映画「FOUJITA」主演:オダギリジョー、監督:小栗康平

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画家、藤田嗣治の波乱の生涯を描いた、小栗康平監督の10年ぶりの映画。

1920年代のパリで、知らぬ者がいないと言われるほど成功した様子も、敗戦後、戦争画を描いたことで戦争責任を問われ、再びフランスに渡ることになった経緯も、5度の結婚から想像されるような華やかな女性関係も、そして、藤田の人生の背後にいつもあった戦争の悲惨さについても、十分な描写とは言えないのだけれど、フランスと日本の風景は、両方とも静謐で美しく、そしてある意味退屈で、ときどき幻想的なシーンが現れる。

まったくの想像だけど、監督は、藤田に特別な興味があって、この映画を創ろうとしたのではなく、たまたま(おそらく、フランス側の要望で)撮ることになった藤田を通して、芸術家の生き方を考えながら、探り探り、この映画を撮ったのではないだろうか。

主演のオダギリジョーは、NHK「SWITCHインタビュー」で、舘鼻則孝と対談したとき、「技術と感性のバランスって難しくないですか?」と聞いていたのが印象的だったのだけど、小栗監督もなにか、まとめることを拒むようなセンスで、この映画を創ったような・・・小栗作品を観るのはこれが初めてなので、なんとなく、そう思っただけなのだけど。

フランスついて、今の私は、「無神論の国」というイメージが一番先にくるのだけど、そのせいなのか、この映画の藤田嗣治が、芸術の都を謳歌した狂乱の時代のパリに受け入れられ、帰国後の日本で、戦争画を描き、再びフランスに戻って、カトリックの洗礼を受けた。ということが、モンパルナス、セーヌ川・・自由の国フランス!とだけ思っていたときよりも、自分にはしっくりと感じられた。

カトリックの国の「無神論」はわかりやすい。

教会も、彫刻も、フレスコ画も、石で出来ていて、何百年も遺されている。

そして、対比が明確なものは、光と影のように一対でもある。

浮世絵などの日本文化や、藤田がフランスで高く評価されたのも、フランスが、カトリックの「無神論」だったからで、アメリカにあるプロテスタントの「無神論」ではありえなかった。

エンディングでは、いくぶん唐突に、藤田の礼拝堂(ノートルダム・ド・ラ・ペ教会)が映る。

私には、藤田が描いた晩年の宗教画は、モンパルナスで大成功した時代の絵よりも美しく見えるのだけど、小栗監督は、それを最後に見せながらも、少し迷いながら撮っているように感じた。でも、それもこの映画を美しくしている点だったのかもしれない。


そんな風に感じながら、映画を観ていたのだけど、家に帰ってこれを書いているうちに、

前述の番組で、「藤田の顔は真似しやすいですよね。誰でも似せられるというか、そんなところも藤田は、考えていたんじゃないですかね」と、オダギリジョーが言っていたことを思い出した。

藤田は、モンパルナス時代、その絵が評価されただけでなく、フランス語の綴り「Foujita」から「FouFou(フランス語でお調子者の意)」と呼ばれて親しまれていたのだけど、そういえば、藤田のルックスは、三バカ大将のモーの髪型と、チャップリンとヒトラーのチョビ髭と、ハロルド・ロイドの丸メガネがすべてミックスされている。



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でも、この4人の中で一番年上なのは、藤田で、その名が知られるようになったのも彼らより後ではなかったのだ。

( )内は誕生日

藤田嗣治(1886年11月27日)
1917年頃に初めて絵が売れ、3か月後に初めての個展を開く。この最初の個展で、著名な美術評論家が序文を書き、高値で売れるようになる。翌1918年の終戦によって、さらに名声が高まり、1925年にはフランスからレジオン・ドヌール勲章、ベルギーからレオポルド勲章を贈られた。

ヒトラー(1889年4月20日)
1923年にミュンヘン一揆の首謀者となり、一時投獄されるも、出獄後合法的な選挙により勢力を拡大した。1933年にドイツ国首相

チャップリン(1889年4月16日)
1909年、パリ巡業。1910年、寸劇『スケート』や『ワウワウ』に主演し好評を博す。1918年、ハリウッドに自身の撮影スタジオを設け、年間100万ドル超の契約を結び、名実ともに世界的ビッグスターとなる。

ハロルド・ロイド(1893年4月20日) 
1917年、『ロイドの野球Over the Fence』で初めて眼鏡キャラクター"The Boy"になった。

三バカ大将のモー(1897年6月19日)
モー、ラリー、カーリーによる三バカ大将は、1934年にコロンビア映画と専属契約を結び、「三ばか大将」をメインタイトルに頂く短編シリーズが始まる。子役出身のモーは、このメンバーに固まる前の1920年代初頭から活躍している。


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by yomodalite | 2015-12-03 10:22 | 映画・マンガ・TV | Trackback(1) | Comments(0)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


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