聞き出す力/吉田豪

聞き出す力

吉田 豪/日本文芸社

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本書は、『週刊漫画ゴラク』という、私たちのような女子(愛と平和と正義と謙虚な姿勢が大好きで、地球にも優しい… と自分では思っている)がまず手に取ることのない、というか、売り場の近くに行くことすら躊躇うほど、これでもかと巨乳を強調した女が表紙に描かれていそうな(知らないけどきっとそうに違いないw)「下品な雑誌(いい意味でww)」の連載をまとめて、2014年の暮れに出版されたもの。

吉田氏は「あとがき」で、書き下ろしの単行本企画をすべて断っていて、大ベストセラーの『聞く力』(阿川佐和子著)の便乗本を出して欲しいというオファーが殺到したときも、全部スルーしたのに、ブームに一足も二足も遅れて、ここまで全力で便乗した本を出すことになったのは、『漫画ゴラク』イズムに他ならないと、述べられ、

そして、「どうせ便乗するなら表紙のデザインには「ミナミの帝王」や「白竜」的な黒社会テイストを微妙に混ぜて、これは黒い連中が便乗したんだったらしょうがないと思わせる手口です!」と、その手の内を明かしただけでなく、「読んだ人が『人の話を聞くための実用書じゃなくて、インタビューの面白エピソード集じゃん!』という意見も、黒社会テイストで潰していきます!嘘です!」と素人レヴュワーが言いそうなことへのフォローも欠かさない。

いまどきの新書って、実際の内容よりも、目次づくりに叡智が詰まっているものが多いんですが、本書の「騙しのテクニックww」にあふれた「目次」もとても素晴らしいもので、


第一章 「聞き出す力」の基本テクニック
相手を乗せるための技術

其の1  いい答えが返ってきたら、いいリアクションで返すこと
其の2  普通なら聞きにくい話にどれだけ踏み込むか
其の3  空気が悪くなるとしても、引かないところは絶対引くな
其の4  NGネタを相手のほうから話させる聞き出し方
其の5  心を開かれすぎず適度に突き放す、この距離感が大切
其の6  打ち合わせなしのガチンコインタビューの「つかみ」術
其の7  全く知らないエピソードを引き出すための「受け身」術
其の8  相手と意気投合するための「焦点」を見極めよ
其の9  タブーを恐れず取材相手の人間性に斬り込め
其の10 取材相手が話す内容に関してのジャッジは読者に委ねる気持ちで
其の11 答えを事前に予想しても意味なし。想定外の答えこそ
其の12 あえてリアクションしないことで、面白い話を引き出すこと
其の13 興味を持てない相手には愚痴から入れ! 重くても受け止める度量が必要 
其の14 あなたにとって○○とは……なんて質問は、上級者にのみ許される!!

第2章 「聞き出す力」の心構え
インタビューに臨むときのスタンスを固めよ

其の15 自分語りは話を引き出すための道具、記事では裏方に徹すべし
其の16 子供を取材するときは、こちらが怯えるくらいがちょうどいい
其の17 相手を好きにならなければ、インタビューはできないものである!!
其の18 些細なつながりを大事にすることでインタビューのチャンスが訪れる
其の19 直接会って話すまで、その人の本当の姿はわからない
其の20 八ッキリと現実を語ってもらい、それを受け止めること!!
其の21 直接話を聞けない相手の心境に想いを馳せることも時には大事
其の22 多感な中高生アイドルの取材には細心の注意を払うべし!?
其の23 インタビュー前の下調べはプロとして最低限の礼儀なのだ!!
其の24 下謀へをキッチリしてこそ「予定外の展開」が生み出される
其の25 ネットは使利たが過信は禁物。自分の足で探した情報を信用すへし!!
其の26 インタビューにはテクニック以前に一般常識が非常に大事
其の27 遠足同様、家に帰るまでが取材。取材以外の場所で相手との距離を詰めろ
其の28 インサイダー情報は、どう記事にするかではなく、どう便うかが重要
其の29 近いうちにインタビューする相手の悪口はなるべく言わないこと
其の30 インタビューで取材対象の人生が変わることも!だからといって萎縮は厳禁    

