MICHAEL JACKSON, INC./ザック・オマリー・ グリーンバーグ

MICHAEL JACKSON, INC. 

マイケル・ジャクソン帝国の栄光と転落、そして復活へ

ザック・オマリー・ グリーンバーグ/CCCメディアハウス



日本×ギリシャ戦が終了し、監督や選手たちが空ろな表情でインタヴューに答えているとき、この本が届いて、観終わったばかりの試合結果を払拭するかのように、猛スピードで読みました。
 
著者は、エール大学を卒業し、フォーブス紙でシニアエディターを努めているということから、これまでの陰謀論好きのファンに向けた「マイケルの周囲は金の亡者ばかりで、彼はその被害者」というような展開ではなく、MJ自身が行なってきた様々な取引について語られていると期待していたのですが、

著者の経歴には他にも注目すべきところがあって、

雑誌フォーブスで記事を書くうち、私はマイケル・ジャクソンの死後の事業の巨大さ、そしてマイケルが生前に集め、育んだ資産の裏にある物語の魅力を実感するようになった。マイケルの偉業の数々は、単に敏腕弁護士たちがいたから達成されたのではなく、多くはマイケル自身の知性と直感があってこそのものだった。それを理解したとき、私の頭に『Michael Jackson lnc.』のアイデアが浮かんだ。
 
私のデビュー作『Empire State of Mind』は、音楽ビジネスの成功者と広く称えられるジェイ・Zのビジネスに焦点を当てた伝記だ。マイケルに対しても、同じ角度からアプローチできるのはわかっていた。しかし同時に、私はこれまでにない視点でマイケルを捉えていた。というのは、私は短い間ながら子役をやっていたことがあるのだ。少年時代のマイケルが昧わった痛みと重圧の2枚組アルバムに比べれば、私の体験を構成するのは単音ひとつきりかもしれない。それでも、華々しく、過酷で、現実離れしたショービジネスの世界の雰囲気は昧わってきたつもりだ。(序章より)

という著者は、かつて子役として、
あの映画『ロレンツォのオイル』で少年ロレンツォを演じていたんですね。

f0134963_01362559.jpg

あの少年が、実業家としてのMJの飛躍を目の当たりにしてきた100人以上の人にインタヴューして本を書くことになるとは、不思議なめぐりあわせを感じなくもないんですが、

読了後の率直な感想としては、思ったほど「ビジネス書」ではなかったです。

自分で「スリラー」の頃のことを書いているときに、エビデンスとなるようなデータが得られなかったので、著者の書き方によっては、自分が書いたことを訂正しなくては。と思っていたんですが、スリラーに関しては、これまでに語られていたストーリーをほぼ踏襲していて、期待したほどの収穫はなく、

総じてファミリーに対しては厳しく、エステートの評価は高く、MJのビジネスは90年代から管理者が次々と変わり、信頼のおけるパートナーを得られなかったことで、下降線を描いたという見方を覆すような展開もありません。

ビジネスに対しても、薬物に関しても、彼の周囲には「NO」と言える人物がいなかった。と嘆く声も、他書と同様でした。

また、MJのマネージャーの中で、特にディーター・ウィズナー(Dieter Wiesner)に対して「虚言傾向のある策士のドイツ人」と、辛辣な表現をしているのですが、そこまでの表現をする理由は、本文や注釈を読んでもよくわからないもので、

ウィズナーは、マイケルはラスベガスのいくつもの施設でクリエイティブコンサルタントを務めていて、ミラージュの火山噴火ショーもベラージオの噴水ショーもMJが考案したのだと言っている。(P276)

ウィズナーを庇う理由はありませんが、彼は自分の業績を大きく語ったのではなく「MJが考案した」と言ってるわけですし、著者は、これらの発言をホテルオーナーに確認して、ウィズナーをペテン師を言っていますが、これと似たようなことは、MJ自身も言っています。



