ソニーウォーズの意味について[1]

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正月三が日を明けた頃、尊敬するある先生から、

「私はPHONEY(偽物)が嫌いなんです」

という言葉を聞いて、私の頭の中は、SONYへの抗議行動を起こしたときのマイケルの姿でいっぱいになり、そのあと、その先生と同年代である吉本隆明のNHKの番組「戦後史証言」を見て、

SONYという会社が2000年以降のMJの活動を妨げ、その他諸々、彼への陰謀に関わっていたという論調に違和感を感じていた理由のひとつは、偏向する報道の視聴者であり、利潤を追求するために働いている「私たち」が抜けていたからだと思いました。

大衆の原像を忘却し、この原像から、思想が孤立することは恥辱である。大衆の思想は、世界性という基盤をもっているのだ。ー 吉本隆明「情況とはなにか」

大衆の原像とは、今のありのままの大衆ではなくて、大衆の理想化されたイメージであり、それを正しさの基準としなければならないのだと。

MJが背負った「KING OF POP」の「POP(大衆)」にも、それと同じようなものを感じる。

番組では、吉本隆明に影響をうけた人々だけでなく、同時代のさまざまな論客による彼への異論も紹介されていて、それぞれの人がもつ「正しさ」のものさしのようなものも見えたけど、「思想家」として、時代を超えるものと、そうではないものとの違いも、少しだけ見えたような・・

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そんなことを考えつつ、久しぶりに西寺郷太氏の『マイケル・ジャクソン』を見てみたら、

人生を危険にさらせ ー『悦ばしき知識』

という、ニーチェの言葉が冒頭にあって、西寺氏がどんなきもちでそれを引用されたのかはわからないけど、なにか同じものを感じて嬉しくなった。マイケルは、ほとんど語らなかったし、むずかしい言葉も絶対につかわなかったけど、彼のことを考えようとすると、偉大な思想家の力を借りなくては説明の出来ないことがいっぱいある。というか、MJの持っていた何かが、それまでは何を言っているのかわからなかった言葉の中から、それを発見させたり、ゴミ箱に入れてもいいものも教えてくれる。

若いときに「本物をいっぱい見ろ」とよく言われたけど、何が「本物」なのかよくわからなかった。でも、一度でも「本物」に出会えると、芋づる式に「本物」に出会うこともできれば、素晴らしく見えるものの中に偽物があることにも気づく。

偽物は、借り物の言葉で出来ているけど、本物は、それを表す言葉がないことに気づかされて、言葉を失わせられる。それで、自分の無知を知ることができるのだ。

MJのことを考えていると、いつも言葉を失って、誰かが、彼について語っている、その言葉にも納得ができない(そんな経験をみんなもしてるよね?)。

そんなことを考えていたら、childspirits先生から電話がかかってきた。

C:お正月に『THIS IS IT』をコマ送りで見て、どうだった?


Y:私って、すっごい俳優だなって思うと、コマ送りで見るの好きじゃん? でもさ、『THIS IS IT』をこれだけ何度も見てるのに、まだやったことなかったのね。なんか、怖かったんだよねw、うっかりすると、なんだか恐ろしいものが見えそうでさ、そーゆーことよくあるじゃん、マイケルの場合w。でもね、だいじょうぶだった。もうね、どこで止めてもすっごく絵になってた!


C:娘がまだこどもの頃に、「スリラー」を見せたことがあったんだけど、それからしばらくして、「You Are Not Alone」を見て、すごくショックを受けてた。あの「スリラー」の人がこんな風になったんだって。


Y:リアルタイムで彼の変化を見てるときは、あれでも、充分ショックだったし、基本的にいつもショックを受けてたような気がするw「Blood On The Dance Floor」だって、今は死ぬほど好きだけど、昔あれを見たときの怖さは、未だに忘れられないし、あらゆる映像の中でも一番トラウマになった映像は「You Rock My World」のような気がするしw。。。あのね、今「ソニーウォーズ」のこと考えてて、それで、「Threatened」の歌詞も翻訳しようと思って読んでて、それで、あらためて怖いなぁって思ってたところだったんだ。ホント、マイケルってハンパなく恐ろしいよね。怒ってる神々って多いからかなぁ・・・




彼の怖さについては、まだよくわからないけど、「ソニーウォーズ」のときの、今までに見たことないような行動。あのときのMJは何に怒っていたんだろう?

