Boy, is that Girl with You?(4)

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☆Boy, is that Girl with You?(3)の続き。。


ウィラ:『ブラック・オア・ホワイト』のジョン・ランディスのシーンにも同じことが言えると思う。ジョン・ランディスが監督かも知れないけど、場を支配しているのは彼じゃない。彼は、それが何かを理解しないままに、マイケル・ジャクソンの見識を皆に伝える助けをする、雇われた人に過ぎないのよ。そのことを、ジョー、あなたが紹介してくれた映像の中で、ジョン・ランディス自身がはっきりと見せてしまっているのよ。1:45のところで、彼はカメラに向かって「僕がこれを振り付けしたんじゃないからね。撮影しているだけなんだからね」と言っている。彼は、パンサー・シーンで画面に現れるすべてのことから自分を完全に切り離しているのよ。



ジョー:そのとおり。僕の論文でも彼の発言を取り上げていて、そこでも彼は似たようなことを、基本的に自分はこのビデオのために雇われたスタッフだ、というようなことを言っている。それは謙遜して言っている発言じゃないと思うよ。彼はマイケルがやっていることと自分とに距離を置きたいんだ。



ウィラ:そうね。私にもそう見える。彼はこのビデオのパンサー・シーンにすごく戸惑っているみたいね。それも理解できる。なぜなら、あなたが言ったように「白人の監督(ジョン・ランディス)は監督の座を奪われている」のだから。そして、マイケル・ジャクソンは白人監督の役割を否定しただけでなく、もっと重要なこと、長い歴史を持つ、黒人男性と黒人の文化に対するハリウッド流の表現方法に挑戦状をたたきつけたのだから。それを考慮すると、パンサー・シーンのクライマックスで、爆発と飛び散る火花の中、The Royal Arms Hotel の看板が落ちていく場面はすごい意味を持っていると思う。これは、「Royal Arms(王の権力)」への、それが象徴する植民地支配のイデオロギーへの、黒人からの抵抗であり、人種差別的・植民地支配的な世界観に侵された映画産業への抵抗ではないかとね。


そういった世界観の重要な原則は、あなたが論文で言っている、異人種間結婚の禁止よね。かつてそうであったような、それを禁止する法律はもうない。その代わり、その法にかわるものが、人の心に内在するようになった。黒人男性を見て嫌悪や憎悪を感じる白人女性の心が、白人女性と黒人男性が一緒にいるところを見て、激しい怒りに駆られる白人男性の心が、それを禁止する。


この植民地時代以後の人種差別主義は、D・W・グリフィスの言うところの「白人の中に、とりわけ白人女性の中に、黒人男性に対する嫌悪感を植え付けること」が目的なんだけど、アメリカの映画産業の始まりから、それは業界の中心にあった。マイケル・ジャクソンはそれに対して、パンサー・シーンで戦いを挑んだ。あなたの『國民の創世』と『ブラックオアホワイト』の分析を読むと、特にそれがよくわかる。



ジョー:うん、頑張って論じてみたよ。あれはすごいショート・フィルムで、マイケルの作品は殆どそうだけど、深く考えれば考えるほど、大きなものが得られるんだ。実際、いまこうしてあなたと話していると、自分の論文にもっと書き足したくなるよ!



ウィラ:わかるわ、あなたが言いたいこと。マイケル・ジャクソンのひとつの作品を完全に理解するのにはすごい時間と労力がかかるのよね。私だって、『ブラック・オア・ホワイト』について何年も考えているけど、それでもあなたの論文を読んでこの驚くべき作品の見方に新たな展望が開けたもの。



ジョー:だけど、多分そうやって最良の答えを見つけていくんだよね。僕はあの論文で、6,7千語削らなくてはいけなかった。学術的な論文では当然のことだけど、実際、活字にするものはたいていそうだよね。でも、僕は確信しているんだ。このショート・フィルムは、新たな、そして魅力的な切り口で、今後も論じられ続けるだろうって。33 1/3シリーズのあの素晴らしい「デンジャラス」の号で、スーザン・ファストが指摘しているんだけど(*9)、ジャクソンの歌やビデオの中で、『ブラック・オア・ホワイト』以上に学問の世界で注目された作品はない。


まず最初に出たのが、1991年に「ザ・シティ・サン」に掲載されたアーモンド・ホワイトの画期的な論文で(*10)、それ以後、特にジャクソンが亡くなった2009年以降は、何年にもわたってこの作品のことが論じられている。僕の論文もここ何年かの研究の一部で(博士論文の最初の一章だからね)、それがやっと活字になったんだよ!



ウィラ:私もうれしいわ。特にあなたの論文で、『ブラック・オア・ホワイト』があの当時、つまりロドニー・キング殴打事件(*11)がビデオに撮られた数ヶ月後、どれだけ真に革新的でありパワフルであったか、そして今日でもなおどれだけパワフルであるかが、あなたの論文によって示されたのだから。オリジナルの11分バージョンは見つけるのが難しいけど、見つかったところで、Vevoには強力すぎるのかもね!


それで、あなたの論文は活字になって誰でも読めるの?



