HIStory Teaser, Part 3「新たなヒーロー像」③

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ウィラ:それは本当に重要なポイントね。それでもうひとつ、そういった繋がりを思い出したんだけど、『ターミネーター2』と『レッド・オクトーバーを追え』と「ヒストリー・ティーザー」、実は『独裁者』もそうなんだけど、これらはすべて、新しいタイプのヒーローを中心にした作品だということ。『ターミネーター2』のヒーローはジョン・コナーでもサラ・コナーでもない。二人とも勇敢だけど、ヒーローはターミネーターという、人の命を守るためにプログラムし直された、暗殺サイボーグなのよ。型にはまらないヒーロー像について話をしなくてはね!


ある意味では、『レッド・オクトーバーを追え』はより型破りと言えるわよね。そこには二人のヒーローがいる。ソ連の原子力潜水艦の艦長とCIAのアメリカ海軍分析官。艦長は亡命し、新しいテクノロジーを西側と共有するのを望んでいるんだけど、ソ連首脳部はこれに気づき、敵の手に渡すくらいなら彼の潜水艦を沈めてしまえと、海軍に命令を出す。そして合衆国上層部に、艦長はならず者で危険人物だと伝え、アメリカ軍に潜水艦を攻撃するように要請する。これはたいていのアメリカ人なら喜んでやりそうな任務よね。



エレノア:「ならず者で危険人物」というのは「武装した危険人物」と似てるわよね! 『ターミネーター2』でサラとジョンとターミネーターが、コンピューター会社を爆破することで、スカイネットを破壊し、迫り来る核のホロコーストを未然に防ぐシーンを思い出したわ。警察は、彼らが「武装した危険人物」だと警戒する。でも、どちらかと言えば、完全武装して、ターミネーターを破壊しに行っている警察の方が危険なのよ。『レッド・オクトーバーを追え』のプロットでもそうだけど、もし「善(アメリカ軍とか警察)」が「悪(ロシアの潜水艦艦長とかターミネーター)」を殺していたら、それで終わりよね。だから、マイケル・ジャクソンが言っているのは、「彼らは僕を指さして、怖がったり、危険人物だと言っている。僕はただ地球を癒やして、僕たちが生き方を変えなければやって来てしまう悲惨な結果を、避けようとしているだけなのに」ということ。



ウィラ:たしかに。どちらの作品も、「善」と「悪」に対する従来の考え方に、大きく挑戦しているわよね。両方とも、従来の「悪」が最終的にはヒーローになる。


さらに通常と違うのは、『レッド・オクトーバーを追え』という映画では、まったく違った境遇の人の身になって考えてみることや、想像力を働かせて世界を見ることで、最終的に他者への共感がおこること。通常のアクション・アドベンチャー映画では、他者への共感に重きが置かれることはない。でも『レッド・オクトーバーを追え』では、それが物語の核になっている。CIAの分析官は、艦長のことを調べ、一度顔を合わせてもいて、彼を理解し、彼が何を大事にしているかも理解している。もっと重要なのは、分析官は人の身になって考える性格で、自分を艦長の立場に置き、艦長がどのような動機で、何をしようとしているかを理解する。このずば抜けた共感力で、彼は艦長の行動に対して、他の人たちとはまったく違う解釈をする。攻撃しようとしているのではなく、援助しようとしているのだと。



エレノア:サラとジョンがターミネーターを理解したこと。そして、マイケル・ジャクソンのファンがMJを理解し、今も理解しようとしているのと同じね。



ウィラ:確かにそうね。マイケル・ジャクソンのファンたちは、彼のことを、一般的な人たちとは非常に違った目で見ている。なぜなら、私たちは、彼に共感し、彼の視線でものを見るから。それはいい点よね。


とにかく、『レッド・オクトーバーを追え』では、非常に異なる文化圏のまったく違う二人の男が、両方とも、従来の常識や指導者たちを否定する。心情の違いを大きく飛び越えて、大西洋の中立地域で会い、相互理解に至る。だから、彼らをヒーローにしたのは、戦いにおいての行動ではなく、むしろ共感して、理解することや、自分とまったく異なる誰かを信用する勇気と、戦争を避ける知恵なのよね。それはまさに、チャーリー・チャップリンが『独裁者』の最後、パワフルで感動的な演説で訴えていたこと。そしてもちろん『独裁者』も、通常とは違うヒーローを登場させた映画よね。自分の意志に反して世の注目を浴びる場所に押し出されてしまった、シャイで心優しい床屋が、その立場を使ってファシズムを批判し、戦争を避けようとするのだから。


