HIStory Teaser, Part 3「新たなヒーロー像」⑤

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(④の続き)


ウィラ:そのあと、そういった行進する兵士たちをマイケル・ジャクソンが先導していくシーンの次に、これまでとはちょっと違う部分があるわよね。


なんていったらいいか、歌でいうと、ブリッジ(メロディとサビをつなぐ部分)かな。突然、雰囲気が変わって、なにか混沌として、おどろおどろしい感じになる。突如として夜になって、車は燃えているし、ヘリコプターが上空を旋回して、爆音が響き出し、人々は叫んだり、走ったり、恐怖に身を縮めたり・・・つまり、それは混沌と混乱の場面で、ここまでの場面にあった絶対的な規律や正確さとはまったく違う。



エレノア:そう。ここで、『地獄の黙示録』のヘリコプターによる攻撃シーンが引用されている。あの、ヘリコプターが現れて、黒い背景に赤い太陽、という、あのシーンとそっくりよね。



ウィラ:私もそう思うわ。あなたが言うまで、そのつながりには気づかなかったけど、指摘してくれたように、本当にかなり直接的な映像の引用に見えるわよね。『地獄の黙示録』と「ヒストリー」のヘリコプターシーンをここに並べてみるけれど、おどろくほど似ているわ。



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エレノア:『地獄の黙示録』は戦争の恐怖と狂気、特にベトナム戦争でのそれを描いた作品よね。その戦争でアメリカは「無垢を喪失」し、国民は六時のニュースで自分たちも大虐殺を侵しうるのだと知り、何千何万の若者が愛国者としての義務を果たすため戦争という巨大なマシンに巻き込まれ、命をとられなかったとしても、そのマシンに噛み砕かれはき出され、身も心もモラルも破壊されてしまった。


「ヒストリー」のヘリコプターシーンで、パニックになって走る人たちは、『地獄の黙示録』で、すべてを吹き飛ばしてしまうミサイル攻撃の直前、ヘリコプターによる攻撃から身を守ろうと走る、恐怖にとらわれたベトナム人の生徒や漁師たちと同じなのよね。罪のない、戦争の犠牲者。ここでも、「善」と「悪」が入れ替わる。


そして、「ヒストリー」がリーフェンシュタールやナチスを引用していることと同じように、『地獄の黙示録』のヘリコプターが、人々を殺すためにやって来るとき、ワーグナーの「ワルキューレの騎行」を大音量で流すスピーカーを装備しているというのは意味深いわね。私たちは、どんな側であっても、繰り返し戦争を引き起こす、狂った国家主義的な政治の犠牲者であり続けるということ。



ウィラ:そのつながりは本当に一考の価値があるわ、エレノア。このフィルムをどう解釈するかということと、すごく重要な関係があるから。多くのアメリカ人にとって、ベトナム戦争は、明確な使命もなく、過剰な軍事行動をとるようになったことを象徴する、恥ずべき出来事よね。若いアメリカ兵たちは、多くが10代後半から20代前半で、だれが民間人で、だれが戦闘員なのかわからない異国の地に送られ、きちんとした指揮系統もないままに、混乱と敵意のうずまく状況の中に放り出された。それは、ベトナム人にとっても、そこに送られた若いアメリカ人にとっても悲惨な戦争だった。


仮に『地獄の黙示録』への言及に気が付かなかったとしても(実際私は気が付かなかったんだけど)「ヒストリー・ティーザー」のこのシーンが、軍におびえパニックに陥った市民を表していることは確かで、それは、最初の部分で、マイケル・ジャクソンが率いる軍を崇拝し、歓迎していた群衆に対する、とても矛盾したメッセージよね。ここでもまた、MJは意味を複雑化するために、矛盾した映像を並列させている。


この短い合間のシーンがこれほどに恐怖や混乱をかき立てるようなものであるというのは、これが「ヒストリー・ティーザー」の最も重要なシーンの一つで、とても重要な役割を負っているということではないかしら。直前にあったリーフェンシュタール風の映像、つまり軍を美化するような映像を強く疑い、複雑化させ、同じこの軍隊が自分たちに銃を向けるようになるかも知れないと、想像させる力があるんじゃない。実際この短いシーンは、強力な軍の恐ろしい力は、守ってくれる力であると同時に脅威にもなるということを示している。