ただ、全体を通して、最後まで飽きることなく夢中で読んだことも他書と同様で、もっとも、私はこれまでマイケル本で読まなければよかったと思ったことはなく、このブログに感想を書いた本の中で、相当低く評価した本でも、読んで損したと思ったことはないんです。

そんなに本を読まない人の中には、誰もが素晴らしいという本を読みたいという人も多いと思いますが、たくさん本を読む習慣をもった人間には、ダメな本も有用な読書だと思うものです。マイケルのようなレベルの読書家なら、やはりそうではないでしょうか。

私は、マイケルの浪費や、ビジネスや人生も、
それと同じではなかったかと思うんですね。

もし、マイケルが誰もがいいと思うようなことだけをやっていたら。。

彼のキャリアの中で大きな痛手になった、数々のことがなかったら。。

たぶん、私は今のように彼に夢中になってはいないでしょう。

私には、彼がステージを降り、
CDを発売しなくなってからの長い期間こそが「宝」のように見えます。

彼は、私たちのような普通の人間には耐えられない悲劇を生きた。

とてつもない天才でありながら、世界中で大衆的な人気を得たマイケルには、今後も悲劇がつきまとうでしょう。

でも、それは、わたしたちが普通の人生から離れることができないからで、彼は自分の思うように生き、自ら悲劇をも招いたのだと思います。

「マイケルは少年の心と天才の思考を持っていた」とベリーゴーディは言う。「とても情に厚く、口調は穏やかで、そして思慮深かった… マイケルはすべてをやりたがり、そしてそれができた。普通の人間には到底できないことが、あの子にはできたんだよ」(2013年2月インタヴュー、序章より


本書に書かれたことで、自分が知らなかったことなどひとつもない。というファンは少ないと思います。私は夢中で読み、やっぱり彼から逃れられないと思いました。



著者は、確かな文章力だけでなく、本文の記述の出所が(注)に記載されていることが魅力的で、私は、あわてて予約して、あとからkindle版が出たことを気づかなかったことだけが残念でした。



[PR]
トラックバックURL : http://nikkidoku.exblog.jp/tb/22355336
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
Commented by kuma at 2014-06-22 00:42 x
私も、ギリシャ戦の後、たまったストレスでウーウーうなってないで、この本を読めばよかったなぁ・・・。でも、この本の著者も「ザック」とは(笑)
「ロレンツォのオイル」、結構心に残る映画でした。あの男の子が、この本を書いているなんて、時は流れていくのですね。著者情報で、興味倍増したので、さっそくこの本、ポチってしまいました(笑)

yomodaliteさんの記事には、肯くことが多いのですが、ここでも、
>もし、マイケルが誰もがいいと思うようなことだけをやっていたら。。
以下の部分に、深く共感しました。
Commented by yomodalite at 2014-06-22 11:53
>たまったストレスでウーウーうなってないで、この本を読めばよかったなぁ・・・。

この本を読んで、よけいにウーってなる人もいると思うので、どーしよーかなぁと思ったんだけど、私には興味深いところがいっぱいあったよ。

>この本の著者も「ザック」とは(笑)

ザックというニックネームつけることが、仕事になっているようなメディアが多いよね。サッカーに限らないけど、、、ザックジャパンという名称が早々に流通したことと、代表メンバーが固定されたことは、同じ問題を孕んでると思うよ。私が日本代表監督にいつも不満に思うのは、ベストメンバーを早々に固定することで、彼らのテンションも体調も本番まで維持できないことだね。

>以下の部分に、深く共感しました。

共感した部分ってわけじゃないんだけど、この章に何が書かれていたかとか、自分のメモ用に、本書についてのエントリをもう1個増やすことにしました。
名前
URL
削除用パスワード

※このブログはコメント承認制を適用しています。ブログの持ち主が承認するまでコメントは表示されません。

by yomodalite | 2014-06-21 11:34 | ☆マイケルジャクソン書籍 | Trackback | Comments(2)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


by yomodalite