「勝新太郎日和」SWITCH July 1995 Vol.13

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今回の引越しをきっかけに、資料関係の整理もしまくった。雑誌に関しては、書籍よりも迷うことが多くて、この部分だけ切り抜いておくべきかと迷ったり、残しておいた目的が文章ではない場合が多いので、目次からは判断できないことも多い。

1995年7月の『SWITCH』は、ハーヴェイ・カイテルが表紙の地味さから、中身を見ずに処分しかけたのだけど、ペラペラしてみたら、日本一カッコいい写真家・操上和美氏による「勝新」が現れて驚いた。

また、インタヴュアーは秋元康。彼が勝新を天才として語っていたエピソードはこのときのことだったんですね。

当時読んだ記憶はなかったのですが、今になって発見できるなんて、
これも「偶然完全」なんでしょうか。。



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(インタヴューは抜粋して引用しています)

俺は監督をやりだしてからものの見方が違ってきた。例えば、役だけを演じる場合は、自分と違う人生経験をしている監督の演出の目で、俺がキャメラに撮られていく。監督としてキャメラを覗く立場になってからは、自分が芝居していてもその自分をもう一人の自分の目で撒っている。と同時に、自分を自分の目で演出すると、偶然の芝居ってできないんだよ。みんな知ってるから。だからラッシユ見ててもつまんない。みんなわかっちゃってるから。

そういう意味では勝新太郎という監督も、勝新太郎という役者も不幸だ。いっぺんドキュメンタリー手法で勝新太郎の映画を撮ってみたい。いつ、偶然完全の間だとか、いつ偶然完全の失敗だとかが出るか、わからないだろ。ラッシュ見るとき、きっと面白い偶然完全がフィルムの中に納まっていくんじゃないかと思う。


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監督は役者にインタビューしなくては駄目だ。「こういうことになってきたけど君ならどうする」というインタビューをして、俳優、女優たちの個性を引き出していく。芝居の上手下手は二の次だ。俳優の捨て台詞を言っているところの表情を丁寧に撮らなくちゃいけない。テーマの台詞を、さりげなく捨て台詞のように撮らなくちゃいけない。映画ってえのは、誤解する演技をカットバックに使ったら、とってもいい効果が生まれる時があるんだよね。例えば、ポルノフィルムを見せてそれぞれの表情を映しておく。それをカットバックに使うんだが、実際は見るに堪えない、人間が人間を殺しているシーンとか。


北海道でデニス・ホッパーに会った時、俺が雪を見て「好きなだけ侍ってけよ」って目で言ったら、彼も雪を見て「サンキュー」って目で答えてくれた。言葉でなく目で話し合えることは嬉しいね。


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この間テレビ見てたら、100幾つのおじいさんが、「もう〜」という言葉を使う人が多いという話をしていた。「幾つですか」と凪ねると「もう70です」とね。彼は「まだ、100歳です」と答える。「もう」っていうのは牛の返事だ。そのおじいさんが喋る言葉というのは、今の渋谷、六本木の連中が喋ってる言葉じゃない。江戸時代の言葉なんだよね。


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今ちょっと作りたい作品は、偽物の勝新太郎の話。もしかしたら、ここに来てるのも偽物かもしれないっていう話さ。人の言うことに異を唱えない、使いやすい勝新太郎。その偽物の勝新太郎が売れていく話さ。本物の勝太郎が一日5万円もらうか、10万円もらうかわからないけど、場末の見せ物小屋や、旅館のショーなんかに出て物真似をする「偽物」として生きていく。

島倉千代子や三船敏郎、錦之助、高倉健の偽物が集まっている一座なんだ。で、その偽物連中に言われるんだ、「似てないね、勝新に」って。


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こんなストーリーも浮かんでるんだ。俺が東京から九州までカンガルーを運ばなくちやいけないって話。カンガルーをどうしても連れて行かなくてはいけないんだよ。それも人間扱いして。

そのカンガルーのお腹に国連が関与している大事な物が入ってるんだよ。それを知らずに俺はカンガルーを連れて九州まで行かなくてはいけない。しかも新幹線で。
 
で、カンガルーが何だか知らないけど、俺のこと好きになっちやってね。何かというと、俺をこう見つめてね。嫌なんだよ俺は、カンガルーが。そういうような企画もあるんだ。

飯田橋の警察病院で、頭から背広を掛けられ両手にタオルを掛けられて手錠を隠しエレベーターに乗って降りたところで、俺は背広とタオルを振り落として一般の患者の待合所を花道の出のように歩いていった。患者たちは、勝新だ、勝新だって騒いで嬉しそうに俺を見ている。手錠姿で歩いているところを一般の人たちに見せることしか、今の俺には楽しませることはできないんだから。その夜、俺は逮捕された。理由は病院の検査の結果、「お前の体が悪いからだ」。ああ、これは面白い台詞だな。おかげで今、こうして元気でいられるんだ。俺の人生経験で損をしたってことは、一回もない。


