「Part 3」を訳し終えて

ウィラとエレノアの会話の途中ですが、この記事の翻訳を手伝っていただいたchildspiritsさんからメッセージをいただきました。

072.gif 072.gif 072.gif


yomodaliteさんから、この記事の話を聞いたのは、かなり前だったような気がします。訳そうと思いながらずっと手をつけられないでいたのは、怠け癖のせいもあるのですが、いったん手をつけてしまうとエラいことになりそうな気がしたからです。実際、エラいことになりました。

なにせ対談が長い!ということもあるのですが、そこに出てくる映画、歴史、思想に関する知識のバックグラウンドが自分に欠けていることを痛感させられまくりで、参りました。なにしろ、撮影の舞台がブカレストの英雄広場であることも、それがどんなところかさえ知らなかったのですから。ひとつの言葉、一行の表現に、延々と悩んだり、調べたりすることの連続。けれど、それを繰り返しながらでも、パート3まで連続して訳して、本当に良かったと思います。連続して訳さなければ、わからなかったことがありましたから。

パート1,2で、『意志の勝利』や『独裁者』と「ヒストリー・ティーザー」の関わり、その引用の仕方が論じられている時点では、映像の歴史の中で特別な位置を占めるこれらの作品について、自分は実は何も知らなかったということを認識させられましたし、MJの知識や教養の広さと深さに改めて感心していました。この対談でエレノアが言ってるように「彼はどうやってこんなに勉強したの?」という感じです。ただ彼を見上げている感じ。

でもパート3を読み終えた今私が感じているのは、自分にとって、「彼はどうしてこんなに優れた教師なんだろう?」ということです。それはMJをただ見上げるだけではなく、彼が与える課題を自分はどう考えるか、という相互作用的な関係です。

パート3には、「ヒストリー・ティーザー」に引用されている作品が新たに三本論じられていていますが、ここまで来て私はやっと、MJがヒストリーでいろいろな作品を引用していることの意味が納得できたような気がします。知識の披瀝などではもちろんなく、単なるオマージュでもなく、そこに浮かび上がってくるのは、人や物事を見る目の多様性、つまり「歴史」を見る目の多様性というメッセージでした。

そして、歴史を一つの切り口ではなく、多様な観点で見るためには、どんな相手も理解しようとする共感力が必要だということ。MJというと、「その人のモカシンを履いて二つの月を歩いてみるまでは人を判断してはならない」という言葉がファンの間で引き合いに出されますが、「ヒストリー・ティーザー」は、意外なことに、その精神をもっとも強く伝えているショート・フィルムではないかと、今では思います。

先に、「連続して訳して」良かったと書きました。「ヒストリー・ティーザー」という作品について、上に述べたような自分なりの納得や感動に至ったのは、訳しながら読んだからだと思います。

もし英語で読んでいたら、本当はよくわかっていない部分でも「そうなんだとか「そういうもんか」と読み飛ばしてしまい、対談者たちの考えはだいたい解った、という地点にとどまったでしょう。でも、訳すという作業は、そこに出てくる物事についての理解が曖昧だと日本語が作れないので、yomodaliteさんとともにずいぶんと調べものをすることになりました。

Aという事柄を調べれば、芋づる式にBもCもということになり、時間もかかりましたが、いままで他ではしなかったような勉強ができましたし、二人であぁだこうだと議論を進めながらやることで(ウィラとエレノアが語りあうことで作品への理解を深めていったように)、以前には考えたこともなかったような見方にたどり着くことが出来ました。それはとてもわくわくする体験です。
なぜならMJが「ヒストリー・ティーザー」に込めた思いが、2015年の冬の日本に生きている私たちにも、身にしみて伝わってくるような気がしてくるからです。

対談に出てくる通り、「ヒストリー・ティーザー」は「怖くて不気味な感じで、誇大妄想の産物のように見える」作品です。それは、MJに批判的な人たちだけでなく、多くのファンにとっても、もちろん私にとってもそうでした。でも、この作品が一見してメッセージのわかりやすい作品だったら、ウィラやエレノアがこんなに議論することはなく、私たちも考えたり学んだりさせてもらえなかったし、そこにあるメッセージは頭の中にちょっととどまって去っていったかもしれません。

製作から20年経っても私たちが「歴史をどう見るか」ではなく、「歴史ってなんだろう」みたいなことを考えられるよう、MJがたった3分弱のなかに凝らした無数の仕掛け。私たちがあぁだこうだと言ってるのを見て、MJが「やっとわかった?でもまだまだ」と笑っているような気がします。ほんとにすごい教師です。

(childspirits)



[PR]
トラックバックURL : http://nikkidoku.exblog.jp/tb/24799602
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
名前
URL
削除用パスワード

※このブログはコメント承認制を適用しています。ブログの持ち主が承認するまでコメントは表示されません。

by yomodalite | 2015-12-25 06:00 | MJアカデミア | Trackback | Comments(0)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


by yomodalite