『MJ Tapes』の翻訳について[4]序章を終えて

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☆『MJ Tapes』の翻訳について[3]の続き

yomodaliteと、childspirits先生とのおしゃべりの続きです。



C:「すんなり納得できるパターン」っていうのは、MJの事に限らず、私たちが日々インプットしたりアウトプットしたりする言葉が陥りやすい罠だね。そういう意味で、『MJTapes』も他のMJ本とは一線を画していて、同時に、一線を画した批判のされ方もしたんだね。そのこともMJに出会ってすごく考えさせられた。


彼の事があるまでは、誰かの熱烈なファンになったことはなくて、「ファンの愛」というものを遠巻きに見ていたけど、MJの死後に「彼は誰かに殺された」という疑惑がいろんなパターンで出てきたとき、そちらに引っ張られたこともあったのね。急激に彼を好きになった分、彼の死を理不尽な悲劇とのみ捉え、彼をかわいそうな被害者と考え、「死に追いやった悪者」を突き止めて、「懲らしめねば」、みたいな気持ちにね。そんなことは自分にできることではないし、できたとしても、死後のMJにどんないいことがあるのかわからなかったけど。たぶん、悲劇の人というイメージにあうプロットを探して、大好きなMJのために何かをしている自分を感じたかったのかなぁ。だから、「すんなり納得できるパターン」と「プロット」の話は、人ごとではないかな。



Y:推理小説って、まさにプロットでできてるストーリーだからね。別に殺さなくてもいいようなことでも、殺す。ストーリーのためにw。MJのようなメガスターが「殺されるかもしれない」という想像は、生前から人々の中にあって、実際に「殺されたのかもしれない」という疑惑は、真剣に検証されなくてはならないし、その可能性を全否定するつもりはないんだけど、ただ、その論者のひとたちは、私が見た限り、全員その動機を「お金」に絞ってるよね。


それなのに、「お金のために殺された」と主張してるサイトは、どこも、お金のことがわかってるとは思えないんだよね、残念なことに。彼らが「確信」しているのは、世の中は強欲な人でがあふれていて、そういった人々が共謀している「不公平な社会」だということだと思うのね。そこは私も共感しなくはないけど、「強欲」から「殺人」へのプロットが弱くて、MJのお金の流れについて、比較的細かく説明してくれているところの情報を読んでいると、MJが亡くなった場合と、生きていた場合と比較して、確実に前者の方が儲かる立場を確保するのは、かなり難しいと思ったのね。利益を得るためには、まず借金の返済をしなきゃいけないわけだけど、この収支をプラスにもっていけるかどうかは、MJブランドが回復した現在から考えても不確定でリスクが大きすぎると思う。



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チャンドラーやアルビーゾがやったことを思い出すと、MJがリスクが大きくても「お金のため」という考えの犠牲になったことは間違いないんだけど、殺人に関しては、疑惑は理解できるけど、具体的に納得できるプロットには出会わなかったし、私にも出来ない。


だって、実際に調査したわけでもないのに、想像だけで人を判断するなんて、まさにMJがされたことと同じじゃない?


チャンドラーや、アルビーゾはお金のためだけかもしれないけど、メディアが、MJを利用できたのは、そこに様々な人の「正義感」や「ジャッジ」があったからでしょう?


でも、私たちには、殺人疑惑に決着をつけることはできないけど、MJが旅立つ前の美しい姿は、この眼ではっきり見たじゃない。それが、仮にものすごくいい状態を繋ぎ合わせたものだったとしても、あれだけたくさんの奇跡のような瞬間があるってことは、それまでの生活の賜物で、「1クールのレギュラーより、1回の伝説」(by 江頭 2:50)に重きをおいていたってことでしょ(笑)。



C:さすがエガちゃん、いつでも捨て身の芸人(笑)、いいこと言うわ。「すんなり納得できるパターン」についてしつこく言うようだけどね、自分という人間をみれば、そこには正と邪、強と弱、清と濁、いろいろな要素が渦巻いていて、本当にやっかいだと思わされる。それなのに、いやそれだからか、他人には、特にアイコンと呼ばれるような人に対しては、片方を拾って、もう片方を忘れてしまうことを極端にやっちゃいがちだよね。「やっかいさ」から逃げ出して、自分なりにスキッとするストーリーを、相手に見出すっていうね。幼い頃からスポットライトの下に生きたMJは、世の人のそういう欲求を十分わかってて、それを受け入れていた気がするな。


“I just can't stop loving you” の語りで’people don’t understand me(みんな僕のことをわかってない)’とささやきながら、“Give into Me” では’don’t try to understand me(僕のことをわかろうとするな)’と歌い、“Is It Scary?” で’I’m gonna be exactly what you wanna see(僕はあなたたちが見たいと思うものになってみせる)’と言ってるでしょ。2000年の時点で既にメディアや世間からひどい目に遭っているわけで、『MJTapes』の中には、MJの悲痛な叫びも多いんだけど、一方で彼は、神や世間に対して「怒っていない」とも言うんだよね。