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黒澤さんのおかげで日本映画は世界にしらしめることができた。俺は尊敬してた。してた故に、本当にがっかりしちゃった。「俺はお前に負けないぞ、俺の作品だ」という態度が嫌になった。自分の演出のいいところを見せたいって言うんだけども、俺は武田信玄やってんだから。武田信玄と黒澤じゃあ、格が違うんだからさ。
 
俺ねえ、今だったらいい男に撮ってほしいの。女の人も俺も綺麗に撮ってもらいたい。今度やる映画はまさにそうであってほしいね。二人の勝新太郎のも。構想はすっかり練れてるんだよ、警視庁のシーンも拘置所に住んでた時の場面も。あの部屋に入ってくる風。拘置所のコックのおかげで俺の体は健康なんだ。

あっ、そうそう、看守でさ、俺のファンがいたんだよ。周りに人がいる時は、「コラーッ!坐ってろ、ここは楽をするところじゃないっ」って怒鳴ってた男が人がいなくなったら急に「すいません、今人がいたもんですから。あの、私、勝さんのファンで。ハッパなんて皆やってますよねえ」なんてさ。あいつに俺、祝儀やりたいんだよ。あの看守どうしたよ。探しといた? 探してない? お前、俺の言ったこと何もやってねえじゃねえか。あいつに祝儀上げたいんだよ。

(インタヴュー終了)

この上の写真で、手にしている煙草は「キャスター・マイルド」...

勝新も、渋澤龍彦、立川談志、そして清志郎も、咽頭がんで亡くなっているんだなぁ。喫煙してなければ・・・なんていいたいんじゃなくて、健康とか長生きを目的に生きてカッコいいわけないってこと。


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Commented by kuma at 2013-05-11 16:14 x
勝新がカンガルーを九州まで連れて行くロード・ムービーが見たかったなぁ!!!

>手錠姿で歩いているところを一般の人たちに見せることしか、今の俺には楽しませることはできないんだから

勝新太郎さんについて、私自身は悪名や座頭市の印象(あと、パンツに大麻ね)位しかなかったのですが、こちらの記事でそれ以外の魅力についても時々教えていただいてました。
でも、この一言で「ノックアウト」。他のことはどうでもいいや、って気持ちになります。
すごい人ですね・・・。


Commented by yomodalite at 2013-05-11 22:32
2年ほど前まで、まさか、自分がこの人のことをこんなに好きになるなんて思ってもみなかったんだけど、今では、、、家のTVは、勝新しか映ってないってぐらい(どんなTVだよ)勝新三昧の日々。。

このコメント書く前に、もったいなくて、ずっと溜めてた『新座頭市』第23話「不思議な旅」をついに観た後で、、これは、新座頭市シリーズ最後の勝新監督作なんだけど、、もう言葉にできないような傑作だったなぁ。。

http://teaforone.blog4.fc2.com/blog-entry-814.html
http://ventilatorblues-sway.blogspot.jp/2012/08/23.html

>手錠姿で歩いているところを… この一言で「ノックアウト」。

勝新に会ったスゴい人たちが、みんな口を揃えて「天才!」と感心しちゃうぐらい、サービス精神満載で、人を楽しませることに常に気を配ってる究極の「人たらし」だったみたい。

それで、もう人に愛されるだけでは飽き足らなくてカンガルーにまで。。でも勝新演出を見てると、観察力がホントにスゴいから、、勝新なら、カンガルーの可愛らしさだけでなく、色気や哀しさまで何もかも引き出したと思う。きっと。
Commented by kuma at 2013-05-12 21:14 x
究極の「人たらし」かぁ・・・いるだけで、その場の雰囲気をがらりと変えてしまうような人なんでしょうね。
yomodaliteさんの熱のこもったコメント拝読していたら、九州に向かう列車のなか、車窓の風景を眺めながら煙草をふかす勝新の横で、しなを作って長いまつげを時々伏せながら流し目を送るカンガルーの姿が見えてきてしまいましたw
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by yomodalite | 2013-05-08 19:31 | 評論・インタヴュー | Trackback | Comments(3)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


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