Patti Smith『Banga』[4] “Constantine's Dream″ パティによる文章

f0134963_11205157.jpg
パティに送られたポストカードの絵“The dream of Constantine”



Patti Smith『Banga』[3] “Tarkovsky" の続き


下記の英文&和訳は、CDに納められているパティが語った “Constantine's Dream″ という曲についての文章です。この曲の詩は『Banga』の中で一番長い詩で、パティが興味をもった絵について、また、それを描いた画家と、聖人との関係についてなど、曲を理解するうえで調べたくなるような点が、たくさんあって、、、

和訳原文の「聖フランチェスコ」という表記は、画家ピエロ・デラ・フランチェスカとの区別がつきやすいように「聖フランシスコ」に変更し、( )内の註記、参考記事、写真を加えました。


(引用開始)

And so we end with the Personal exploration that Produced “Constantine’s Dream.” It began with an image on a postcard sent to me by Dimitri Levas in 1988 - a detail of an unidentified painting of a conquistador and a young Page, dressed in a white tunic and red boots, guarding a sleeping King. l misplaced the Postcard, and confused by the soldiers’ armor, I was unable to locate it in the realm of Spanish art, yet the image haunted me.

私達の私的な探索は “Constantine's Dream" の制作で完結する。それは1988年にディミトリ・リーヴァス(*)から私に送られた一枚のボストカードの画像から始まった。

それは白い外套と赤い長靴を纏って眠れる王を護衛するコンキスタドールと若い小姓を描いた作者不明の絵の一部だった。理解の出来ない絵葉書で、私は兵士の鎧に当惑した。スペイン美術に属するものかと思ったが特定は出来なかった。しかしその画像は鮮明に目に焼き付いた。

(*)Dimitri Levas アートディレクターで、メイプルソープ財団の副代表

Years later, on a plane to Rome, about to embark on an Italian tour, I mentioned the coveted image to Lenny, pledging l would one day find it. Our tour ended in Arezzo. That night, l had a troubled sleep and dreamed of an environmental apocalypse and a weeping Saint Francis. l awoke and went down to a courtyard and entered a church to say prayer. l noticed a painting on the back wall. Piero della Francesca had created the frescoes of The Legend of the True Cross. There, in all its glory, was the full image that the postcard had detailed 一 The Dream of Constantine !

それから何年かのち、イタリア・ツアーでローマに向かう飛行機の中で、私はその絵のことをレニーに話し、いつかきっと見つけてみせると言った。ツアーがアレッツオで終わったその夜、私は夢にうなされ、環境的な啓示や涙を流す聖フランシスコ(*)の夢を見た。

私は起き上がり、中庭に出て礼拝堂に入り、祈りを捧げた。そして後ろの壁の絵に気付いた。ピエロ・デラ・フランチェスカ(*)は『聖十字架伝説』(*)のフレスコ画を描いた人物だが、そこにはなんと絵葉書にあった絵の全体である『コンスタンティヌスの夢』が掛けられていたのだ!

(*)聖フランシスコ(Wikipedia)
神の道化師、万物兄弟の思想とエコロジーの聖者、マザーテレサが目指した聖人


(*)ピエロ・デラ・フランチェスカ(Wikipedia)
数学や幾何学に打ち込んだ最初期の画家の一人と言われている


◎[参考記事]謎が多いとされる『キリストの鞭打ち』の絵の説明と拡大絵へのリンク


f0134963_112551.jpg
(*)『聖十字架伝説』右下にポストカードの絵



◎[参考記事]アレッツォ後編 ~聖十字架伝を訪ねて[1]
◎[参考記事]アレッツォ後編 ~聖十字架伝を訪ねて[2]

◎[参考記事]アレッツォの聖十字架伝説1
◎[参考記事]アレッツォの聖十字架伝説2
◎[参考記事]アレッツォの聖十字架伝説3
◎[参考記事]アレッツォの聖十字架伝説4
◎[参考記事]アレッツォの聖十字架伝説5(コンスタンティヌスの夢)
◎[参考記事]アレッツォの聖十字架伝説6(十字架の発見と検証)

◎[参考記事]「聖十字架伝説:十字架の発見と検証」

As fate would have it, it was in the Basilica of St. Francis. l decided to learn more of his life and contribution and also of the painter of Constantine’s Dream. This opened a period of intense study and pilgrimage. Our friend, Stefano Righi, guided Lenny and l through the stations of Saint Francis' life : the mountain where birds covered him, singing, the forest in Gubbia(*) where he tamed a wolf, the frescoes of Giotto and finally his magnetic tomb, beneath the lower Basilica of the Papal Basilica Saint Francis of Assisi. We left the memorial card for our beloved friend, the poet Jim Carroll, who revered Saint Francis.

運命に導かれてやって来たそこはサン・フランシスコ聖堂(* Saint Francis, Arezzo)だった。私は聖フランシスコの生涯や業績について、そしてもちろん『コンスタンティヌスの夢』を描いた画家についても、もっと詳しく知りたいと思った。これによって猛烈な勉強と聖地詣でが始まった。

私達の友人であるステファノ・リギーがレニーと私を聖フランシスコの生涯の地へ案内してくれた。小鳥たちが彼を匿い、歌を聞かせた山、彼が狼を服従させたグッビアの森(*)、ジョット(*)のフレスコ画、そして最後に人を惹き付けて止まない聖フランシスコの墓標へ…。それはアッシジのフランシスコ聖堂(* Saint Francis of Assisi)の下部聖堂にあった。私達は思い出の絵葉書を親愛なる友であり聖フランシスコを崇拝している詩人のジム・キャロルに贈った。