エレノア:このシーンが重要であるという点は私も賛成。そしてたぶん、このシーンは、どうしてMJがソビエトの制服にこだわったかということの説明にもなっている。以前ソビエト連邦から受けたことを考えれば、ハンガリーの人たちが「銃におびえ」て用心深くなり、この間まで自分たちを抑圧していた国の制服を着た軍隊が、少しでも武力行使の兆しを見せようものなら、パニックになるというのもわかるわよね。彼らは本当に変わったのか? 彼らは本当に「善」なのか? 信用できるのか?



ウィラ:それは大事な点ね。そして、ブダペストは強力な軍隊が、どれほど人々を脅かすかを表現するのにはこの上ない場所よね。1991年の夏だったと思うんだけど、私はブダペストに友人を訪ねたの。そして二人で実際に英雄広場に立って、友人はハンガリーの歴史を説明してくれた。私はショックを受けたわ。ハンガリーが何百年ものあいだ、いろいろな勢力に占領され続け、その最後がソ連だったことに。


そして、その1991年以降大きな変化があったのは確かで、私がそこにいたときは、第二次世界大戦の痕跡はまだ目に見える形で残っていた。建物の壁に穴が空いているとかね。私がその夏に訪問したヨーロッパの他の国では、そんなことはなかったけど、ハンガリーでは、第二次世界大戦を思い出させるものが目立っていて、『意志の勝利』を引用のためには、「ヒストリー」の撮影場所としてふさわしかったのよね。


重要なのは、建物に空いた穴は、連合国側からの攻撃によるもので、要するに、ソ連の攻撃なのね。ハンガリーは(アメリカ人が第二次大戦で「悪」だとみなした)枢軸国側であり、ソ連は(アメリカが「善」とみなした)連合国側だった。だから、「ヒストリー・ティーザー」のように、第二次世界大戦時のソ連軍がハンガリーに侵攻していくようなシーンを見るとき、アメリカ人である私たちは、ソ連の側に立っているのよ。私たちは同盟国だったから。


でも、あのヘリコプターのシーンに特に言えることだけど、見ている私たちは、ソビエト(連合国)軍の脅威にさらされている、ハンガリー(枢軸国)の人々に共感しているでしょう。「善」なのか「悪」なのか、わからなくなっているってことよね!あなたも言っていたように、第二次世界大戦後ソ連は、反対勢力や反乱を残虐な方法で抑圧し、何十年もの間ハンガリーを占領していた。私たちの「善」や「悪」という単純な考え方は、ものごとをさらに混乱させているのよ。


それは、マイケル・ジャクソンというアメリカ人が、このショートフィルムをハンガリーという場所で、第二次世界大戦のイメージを使って撮ったことの大きな理由であり、興味深い点でもあるわね。あの戦争では、ハンガリーの人たちはアメリカ人の敵で、ソ連は味方だったけど、このショートフィルムではそんな感じがしない。つまり彼は、私たちの認識や感じ方をまるっきりひっくり返している訳ね。



エレノア:うーん・・・ウィラ、そこが微妙なところなんだけど、私はMJのことをアメリカ人としてというよりも、世界市民というふうに見ていて、「ヒストリー・ティーザー」の舞台も、第二次世界大戦ではなく1994年だと思うのね。でも、1994年、その少し前に消滅していたソビエト連邦は、ハンガリー人からも、アメリカ人からも敵と見られていた。だから、MJがブダペストで、そういった兵士たちを導いているとしたら、すごく奇妙で、わかりにくいことになるのよね。あなたは本当にあれが第二次世界大戦を舞台にしていると思う?



