ソニーウォーズの意味について[6]

f0134963_15122900.jpg


☆[5]の続き

色々と回り道をしていることで、誤解を招いていることも多いと思うので、ここまでの要点を一旦まとめておきたいと思います。

[1]の要点

モトーラの「悪魔」呼ばわりは、MJが「人を憎むことは決して教えない」と言っていたことに反していないか。『インヴィンシブル』が発売になったのは、同時多発テロと同じ2001年。抗議行動は、翌年の2002年、ブッシュ大統領が「悪の枢軸」発言をした年。マイケルには、自分のアルバムのことよりも、言うべき言葉があったのではないか。

[2]の要点

星条旗があふれ、アメリカ中が戦闘態勢になって、イラク戦争への道に突き進んでいった時代、「僕たちは、何度でも、何度でも、愛を与えるべきなんだ」と歌う『What More Can I Give』をリリース出来なかったのは、モトーラや、SONYだけだっただろうか。

[3]の要点

ここまで良好な関係だったモトーラを「人種差別者」だと攻撃したのは、彼を失脚させるためで、ソニー攻撃は、モトーラ下しの手段という側面が大きかったのではないか。

[4]の要点

モトーラが『インヴィンシブル』の宣伝を抑えたのは、史上最高ともいえるほど派手な広告をした『ヒストリー』での経験から、広告のし過ぎは、リスナーや若手ミュージシャンから「お金持ちMJ」という反発を招き、メディアの反感を煽るだけだと判断したのではないか。

また、MJはこの行動により、モトーラ失脚に成功した(彼は音楽部門のトップの座は死守した)。

[5]の要点(本文に書ききれなかった不足分も加えてあります)

(4の後半からも含めて)音楽版権は、マイケルがATVを取得したときよりさらに大きな利益を生み出しつつあった。グローバル化による販路の拡大だけでなく、様々な商品フォーマットの開発が期待され、CD売上げや、オンエア使用料だけでなく、版権の「債券」としての価値も急上昇した。

労働者と経営者との格差が広がる時代が到来し、アーティストが才能と肉体を駆使して、生み出した作品を利用して、経営者たちが、彼らよりも儲けているという状況は変わらず、

MJが、音楽とダンスとビジュアルを融合させたことを、後続のアーティストたちが、真似するようになっただけでなく、モトーラや経営陣は、MJの様々な方法論や、版権の価値の重要性についても、後追いするようになった。

と、ここまでが、一応、前回までのまとめなのですが、

モトーラを「人種差別者」だと攻撃したのは、彼を失脚させるためという[3]の内容について、このあと、また別の見方をしてみたいと思います。

ハーレムで行なったスピーチのときに、その場に居合わせた、アル・シャープトン師は、自分はモトーラが人種差別主義者だとは思っていないし、マイケルが事前に何を言うかは知らなかったと公の場で発言し、

報道でMJの発言を知ったベリー・ゴーディは、マイケルに電話をかけ「〈人種という切り札〉を使うべきではない。我々はこれまで、一度もその方法はとらなかった。音楽はみんなのもので、肌の色は関係ない。というのが我々の信念だ。特に君はダメだ。これまで人種を意識してやってきたわけじゃないだろう。よく考えてみろ」と諭し、マイケルもまた、「あなたの言うとおりで、よく考えなくてもわかる。電話をくれて本当にありがとう」と言ったそうです(→『Michael Jackson Inc.』)

モトーラに対して、人種差別を訴えたのは、マライアや、ジョージ・マイケルはしていないことですし、この時代のMJが、黒人としての差別を訴えるというのは、当時の私には違和感しか感じられませんでした。

MJは黒人の可能性を拡げた人物として、今でも尊敬されていますが、当時、白人よりも「白い肌」になっていたMJが、黒人差別を訴えるのに相応しいとは思えず、SONYが販促活動を怠ったことを、差別のせいにするというのは、もっと理解できないことでした。

