崩れゆく世界 生き延びる知恵/副島隆彦、佐藤優

崩れゆく世界 生き延びる知恵

副島 隆彦,佐藤 優/日本文芸社



今年の5月末に出版された本。

私は副島氏が出版した本はすべて読んでいますが、なかでもおふたりの共著は時事を扱っていながら、あとから読んでもためになる内容が多く、いつもは、その最高の知性を、人々にわかりやすく説明するために骨を折った書き方をされている副島氏ですが、佐藤氏という申し分のない会話者を得たことで、レベルの高い内容が、読者にとってはスルスル読めるというありがたさ。

内容に相応しい言い方ではないですが、めったに味わうことのできない知的興奮で読み出したら止まりません。

マジョリティというのは「真ん中」を選択するものです。
そして、多くの人々が支持するのは「穏健」なものです。

だから、マジョリティが安定することが、社会の「安定」に繋がる。と統治者が考えてくれればいいのですが、残念ながら現在の先進国のトップたちは、経済破綻を何よりも恐れて、戦争がそれを救ってくれる唯一の手段だという結論でまとまっているようです。

それだけは避けたいと思っている人の方が絶対に多いはずなのに、そうはならない。

民主主義は、既得権益者によって都合のいいシステムになっていて、それは選挙の不正だけでなく、世論の作り方においてもそう。

マスメディアの問題点を憂うブロガーは数多く存在しますが、ネット社会は、数を競う中で、ネットリテラシーをもたない人々に注目されることが重要で、今やそのレベルは、マスメディアよりも低く、マスメディアの方でも、その数に注目し、手を取り合って、低きに流れていく一方。。

それで、マジョリティが選択できる「真ん中」は、徐々に「穏健」ではなくなりつつある。

権力者の不正や間違いを、マスメディアに代わって報道しようと頑張ってくれている人々がいても、情報を拡散するだけで、私たちは結集することもできず、世論にすることもできない。今のサイレントマジョリティにもっとも拡がっている意識は「脱力感」ではないでしょうか。

私も、せいぜい読書をして、歴史を学び、これまでの自分の馬鹿さ加減をしっかり認識したいと思っているのですが、ますますその難しさを痛感するというか、、

副島氏は、本書の冒頭で、

「私は、佐藤さんが、今の日本で真ん中にいると思います。右(保守)か左(リベラル)か、ではなくて、右でもありかつ左でもある。このことが素晴らしいことだと思う。

と述べています。また「まえがき」で、佐藤氏は、

歴史は反復する。しかし、まったく同じ形で繰り返されることはない。こういうときに必要なのは、アナロジー(類比)を適用することだ。アナロジーとは、論理に即して物事を考察するということだ。

と述べられています。これは佐藤氏の近著である『世界史の極意』でも語られていることで、歴史本を読むうえで、私も肝に命じなければと思う点です。

(下記は、本書から省略・要約して引用)
第1章「安倍“暴走”内閣で窮地に立つ日本」より

佐藤 副島さんは尖閣諸島問題に関してどうお考えですか?

副島 尖閣諸島は、日清戦争のときに、正式に下関条約で、日本が中国(当時は清朝政府)から割譲させたものです。台湾とぼうこ諸島の海域に属している。だから正式に日本のものになりました。
 
戦争で勝ったほうは、戦勝国として無理やりでも何でも条約にして敗戦国と取り決める。きちんと当事者双方の署名がなされて成立する。その取り決め自体は国際法に照らして有効です。あとになってから「あの契約(条約)は無効だ」と騒いでも認められません。

佐藤 当時は帝国主義全盛期でした。

副島 それで、靖国があの領域を手放して、日本が台湾と遼東半島を取りました。遼東半島は三国干渉で返させられましたが。その後、第2次世界大戦中に、カイロ会談がありました。そこに蒋介石、トルーマン、スターリン、アイゼンハワー、チャーチルなどの首脳たちがいました。
 
その会議で日本の領土は大きな島4つだけとなり、それ以外のものは全部、連合諸国が取り決めることになりました。それを引き継いだヤルタ=ポツダム宣言を、敗戦国となった日本は承認し、サンフランシスコ講和条約で確定した。正式に日本のものになっていた尖閣諸島が、ヤルタ・ポツダム会談で日本から取り上げられた。それを日本は認めた。このことが重要です。

佐藤 マスコミは隠していますが、尖閣諸島の一部はまだアメリカの「領土」です。九場島、大正島は米軍の射爆撃場となっています。まだ日本に返還していないアメリカの「領土」です。尖閣諸島問題は、日本が必要もないのに国内的な事情から人為的に緊張をつくり出しているというのが国際社会の見方です。


第2章「世界革命を目指すイスラム国の脅威」より

佐藤 イスラム国というのは、今までのアルカイーダと違って、ちゃんとビジネスとして、誘拐や人殺しをやっているのです。あと、石油も採っている。これは非常に重要です。

副島 あの人たちは自立した経済をやっているのですね。

佐藤 今年いい本が出ました。ロレッタ・ナポリオーニというイタリア人ジャーナリストが書いた『イスラム国 テロリストが国家をつくる時』という本です。彼らは複式簿記とかを付けて、ビジネスとしてテロをやっていると書いています。