ウィラ:いい質問ね、エレノア。手短に言えばノーだけど、リーフェンシュタール的な映像やその他の歴史的事実を思い起こさせる要素を考えれば、そう単純には答えられないわね。


私は、「ヒストリー・ティーザー」の舞台は現代だけれど、過去を強く思い起こさせる現代だと思っていて、そこには、終始、第二次世界大戦やソビエト支配の影響があって、現在と過去が二重写しになっている感じよね。『意志の勝利』や『独裁者』に出てくる長い隊列や、背景にある権力者のための記念碑という過去が、現代の服装をした群衆たちと共に存在している。だから、第二次世界大戦でソ連や、間接的にアメリカとも戦ったハンガリーと、戦後数十年にわたってソビエトの占領下に置かれたハンガリーがあり、それらが、このショートフィルムが作られた1994年のハンガリーに、亡霊のように存在している、と、思うんだけど、どう思う?



エレノア:私は、未だにソビエト支配のトラウマに苦しみ、映画であっても、ソ連の制服を着るのはいやだと思うような人々の国だから、撮影に使われたのだと思うのね。だから、ヘリコプターが画面に現れると、それはすぐに占領の記憶と結びついて、恐怖感をもたらす。1994年は、ハンガリーの人々は枢軸国の市民ではなく、彼らは、まだ自由になったばかりで、ロシア人のことを信用するどころか、信用するふりをする必要もなかった。そして、ここに出てくる観衆たちは、アメリカ人である必要もないと思う。



ウィラ:そうね。私が、一人のアメリカ人がこれを作ったのが興味深いと言ったのは、そういうこともあるのよね。つまり、アメリカ人にありがちな見方をしていない、ということ。むしろ正反対。だって、ソビエトの軍隊を率いるアメリカ人なんて見たことがある? そんなの一度だって見たことがない。絶対にありえないわよね。これも、あなたが言っていた、相反するイメージの並列よね。彼らは「悪」で、私たちは「善」。そういった従来の見方からすれば、どうしてMJは、ソ連の兵隊といるのか?ということになる。感情的、心理的にも、これをアメリカの観客が、どうとらえるかというのは、すごく興味深いんだけど、でも、それはアメリカ人だけの問題ではないと思うのね。


それに、彼がここでやっていることは本当に複雑で、理解するのが難しいということは白状しておかなくてはね。私は未だに悪戦苦闘している感じ。



エレノア:無理もないわ。マイケル・ジャクソンは「ヒストリー」で、この上なく、(またこの言葉使ってしまうけど)複雑な任務を引きうけていて、ものすごい量の情報を一本のショートフィルムのなかに詰め込んであるんだから。でも、私たちはこの作品をよりよく理解するために長い道のりを歩いてきたって感じるわ。



ウィラ:私もよ。



エレノア:それと、あなたが第二次世界大戦について言ったことに戻るんだけど、私も「ヒストリー・ティーザー」でのヘリコプターシーンは、ベトナム戦争を連想させるためだけではなく、もっと何年も前に起こった戦い、ハンガリーがアメリカの敵だったときの戦いの記憶にも重ねて創られていると思う。MJが言っているのは、誰が権力の座につこうと、分断して統治するという原則に基づいた権力構造は、決して正義をもたらさず、不正義が継続するのを許すだけであるということ。そして、戦争は決して平和をもたらさず、さらなる戦争をもたらすだけだということ。プレイヤーが変わっても、パターンは同じ。誰が「善」で、誰が「悪」なのか、解釈は絶え間なく変わり、戦争における倫理は疑問だらけ。


それは、前回のチャップリンの議論で、第二次世界大戦時に反ファシストの立場だった人(つまり「善」)が、それからたった数年後の冷戦時代には、共産主義者(「悪」)と呼ばれることになった、というのにも当てはまる。