SONYは、アップル設立前のスティーブ・ジョブズが憧れるほど輝いていた会社でありながら、一般的な米国人にとっては、自国の衰退を感じさせた外国企業の代表として、それまでも、職を奪われた人々による抗議のはけ口として常にニュースにされやすい会社で、単純な陰謀論を信じやすいファンにとって、うってつけの企業だった。

それまでのMJは、SONYから、その革新性の象徴のように扱われていて、彼が抗議した、レコード会社がアーティストから搾取しているという主張は、SONYという会社の固有の資質ではなく、むしろ、SONYのマイケルへの投資は、他と比較すれば異例で、MJがどんなに売れたからといって、他の会社だったらこれほど自由にできたとも思えなかった。

『HIStory』が、巨額の広告費を投じた割には売れなかった後の『Invincible』までの6年という長い歳月は、レコード会社としては我慢の限界を遥かにこえていて、MJがアーティストとして、彼らからの催促をかわし続けたことは流石としか言いようがないけど、SONY本体が映画部門の失敗で苦しむ中、売り上げ不振だったレコード部門の縮小は止む終えないもので、当時、MJが得意としていた華やかな宣伝は、消費者にも好まれなくなっていた。


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そんな状況の中でも、相変わらず巨額な費用をかけたビデオを製作し、それが1本しか創れなかったから、会社が「Invincible」を売ることを妨害したとか、マライア・キャリーの訴えを100%信用し、トミー・モトーラを「悪魔」呼ばわりするなんて、

「僕は人を憎むことは決して教えない」

と言っていたことに反してないだろうか。SONYとの契約の中には知られていないことも多くあるのだと思いますが、これまで見聞きしたものの中には、真実の光を放つものはなく、長い時間をかけて創った素晴らしいアルバムに対して、不当なほど酷い評価を下したメディアや批評家に憤慨するのならわかるけど、

すでに、知らない人が誰もいないほど有名になったアーティストが、広告が足らないことへの不満から、所属レコード会社に対して派手な抗議をするなんて、円熟したアーティストの行動とは思えないし、トミー・モトーラは、MJが「悪魔」と呼ぶには小さ過ぎる相手ではないか。長くエンタメ業界で過ごしてきた彼なら、モトーラ程度の「悪魔」なら、何度も遭遇してきたはず。。

『インヴィンシブル』が発売になったのは、同時多発テロと同じ2001年。抗議行動は、その翌年、ブッシュ大統領が「悪の枢軸」発言をした2002年。そのとき、マイケルには、もっと他に言うべき言葉があったのではないか。

私はずっとあのときのMJのことがわからなかった。


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Commented by jean moulin at 2015-01-19 18:36 x
Yomodaliteさん お久しぶり!
ソニーウォーズについては、不可解な事がたくさんあるね。
考察の続き楽しみにしてます。
あの、コマ送りはしないんだけど、私も最近なんだか『THIS IS IT』むちゃ見てて・・。
夜が更けると、『THIS IS IT』みたいな感じなの。
『THIS IS IT』の公開前ね、私、これでもかって生前制作のショートフィルムを見ていたのね。
で、『THIS IS IT』を見た時は、まさに見てはいけないものを見たような感じで、感動というより、呆然という感じだった。
それが、これまでの時間をかけて、やっと、正視できたり、その時の理由を考える事ができたりしてるみたい。
Yomodaliteさんの記事読みながら、いろいろ思いを馳せてみよっと。
Commented by yomodalite at 2015-01-20 12:26
moulinさん、ありがとーーー!!!

>『THIS IS IT』を見た時は、まさに見てはいけないものを見たような感じで…

そっかぁ、、moulinさんは、『THIS IS IT』に躊躇を感じた方なんだね。そういう人もすごく多かったよね。私たちみんな、MJのやさしさとか、カワイイとことか、いっぱい知ってるんだけど、怖れを感じたことがないっていう人も少ないと思うんだよね。

>これまでの時間をかけて、やっと、正視できたり…

moulinさんが、やっと正視できた部分について、聞きたいなぁ。。今度、ぜひ!

そして、その他もろもろ、ご意見もよろしくっ!
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by yomodalite | 2015-01-18 20:27 | MJ考察系 | Trackback | Comments(2)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


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