チャップリンとヒトラー メディアとイメージの世界大戦/大野裕之

チャップリンとヒトラー――メディアとイメージの世界大戦

大野 裕之/岩波書店



(本書は、マイケルが実際に読んだ本ではありませんが、この著者と同様に、熱心なチャップリン研究者だったマイケルは、これと同様の内容を読んでいたと思われるので、「マイケルの愛読書」に分類しました。)

こちらは、「ヒストリー・ティーザー」に関する会話を、訳しているときに発見した本なのですが、これまで『独裁者』という映画に、あまり感動できなかった人、また、マイケルのチャップリンを尊敬する気持ちをより深く知りたい人に、超おすすめします!

「同じチョビ髭を持ちながら極めて対照的な生涯を歩んだ二人の天才は、わずか4日ちがいで生まれたという偶然性から、ともに芸術家を志したという共通点、あるいはショーペンハウアーの読者だったというトリヴィアに至るまで、話題には事欠かない。しかし、本書は二人の伝記ではない。本書は、チャップリンとヒトラーの〈闘い〉を描く。」(第1章「チャップリンの髭、ヒトラーの髭」より)

と、著者が語るこの本は、チャップリン研究家として、国際的にも活躍されている大野裕之氏が、今年(2015年)出版した本。

1974年生まれの著者は、脚本家・映画プロデューサー・演出家・作曲家・俳優・映画研究者・振付師・・と、まさにチャップリンを学んだことから、人生を歩まれているような方で、


ここ5年間、チャップリンとヒトラーとの闘いを追ってきました。チャップリン家の資料をひもとき、草稿や日誌,当時の新聞記事を読み込みました。チャップリンに対してのナチスからの度重なる妨害の記録を読んで心が重たくなり,一般人からの脅迫の手紙に心底恐怖を感じました。そんな中でも、「今こそヒトラーを笑い飛ばすべきだ」と信念を貫いたチャップリンから喜劇の役割というものを教わりました。 
この研究は本当に辛い作業でした。1万ページ以上ある資料と格闘するのが辛かったのではありません。ナチスの妨害だけでなく、母国のイギリスからも本国アメリカからも製作中止を求められ、会社の身内からも反対される。当時のアメリカはほぼ親ナチス国で、マスコミも手を替え品を替え妨害する… かたやナチスは戦争へと突き進んでいく。誰も味方になってくれない状態で、チャップリンはたった一人で闘い続ける。そんな最悪の状況を、生々しい資料で追いかけるのは本当に辛かったのです。どんな人でもあの状況では途中で製作をやめていると思いました。それゆえに、ついに1939年9月9日付けの制作日誌で、本日撮影開始、の文字を見たとき、資料庫で一人で手を叩いてしまいました。すごい!これはすごい!ほんまに撮影が始まったんや! 
チャップリンは、創造の秘密を明らかにしなかった秘密主義者でもありました。明らかにしなかった理由は想像つきます。とくに『独裁者』に関しては苦闘よりも死闘と呼ぶにふさわしい。語りたくもなかったのでしょう。でも、その闘いの様子を知ることは、現代社会に多くのことを教えてくれます。 資料の解析に時間をかけたことで、脱稿は遅れに遅れました。しかし、結果、戦後の70年の夏に出版することになったのは、偶然とはいえ、意味があったのかもしれません。
「メディア」という戦場で「イメージ」を武器に闘った二人の話は,過去のこととは思えないほど,21世紀の〈世界大戦〉を先取りしていて,今まさに現在進行形の話です。

読む前は、ヒトラーという、これまでメディアに散々描かれ、今も描かれ続けている人物をテーマにしていることも、また、『独裁者』という映画の批判にも称賛にも、ちょっぴり食傷気分を感じていた私ですが、読み始めてしばらくすると、この映画ができるまでの、本当に命がけの展開に目が離せなくなり、史実として知っていた事実に感情がともなわれ、著者が「今まさに現在進行形」だと言われることに大いに共感しました。

このブログを見てくださっている方なら、本書の副題、「メディアとイメージの世界大戦」を、『HIStory』や、マイケル・ジャクソン自身と重ねてみない人はいないでしょう。

マイケルが生涯尊敬して止まなかったチャップリンを、私たちが今知るために、大野氏が描いたこの本ほど素晴らしい本はないと思います。

エレノアや、ウィラが言っていた、

『意志の勝利』が作られた1934年から『独裁者』が作られた1940年のあいだに、とても多くのことが起こった。そして、1940年から第二次世界大戦の終わりに起こったことによって、それらの映画の意味や重要性も変わった。

ということや、

第二次世界大戦で明らかになったことは、『独裁者』に対する私たちの感じ方を変え、『意志の勝利』への見方も180度変えたということ。
(マイケルは、)『独裁者』がチャップリンへの世論を変えるのにどれだけ影響があったか、確実にわかっていたはず。

ということが実感できるだけでなく、

私には、マイケルが長年の夢だった映画を創ることができなかった理由についても、わかるような気がしました。

これを読み終わったあとの『HIStory』には、新たな発見がきっとあるはず・・・



☆サントリー学芸賞受賞!!!


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by yomodalite | 2015-12-02 06:00 | ☆マイケルの愛読書 | Trackback | Comments(0)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


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