だから、この絶え間ない状況の変化というテーマから考えても、ブダペストは「ヒストリー・ティーザー」の舞台にぴったりだった。



ウィラ:私も、そう思うわ。



エレノア:そして、ハンガリーは1994年の時点では平和だったけど、世界はそうではなかった。実際、さほど離れていないボスニアでは、非常に残忍な戦争が進行中だった。



ウィラ:そうだったわね。それについては考えてなかったわ。



エレノア:それは、本当に複雑で、何が本当なのか、私にはまったく理解できない戦争だった。


でも、「ヒストリー・ティーザー」では、ヘリコプターの登場は、軍事攻撃開始のではなく、祝福の合図だということがすぐに明らかになる。新しいヒーローを讃える彫像の除幕式を祝うためだったのよね。そして、そのヒーローの任務は、私たちを、終わりの見えないこのサイクルから救い出すこと。


ただね、ウィラ、これ以上の隠された意図については、私にはわからない。映像だけでなく、サウンドトラックにも大きなヒントを見つけられたけど、それでも、なにか大きなものを見落としているような気がする。



ウィラ:私もそう思う。像の序幕に流れる音楽がどこから来たものなのか、探ってみたんだけど、まだ突き止められない。でも、あなたと同じように、そこがすごく重要な気はするのね。『レッド・オクトーバーを追え』のサウンドトラックに入っている曲かも知れないと思って全部聴いてみたけど(→YouTube)、ぴったり合う旋律は見つけられなかった。マイケルが好きで、デンジャラス・ツアーでも使った「カルミナ・ブラーナ」の一節かとも思って、YouTubeで聴いてみたけど(オープニングの「O Fortune」はMJファンにはおなじみね)、そうではなかった。アルバム「ヒストリー」ではなく、プロモーション・フィルムの歌に関するクレジットを探し出して、色々調べて、あの曲の編曲者かも知れない人にメールもした。それでもまだ突き止められていないの。


そんなわけで、この音楽が重要だとは思うんだけど、私もよくわからないのよね。『レッド・オクトーバーを追え』からのような気もするけど、ベイジル・ポールドゥリスの他の曲かも知れない。彼の作品っぽいものね。でもはっきりわからない。



エレノア:それについては、今わかる範囲で考えるしかないわね。



最後のシーンは、未来SF的な雰囲気を持っていて、建築面でも、歴史的な部分でも、映画的な表現においても、過去に支配されている前半部分とはまったく異なっているわよね。それと、「ヒストリー・ティーザー」では、CGIを使って、英雄広場をまったく違った姿にしている。夜のシーンになる前、千年記念碑の一部である高い円柱が広場の真ん中から取り去られ、違う形になっていることに、私たちは気づく。



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ウィラ:それは重要なディテールよね。あの千年記念碑の高い円柱の頂上には大天使がいるのだけれど、私たちが「ヒストリー」で見る、デジタル処理された英雄広場では、長い中央通りの両側に大天使たちがいるのよね。このシーンで見られるとおり。



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stephensonが数週間前のコメントで指摘してくれたとおり、マイケルと大天使ミカエルとの象徴的なつながりを考えると、このシーンはとても重要ね。Stephensonは「大天使ミカエルの、聖書や伝説における、神の天使軍のリーダーとしての役割」について述べてくれて、これが「ヒストリー」の「マイケル(=ミカエル)」が軍を率いているシーンを解釈するもうひとつの方法なのでは、と言ってくれた(*1)そう考えると、大天使を戴いた円柱がいくつも並んでいる画面は、重要なシーンに思えるわね。



エレノア:そうね。MJの像が、大天使の羽の向こうに見える場面があって(映像の2:29)、この大天使が、ガブリエルだということは確かなんだけど(*2)、ただ、大天使ガブリエルは、ハンガリーの伝説では、最初のハンガリー王である聖イシュトヴァーン(イシュトヴァーン1世)に、王冠を授けたということが重要で(*3)、だから、ガブリエルが千年記念碑の頂上に位置しているというのは、ハンガリー人の歴史を考えると、深い意味を持っているのね。



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ガブリエルと円柱の下の部分が象徴しているものが、英雄広場の中央から消えているというのは、帝国主義的なメッセージを排除を意味していて、それは、「ヒストリー」の反帝国主義のメッセージと合致するのよね。