そう考えると、他者への感情移入は、私たちが「ヒストリー・ティーザー」を理解する際にも深く影響があったと言えるわね。 この作品は、一見すると怖くて不気味な感じで、誇大妄想の産物のように見える。「ポップシンガーが、かつてないほど厚顔無恥に、空虚な栄光に彩られた自己神格化を大真面目にやった例」だと、ダイアン・ソーヤーが批評家の言葉を借りて言ったようにね。でも、「ヒストリー・ティーザー」が作られた前年の1993年に彼に起こったことや、彼がキャリアを通して成し遂げようとしたことを、マイケル・ジャクソンの側に立って考え、この作品が創られているときから続いていることを、細部まで注意深く観察して見てみれば、私たちも、冒頭のエスペラント語の意味や、その後のロシア語の歌詞の意味、『独裁者』や『意志の勝利』やその他の映画が反映されていることに気づいて、『レッド・オクトーバーを追え』のCIA分析官と同じように、違った解釈が出来るようになる。



エレノア:まったくその通り。マイケル・ジャクソンについてあらゆることを学んで、何が彼を動かしていたかについて、私が確信しているのは、彼は、私たち人間が、自分たちを救うために必要な変化を成し遂げる能力を持っていると信じていたということね。争い合い、地球から文化を奪い取るというパターンに、救いようがないほど囚われているわけではない、と。


『ターミネーター2』でジョン・コナーと母親とターミネーターは、これ以上存在し続ければホロコーストを引き起こすことになるコンピューター・テクノロジーを破壊するんだけど、その直前、ジョンはこう言うのよ。「未来は書かれていない。運命なんてものはない。それは、私たち自身で作るものだ」 これは、もちろんマイケル・ジャクソンが「ヒストリー」という曲に込めたメッセージよね。



Every day create your history

Every path you take you’re leaving your legacy ….

All nations sing

Let’s harmonize all around the world


毎日、あなたの歴史が創られる

どんな道に進んでも、人は何かを残していく

すべての国々が歌う

そのハーモニーを世界中に響かせよう



どの歌でも、マイケル・ジャクソンは、世界のハーモニーを導く変化、というテーマに戻っていく。彼は人間は自分自身を変え、自分たちの歴史を作り、過去で未来を縛ることを拒否する力を持っている、と信じていた。



ウィラ:そうね。この考え方は、彼の生き方や仕事を貫くものだった。たぶん80年代前半に書かれたと思うんだけど、「Much Too Soon」でも、彼はこんな風に言っている。



I hope to make a change now for the better

Never letting fate control my soul


さあ、より良い方向へ変わろう

決して運命に魂を左右されずに



そして、死の前日か前々日に撮られたThis Is Itの「Earth Song」の場面でも、彼はこう言ってる。



The time has come. This is it. People are always saying, “They’ll take care of it. The government’ll … Don’t worry, they’ll …” They who? It starts with us. It’s us, or else it’ll never be done.


時は来てる。今しかないんだ。みんないつも言うよね。「誰かがやってくれる。政府がやってくれる。心配しなくても、誰かが…」って。誰か、って誰? 自分から始めなきゃ。自分から。じゃなきゃ、なにも始まらないんだ。


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(DVDでは、1:28:44〜)


人生の最後の瞬間までずっと、彼は、私たちの運命は私たちの手にあるんだ、自分で歴史を作るんだ、そして「世界を癒やそう」、とみんなを励まし続けていたのよね。



エレノア:彼は音楽をその変化をもたらすための手段だと考えていたのよね。私たちの感情に訴える力があるんだと。実を言うとね、ウィラ、人間の性質や私たちの選択を変えることも、私たちが新たな道に向かうという望みも、マイケル・ジャクソンと彼の音楽の力に対する強い信頼がなければ、私はいまごろすべての望みを失っていたかも知れない。


私は、マイケル・ジャクソン自身が、新しいタイプの人間像を体現していたと思うのね。完全なる人間の形、戦争ではなく、平和を呼びかける新しい種類のヒーローを。あの彫像と、作り変えられたサイボーグを結びつけることで、「ヒストリー・ティーザー」は、マイケル・ジャクソンこそが革命だと言っている。でも、それは心の内にあるもので、思考や感性、特に、感性に革命を起こすことで、武力行動ではない。そして、彼は、私たちの心に触れ、共感力を養うために、あなたが変化をもたらすための手段だという芸術の力を深く信じていた。(④に続く)






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by yomodalite | 2015-12-23 06:00 | ☆MJアカデミア | Trackback | Comments(0)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


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