こちらで発見した記事(Scoop.it!)なんですが、オックスフォード大学出版局で本を出している著者やスタッフが、哲学、文学、経済学など、あらゆるアカデミックな分野にわたって、自分の考えたこと、研究していることなどについて語られているブログで、
認知神経科学の教授が、真の天才の創造性について、マイケルを例にあげて書いてます。
Source : Oxford University Press
Michael Jackson, 10,000 hours, and the roots of creative genius
マイケル・ジャクソン:10,000時間と創造的な天才の生み出し方
アルトゥーロ・エルナンデス 2014年8月8日
どんな人でも何かを毎日3時間10年学べば、その分野の専門家になれる、というのは魅力的な考え方だ。この考え方を最初に支持したのはミルトン・エリクソンだが、マルコム・グラッドウェルによって広く知られるようになり、今や主要なメディアにも定着するようになった。
その論理は、環境が生み出す違いを論じようとしている。目的を持って、絶えずフィードバックし、進歩し続けることで、どんな人も専門家になれる。そして、専門家になるのに、10000時間が必要ならば、天才になるには20000時間を必要とするということ。
天才の例として、マイケル・ジャクソンの場合を考えてみよう。
彼は、シカゴのすぐ近く、インディアナ州ゲイリーの音楽好きの一家に育った。父親のジョーは、R&Bバンドで演奏していて、彼の兄弟はみな何らかの楽器を演奏していた。兄弟や父と違って、マイケルは本格的に楽器を演奏することはなかったが、彼は頭の中で、自分の声を使って作曲した。
ある朝、ふと仕事場に来て作ったある曲は、のちに「ビート・イット」になった。スタジオで、彼はいろいろな楽器を含めた各パートを歌ってみせて、それをプロデューサーやアーティストたちが、マイケルのアレンジに従って、一曲の歌にしていったのだ。
認知神経科学の研究では、創造活動に関わる脳システムは、精神測定によるIQと繋がりがあるという解明が始まっている。
ノイバウエル(Neubauer)とフィンク(Fink)の研究では、精神測定によるIQと、専門知識という、ふたつの異なる能力は、前頭葉と頭頂葉の異なる活動に関係するとしていて、前頭葉と頭頂葉はまた、違ったタイプの仕事をするようである。
ある研究では、タクシー運転手を、紙と鉛筆で行うIQテストの結果によって、上位グループと下位グループに分けた。実験では、どちらのグループも通りなれた道では良い仕事をしたが、不慣れな道を運転するときは、違いがあらわれた。そのような状況下では、高いIQを持つグループは、低いIQのグループよりも良い結果を出したのだ。
つまり、専門知識は、訓練で高めていくことができるが、不慣れな状況に対応し、機転を利かせる柔軟性は、練習だけでは得られないということ。
マイケル・ジャクソンのIQについては、頼りになるデータがないが、10000冊以上の本を所蔵し、熱心な読書家だったと言われていて、インタビューからも表現力豊かで上品な話し方をする人物であることが伺える。そして明らかに、彼は色々なタイプの音楽をかけ合わせて、今までにない魅力的な作品を作り上げる能力があった。
こういったことについて、時間をさかのぼって調べてみれば、早くに天才を発揮する人の根底には何があるかを発見することができるかも知れない。彼は早い時期から、この分野について破格レベルの経験を持っていた。そのことが、非常に優れた音楽をつくる能力に結びついたのだろう。
ジャクソン家からは、多くの成功したミュージシャンが生まれている。多くはレコーディングアーティストとして成功している。おそらくマイケルは、兄弟よりもキャリアのスタートが早かった。この自然の実験から、私たちが引き出せる結論は、創造的天才を生み出すには、10000時間やるだけでは無理だ、ということだ。
マイケル・ジャクソンの場合、豊富な読書経験があり、非常に豊かな人生経験も積んでいた。彼はそれらの経験を、彼独自でありながら、人々になじみ深い音楽の響きも感じさせる、音楽を創り出すのに生かした。
そのような創作の形は、マイケル・ジャクソンのような天才に限ったことではない。
言語は、我々人類が手に入れた究極の能力で、この地球上の他の動物は持っていないものである。言語の元になるようなものはすべての動物界に存在する。系統的配列を駆使して凝った鳴き声を出す鳥もいる。チンチラは基本的な人間の発話を認識することができる。高度な霊長類は広範囲な語彙力を持ち、比較的複雑な言語を使うことができる。
しかし、いろいろな要素を集めて発話し、より豊かな表現に統合できるのは人間だけである。人間は誰しも、注意や運動神経や知覚をつかさどる脳の部分と連携している前頭葉を、大きく発達させる能力を持って生まれてくる。これらの大きく発達した皮質部分こそ、創造的天才の芽になる部分の生まれる場所である。
10000時間で効率的に仕事をする能力が創られるのは脳の限られた部分だが、より総合的な能力をつかさどる脳の部分を使うことによってのみ、真の天才は生まれるのである。(了)
アルトゥーロ・エルナンデスは現在ヒューストン大学の心理学の教授であり、大学院の発達認知神経科学プログラムの主任を務めている。『The Bilingual Brain(二言語脳)』の著者でもある。彼の主な研究分野は、子供および成人における、2つの言語使用と、第二言語の取得のための神経構造についてである。彼は、それらの現象を調査するために、神経画像処理メソッドや行動療法を取り入れており、その研究成果を多くの論文審査のある専門誌に載せている。彼の研究は現在、国立小児保健・人間開発研究所の基金からのサポートを受けている。
* * *
☆上記の翻訳は、kumaさんにご協力いただきました。(感謝!)
著者は「専門家」なので、自分以上の能力をもつ「天才」について、なんの専門知識もなく、なぜか、上から目線で語っている人とは違って、その凄さについて畏敬の念をもっているようです。
天才を創るには、20000時間以上が必要で、
天才で居続けるためには、さらに、、
そして、世界中の人に愛されるためには、、
一体、どこまでやれば「マイケル・ジャクソン」が創られるんでしょうね。