でも、あなたが指摘したように、大天使ガブリエルを頂く円柱は、映像から取り除かれたわけではなく、CGによってコピーされて、中央通りに並ぶ形になっている。それは、ガブリエルは、ハンガリーの伝説だけでなく、神の言葉を伝える天使として、広く世界に知られていて、物語の始まりと終わりに欠かせない存在だからなのよね。



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ウィラ:その解釈はすごいわね、エレノア。なにかとても大きなことが明らかになろうとしている、文字通りの意味でも、象徴的にも。



エレノア:千年記念碑のある英雄広場の中央に、巨大な像が、包まれ縛られた状態で立っている。群衆のムードは祝祭から期待へと変わっていく。撮影用の強力な照明が点いて、その像と一人の男を照らす。男は兵服に身を包み、像の外側に取り付けられた爆発装置をセットしている。人々の期待は不安に変わっていく。どうなるのだろう?彼は像を爆破しようとしているのだろうか?


男が、像から降りて退避すると、威厳のある老人(帝国の過去を象徴する)が、軍の司令官(軍の権威を象徴する)に合図を送り、彼は、メガネを照準器風レンズ(軍のテクノロジーを象徴している)で覆い、像に照準を合わせると、起爆装置担当の男(帝国や軍の命令を遂行する人間を象徴している)に最終命令を出し、その男がレバーを押して、爆発(軍の攻撃を象徴する)を起こす。


像は無事で、人々はみな安堵する。劇的に飛び散ったのは縛り縄で、像を覆っていた幕はゆっくりと波打ちながら地面に落ち、これ以上なく高くそびえる、マイケル・ジャクソンの彫像が露わになる。この像は、その人格と芸術を通して、つぎつぎと戦争を引き起こすような思考を生み出してきた古い神話を打ち砕く、ひとりの男に捧げられた記念碑で、彼の芸術、彼の遺産を表現している。


彼の芸術は、私たちを、敵対ではなく、協働に向かわせるという新しい力を放出し、武力ではなく、芸術の力で新しい世代を導く。この像は新しい千年紀の記念碑で、人々がお互いを恐れつつ暮らす必要などない国際社会を作るように促すのよ。



ウィラ:このシーンの解釈として、素晴らしいものね。あなたと同じく私も、新しく中央に立った像が、政治家や軍人や指導者ではなく芸術家を称えるものであり、新しいイデオロギー、新しい世界秩序の創生を意味している、という点は特に重要だと思う。あなたが言うように、「武力ではなく、芸術の力で」ね。



エレノア:そして、この最後の場面では、帝国に関わるすべてのシンボルを、芸術に取り入れ、それを芸術的目的に使う、という状態を提示している。テクノロジーを、人々を鎖につないでおく手段から、人々を解放する手段へと、戦争ではなく、平和のための装置へと変化させている。


テクノロジーは、芸術作品の製作に貢献し、世界のあらゆる場所に届けることもできる。だから「ヒストリー・ティーザー」でテクノロジーが、マイケル・ジャクソンの芸術的遺産を表す像を出現させるのに使われたというのは、理にかなっていると思う。そして、それで思い出すのは、チャーリー・チャップリンが、『独裁者』の最後のスピーチで、テクノロジーに注目し、人々を分断するものではなく、統一するものとして注目していたということ。



「飛行機やラジオは、私たちを近づける。こういった発明の本質は、人々の良心に呼びかけることだ。私たちみんなが普遍的な人類愛でひとつになろうと呼びかけるのだ」
「あなた方人々は、力を持っている、その力は機械を創造し、幸福も創造する。あなた方人々は、この人生を素晴らしい冒険にし、自由で美しくする力もある」
民主主義の名のもとに、この力を使い、団結しよう。新しい世界のために、働く機会が平等に与えられる世界のために戦おう。〜チャップリンのスピーチ



ウィラ:チャップリンのスピーチに再び触れてくれて、ありがとう。このスピーチは、多くの点で「ヒストリー」の青写真よね。そしてあなたの言うとおり、チャップリンは、テクノロジーの持つ、悪ではなく善の力についてかなり話しているわね。テクノロジーは戦争だけではなく平和にも、人を分断するのではなくひとつにするのにも、使えるのだと。