「イスラム国」がイラクからシリアにまたがる広い地域で国家建設に成功するなら、その事実がもたらす脅威は、単にこの二力国の政治体制を変えるという以上の意味を持つことになる。近代以降の歴史で初めて、武装組織がテロリズムの最終目的を実現することになるのだ。それは、既存国家の廃墟の中から自分たちの国をつくること、それも、たとえばイランがそうだったように革命によってではなく、昔ながらの征服戦争によって領土を獲得することである。ただし、その戦争で使われるのはテロ戦術だ。もしこれが実現するなら、「イスラム国」は正真正銘のテロリズム国家ということになる。(前掲書45ぺージ)
 
と、いうことです。いまのところ、これがうまくいっているのは、「アルカイーダは失敗だった」と総括していることです。あまり組織化をしていないといっても、やはりビンラディンや、ザワーヒリーの指示で動いている限り、アメリカは犯人を見つけ出して殺すことができた。だから第1世代のアルカイーダは壊滅しているわけです。

副島 ドローンで大幹部たちを暗殺されても耐えられる構造をつくったということですか?

佐藤 そうです。「グローバル・ジハード論」というのを西側諸国で展開して、それに耐えられる構造をつくったのです。


第3章「ウクライナ政変で見えてきた世界大戦の予兆」より

佐藤 ウクライナは結局、NATOに加盟することはできません。そうなると緩衝地帯ですよね。重要なのは、ウクライナの圧倒的大多数の人が民族という意識が未分化のままなので、戦闘が起きたところ以外の人たちは自分がロシア人なのか、ウクライナ人なのか意識が未分化です。これまでは、ウクライナかロシア人かということを曖昧にして暮らすことができたのですが、これからは、曖昧ではない形にしなくてはならない。それをお互いが決めるとなると、状況によっては殺し合いになるでしょう。

副島 ウクライナはまさしく西側との緩衝地帯、バッファです。回廊国家ですね。回廊国家というのは、2つの勢力の間で、廊下のように外国の軍隊に侵攻され、踏みにじられ、居座られる国家のことです。このような国家の分裂状態を繰り返してきた「回廊国家」が、ポーランドと朝鮮半島です。もしかしたら、私たちの日本も回廊国家になりつつあるのかもしれません。アメリカと中国というふたつの帝国の間で、ウクライナと同じような分裂国家になるかもしれない。


第4章「オバマとヒラリーの激闘から読む世界の明暗」

副島 オバマとバイデンたちは、第三次世界大戦になるような「大きな戦争」をしたくない。「低緊張紛争」で収めたいと考えています。小さな戦争が起きるのは仕方がない。地域内で、それぞれやらせて、両国の均衡の上にアメリカが仲裁者として立つ。これが「オフショア・バランシング」という理論です。私の弟子の古村治彦君が『アメリカ政治の秘密』という本で日本に紹介しました。これはCFR(外交問題評議会)派の論理です。このCFR派に対して、共和党ネオコン系と結びつくヒラリーは「人道主義的介入主義者」です。ヒラリーは、「人道と人権を守る」という理屈をつけて外国に介入し、独裁国への反対の旗を振って、他国に介入していきます。極めて偽善的な考えです。

佐藤 共和党はプレーヤーの外という感じなのでしょうか?

副島 共和党の中心部はまったくやる気がない。共和党に潜り込んでいる、いわゆるネオコン派がヒラリー系の民主党と組んでいます。

佐藤 このポイントがわかっている日本人が少ないと思います。今のアメリカの人口は37%ぐらいが非白人です。2050年になったら、白人と非白人の割合が逆転するといわれています。そうなると、今の共和党の路線では絶対に票をとれるはずがありません。

副島 穏健なオバマ系民主党リベラルと、共和党内のリバータリアン及び茶会党がくっついている。彼らは「ハト派」で米軍を外国に出したくない。それに対し表面上は人道主義を掲げながら、外国に介入しようとする勢力がいます。それがヒラリーたちの凶暴なデモクラシーです。この凶暴なデモクラットたちと、共和党系の軍産複合体がくっついています。これが「タカ派」です。


第5章「行き詰まる日本経済ー余剰の時代の生き延び方」

副島 ピケティの『21世紀の資本』がものすごく売れています。私はピケティの本はスゴイ本だとわかりました。ただ、問題だと思う箇所があります。それはいちばん最後のほうのページ、結論のところに出ています。

佐藤 資本税という形で「資本に対して年次の累進課税」というのをやるべきだ。としている。ここがこのほんのいちばん怖いところですね。

副島 そうです。「これにより果てしない不公平スパイラルを避けつつ、一時蓄積のアタアrしい機会がつくられる」と言っています。

佐藤 だから、これは国家資本主義ということです。国家がイノベーションを起こしたいという国民がいたら「カネを出してやるからやってごらん」とカネを与えるという話です。これは、国家統制の極端な強化ということです。

副島 国家がやる気のある人には、資産家になるチャンスを与える、ということですね。実際には資本税をかけても平等には向かわない。有名になったピケティの不等式、r>gというのは、資本収益率の方が、国民経済の成長率より高いので格差が生まれるという主張ですが、、、、

☆この続きは本書で!




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by yomodalite | 2015-06-05 19:06 | 政治・外交 | Trackback | Comments(0)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


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