宇宙のデザイン原理ーパリティ・ゲージ・クォーク/アンソニー・ジー(著)

2ヶ月ほど前に、60年代の映画『アラバマ物語』をDVDで見直したんですが、再発版には、出演者だけではなく、当時のアラバマ住民が、南部の歴史やその頃の生活について語っている90分のメイキング・ドキュメンタリが収録されていて、そのタイトルが『Fearful Symmetry』。

オープニングで、ブレイクの『Tyger』が引用され、詩の中の “Fearful Symmetry” が拡大されて、タイトルバックになるのですが、当時の激しい人種差別や、村民同士の対立、そういった白人の世界と黒人の世界を『Fearful Symmetry』と名付けるセンスがよくわかりませんでした。


それで、尊敬するF先生にメールで質問したところ、ドキュメンタリ作者の意図はわからないものの、シンメトリと神のクリエイションの関連を考える良い糧になるでしょう。と、物理の世界におけるポピュラーな評論書である、本書を紹介していただきました。(原題:Fearful Symmetry:The Search for Beauty in Modern Physics, New York, 1986)

対称性は、物理の世界ではたいへん重要な事柄のようですが、南部陽一郎氏らがノーベル物理学賞を受賞された「自発的な対称性の破れ(Spontaneous Symmerty Breaking)」のように、自明だった対称性が仮定にすぎない。。。というようなことが、アインシュタインや、マイケルのGODへの想いを覆すものなのかどうか。

神の方程式は本当に美しいのか?ということ。

パリティも、ゲージも、クォークについても、基礎的な物理学や、宇宙についてのことも、これまでにも何度も挫折していて、こちらの本も、著者が優しく書いてくれていることはひしひしと伝わるものの、理解するまでには至っていないんですが、私が知りたいと思っていたことを書いてくれている本には違いないので、

いつかきっと。という想いをこめて、

相対論から、80年代初頭までの物理理論の展開をシンメトリーの視点から描いた本書のことを、

少しだけメモしておきます。


(引用開始)

物理学が進歩していくにつれ重要になってきたのは、美を感じ取る力である。究極のデザイナーの心を読みとるために、物理学者たちは対称性と美から成り立っているものへと、その関心をむけることになったのである。夜のしじまの中で、まだ夢みられたこともないような対称性について、語りかけてくる声に耳を傾けているのである。

かつて、アルバート・アインシュタインは次のように語った。

「私は、この世界を神がどう創ったか、それを知りたいのだ。したがって、あれやこれやの現象や、あれやこれらの要素のつながりには関心がない。私は神の考えを知りたいのであって、その他のことはとるに足らないことなのだ。」

確かに、物理学の方程式の中には醜いものもあるが、われわれにしてみれば、そんなものは書き留めるのはおろか、それを見ることさえ我慢ならないのであって、かの創造主がこの宇宙をデザインするにあたって、美しい方程式だけを用いたのは疑いないことだと、そう確信しているのだ。事実、この自然を記述しているという2つの方程式が与えられて、その間で選択を迫られるとき、われわれが選ぶのはいつも、われわれの美意識に訴える方の式である。「まず、美しさに気を配ろう、真理はあとからついてくる!」


物理学者のひとりとして、私はアインシュタインの言わんとしたそのことに、大きな魅力を感じる。もちろん今日、物理学者の圧倒的多数は、個々の特定の現象を説明することに力を注いでいる。しかし一方には、少数ではあるが、アインシュタインの知的末梢たちもいるのであり、しかも彼らはいまや、以前にも増して野心に満ちあふれている。つまり、自然界の基本デザインを求めて闇夜の森に入り込み、しかも、その限りない自信の中で、すでにそれを垣間みたと主張するまでに至っているのだ。

そうした彼らの研究を導いている基本原理は2つある。すなわち、対称性とくりこみ可能性である。くりこみ可能性というのは、異なる特徴的長さをもった物理過程どうしが互いにどう関係するのかに関わることで、これについても本書ではふれるつもりである。しかし、本書での私の関心はむしろ、基礎物理学者たちがこの自然を眺めるときの、統一的な美の視点としての対称性のほうにある。

(引用終了)







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Commented by mitch_hagane at 2014-10-30 23:28
お久しぶりですぅ。みっちです。

「Songs of Experience」詩集中の「The Tyger」ですが、これは「Songs of Innocence」詩集中の「The Lamb」と対をなす、と解釈するのが普通で、それで、TygerとLambがsymmetryをなすのだと思いますが、どうでしょう。

「アラバマ物語」のドキュメンタリーのことは、よく知りませんが、それが白人と黒人の対立を書いているのなら、上記と同じくSymmetryで、おかしくないのでは?
Commented by yomodalite at 2014-10-31 00:52
おいでやすぅ。みっちさん。
困ってるとき、いつも助けてくださって感謝してます!

>これは「Songs of Innocence」詩集中の「The Lamb」と対をなす、と解釈するのが普通で。。

参考訳)http://blogs.yahoo.co.jp/rmnjr654/36909479.html
参考訳)http://blake.hix05.com/Innocence/122lamb.html

「The Lamb」も「The Tyger」と同じく、Godクリエイションへの驚嘆の歌だとは思いますが、

「TygerとLambがsymmetryをなす」

ん? んんん? シンメトリは虎の柄のことでは?

でもって、

「上記と同じくSymmetry」

うん、、みっちさんは「Symmetry」に対称性という意味以外で考えておられるのでしょうか?

