ソニーウォーズの意味について[3]

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☆[2]の続き

ソニー社内の権力闘争という側面については、下記に詳しく書かれています。

http://homepage3.nifty.com/mana/michael-world7.html

上記は、『ソニー:ドリームキッズの伝説』にインスパイアされた素晴らしい記事ですが、実際の本の中で、マイケルに言及した部分は極わずかということもあって、
少しだけ異論というか、解釈を加えたいと思うのですが、

まず、私は、マイケルにとって関係のないソニー内の権力闘争によって、彼が犠牲になってきた。とは考えません。

私を含め、ほとんどのファンは、MJのような「KING」ではないので、大きなものに巻かれたり、その犠牲になるような経験しかないため、つい、大好きなマイケルのことも、自分と同じように弱い立場として想像しがちなのですが、

「スリラー」で始まった彼の物語は、「バッド」で「デンジャラス」な「ヒストリー」を創りあげ、これ以上ない「インヴィンシブル」な男だったことを、ファンはもっとも忘れてはいけないのではないでしょうか。

「オフ・ザ・ウォール」を続けるということは、常に戦いに勝利するということです。

80年代のイエトニコフ時代のCBSレコードはソニー最大の稼ぎ頭で、90年代のモトーラ時代の音楽部門は、映画部門と並んで、ソニー全体にとって、むしろ「赤字部門」だった。ということは重要な指摘なんですが、歴代トップと、モトーラとの最大の違いは、

モトーラが、マイケルに並ぶほど収益をあげたマライアを育てたことです。


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それまで、なんだかんだ、マイケル頼みだったこれまでの社長と違い、自分自身もアーティストの経験があるモトーラは、プロデュース能力によって、次々にスターを生み出し、マライアを90年代には、MJを凌ぐほどのドル箱に成長させました。マライアにとって「耐えられないほどの干渉」は、裏を返せば、それほど、きめ細やかな指導だったとも言えます。

彼は財務のプロフェッショナルというよりは、むしろ、音楽業界を知り尽くした、現場の叩き上げとして、社長の座を射止めたわけです。

音楽産業は転換期をむかえ、全米のラジオ局は、クリアチャンネルが独占するようになり、それぞれのDJが音楽を選曲して放送する時代は終わり、流通も変化しました。ニューズ・コーポレーションに代表されるメディア・コングロマリットは、5大ネットワークをゴシップ雑誌と同じ水準に引き下げ、彼らは、マイケルの驚異的な知名度をビッグビジネスに転化しましたが、レコード会社にとってはそうではなかった。

ますます売れなくなる音楽業界で、放っておいても売れるアーティストにお金を使わせるよりも、新人のプロモーションにお金をつかう方が、新たな収入源につながることは、誰が考えても明白で、それは、モトーラ個人の考えというよりは、レコード会社だけでなく、多くのビジネス現場で正しいと判断される考え方で、私たちが働く会社でも、ビジネス論理は同じようなものです。

マイケルが、他のアーティストと比べて、待遇面であまりにも恵まれていたことは否定できず、90年代、数々のスキャンダルに見舞われ、ブランド価値に陰りが差したマイケルに物が言えるのは、当時マイケルと同じぐらい稼いでいたマライアの生みの親であるモトーラだけ。。

病床にあった盛田会長だけでなく、当時のソニーは、映画産業への壁に阻まれ、デジタル化への変化の中でもがき続けている最中で、マイケルと同様のマインドを持ち続けたくても出来ない状況でした。


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赤字に転落していた音楽部門を立て直すために、モトーラに期待されたことは、アーティストを今まで以上に「売る」ことだったでしょう。元々ミュージシャンで、敏腕プロデューサーだったモトーラは、これまで成功したアーティストの方法論も、彼らの音楽についても、アーティストが売れたいと思う気持ちも理解できたと思います。

売れるためにはどうすればいいか。日々そのことを考えていたモトーラは、これまでの社長よりも、マイケルのアルバム製作にしても、宣伝活動にしても、現実的な目線で見ていたでしょう。想像でしかありませんが、マイケルの90年代の売上げに匹敵するほど、マライアを売った男は、それまでの社長よりもマイケルに具体的な指示をしがちだったと思います。