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Y:実際に怒ってたこともあったけど… (いわゆるソニーウォーズはこの会話の直後ぐらい。その話はまた後で)MJの捨て身の覚悟が「社会的正義」じゃないことは確かだよね。彼の作品は大抵の場合、自分の気持ちを直接表現しているんじゃなくて、様々な人の視点が取り込まれているし、怒りすらも作品として昇華させた。人々が踊ったり、辛いことが忘れられたり、癒されたり、、そういうことがエンターテイメントの尊い仕事だと信じて。


シュムリーは「どうして、自分だったのだろう」なんて、何度も考えてるけど、MJは、ラビであるシュムリーにも、政治的な正しさより、人の心を癒すことが大事なんじゃないかって言いたかったんじゃない? それなのに、このヒゲメンはw、自分のことをMJのカウンセラーだったと勘違いしてるわ、「オックスフォード・スピーチ」だって自分が原稿を書いたって言ってるけど、シュムリーが許さなくてはならないとわかってるのは、聖書に敬えって書いてある「自分の父親」のことだけなんだよね。だから、実際にMJの口を通したものとはちがう。


MJは自身の怒りを告発してもいい立場だったにも関わらず、「許さなくては」とスピーチしたんだから。エリ・ヴィーゼルや、シモン・ペレスもいた“Heal the Kids”のボードメンバーたちの中で。


シュムリーが処方薬についてウルサくいったことは、MJのためを思って言っていたことだと思うけど、じゃあ、MJがシュムリーのためを思って言っていたことを、彼が真剣に聞いていたかといえば、この本でも明らかなように、そうじゃないじゃない。シュムリーは、MJがこどもたちを残して…ってことに怒りを感じてるみたいだけど、そんな彼に一番キツい反論をするとしたら、


あなたは、自分のこどもたちの世代には、自分と同じような差別にあって欲しくない。そんな思いから、貧しいひとを助け、自分が同胞だと信じるユダヤの仲間が被った境遇に寄り添い、「世界に類のない唯一無二の民族的虐殺」であるとアナウンスする役目も積極的に行なった。


でも、あなたが「ホロコースト」を唯一無二だと信じ、イスラエルの暴走を許したせいで、罪のないこどもたちも大勢犠牲になった。ユダヤへの恨みは、キリスト教社会から、現代のイスラム社会へと拡大し、今、あなたの子どもや、これから生まれるユダヤ人の子どもたちは、あなたが受けた差別よりももっと強い恨みを受けつつある。あなたが、不当な差別を受けた人々ができる唯一の方法は「彼らをこの世界から追い出すことだけだ」と信じたばかりに。


マイケルの子どもたちは、父親の死によって、大変な苦痛を経験した後も、口さがない人々のせいで、今も辛い目にあることもしばしばだと思う。でも、あなたの子供より不幸せかどうかは誰にもわからない。ってことじゃないかな。



C:そこは大きく肯きたい。ただ、yomodaliteさんが、キツい反論しちゃったから、なんだかシュムリーのこと庇いたくなってきちゃったんだけどw、私がもしシュムリーの奥さんだったら、彼が「やっぱり間違ってた。MJの言う通りだ」って言って家に帰ってきたら、受け入れられてたかなぁとも思うよね。おそらくそんなことをしたら、もう大学にも戻ることも出来ないし、身に覚えのないことで逮捕されるとか酷い仕打ちにあるかもしれないし、9人の子どもを抱えて、これからどうやって生活するつもり?って言っちゃうかもね。



Y:だよね。シュムリーへの批判を考えてると、速攻ブーメランなんだよね。



C:私たちは、MJのことが好きだから、彼の側に立って考えてるつもりだけど、ここでの会話をよく聴いてみると、自分の中にも「シュムリー」がいるんじゃないかと思うよね。



Y:私たちがいる世界では、愛はすぐ憎しみに変わるし、正義はいつも暴走する。だから、MJは「僕は憎しみは絶対に教えない」と言い、「僕は正義は信じていない」と言ったんだよね。



C:世界で一番有名なポップスターとして、彼は「実像」を理解してもらうことよりも、皆の「虚像」であることを引き受けようとしたようにみえる。その覚悟はすごくて、そのことこそがMJの比類のなさだという気もするんだけど。ただ、世間は、そして私たちは、MJのその覚悟の大きさに甘えて、いろんなプロットが暴走した感があるよね。



Y:MJに関して、さまざまな噂が暴走した原因については、今は、メディアの罪についてばかり語られるんだけど、当時のMJの変化について、理解できていたなんていう人は、本当に少なかったと思う。


それでね、マイケル自身が「MJストーリー」のプロットをどう考えていたかってことなんだけど、、


☆この続きは、いつかまた。。


今、ふと思ったんだけど、、

MJがヒゲメンだったときは、シュムリーとの蜜月期だったんだなぁ。。





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by yomodalite | 2014-11-29 01:03 | MJ考察系 | Trackback | Comments(0)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


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