和訳 THAT one IN THE MIRROR 『Dancing the Dream』[41]

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マイケル・ジャクソンが1992年に出版した『Dancing the Dream』から

THAT one IN THE MIRROR」の和訳です。


『Man In The Mirror』を聴いて、「自分を変えなくては」と思い、そのあと「どう変えればいいんだろう?」と思った人も多いのではないでしょうか。この詩は、マイケルが書いた歌詞ではないその曲を、彼がどういう気持ちで歌っていたかがよくわかる詩であり、


世界一の有名人として、主体と客体について、世界でもっとも考えたであろうマイケルが、自分と鏡について語った言葉だと思います。


間違いのご指摘や、ご意見・ご感想などは、いつでも大歓迎いたします。



THAT one IN THE MIRROR

鏡の中の男


I wanted to change the world, so I got up one morning and looked in the mirror. That one looking back said, “There is not much time left. The earth is wracked with pain. Children are starving. Nations(*1) remain divided by mistrust and hatred. Everywhere the air and water have been fouled almost beyond help. Do something!” That one in the mirror felt very angry and desperate. Everything looked like a mess, a tragedy, a disaster. I decided he must be right. Didn’t I feel terrible about these things, too, just like him? The planet was being used up and thrown away. Imagining earthly life just one generation from now made me feel panicky.


僕は世の中を変えたくて、それで、ある朝、起きて鏡をのぞいて見た。鏡に映った男は、僕を見返してこう言った。「もう残り時間はない。地球は痛みを感じるほど破壊され、子供たちは飢えている、そして、国々は、不信と憎しみで分断され、空気も水も汚れていて、もう手の施しようがない。何かしなくちゃ!」鏡の中の男は、すべてのものが、悲劇と災害によって混乱しているようだと、激しい怒りと絶望を感じていた。僕は、彼が言うとおりだと思った。僕だって、酷い状況だと思わなかったわけじゃない。彼と同じように考えていたじゃないか。この星は使い古され、捨てられそうになっている。地球の寿命はあと一世代なんじゃないかと想像するだけで、僕はパニックに陥りそうだった。


It was not hard to find the good people who wanted to solve the earth’s problems. As I listened to their solutions, I thought, “There is so much good will here, so much concern.” At night, before going to bed, that one in the mirror looked back at me seriously, “Now we’ll get somewhere,” he declared. “If everybody does their part.” But everybody didn’t do their part. Some did, but were they stopping the tide? Were pain,starvation, hatred, and pollution about to be solved? Wishing wouldn’t make it so ― I knew that.


地球の問題を解決したいと思っている素晴らしい人々を見つけることは難しくなかった。僕は彼らの解決策を聞いて思った。「ここにはたくさんの善意があって、多くの関心もある」と。その晩、ベッドに入る前、鏡の中の男は、真剣な顔で僕を見返して、「今になんとかなるよ」と断言した。「みんなが自分の役割を果たせばね。」しかし、誰もが自分の役割を果たさなかった。数人がやったところで、流れを止められるだろうか? 苦痛や、飢餓や、憎しみや、環境汚染が解決される? 願っただけではどうにもならない。それは僕にもわかることだった。


When I woke up the next morning, that one in the mirror looked confused. “Maybe it’s hopeless,” he whispered.. Then a sly look came into his eyes, and he shrugged. “But you and I will survive. At least we are doing all right.” I felt strange when he said that. There was something very wrong here. A faint suspicion came to me, one that had never dawned so clearly before. What if that one in the mirror isn’t me? He feels separate.


翌朝、僕が目覚めると、鏡の中の男は混乱しているようだった。「たぶん、望みはないだろう」彼はそうつぶやくと、お茶目に肩をすくめ、「でも、君と僕は生き残れるよ。少なくとも、僕たちは大丈夫。」彼がそう言ったとき、どこかが大きく間違っている気がして、これまでにはなかった、かすかな疑問が湧いてきた。鏡の中の男は、僕ではないんだろうか?彼は僕とは違った物の感じ方をしている。


He sees problems “out there” to be solved. Maybe they will be, maybe they won’t. He’ll get along. But I don’t feel that way ― those problems aren’t “out there,” not really. I feel them inside me. A child crying in Ethiopia, a sea gull struggling pathetically in an oil spill, a mountain gorilla being mercilessly hunted, a teenage soldier trembling with terror when he hears the planes fly over : Aren’t these happening in me when I see and hear about them?


彼は、問題を他人事として解決しようとしている。そのとおりなのかもしれないし、そんなつもりはないのかもしれないけど、彼は上手くやるだろう。でも、僕はそんな風には考えていなかった。地球の問題は、他人事ではなく、現実に、僕自身の問題だと感じている。エチオピアで泣き叫ぶ子供も、石油が流出した海で苦しみもがいているカモメも、情け容赦なく、捕獲されているマウンテン・ゴリラも、飛行機が頭上を飛んでいる音を聴く度に、恐怖に震えている十代の兵士も、こういったことは、僕が見たり、聞いたりした瞬間から、僕自身に起こったことなんじゃないのか?


The next time I looked in the mirror, that one looking back had started to fade. It was only an image after all. It showed me a solitary person enclosed in a neat package of skin and bones. “Did I once think you were me?” I began to wonder. I am not so separate and afraid. The pain of life touches me, but the joy of life is so much stronger. And it alone will heal. Life is the healer of life, and the most I can do for the earth is to be its loving child.


