マイケルとハワード・ヒューズ[2]映画『アビエイター』

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マイケル・ジャクソンが語ったヒューズを求めて、マーティン・スコセッシ監督の2005年の映画『アビエイター』も観てみました。

スコセッシ監督といえば、名匠というだけでなく、MJの長編ヴィデオ第2作である『BAD』の監督でもあり、MJが尊敬する俳優として名前をあげたデ・ニーロの代表作を何作も創り、コッポラ、ルーカス、スピルバーグといった、MJとも親交が深い監督たちとの絆も含めて、とかく縁の深い監督。

この絆には、黒澤映画と三島由紀夫の糸も絡んでいて、黒澤に関しては有名なので、三島との繋がりに関してだけいうと、コッポラは、MJが信頼していた監督というだけでなく、彼の先生でもあり、親友でもあったブランドの傑作であり、彼自身も最高の仕事をしたと自負する映画『地獄の黙示録』を監督していたとき、三島の『豊穣の海』を強く意識し、

また、スコセッシ監督の『タクシードライバー』の脚本家である、ポール・シュレイダーは、日本未公開の映画『Mishima : A Life In Four Chapters』の脚本家で、また、この映画の製作総指揮は、コッポラとルーカスが務めています。


MJの映画への強い関心は生涯にわたるものでしたが、彼が大好きな30年代のギャング映画の代表作『暗黒街の顔役(Scarface)』は、ヒューズが制作し、同じハワードと言う名のハワード・ホークスに監督を依頼した映画です。

このときヒューズの頭の中にあったのは「あたかもシカゴを舞台にしたボルジア家のような、カポネ一家の物語」でした。

ボルジア家は、しばしば歴史物語や、映画の中で悪役として登場する貴族ですが、ルネサンスを生んだという評価もあり、華やかな当時の文化を担っていました。貴族のような生活と残忍な冷酷さ、カトリック教会との軋轢・・という物語は、イタリア系ではなく、貴族的な顔立ちのブランドが「カポネ(のような人物)」を演じることで始まった、後のコッポラの『ゴッドファーザー』に受け継がれ、完成したと言えるでしょう。

また、MJが最大級に尊敬しているチャップリンは、ヒューズが制作し、監督も務めた『地獄の天使』を観た翌日、「ツェッペリン炎上の場面はこれまで観たもののうち一番ドラマティックなシーンでした」と電報を打ちました。

この映画が、ツェッペリン炎上という歴史を、映像として深く印象づけたことは、「going like lead balloon」というキース・ムーンの口癖から、lead を led に、balloon を zeppelin に変え「レッド・ツェッペリン」というバンド名に繋がった理由かもしれません。

スコセッシはこの映画を大学の映画の授業で初めて見たときのこと、また、極普通の労働者だった彼の父親が、いつもこの映画のことを感心して話題にしていたことを語り、スコセッシ自身もこの2作を何度も観たそうですが、

映画評論家の町山智浩氏も、父親が『暗黒街の顔役』を観て、アメリカ映画に狂ったというエピソードを語っています。



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永い間大勢の人々の記憶に遺り、語らずにはいられない映画となった理由のひとつは、この映画がチャップリンが賞賛するほど素晴らしい映画だっただけでなく、記録的なヒットを飛ばした映画を、ヒューズ自身がある時期から「封印した」からです。

スコセッシと同世代の映画ファンは、この作品が見られる数少ない機会を、そわそわして待ったそうです。

当時、スコセッシが自宅で『地獄の天使』の上映会をしたときも、そこにはスピルバーグや、ロイ・シャイダー、地獄の黙示録の脚本家であるジョン・ミリアス、ポール・シュレイダーや、デ・パルマもいて、皆このシーンに感嘆し、夢中でみていたそうです。

この頃、彼らが観た『地獄の天使』は白黒でしたが、スコセッシは、その後着色され、カラフルになったことで、より空中戦の激しさが伝わったとも。制作時に、無謀なほどの予算と時間をかけた『地獄の天使』は、その後の映画の技術革新にも耐え、長く名作としての位置をキープし続けたわけです。

そして、スコセッシは、自分が映画製作の道に進んだ頃、この映画が持っていたロマンティックな時代は終わったと感じたようです。未来への夢に進んでいたはずのアメリカは、いつのまにか泥沼のベトナム戦争に傷つき、夢を実現した人物を素直に受け入れられない多くの観客を生み出していました。

とにかく、そんなスコセッシが撮ったヒューズなら観ないわけにはいかないのですが、長くなったので、次に続きます。


上記でスコセッシが語ったと言っている内容は、『アビエイター(通常版DVD)』に入っていた「コメンタリー字幕(監督、スタッフなどの解説)」からのものです。

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by yomodalite | 2014-04-09 11:08 | MJ考察系 | Trackback | Comments(0)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


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