99%対1% アメリカ格差ウォーズ/町山智浩(Man of War訳詞)

2012年の12月は、本を読むより、自分を読む方にずっと時間がかかってしまう。。
と思った最大の1冊は、実は本書かも。。

著者のこれまでのアメリカ政治本シリーズは、『底抜け合衆国ーアメリカが最もバカだった4年間』『USAカニバケツ』『アメリカ人の半分はニューヨークの場所を知らない』『キャプテン・アメリカはなぜ死んだか』また、アメリカ政治研究者である越智道雄氏との共著『オバマ・ショック』も、読んでいるけど、本書の内容は、これまでで一番辛いものでした。

このシリーズの最初から、米国衰亡史として読んでいましたが、米国に起こったことは、10年後には日本に起こるということもあり、この流れから、日本が逃れられるように。と願ってきたけれど、残念ながら、今後の日本の行く末もそのセオリーのままに進んでいく。ということが、もうどうしようもないほど明らかになってきた矢先でしたし、

辛かったのは、その流れから日本が逃れられないというだけでなく、あらためて、民主主義や、平和や、格差のことについて、深く考えさせられ、そういった思いを「深く考えさせられた」と書くだけではもうどうしようもないほど、突き刺さった刺が大きかった。

そんなわけで、本書は素晴らしい本なのですが、お奨めしたいとか、著者に感謝したいとか、内容を記録しておきたい。という、いつもの動機ではなく、刺のように突き刺さった部分を少しだけ、個人的にぐだぐだと書いておくことにします。


(引用開始)省略・要約して引用しています。


第1章 医療保険改革とティーパーティーの誕生

「医療保険改革もそうだが、成功した人から多くの税金を取って、貧しい人に施すというのは、努力した人に不利だし、努力しない人を甘やかすことになる。君はアイン・ランドの『肩をすくめるアトラス』という小説を読んだかね?あの本に我々、ティーパーティーの思想が書かれているよ」

第4章「ティーパーティーの女神」アイン・ランドが金融崩壊を招いた

ティーパーティーには、アイン・ランドという女神がいる。1982年に亡くなった彼女が書いた小説『肩をすくめるアトラス』はティーパーティーの聖書と呼ばれている。「私が政治家になろうとした理由がアイン・ランドです」ティーパーティー派のポール・ライアン下院議員は、05年、アイン・ランドの生誕100年記念パーティーでそうスピーチした。

ライアンは、財政赤字解消のため、ソーシャル・セキュリティ(社会保障)、メディケア(高齢者・障害者向け医療保険)、フード・スタンプ(貧困層向け食費補助)などの福祉削減を主張した。その一方で、彼はブッシュ政権が行なった富裕層の遺産相続免税に賛成した。ライアンは富める者から税金を取って貧しい者たちに与える「富の再分配」を激しく憎んだアイン・ランドに影響されている。

ティーパーティーの先駆者の異名をとるベテラン、ロン・ポール下院議員も同じだ。

(中略)

アラン・グリーンスパンは50年代からランドの弟子であり、74年にフォード大統領の経済諮問委員会の議長に就任した際の宣誓式でも、横に付き添っていたのはランドだった。ランドの思想に従ってグリーンスパンは19年間にわたって自由市場を放任し続け、レーガンからブッシュ・ジュニアまで、政府は富裕層への減税を続け、アイン・ランドが「寄生虫」と呼んだ庶民はどんどん貧しくなった。その結果暴走した金融業界は、貧しい人々に無理矢理住宅ローンを押しつける詐欺まで行なって、それが08年の金融崩壊を引き起こし、20年におよぶ富裕層への減税は莫大な財政赤字を生み出した。アイン・ランド的社会は失敗に終わったのだ。

(引用終了)


この後も、激しいランド批判が続くのですが、これでは、あまりにもランドが可哀想だと思う。思想が単純化されて、政治に利用されることはしばしばあることで、ランドがティーパーティに利用されたのは、ニーチェが、ナチスに利用されたのと同様ではないか。ティーパーティの先駆者と言われてしまっているロン・ポールや、リバータリアンや、小さな政府ですが、ロン・ポールは国内第一主義で、アメリカの対外政策を批判している。