第3章 危機を回避する「聞き出す力」
不利な状況から面白い話を引き出すには

其の31 人と接する上でハードルは限界まで下げておけ
其の32 インタビューは取材後が勝負。無難にさせないための戦いに勝利すべし
其の33 どんなトラブルにも悠然と流れに身を任せる度胸を持つべし
其の34 知識が皆無な取材時には、話を上手く合わせて聞き出す余裕を持て
其の35 対面せずに取材するときにこそ常識や礼儀が大事
其の36 相手から怒られるくらいのことを聞く覚悟が必要
其の37 インタビューで重要な「話しやすい流れ」を作って本音を聞け
其の38 いついかなるときも、どんな場所でもインタビュアーは沈着冷静であれ        
其の39 最初は要注意人物と思われていても気にしなくて良い?

第4章「聞き出す力」応用自在
さまざまなケースに学ぶインタビュー術

其の40 無邪気さは、時には大いなる武器となる
其の41 話が合っても盛り上がるのは程々に。相手に信用されないほうが良し?
其の42 他のインタビュアーと同じ条件の中で違いを出すのが腕の見せ所
其の43 手強い相手に対する最終手段、それは気弱で素人なインタビュアー
其の44 インタビュアーもゴーストライターも「引き出す力」が重要なのは一緒
其の45 聞いてはいけない深い部分を引き出すのは諸刃の剣でもあることを心得よ
其の46 プロインタビュアーと名乗る以上、自分のスタイルは守り抜く
其の47 取材対象と会って終わりではなく始まりに過ぎないと心得るべし
其の48 インタビューにビビりは禁物。どんなに恐ろしい相手にも果敢に切り込め!!
其の49 相思相愛のインタビュー相手に出会ったときこそ油断は禁物!!
其の50 不自然なインタビュー記事はクレジットをチェックし、色々想像するべし

[特別付録]人間関係がうまくゆく魔法の潤滑剤「間く力」をいまこそ養おう
吉田豪 × 阿川佐和子 互いの聞くカに迫るI

[あとがき]

で、、こんな素敵な見出しに釣られて、内容を読んでみると、確かに本書は「人の話を聞くための実用書」ではないと言うことがわかります(笑)。でも、それが逆に、現在の「マニュアル本」や「自己啓発本」が、本当に実用的なのか?という疑問さえも呼び覚ますというか、

本当に役立つことって何なの?とさえ思えてくるんですね。

経済的になにが有利とか、健康には何がいいとか、美しくあるためにとか、幸せの基準とか、その他色々な信条や、宗教、イデオロギーや、政策とか、そういった自分が信じていることを基盤にして、物や、人を判断すると、優劣とか、善悪とか、敵と味方とか、好き嫌い、、が簡単に生まれてしまうわけですが、

本書は、「人から話を聞き出す」こと以上に、「直接会って話すまで、その人の本当の姿はわからない」とか、「興味をもてない相手に興味をもつ方法」といった、吉田氏の「The Art Of Loving」といった内容で、

一番重要なマニュアルは「幸せになれるか?」だとすれば、
素晴らしい実用書だといえると思いました。

当然のことですが、なべおさみ氏が長年ガマンしたことや、長渕剛のやり口(笑)とか、インタビューの面白エピソード集としても素敵な本で、私が一番好きなエピを一個だけ選ぶとすれば、2013年に最も衝撃を受けたのが「ユリイカ」で森川すいめいという精神科医が鬼束ちひろにしたインタヴューで、編集サイドは、精神面がヤバそうな鬼束をカウンセリング的に掘り下げようと考えたものの、真逆な展開に。。という「其の43」の記事かなぁ。。



それと、、あらためて、『漫画ゴラク』ってどんな雑誌なの?と検索してみたら、なんとあの『ミナミの帝王』を連載している雑誌だったことが判明。やっぱ、マイケルに絡んでた!(どこがだよw)




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by yomodalite | 2015-10-08 13:07 | 評論・インタヴュー | Trackback | Comments(0)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


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