解説 All In Your Name

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「和訳:All In Your Name」を先にお読みくださいませ。
こちらは、私訳の解説です。

All In Your Name

このタイトルは、聖書で、神の御名、神の名においてという場合の「Your Name」を想像させますが、「In Your Name」と言うことで、文字通り「あなたの名前」という意味をもちます。「神の名において」と「あなたの名において」という、この2つの意味が、この曲のテーマであり、それは、それぞれの人の「内なる神」でもある。

内なる神は、人を善に導きもすれば、神の名を語って、人がしてはならない「神の領域」のこともしてしまう。

この優しく、愛に満ちた歌には、「神の名において」判断された正義や、なされた多くの残虐な行為は、実は「あなたの名において」したことであるという、マイケルの怒りと哀しみも込められているのだと思います。

The Story

神から使命を受けた者が人々に語るというのは、一見、一神教の「預言者」のスタイルのようですが、ここで語られるのは、聖書で語られてきた長い歴史ではなく、科学者、哲学者も含めたあらゆる賢人も否定できない物語、一人の女と一人の男によって人類は生まれるというシステムと、そのシステムによって生まれた人類はそれぞれ自分の力で飛び立っていけるのだということ。man and woman でなく、woman and a man となっているのは、アダムとイブの「創世記」とは異なっていることを示しただけでなく、人は母から生まれる、ということも重要視している。

There's just one religion

ひとつの宗教というのは、一神教(アブラハムの宗教)の考え方のようですが、この世界をひとりの神が創ったなら、世界はすべてひとつの家族であり、それはすべて神の愛によって結ばれているという意味ではないでしょうか。

the gates of paradise

キリスト教の天国の門や、神の審判を連想させますが、gates が複数形であることからも、あらゆる宗教・スピリチュアル・政治思想にみられる、死後の楽園や、理想社会への入り口(条件)などを指している。

They're the same

天国と地獄の設定や、宗教上の様々なジャッジメントは「教義を創る」うえで欠かせないものですし、さまざまな人が思い描く理想社会の違いによって、多くの宗派や、政治思想や、人種、性別、性的嗜好、、など様々に分かれ、争っていますが、それは、あなたの人生の中(all in the game)でのことであり、あらゆる人が死後に安らかなのは、すべて同じだということ。

Only God knows

あなたが(神の名を語って)したこと。あなたが(神の名を借りて)人生で選んだこと、あなたが(神の権利を利用して)誰かを裁いたこと。それらを「神」だけは知っている。なぜなら、それは、神にしかできないことで、人間にはできないことだから。

◎この歌詞に通底する宗教観・思想について

この歌詞の原案はマイケルにあり、また、バリーはインタヴューで、僕たちは宗教観が似ていたと語っていました。私がここまで調べた限りでは、MJの宗教観にもっとも近い宗派は「ユニテリアン」だと思います。「もうたくさん!We've had enough(5)」の中で、エレノアが「マイケルが直面した深刻なジレンマを完璧に表現している、とあなたたちが議論したのをよく覚えてるわ」と言っている記事(→「What is My Life if I Don’t Believe?」)の中でも、それは言及されていて、

MJが足繁く通っていた地元の書店員は「彼はエマソンがお気に入りだった」と証言していますが(→地元書店員の話)、マイケルが全集を所有していたラルフ・ウォルドー・エマソンは、ユニテリアンの代表的人物としてよく知られています。

ユニテリアンは、神を唯一の存在とし、三位一体を否定し(これは青年期のMJの宗教であるエホバの証人にも共通)、イエスを道徳的に優れた人物として扱い、神格化せず、知性を重視し、聖書の記述や教義に縛られず、キリスト教以外の様々な思想を学ぶことにも熱心で、自由を重んじるため、信者には知的レベルの高い人が多く、欧米の学問を熱心に学んでいた福沢諭吉や新渡戸稲造など近代日本の知識人も、そこから多くの影響を受けています。

MJがユニテリアンだとすれば、=フリーメーソンなの?と心配になられる方も多いと思いますし、フリーメイソン=ユニテリアンか?という点も疑問かとは思いますが・・・理神論がわかってないと、本当の陰謀はわかんないっていう内容かどうかは各自確認w

様々な宗教やスピリチュアルを信じている人々が、自分の信仰に合わせて、MJについてファンタジックに語っていますが、自分が信じていることに、MJの考えを合わせるのではなく、これまでの歴史を勉強し、その良い点や、問題点を考えたり、、、していければいいんですけどね。

ただし、ユニテリアンは宗教集団としての力は弱く、MJも、元の宗教の教義への不満から、独自に探求を重ね、その宗派に近い思想を身につけたということで、彼がユニテリアン教会に通っていた事実はありません。おそらくマイケルの意識としては、幼少期からずっと、自分が唯一の神であるエホバの存在を証明する人間だということに変わりはなく、それが、2001年や、2005年の発言になっているのだと思います。

Q : Are you still a Jehova’s Witness?
あなたは今でも「エホバの証人」ですか?」

MJ : Yeah, I’ve done what we call pioneering. We do 90 hours a month, I don’t do as much now because I’m busy. You go door to door. I wear a fat suit, pop-bottle glasses, mustache, buck teeth, and like an afro wig.

MJ:ああ、僕はパイオニアリングと呼ばれている行為をしてきたんだ。月に90時間もね。今は忙しいからそんなにやってないけど、ドアからドアへ訪問していくんだ。太ってみえるスーツを着たり、分厚いレンズのメガネをかけたり、つけヒゲとか、出っ歯とか、アフロのカツラをつけてね。(2001年「TV GUIDE」インタヴュー)

Jesse: And so, you-you-you-you had these hits, ahem, and people that you have embraced are now facing you in court on a daily basis. How does your spirit handle that?

ジェシー:君はいくつものヒット曲を持っているよね。そして、現在、君が大事にしてきた人たちが、裁判では反対の側に立っている。君の精神はどうやってそれに対応しているの?

Michael: Ah, I gained strength from God. I believe in Jehovah God very much and ah, and I gain strength from the fact that I know I’m innocent…

MJ : うん、、僕は神から強さを得たんだ。僕はエホバ(=ヤハウェ)という神をとても信じているし、僕は自分の無実が事実だと知っているから、強いんだ。(2005年、ジェシー・ジャクソンによるインタヴュー)

神がひとりであるという多くの教えの中でも、ユダヤ教では神の名を唱えることを禁じていて、Godという言葉でさえ、G-dとぼかして表記しますし、キリスト教でも、神を名で呼ぶよりも「主」と呼ぶのが一般的ですが、MJの信仰にとっては、その神を「Jehova」という名前(Name)で呼ぶことがとても重要なことだったようです。

MJの答え方は、自分の生き方とは合わなくなり、教義に疑問を感じ、教団側からも批判されて離れたにも関わらず、かつての仲間を気遣い、そこで過ごしたときへの感謝も感じられるだけでなく、「神がひとり」だという点においても矛盾を感じさせないものです。

私たちは人との《差》を重要視し、現代社会はあらゆることで人々を《分類》しようとしていますが、この歌は、彼自身の信仰だけでなく、人々の間にある差ではなく、あらゆる人々に共通する点を思い出させ、争いが絶えず、今また激化していく世界中の人々へのメッセージとして考え抜かれたものだと思います。



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by yomodalite | 2015-04-01 06:04 | ☆マイケルの言葉 | Trackback | Comments(0)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


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