エレノア:最新鋭のテクノロジーを使った爆破装置がセットされ、スイッチが押されると、像が縛りから解き放たれたのと同じように、テクノロジーは、世界を癒やすために、芸術の大きな力を放出する。


彫像が公開されると、ヘリコプターは、トンボのようにブンブンそのまわりを飛び交い、群衆は歓喜の叫びを爆発させ、花火が打ち上がる。


「ヒストリー・ティーザー」の最終場面のカメラは、像の顔の部分をとらえ、その考え込んでいるような表情を映している。それは、マイケル・ジャクソンの顔にもよく見られた表情ね。彼は、私たちが運命を変えられると知っている。でも、手遅れになる前にそれが出来るだろうかと懸念もしているのよ。



ウィラ:それは、彼が繰り返し、様々な方法で問うてきた、極めて大きな疑問よね。彼が『This Is It』の「Earth Song」の部分で言っている言葉や、映画の終わり近くで彼が、他のミュージシャンやダンサーたちに「自分のすべてを捧げよう」と奨励していたことも、思い出すわね。


みんなに愛の大切さを思い出させて、世界に愛を取り戻すんだ。愛が重要だってこと、互いに愛しあうこと。僕らはひとつ、それを伝えよう。そして地球を大切にすること。4年間で、僕たちが犯した傷を直すんだ。(→全文)


彼がそう言ってから、4年以上が経ってしまったわね…・



ウィラ:エレノア、参加してくれてありがとう!「ヒストリー・ティーザー」についての3回の記事で、私たち本当にたくさんのことを話し合ったわね。この複雑で、理解の難しいショート・フィルムについて、あなたが共有してくれたすべての情報や考察に、心から感謝しています。あなたのおかげで、この作品の見方や理解のし方について、目から鱗が落ちた思いがするわ。あなたは私たちに、すごくたくさんのことを考えさせてくれた。



エレノア:ありがとう、ウィラ。「ヒストリー」の謎を一緒に掘り下げていく機会をあたえてくれて。あなたも、読者の皆さんも、楽しい感謝祭を過ごしてくださるように。私は、マイケルと彼の音楽に、特別な感謝を捧げるわ。



ウィラ:ありがとう。あなたも、楽しい感謝祭を。


(会話終了)


ふたりの会話はこれで終了ですが、HIStoryを終えることはまだ出来ません。会話への補足記事も書く予定ですが、その前に、会話に登場した「HIStory」という曲についての記事を紹介します。


◎「HIStory」に込められた歴史に続く



註)________


(*1)Stephensonの記事は読んでいませんが、このあと、私なりの解説で、それについても言及したいと思います。→「HIStoryと黙示録」


(*2)ガブリエルはキリスト教の伝統の中で「神のメッセンジャー」という役割を担っていて、『ルカによる福音書』では祭司ザカリアのもとにあらわれて洗礼者ヨハネの誕生を告げ、マリアにはイエス・キリストの誕生を告げた。旧約聖書の『ダニエル書』では、預言者ダニエルの幻の中に現れ、『ヨハネの黙示録』では、名前は出ないものの、ヨハネに神のことばを告げたのは、伝統的にガブリエルであると考えられています。


また、ユダヤの伝承『タルムード』では、太祖ヨセフに道を示して、モーセの遺体を運び、イスラム教では、ガブリエル(ジブリール)は預言者ムハンマドに神の言葉である『クルアーン』を伝えるなど、一神教のすべての宗教で、神の言葉を伝える天使として、知られています。


(*3)聖イシュトヴァーンの王冠の正面には、「Christ Pantokrator(全能のキリスト、イエス・キリストの別名)」が刻まれ、イエスの左右には、大天使ミカエルとガブリエルが描かれている。


https://ja.wikipedia.org/wiki/聖イシュトヴァーンの王冠






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by yomodalite | 2015-12-28 06:00 | ☆MJアカデミア | Trackback | Comments(0)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


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