そういった意味において、MJにとって、モトーラは、歴代社長の中でもっとも「ウザい」相手だったのでしょう。

成功に導いた実の父親や、ベリー・ゴーディ、クインシー・ジョーンズといった人々でさえ、自分のやり方を通すために別離し、有能なマネージャーのディレオ、ソニーウォーズでも切り札になった版権取得を可能にしたジョン・ブランカでさえも、首にしてきたマイケルは、自分に指図するような相手と長くつきあうことはしません。

マイケルの業績として、彼が新しい音楽ビジネスを開拓したということがよく語られています。新たなビジネスモデルを創るということは、経済分野においては、彼の音楽よりも評価されることですが、それは、そのモデルによって、他の人にも恩恵が与えられるからです。

2015年の音楽業界でも「MJフォロワー」は数えきれないでしょう。

『MJ Tapes』の中で、マイケルは、マドンナのことをあまり良く語っていない理由のひとつは、自分の真似をすることで、自分に近い地位まで獲得した彼女に、自分とはまったく違う精神を感じるからだと思います。その感覚は複雑だと思いますが、

あえて、ひとことで表すとすれば、「PHONEY(偽物)」ではないでしょうか。


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私たちが、心の底から「本物」だと思うアーティストは、素晴らしいものの中にも、「偽物」を感じるような鋭敏な感覚を、永遠に持ち続けることで、真の「本物」になったのだと思います。

マイケルは、マライアの才能を認め、高く評価していますが、それは、彼女がマドンナと違って、自分のライヴァルにはならないということもあったでしょう。でも、社長として、売上げベースで比較すれば、ふたりのアーティストの価値は拮抗していて、モトーラは、その一方を創ったという意識で、マイケルに接したはずです。

「KING OF POP」のみならず、「KING OF MUSIC」であるマイケルがそれをどう感じたか、どんな山よりも高い、MJのプライドを知るファンとしては、彼が「イラっ」とする感じが想像できるんじゃないでしょうか。

「KING OF MUSIC」である自分の想像の翼をすぼめることは、「音楽を殺すこと」と同じだと、マイケルが考えても、彼のファンなら、ただの傲慢だとは思わないでしょう。彼のような音楽を創り上げるには、それぐらいの妥協のなさと同時に、ビジネス論理にも打ち勝つことが必要でした。

米国の一流企業のトップにとって、女性蔑視的な行動や、人種差別的発言を公表されることは完全に「OUT」です。SONYのようなコンシューマー企業は特にそうです。

マライアから、最初にモトーラについて相談を持ちかけられたときから、MJが内心ほくそ笑み、マライアを移籍に誘導していった。とまでは言いませんが(あ、口がすべったw)、ソニーから移籍したマライアから、モトーラの罪状を聞いたとき、小さくガッツポーズするMJが、どうしても私には見えてしまいます(妄想ですw)。

会社に莫大な利益をあげたアーティストを育てたことで得た地位は、彼女に去られたことで、危うくもなっていました。モトーラのマライアに対しての監視や盗聴行為は、ライバル会社に移籍した元妻が自分の立場を悪くすることへの防御の意味合いもあったでしょう。

マライアの口からそれを聞き出したとき、それは、MJにとって、「時はきた。」という瞬間ではなかったでしょうか(またまた妄想w)。

当初のインタヴューで答えていたように、MJのソニー攻撃は、モトーラ下しの手段という側面が大きかった。

ただ、MJの心の中では、結局、そのふたつへの怒りは、同じものとして、燃え上がっていったのだと思います。


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Commented by kyou89rock at 2015-01-21 18:47 x
突然すみません.
いつも興味深く、読ませていただいてます.
一方的な感謝を込めて、コメントさせていただきました.
Commented by yomodalite at 2015-01-21 19:51
kyou89rockさん、はじめまして。コメントありがとうございます!