ジョー:うん。論文は、The Journal of Popular Music Studiesの3月27日号の第一版に掲載されてる。残念なことに、いまのところこの雑誌は一冊買うと、ちょっと高いんだ。僕はもちろん無料で読めるようにしたいんだけど、著作権の関係でいまは出来ない。スーザン・ファストは最近ブログで、学術論文の出版のプロセスは、他の多くの分野と同じく、このデジタル時代にどのように内容にアクセスしてもらうか、どのように運営していくかを未だ模索中であるということを、すごくうまく説明してくれている。(https://susanfast.wordpress.com/)



ウィラ:そう、スーザンが説明しているように学術雑誌は創るのに時間がかかるから高いのよね。別に儲けようとしているわけじゃない。学術雑誌に書く人はそれが出版されたからといって収入を得るわけじゃないし、著作権も所有しない。だから、たとえば私が自分の論文である “Monsters, Witches, Ghosts” を「Dancing with the Elephant」に再掲載したいと思っても出来ない。代わりに要約を載せるように言われるの。論文へのリンクをつけてね。幸いなことに、たいていの大学の図書館には、The Journal of Popular Music Studies がおいてあるから、大学の近くに住んでいる人は、おそらくあなたの論文をそこで無料で読むことが出来るわね。


それと、みんなに知らせておきたいのは、このサイトの「Reading Room」には、あなたが書いた議会図書館用「スリラー」の項目へのリンクが貼ってあるということ。残念ながらこれについてあなたと話す機会はまだ持ててないけど、これは議会図書館のために書かれたもので、National Register(国内登録)のところにあるのよね?



ジョー:そうなんだ。僕は「スリラー」について短く書いてと依頼を受けたんだけど、これがもう大変だった。議会図書館の登録項目(*12)には、400のレコーディング(音楽、音声、映像)が収められている。どれも議会図書館によって選択されたもので、国家保存重要録音登録審査委員会が提供している。それらの記録はアメリカの歴史にとって、もの凄く重要なものだからね。芸術的な意味でも、文化的な意味でも、歴史的な意味でも。だから、国の図書館に永遠に保存されておくべきものなんだ。議会図書館は、研究者や音楽批評家にコンタクトをとり、400のそれぞれのレコーディングについて、だいたい1000ワードくらいで多様な学術的エッセイを書くように依頼する。そうやって図書館のウェブサイトを充実させていくわけ。だから、音楽の歴史を愛する人は他の曲のエッセイもチェックしてみるといいよ。僕もいくつか読んだけど、すごく良かった。



ウィラ:本当にそうね。ちょうどいま、ブルーグラスの創始者であるビル・モンロー(*13)の「ケンタッキーの青い月(Blue Moon of Kentucky)」の項を読んでるところなんだけど、面白いことにこのエッセイは、モンローをD・W・グリフィスと比較するところから始まる。マーサ・グラハム(*14)や、議論の余地はあるかもしれないけど、グリフィスのように、彼が人生の中で作り上げたものは、その後も生き続け、何百ものアーティストがその影響を受ける、芸術や言語や語彙の、ひとつの体系になった。


そしてマーサ・グラハムがモダン・ダンスを生み出したように、そしてグリフィスが『國民の創世』によって、現代の映画を生み出したように、ビル・モンローはブルー・グラスというジャンルを生み出したってことね。議会図書館では、登録項目のエッセイの一覧、レコーディング項目のエッセイの一覧も見ることが出来るのよね。


さて、話をしに来てくれてありがとう、ジョー!あなたと話すのは、いつも本当に楽しいわ。



ジョー:ありがとう、ウィラ。僕のほうこそ。ジョイエにもよろしくね!



ウィラ:伝えておくわ!(終)



☆この会話についての私たちの「おしゃべり」はこちら!


《註》_________


(*9)スーザン・ファスト(Susan Fast)/カナダのマックマスター大学の教授で、2014年、音楽業書『33 1/3』において、マイケル・ジャクソンの『Dangerous』を取り上げ、Amazonレヴューにおいても高い評価を得ている『Dangerous(33 1/3)』を出版。


(*10)アーモンド・ホワイト(Armond White)/「The City Sun」の1991年11月26日号と12月3日号に、"The Gloved One Is Not a Chump" が掲載されている。その文章は現在ネット上では見られませんが、『KEEP GOING : Michael Jackson Chronicle』という評価の高い著書がある。

→Armond Whiteへのインタヴュー


(*11)ロドニー・キング殴打事件/1991年3月3日、黒人男性ロドニー・キングがレイクビューテラス付近でスピード違反を犯し、LA市警によって逮捕された。その際、20人にものぼる白人警察官が彼を車から引きずり出し、警官の装備であるトンファーバトンやマグライトで殴打、足蹴にするなどの暴行を加えた。たまたま近隣住民が持っていたビデオカメラがこの様子を撮影しており、映像が全米で報道されると黒人たちの激しい憤りを招いたが、裁判では、キングが巨漢で、酔っていた上に激しく抵抗したため、素手では押さえつけられなかったという警官たちの主張が全面的に認められ、陪審員は無罪評決を下した。この裁判への不満がロス暴動のきっかけになったと言われている。

→ロサンジェルス暴動


(*12)ジョーが話している「議会図書館の登録」というのは、国家保存重要録音登録制度(National Recording Registry)を指すと思われる。これは2000年に制定された法案に基づいて始まった制度で、アメリカにとって、文化的・歴史的・芸術的価値のある音源を保存しておく制度。保存登録する音源の選定は、議会図書館によって任命された、国家保存重要録音登録審査委員会(National Recording Preservation Board)によって行われる。


(*13)ビル・モンロー/ブルーグラスとして知られる音楽スタイルの確立に寄与したアメリカ人音楽家。ブルーグラスの名は、彼のバンド名Blue Grass Boysから採られた。モンローは60年間、歌手・演奏者・作曲者・バンドリーダーとしての経歴を持ち、「ブルーグラスの父」と評されている。

→ http://ja.wikipedia.org/wiki/ビル・モンロー


(*14)マーサ・グレハム/アメリカ合衆国の舞踏家、振付師であり、モダンダンスの開拓者の一人。

→ http://ja.wikipedia.org/wiki/マーサ・グレアム




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by yomodalite | 2015-05-14 06:00 | ☆MJアカデミア | Trackback | Comments(0)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


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