次に鏡を見たとき、そこにいた男の影は薄くなり始めた。結局それは幻影だったのか。そこには、骨と皮だけの孤独な世捨て人がいるだけだった。「君が僕だなんて、一度でも思ったことがあっただろうか?」僕は不思議に思い始めたものの、それを寂しいとも、怖いとも思わなかった。人生の苦悩は経験したけど、人生の喜びは、その傷を癒してくれるほど大きく、生命は、生命によって癒される。そして、僕が地球のためにできる精一杯のことは、愛情深い子供になることなんだ。


That one in the mirror winced and squirmed. He hadn’t thought so much about love. Seeing “problems” was much easier, because love means complete self-honesty. Ouch!


鏡の中の男は、苦痛にいらだち、身もだえた。彼は愛についてそこまで考えたことがなかったのだ。なぜなら、愛は自分に完璧に正直になることだから、痛い!地球の問題について、考えている方がずっと簡単だったのだ。


“Oh, friend,” I whispered to him, “do you think anything can solve problems without love?” That one in the mirror wasn’t sure. Being alone for so long, not trusting others and being trusted by others, it tended to detach itself from the reality of life. “Is love more real than pain?” he asked.


「なぁ、友よ」僕は小声で話しかけた。「君は、愛なしで、問題を解決することができると思う?」鏡の中の男は、確信がもてないようだった。長い間、孤独に過ごし、他人を信じることも、信じられることもないと人生の現実から離れてしまうものだ。彼は、「愛は、苦悩よりも真実だと思う?」と聞いてきた。


“I can’t promise that it is. But it might be. Let’s discover,” I said. I touched the mirror with a grin. “Let’s not be alone again. Will you be my partner? I hear a dance starting up. Come.”


「断言することはできないけど、そうだと思う。探求してみようよ」僕はにっこり笑って鏡に触り、「もうひとりぼっちになることはない。僕のパートナーにならない? ほら、ダンスが始まる音がするだろう」と言った。


That one in the mirror smiled shyly. He was realizing we could be best friends. We could be more peaceful, more loving, more honest with each other every day.


鏡の中の男は、恥ずかしそうに笑った。彼は、僕たちが親友になれそうだとわかったようだった。僕たちは、より穏やかで、愛情深く、お互いに誠実に、毎日を過ごせるだろう。


Would that change the world? I think it will, because Mother Earth wants us to be happy and to love her as we tend her needs. She needs fearless people on her side, whose courage comes from being part of her, like a baby who is brave enough to walk because Mother is holding out her arms to catch him.


こんなことで、世界を変えられるんだろうか? 僕は変えられると思う。母なる地球は、僕たちが幸福で、地球を愛することを望んでいるのだから。地球のために恐れを知らない人々や、勇気をもって地球の一部になれる人、まるで、歩き始めた赤ちゃんが、抱きとめてくれる母親の腕の中を目指していくときのように。


When that one in the mirror is full of love for me and for him, there is no room for fear. When we were afraid and panicky, we stopped loving this life of ours and this earth. We disconnected. (*2)Yet how can anybody rush to help the earth if they feel disconnected? Perhaps the earth is telling us what she wants, and by not listening, we fall back on our own fear and panic.


鏡の中の男が、僕と自分自身への愛で満たされたら、そこに不安はなくなる。僕たちは、恐怖やパニックに陥ったとき、自分の人生も、地球を愛することも止めてしまう。でも、僕たちを分離したり、繋がりを断ち切ってしまう人間に、地球を助けることを優先することなんてできるだろうか?おそらく地球は自分が望んでいることを伝えてくれている。それを聞き逃してしまうと、僕たちはまたもや、自分自身に脅えたり、パニックに陥ることになる。


One thing I know : I never feel alone when I am earth’s child. I do not have to cling to my personal survival as long as I realize, day by day, that all of life is in me.


ひとつわかったのは、僕は地球の子供であって、決して、ひとりではないということ。日々、生命のすべてが、自分と同じだと理解する限り、僕は自分だけが生き延びることにしがみつく必要はない。


The children and their pain; the children and their joy. The ocean swelling under the sun; the ocean weeping with black oil. The animals hunted in fear; the animals bursting with the sheer joy of being alive. This sense of “the world in me” is how I always want to feel. That one in the mirror has his doubts sometimes. So I am tender with him. Every morning I touch the mirror and whisper, “Oh, friend, I hear a dance. Will you be my partner? Come.”


子供たちと、彼らの苦しみ、子供たちと、彼らの喜びは、太陽の下で、波打つ海と、黒い油の下で、泣いている海。狩りを恐れる動物と、生きることの喜びにあふれている動物。そんな「僕にとっての世界」という感覚を、常に感じていたいと思う。鏡の中の男は、時々疑しそうな顔をするので、僕は彼に優しくしている。毎朝、鏡に触って囁くのだ。「さあ、ダンスが聞こえてきたよ。こっちに来て、僕の相手をしてくれるよね?」


(訳:yomodalite)

_________


(*1) Nations remain divided by mistrust and hatred.

和訳本の「自然は不信と憎しみで引き裂かれてしまった。」というのは、「Nations」を「Nature」と読み間違えたことによる誤訳ではないかと思います。


(*2)We disconnected.
ここは、特にもっと相応しい訳があるのでは。。と思っている箇所なんですが・・・和訳本では「自分以外の者との接触を一切断ち切ってしまった人間に」という訳になっています。

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by yomodalite | 2015-10-04 21:24 | ☆Dancing the Dream | Trackback | Comments(0)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


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