Nina Simone[1]『ニーナ・シモン自伝』

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クインシー・ジョーンズ自叙伝に、ニーナ・シモンの名前が登場して、もうずっと昔に彼女にすごく癒されていた時代のことを思い出して、彼女の自伝を読んでみました。

ニーナ・シモンは、当時、ジャズも、ソウルや、ブルース、R&Bも、あまり好きではなかった私に、唯一響いた「魂の音楽」で、

彼女は、恋愛にも、仕事にも翻弄され、どうしようもないほど憔悴していた夜から、私を救ってくれるほど包容力があって、他の女性シンガーとはまったく異なる存在に思えたのだけど、彼女のことは何も知らなくて、

ただ、彼女から、何か大きな苦しみを乗り越えたあとのような「穏やかさ」を感じて、それで、私は救われていたように思う。

詩の内容もわからなかったのに、どうして、そんなに深くこころに刺さったのか、今思うと不思議で、それで、最近になって、今まで聴いたことがなかった曲や、実際に彼女が歌っている動画を初めて見たりして、あの頃、私を包み込んでくれた彼女とは別の激しさとか、葛藤をも感じることができて、当時よりもさらに強くこころを奪われました。

ニーナの声には、魂をわしづかみにされてしまうのですが、

でも、彼女はシンガーだけではなく、類いまれなピアニストでもあって、それは、サラ・ヴォーンや、ビリー・ホリディ、ダイアナ・ロスや、ロバータ・フラック、アレサ・フランクリンなど、特別に素晴らしいシンガーからですら感じたことのない感覚で、

ジャニス・ジョプリン、ビョーク、メレディス・モンクといったアーティストの先達でもあり、オノ・ヨーコと同じ年に生まれた、本当に唯一無二の「アーティスト」だと思う。


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貧しくても仕事熱心な父親と、熱心なクリスチャンの母親、音楽好きな家庭に生まれ、幼少時からピアノの才能を発掘されたニーナは、地元のピアノ教師に奨められて、正式なピアノ教育を受けるようになり、黒人初のクラシックのピアニストという夢を後押しする人々の基金のおかげで、ジュリアード音楽院に入学し、そこから、さらに、高度な音楽教育をうけるため、ナイトクラブで演奏するようになる。

彼女は自分が歌うことになるとはまったく想像もしておらず、当時は、ポップソングを、クラシックよりも下に見ていて、ヒットチャートに登場するようになった後も、クラシックへの道を模索していたということは、彼女の自伝を読むまでは想像もしていませんでした。

日本で出版された『ニーナ・シモン自伝』には「ひとりぼっちの闘い」というサブタイトルがついているけど、原題は「I Put a Spell on You」という彼女のヒット曲と同名のタイトル。

ニーナから大きな影響を受けたと語るミュージシャンは、U2のボノや、カニエ・ウエスト、クリスティーナ・アギレラ、ボン・ジョビ、ピーター・ガブリエル、メアリー・J・ブライジ、アリシア・キーズ、ローリン・ヒル… など数多く

また、ジョン・レノンは、ニーナの "I Put a Spell on You" に影響をうけて、"Michelle" を作曲し(メインの作曲はポールですが…)、

ニーナによって有名になった曲をカヴァーしたのは、アレサ・フランクリン、ジャニス・ジョプリン、デヴィッド・ボウイ、マリリン・マンソン、ロバータ・フラック、アニマルズ、ミューズ、キャット・パワー、ファイスト…など、肌の色だけでなく、驚くほど幅広いジャンルのミュージシャンに及んでいます。

彼女自身は、自伝で、どうしても何かのジャンルに分けられなければならないのなら、自分はフォーク歌手とされるべきだと思うと語っていますが、それは、公民権運動に関わり、その運動に共鳴する人々の魂を担っていたという思いからの発言のように感じました。

公民権運動は、マルコムXや、キング牧師の暗殺を経て、急速に萎んでいきましたが、彼女はその後も復活を果たし、晩年まで忘れられることがなかったのは、彼女が、黒人の人権だけでなく、ジャズでも、ソウルでも、R&Bでもなく「ニーナ・シモン」を模索し続けたからでしょう。


最初にどの曲を紹介しようかとものすごく迷ったのだけど、
ジャニス・ジョプリンも歌っている「Little girl blue」を。


◎Nina Simone Little girl blue




それは、黒い肌の女としてだけでなく、自分を模索するすべてのアーティストにとって、力強いメッセージとして現在でも受け止められていて、

日本での知名度とは異なり、彼女は、欧米からアフリカまで、世界中で知られる伝説的なアーティストであり続け、現在、自伝を基にした映画も進行中のようです。


◎ニーナ・シモン伝記映画、メアリー・J降板で暗礁に?

◎インディア・アリーがニーナ・シモン伝記映画を痛烈批判?


映画化を巡っては、現在も様々な問題を抱えているようですが、それらのビジネスと、ニーナが戦ってきた苦難の歴史については、この自伝でも綴られています。

目 次

第1章 ブラック・イズ・ザ・カラー

第2章 愛につつまれて

第3章 マイ・ハピネス

第4章 リトル・ガール・ブルー

第5章 アイ・ラヴズ・ユー・ポーギー

第6章 若く、才気にあふれ、黒い肌で

第7章 ミシシッピ・ガッデム

第8章 王様の死

第9章 リベリアン・カリプソ

第10章 行かないで

第11章 もう、ひとりになることもなく

◎[Amazon]ニーナ・シモン自伝―ひとりぼっちの闘い
◎[米国Amazon]I Put A Spell On You


☆Nina Simone[2]“I Put A Spell On You” につづく



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by yomodalite | 2013-04-08 12:44 | 現代文化・音楽・訳詞 | Trackback | Comments(0)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


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