ちなみに、ついでと言ってはなんなんですが (^_^;) 

みっちさんに聞いてみたいと思っていたブレイクの詩が、他にあるんです。

「All Religions are One」という詩なんですけど、

http://ramhornd.blogspot.jp/2010/10/all-religions-are-one.html

上記のセンター揃えの文字が「詩」の全体でいいのかな?これですべてですよね?
Commented by mitch_hagane at 2014-10-31 08:51
symmetryって、幾何学的対称性に限定することはないと思いますよ。
例えば、小説の構成がsymmetryである、なんて言う場合は、前後で同じことが書いてあるという意味では決してない訳で。(笑)
みっち愛用のLDOCEには、こうあります。
「the quality that a situation has when two events or actions seem to be balanced or equal in some way」
このsome wayってとこがミソですよね。
TygerとLamb、ExperienceとInnocenceがsymmetryで、一向に差し支えないのでは。

ブレイクのTygerの版画を見ると、虎さんはとても可愛らしく描かれてますねぇ。asymmetryだし。(笑)あの詩は虎の獰猛な美しさや均整を賛美しているだけではないと思います。

>上記のセンター揃えの文字が「詩」の全体...
そうでしょう。Wikipedia見てください。↓
http://en.wikipedia.org/wiki/All_Religions_are_One
Commented by yomodalite at 2014-10-31 10:35
>symmetryって、幾何学的対称性に限定することはないと思いますよ。

同意。物理学さっぱりで、美術系の私にも “symmetry” の説明としては「LDOCE」の方がしっくりきます。

>TygerとLamb、ExperienceとInnocenceがsymmetryで、一向に差し支えないのでは。

TygerとLambとう詩が一対で、その詩が納められた詩集「Songs of Innocence」と「Songs of Experience」も対をなす。というのは、「経験」と「無垢」の人、MJを読み解くうえで、とても重要ではあるんですが(笑)、うん。。。私がわからないと言っていることも曖昧なので、どう言っていいのかわからないんですけどぉ、、 Symmetry だけじゃなく、“Fearful” がね、このドキュメンタリに “Fearful Symmetry” と名付けたセンスに対して、うむぅ。。と思ったわけで、、

“Fearful Symmetry” って、カッコ付けの巻頭言ぽく、あちこちで引用されてますけど、このドキュメンタリでは、わざわざ朗読して、文字も画面に焼き付けてあって、そこまでしてこれを使いたい気持ちが、イマイチ理解できなかったと、そういうわけなんです(あの教科書にイェイツの詩を引用した人への疑惑wと似たようなことですね)。でも、みっちさんの説を伺っているうちに、制作者の願いが込められていたのかと思いはじめました。

>そうでしょう。Wikipedia見てください。↓

そうそう、このウィキが長くて、、しかも、私のキライな英語じゃないですかw それで、みっちさんに確認とりたいっていうか(笑)

このページの「Content」のところの、Text が「詩」ですよね。Notes には、これはマタイ伝のこの部分で、、とかっていう説明だと思うんですが、Description に書いてあることについては、その上の Dating に書いてあるみたいなんだけど、なんかよくわかんないんです。これはブレイク自身によるものではなくて、「All Religions are One」っていうのは、当時の欧米では危険思想ということもあって、それで出版者側がいろいろと書き足してるということなんでしょうか? みっちさん!
Commented by mitch_hagane at 2014-10-31 11:52
はい、symmetryは「幾何学的対称性」が本義であるのは、間違いないのですが。
派生的な意味合いとして、こんな語義もあるよということですね。

fearful symmetryですが、獲物を狩る側・狩られる側、あるいは善と悪、こういう神の作ったsymmetryを「恐るべき」と表現するのは、あたっているのではないでしょうか。

>Description に書いてあることについては、その上の Dating に書いてあるみたいなんだけど、なんかよくわかんないんです。これはブレイク自身によるものではなくて、「All Religions are One」っていうのは、当時の欧米では危険思想ということもあって、それで出版者側がいろいろと書き足してるということなんでしょうか?
まあ、そう想像を逞しくしないでください。(笑)
Datingは出版された日付について、文献学上の考証をしているだけでしょう。同じ時期に別の詩集「There is No Natural Religion」があるので、そのどちらが早かったという検討ですね。
いずれにせよ、この2つの詩集が、ブレイクのレリーフ・エッチングの最初期のものなのは間違いない。
Descriptionは絵の部分の説明、Notesは全体の解説です。(いずれもWikipedia本項の著者による)
もちろん、ブレイクが書いたのはTextと絵のみです。
Commented by yomodalite at 2014-10-31 14:05
>神の作ったsymmetryを「恐るべき」と表現するのは、、、

そこは、最初からそう思っているんですけどぉ。。(笑)

>まあ、そう想像を逞しくしないでください。(笑)

得意技といえば、それぐらいなんですよぉ(笑)妄想が膨らんで無駄に苦しんでもいるんですが(泣)

>同じ時期に別の詩集「There is No Natural Religion」があるので、そのどちらが早かったという検討ですね。

Wowーーー、そこは、まったく目に入っていませんでした。

で、、みっちさんのご想像どおり、「All Religions are One」を訳してみたいと思っていたんですけど、「There is No Natural Religion」も併せて読みたいですね。私が無謀にも取りかかった際には、また是非ご協力くださいませ。(というか、みっちさんが訳してくれたら楽なのにw)
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by yomodalite | 2014-10-29 22:41 | 科学・環境問題 | Trackback | Comments(6)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


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