今ね、ああ、、もう、こんなの書き始めるんじゃなかったと(笑)思ってたとこで、、もう、、そんな「反省」何度もしてるんだけど、懲りないっていうか、治らない病なんですねw

私が暴走しても、冷静に読んでくださる方が多いので助けられてます。いつでも「ツッコミ」待ってますので、今後ともよろしくおねがいしますねっ!
Commented by kyou89rock at 2015-01-23 15:30 x
yomodalite 様
返信いただいて、少し驚いてます。
私、実際にお会いしたことの無い方のブログにコメントすることが初めてでして(著名人は別)、本当に嬉しいです。
ありがとうございます。
私は、MJ氏のことをほとんど一般的な情報しか知りません。
yomodaliteさんのブログに行きついたのは、西村 肇さんの本の件でした。
そこで、他の記事も読ませていただいて、初めて、アラート設定をして読んでいるブログになっております。
誠に勝手ながら、応援させていただきます。
コメントにこんなに書いていいものなのかもわかりませんが、お礼まで。
Commented by jean moulin at 2015-01-23 18:43 x
こういうビジネスレベルも含めた考察は、Yomodaliteさんならではの真骨頂だね。
おもしろーーい。謎の多いソニーウォーズも、意外と「ウザい」が言い当ててるのかなって思うね。
ソニーウォーズの時の写真を見ると、「そのあり!?」ていうようなイタズラをしているMJを思い出しちゃう。
私たちが目にしたり、手に取る事の出来る断片を、どんなにつなぎ合わせても、MJの壮大な心象世界を垣間見る事はできないというのは、ここ数年思ってきた事がけれども、ただ私は、いろいろな人がそれぞれの目線で、その断片を拾い上げ、慈しんで、検証いく事、それはとても大切な事で、そうして出来上がってくるMJの姿というのは、それぞれ「本物」だと思ってる。
Yomodaliteさんはとてもたくさんの貴重な断片を拾い上げ、「これでもかっ」(笑)って撫で回したと言うかなんて言うか・・やっきたよね。
これからも、言葉は変だけど、そんな撫で回しを楽しみにしてるよ。
そして、そういう作業に心からの敬意と感謝を表します。
Commented by yomodalite at 2015-01-23 21:09
>yomodaliteさんのブログに行きついたのは、西村 肇さんの本の件でした。

あ、そうだったんですか。MJファンの方だと勝手に思ってしまって、コメント間違っちゃった感じですね。MJに関しては一杯書いているものの、読書のことはあまり書けていない状況なんですが、それでも、あくまでも読書ブログだと思っているので、そういう方からのコメントはすごく嬉しいです。

西村氏の本からは、色々な啓示を受けました。MJのことが私の読書に一番役立ったと思うのは、彼のおかげで、一般的なクリスチャンとは違う欧米の「God」の文化について、以前よりも大分わかるようになったことでしょうか。西村氏の本から繋がったkyou89rockさんに、私も興味があります!今後も気軽にコメントくださいませ。
Commented by yomodalite at 2015-01-23 21:39
moulinさん、コメントありがとーーー!!!

>Yomodaliteさんならではの真骨頂だね。

そんな憶えないってば。フリーランスで仕事してる頃、請求書1枚書くのさえ嫌で、そんなメンドクサイことするぐらいだったら、もうギャラいらない。なんて思ちゃうぐらい、ビジネスマインドに欠けた奴だったんですけどぉ。。

>撫で回したと言うかなんて言うか・・やっきたよね。

うん。やっきた。って、なに、それ(笑)

>そんな撫で回しを楽しみにしてるよ。

それ、なんかイイ言葉だね。登場人物みんな「なでなで」したい気持ちだったから、そんな感じかも。うん。撫で回してみるね!
Commented by jean moulin at 2015-01-26 17:43 x
>うん。やっきた。
まちがちった。
コメ欄復帰して、間もないから・・。許してチョンマゲ。
そうだね、yomodaliteさんの場合、いわゆる悪者にしてしまえば簡単な人の目線にも立つからね。
でもその分、出来事の厚みが増して、読む方としては読み応えがあるけど、書く方は大変だよね。
Commented by yomodalite at 2015-01-26 21:13
じゃ、チョンマゲる(笑)でもさ、何と間違ったかわかんなかったんだよね...w
Commented by jean moulin at 2015-01-27 18:04 x
「そのあり!?」→「それあり!?」
「やっきたよね」→「やってきたよね」
どうして、こんな要所要所で間違えてるかな・・。
Commented by yomodalite at 2015-01-28 10:19
>→「やってきたよね」

たった一文字だったんだ。。ふむぅ。。
それにしても、うっかり、もっと撫で回さなきゃって思ってしまって、よけいに長くなっちゃったよぉ(大汗)
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by yomodalite | 2015-01-21 06:00 | MJ考察系 | Trackback | Comments(10)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


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