(*)イタリアのサン・フランシスコ聖堂と言えば、アッシジのサン・フランシスコ聖堂が一般的で、ジョットの絵はそこにある。ピエロ・デラ・フランチェスカの絵があるのは、その近くにあるアレッツォのサン・フランシスコ聖堂。

◎アッシジのサン・フランシスコ聖堂(Saint Francis of Assisi)
◎アレッツオのサン・フランシスコ聖堂(Saint Francis, Arezzo)

(*)ジョット Giotto di Bondone(Wikipedia)

(*)the forest in Gubbia(Gubbioが正しい?)
(*)グッビアの森、グッビオの地名の方が一般的かも


◎[参考記事]聖フランシスコがグッビオの町を狼から救ったこと

There are many stories l could tell in the creation of “Constantine’s Dream,” but let it suffice that Lenny and I prayed before the painting for the strength to achieve our mission. Lenny conceived of the musical themes and guitar figures, and our band recorded a strong basic track. We then took the track back to Arezzo and recruited the band Casa del vento, whom l met during a benefit concert for EMERGENCY. The band from Arezzo improvised on the track of “Constantine’s Dream,”

“Constantine's Dream″の制作に関しては色々な逸話があるが、私達の役目を果たすために力を得ようと、レニーと私がその絵の前で祈りを捧げたという事実だけで充分だろう。レニーは音楽のテーマとギターのスタイルを考え、バンド全体で力強いベーシック・トラックを完成させた。

そして私達はそのトラックをアレッツォに持ち帰り、EMERGENCYの慈善コンサートの間に知り合ったカーサ・デル・ヴェントというバンドを呼んだ。アレッツオ出身のそのバンドはこの作品が生まれたサン・フランチェスコ聖堂からほんの散歩離れただけの場所で “Constantine's Dream" の即興演奏をしてくれた。

only steps away from the Basilica of Saint Francis, where the piece was born. Afterwards, we recorded “Seneca” the lullaby we had written aboard ship, guided by Lenny's acoustic guitar.

そのあと私達はレニーのアコースティック・ギターに導かれて船の上で書いた子守唄 “Seneca" をレコーディングした。

Back in New York at Electric Lady Studios, l summoned all I had experienced in the last year. l considered the night of my apocalyptic dream and finding the postcard image. l thought of the painter who went blind and died October 12, 1492, the same day Columbus set foot in the New World. l thought of Saint Francis and his bond with nature and the threat of environmental devastation in our own century. Surrounded by my supportive camp, I stepped before the microphone. All the research l had done fell away, as I improvised the words, driven by the deep personal struggle of the artist, who by the nature of his calling is obliged to manifest the spiritual as physical matter in the material world.

ニューヨークのエレクトリック・レディ・スタジオに戻ると、私は過去1年間に経験した出来事を振り返った。啓示的な夢を見たこと、絵葉書の絵を見つけたこと。晩年は視力を失い1492年の10月12日、コロンブスが新世界に足を踏み入れた同じ日に世を去ったその画家に思いを馳せた。

聖フランシスコと自然界との絆や我々の世紀における環境破壊の脅威のことを思った。私は協力的な仲間に支えられてマイクロフォンの前に立った。即興的に言葉を紡ぎ始めると、その芸術家の深い個人的な苦闘に突き動かされて私が行ってきたすべての研究結果は頭から抜け落ちて行った。披は自らが生まれ持った天性のために、物質世界の中での実体としての精神を証明せずにはいられなかったのだろう。

My daughter Jesse and son Jackson open the Neil Young song. l chose it to follow the dark apocalyptic vision of “Constantine's Dream,” as it offer a new beginning. Tony Shanahan recorded his young nephew Tadhg and friends singing the last refrain. Thus Banga closes with my son and daughter, and the sons and daughter of others ー all our children, the hope of the world, embarking on adventures of their own.

私の娘のジェシーと息子のジャクソンがニール・ヤングの曲のオープニングを弾いている“Constantinc's Dream" の暗い黙示的な世界をがらりと変える目的で私はこの曲を選んだ。トニー・シャナハンは彼の若い甥タイグとその友達の歌を最後のリフレインに入れた。

こうしてアルバムBangaは私の息子と娘を始めとしてすべて子供たちの歌声で終わる。彼らは自らの力で冒険の旅へと出て行くであろうまさに世界の希望なのだ。

(引用終了。訳:武内邦愛 英文・和訳ともに国内版CDより)


とりあえず、パティの文章に注釈つけてみた。という感じなんですが、パティだけでなく、画家ピエロ・デラ・フランチェスカの謎に惹かれるひとは多いみたいで、パティが注目した「コンスタンティヌスの夢」が含まれている『聖十字架伝説』と『キリストの鞭打ち』は、謎ギョーカイで注目の2作品。

これは、私個人の印象ですが、その手の「謎」には、解明したいというよりは、本当のことを言うと色々と差し障りがあったり、謎を温存することで、色々と自説を言うことができるという理由のために、何百年も続いている「謎」が多いように思うんです。

でも、パティが『聖十字架伝説』の中で、特に「コンスタンティヌスの夢」に興味をもって調べ、歌にしたのは、そーゆー人たちとは違うので・・・

Patti Smith『Banga』[5] “Constantine's Dream″ につづく



[PR]
トラックバックURL : http://nikkidoku.exblog.jp/tb/18674160
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
名前
URL
削除用パスワード

※このブログはコメント承認制を適用しています。ブログの持ち主が承認するまでコメントは表示されません。

by yomodalite | 2013-02-23 13:49 | 現代文化・音楽・訳詞 | Trackback | Comments(0)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


by yomodalite