映画『ラブ&マーシー』

f0134963_16363488.jpg

初めてビーチボーイズの『ペット・サウンズ』を聴いたのは、当時つきあっていた男の影響で、「これは、ビートルズの『ラバーソウル』に刺激されたブライアン・ウィルソンが、ツアーに行くメンバーからひとり離れ、一流スタジオミュージシャンたちと創ったアルバムで、ポール・マッカートニーは『ペット・サウンズ』に追いつこうとして、『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』を創ったんだ」という、そんな誰もが言うような説明とともに、『ペット・サウンズ』を貸してくれた。




最初から傑作だと知っていた『サージェント〜』と違って、ヘッドホンで初めて聴いた『ペット・サウンズ』は、まるで、砂浜だと思っていた歩いていたところが、すべてダイアモンドが敷き詰められていたことがわかったような衝撃で、

当時は自分もバカラックや、フィル・スペクターのように音楽プロデューサーになりたいと思っていたその男は、ビーチボーイズのメンバーのほとんどが、サーフィンなど出来ない、オタク少年たちで、数え切れないほど録音された『グッドヴァイブレーション』や、幻のアルバム『スマイル』の膨大なブートレグ音源や、その後の『スマイリー・スマイル』発売のいきさつ、といった有名エピソードについても教えてくれて、私は、少し前に中毒になっていた『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』から離れてつかの間の間、ビーチボーイズの中毒になった。

ブライアンが創り出した目眩くような音の快感に溺れたことで、私ははじめて、ミュージシャンのスタジオワークについて、想像ができるようになったような気がする。『グッドヴァイブレーション』の中毒から、しばらく経って、同じように中毒になったのが、マイケルの『イン・ザ・クローゼット』だった。

『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』と、『ペット・サウンズ』は、そのどちらも甲乙つけがたい傑作だけど、『ペット・サウンズ』の音創りで精神に異常をきたした、ブライアンウィルソンの方に、私は親近感を抱いて、それからしばらく経って、彼の自伝も買った。


f0134963_17155283.jpg


そんなことすべてが、もうずいぶん昔のことで、二段組で3センチぐらい厚みのある、その本の内容について、今覚えていることはほとんどなく、そもそも全部読めなかった気もする。ブライアンほどではなかったかもしれないけど、この本を買った頃は、私も充分に鬱だったから。

どうして今頃その自伝を元に映画が作られたのかは疑問だったけど、彼が長く苦しい時期を乗り越えたことを見届けるのは、私にとって、今が一番いいタイミングのような気がして、劇場に足を運んだ。

監督は無名で、どんな映画になっているか不安でいっぱいだったけど、ブライアンの若い頃を演じたポール・ダノも、後年を演じたジョン・キューザックも、ブライアンの無垢な音楽への情熱と魂をよく表現していて、精神科医との物語は、自伝の印象とは少し異なるものの、とても素敵な音楽映画になっていた。

村上春樹によれば、「世の中には2種類の人間がいる。『ペット・サウンズ』を聴いたことがある人間とそうではない人間」(ジム・フジーリ著『ペット・サウンズ』解説より)だそうです。

まだだった人は是非!



Behind The Sounds: Wouldn't It Be Nice




Good Vibrations - Rare Studio Recording Film Footage






[PR]
トラックバックURL : http://nikkidoku.exblog.jp/tb/24337477
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
名前
URL
削除用パスワード

※このブログはコメント承認制を適用しています。ブログの持ち主が承認するまでコメントは表示されません。

by yomodalite | 2015-08-07 06:00 | 映画・マンガ・TV | Trackback | Comments(0)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


by yomodalite