出来るだけ多く紹介していきたいと思いますが、

まずは、聖書や、黙示録との関連から・・



◎ヘリコプターと「イナゴの群れ」


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この映画は、ヘリコプター集団の映像がよくあるのですが、これは、黙示録の「イナゴの群れ」ですね。


煙の中からは、イナゴの群れが地上へ出て来た。(...)「額に神の刻印を押されていない人には害を加えてもよい」と命じられ・・・そのイナゴの姿は、出陣の用意を整えた馬に似ていた。そのイナゴの姿は、出陣の用意を整えた馬に似ていた。頭には金の冠に似たものを着け、顔は人間の顔のようでもあった。(...)胸には鉄の胸当てのようなものを着け、その翼(つばさ)の音は多くの馬に引かれて戦場に急ぐ戦車の響きのようであった(黙示録・第九章より)



◎炎と、紫と黄色の煙


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私は幻の中で、馬と騎兵たちを見た。彼らは、・・・口からは炎、紫、および硫黄の色の・・・口から吐く火と煙と硫黄、この三つの災難で人間の三分の一が殺された。(黙示録・第九章より)


戦場を描いているので、爆発シーンや、煙が多いのは、普通なんですが、それ以外のシーンでも、紫と硫黄の色(黄色)の煙が何度も象徴的に登場したと思います。



◎ヘリコプターと『ワルキューレの騎行』


キルゴアが、「俺たちは空の第一騎兵隊」だといった翌朝、ラッパが吹かれ、ヘリコプターは離陸し、ワーグナーの『ワルキューレの騎行』を大音量で鳴らしながら、ミサイルが打たれる場面は、


第五の天使がラッパを吹いた。・・・この星に、底なしの淵に通じる穴を開く鍵が与えられた。深い淵の穴を開くと、大きな炉から出る煙のようなものが地上に広がり、太陽も空もその穴からの煙のために暗くなった。(ヨハネの黙示録より)


という場面ですね。黙示録の7人の天使たちは、何かを成す前に、ラッパを吹くことになっていて、交響曲のファンファーレも、このラッパから影響を受けているんですが、


「ワルキューレの騎行」は、アーサー王の物語を原型としている、ワーグナーのオペラ『ニーベルングの指輪』4部作の二作目で、騎行とは馬に乗って行くことです。ワルキューレは、北欧神話(ルーン文字で書かれている)に登場する半神のことで、「戦死者を選ぶ者」とされていて、一般的に、鎧と羽根のついた兜で身を固め、槍(もしくは剣)や盾を持ち、翼の生えた馬(ペガサスなど)に乗る美しい乙女の姿で表されています。



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『ニーベルングの指輪』では、神々の長ヴォータン(=オーディン。北欧神話の主神で、戦争と死の神)と知の神エルダの間に生まれた9人の娘達として登場し、天馬にまたがり槍と楯を持ち天空を駆け巡るワルキューレたちが、戦死した兵士の魂を岩山へ連れ帰る場面の前奏曲として『ワルキューレの騎行』が流れます。

『地獄の黙示録』では、この戦闘シーンから、しばらくして、武器をもって踊る、カウガールファッションの『PLAYBOY』のバニーガールたちが、ヘリコプターで、空から登場するのですが、彼女たちは、《ワルキューレ》としては、早々に兵士たちの前から立ち去っていき、黙示録の《バビロンの大淫婦》のように、裁かれて、焼かれることもなく、2000年版では、淫婦とは正反対の少女のようにも描かれています。



◎ウィラードに送られてくるレポート

船上にいるウィラードに次々に送られてくるレポートは、黙示録で、小羊(イエス)が開くのがふさわしいとされる巻物を指していますが、ウィラードはイエス的な人物としては描かれていない。



第五の天使は《アバドン》を呼び出し・・・


ヨハネの黙示録では、第五の天使がラッパを吹くと、地獄の蓋が開き、《アバドン》と《イナゴ》を呼び出す。ことになります。アバドンというのは、奈落の王のことで、ルシファーや、サタンと同一視され、「破壊の場」「滅ぼす者」「奈落の底」の意味をもっているのですが、ここでは「カーツ」を指しているようです。


また、このあと、第六の天使がラッパを吹くと、ユーフラテス川のほとりにつながれている《四人の天使》は、人間の1/3を殺すために解き放される。のですが、カーツは、ベトナム人の《4人のスパイ》を殺害するという最小の攻撃で、最大の効果をあげる作戦を選択します。


そして、第七の天使がラッパを吹くと、この世は、我らの主と、そのメシアのものとなり、主は限りなく統治される。というのですが、映画では、このあと不気味な「カーツの王国」へとたどり着く・・・



◎「船を離れるな」


マンゴーを取るために、船を降りて、ジャングルに向かったことで、トラに襲われそうになった場面で、元シェフは、船から離れたことを何度も後悔し、ウィラードも、教訓のように「船を離れるな」(Never get out of the boat. というシーンがあります。


これは、おそらくマタイ伝14章22-33で、イエスに「来なさい」と言われて、ペトロが、船から降りて、水の上を歩き、イエスの元に進むのですが(Peter got down out of the boat, walked on the water and came toward Jesus. )、途中で強風に会って、沈みかけ、助けを求めると、イエスが「信仰の薄い者よ、なぜ疑ったのか」と言われる。という場面を《逆》にしているのだと思います。



◎ラザロからの襲撃


ふざけた味方のボートから襲撃を受け、ボヤが起き、船長がリーダーらしき男を見て「お前か?ラザロ」と名前を呼ぶシーンがあります。ラザロといえば、コールドプレイのクリス・マーティンが、MJのTHIS IS ITでのカムバックを「ラザロ以来の復活劇」だと称したように、イエスによって、死から蘇った人物として有名なのですが、この場面でのラザロが、それとは正反対の下品な行為をしているのは、軍事行動と医療行為の両方を行っている「聖ラザロ騎士団」を揶揄する意図からだと思います。


マルタ騎士団、テンプル騎士団、ガーター騎士団、ラザロ騎士団といった騎士団の本来の使命は、巡礼者がキリスト教の聖地を旅するのを守ることだったのですが、現代では、キリスト教の慣習に基づき、慈善活動に取り組み、貧しい人々や病気に苦しむ人々を助けることに置かれていて、故レーガン元大統領や、ヒラリー・クリントンといった素晴らしいメンバーがいることで知られる現代のラザロ騎士団は・・・要するに偽善を行う「悪の秘密結社」なんですね(笑)


これは、聖書からの由来でありながら、歴史であり、騎士物語であり、現代の政治の話でもあるわけですが、こんな風に、この4つは実際に混ざり合っています。



黙示録と聖書に関連する場面は、まだまだありそうなんですが、


次は、歴史・政治との《関連》について・・・






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by yomodalite | 2016-01-25 09:35 | ☆MJアカデミア | Trackback | Comments(0)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


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