なぜなら、マイケルだけでなく、プリンスも、MCハマーや、ボビー・ブラウン、ジャネット・ジャクソンや、ホイットニー・ヒューストンも、日本でお茶の間に波及するほど、売れていた洋楽アーティストには黒人が多く、スポーツ界では、マイケル・ジョーダンの人気が凄まじく、オリンピックでは、カール・ルイスや、ジョイナーが活躍し、ゴルファーで一番の有名人といえば、タイガー・ウッズ、女子テニスでは、ビーナス、セレナ姉妹が大活躍し、日本で、アメリカの有名人と言えば、ほとんど黒人のように思えた80年代以降、「人種差別」という問題は、日本ではまったく感じることが出来ないことでもあったからです。

ただ、その後、日本でも、韓流ブームの後に、嫌韓流が流行り、GDPで抜かれた後に、反中ブームが起こったという経験を経て、当時のアメリカで、貧しくなった白人が、どんな思いがしたのか、なんとなく実感を持って想像できるようになった気がします。

満たされない思いを抱く白人が多くなり、自分たちには手にすることの出来ない人種差別という「切り札」を、苦々しく思う人が増えた。それは、日本が貧しくなってから、「在日特権」などということがクローズアップされたように、人類に共通したネガティブな感情なんだと思います。

黒人の流行を上手に取り入れた白人アーティストが活躍するという状況は、マイケルが登場する前は、トラボルタとビージーズによる「サタデー・ナイト・フィーバー」のブームがあり、ブルーアイドソウルと呼ばれた、ホール&オーツも大人気でしたが、この当時から、隆盛を誇っていたヒップホップ文化が、ハーレムだけでなく、ブルックリンをも席巻するようになってから、ブルックリン出身で、イタリア系のモトーラの周囲では、白人の中では一段下に置かれていた、ラテン系、ヒスパニック系の人々を中心に、黒人以外の人種で結束するという状況があったのではないでしょうか。彼らが、黒人勢力に対し、侮蔑的な発言をすることで、集団としてまとまるということは、容易に想像できることなので、

マイケルが「モトーラは、所属アーティストをニガー(黒人に対する蔑称)呼ばわりしている」と言ったことを、彼を失脚させるための嘘だと思っているわけではなく、実際にそういうことはあったのだと思います。

ただ、マイケルほど冷静な人が、様々なストレスを抱えていたとしても、人種差別への思いが再燃したという理由だけで、これまで封印してきた〈黒人差別という切り札〉を使ったとは、私には思えません。

と、このあと[7]に続く予定でしたが・・・

他のことに追われ、時間が経つうちに、MJエステートが持っていたソニー/ATVを、SONYに売却することが決定しました(マイケルの楽曲に対する出版権の所有権は100%エステートが所有したまま)。

http://yourockmyworld829.blog88.fc2.com/blog-entry-3683.html

これに関しての私の感想は、ジョーパパとまったく同じです。

http://yourockmyworld829.blog88.fc2.com/blog-entry-3685.html

マイケルの子供たちが、これを保有し、ビジネスとしていく意向があるのなら、また別の選択もあったでしょうが、長男の選んだ大学から想像しても、おそらくそういった興味はない様子。そうであるなら、マイケルが地上にいない、ビジネスに関与できない状態で、他にどんな選択があるんでしょうか。

「ソニーウォーズの意味について」は、他人をお金の亡者に仕立てて、正義を振りかざす方々が作る “真実” への危惧から書き始めたものですが、しばらく放置することにします。

[PR]
トラックバックURL : http://nikkidoku.exblog.jp/tb/23813491
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
名前
URL
削除用パスワード

※このブログはコメント承認制を適用しています。ブログの持ち主が承認するまでコメントは表示されません。

by yomodalite | 2015-03-23 08:40 | MJ考察系 | Trackback | Comments(0)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


by yomodalite