ネオコンの源流がトロツキズムで、その元祖ネオコンのフランシス・フクヤマが『歴史の終わり』を書いたときだって、現在のアメリカの姿を予想できておらず、その後『アメリカの終わり』を書いて転向を表明した。ランドの弟子だったグリーンスパンも、1990年代から、株式市場の熱狂に危惧を表明していたけど、住宅バブルは止められなかった。

貧しい人も借りられるというサブプライム・ローンは、ランドの思想とは真逆だし、金融崩壊のあと、国民の税金で、破綻した企業のCEOにボーナスまで支払われたのも、ランドとは無関係で、富裕層の減税、増税という選択より、企業がそこで働く人々よりも、株主のためにある。という徹底した株式市場主義は、グリーンスパン1人の手綱さばきでどうにもならないほど膨れ上がり、その膨張を支えたのは「富裕層」だけでなく「富裕層」を夢見た人々でしょう。

国内では、ニーチェのいたこを気取る適菜収氏が、B層というキーワードで同じように煽りだした。彼もティーパーティでのアイン・ランドの使われ方と同様にニーチェを使っている。ネトウヨやB層もポピュリズムという言葉も、国民分断のために利用させられてる。ホントに未だにポピュリズムなんて言葉で、何かを批判したつもりになっている人は、自分が大衆ではないと思っているのだろうか。権力者でもないのに。

町山氏は、

FOXニュースのコメンテイターが『肩をすくめるアトラス』を振りかざして「規制と福祉ばかりの国をオバマは実現しようとしているんです!」と叫んだことを、それは話が逆で、アイン・ランドの理想の方が先に実現したのだ。80年代レーガン政権移行の新自由主義によるアメリカとして。

と言う。そうかもしれない。

でも、企業献金ではなく、国民からの小額募金によって誕生したオバマ政権によって、選挙資金はますます高騰し、メディアの選挙運動は酷くなる一方。その中で勝利したオバマが、結局なんの公約も実現できずに、超格差社会を温存し、世界中で民主主義政策という名の武力行使を行なうことも止められず、

ヒラリーが、女性の地位向上で勝ちとったものは、より多くの女性が、AIGの幹部社員に税金という形で、お金を貢げる権利だったり、多くの女性がヒラリーや、ライスのような気分で軍隊を使うか、もしくは軍隊に行くかという選択を迫られるようになり…

誤解されたくないけど、FOX-TVが言ってるようなことを支持する気持ちなんてないし、ティーパーティに関しては、数年前に、片山さつきが日本に紹介しようとしていたときから嫌な予感がバリバリとしていて、その後、彼女が生保に噛み付いたときも、案の定という気がした。

ただ、もうそういった「選挙」のための二分化も、
自分が二分化のどちらかの「極」に立つことも、嫌だ。

たかだか、政府の仕事のあれこれについて考えることで、無駄な競争を煽り、
国民の意識を分断しているだけじゃないか。(本当の目的はそっちか。。)

性的嗜好も、思想・宗教といったものも、本来すべて「あやふや」なもので、人種ですら、それを決める基準をはっきりすることができないのに、少年期から選挙に異常なまでの興味を抱かせ、常に自分を分類して「自己の確立」を強化していくような現在の社会では、もう世界の平和には至らない。。

私の個人史の中では、今ほど、国民すべてに「一票を無駄にするな」とか「選挙には必ず行くべき」いうメッセージが虚しく響いたことはないけど、

それでも、何度銃弾に倒れてもという経験も、米国の方がずっとタフに経験してきているので、今後、日本社会の方がダメージを受ける人が多いだろうなぁという自分の予測にもうんざりした。

でも、どこまでも暗くなりそうな気分に、意外にも役にたったのは、ローマ帝国史本で、
全然面白くなかったけど、本書と併読して読むことで、多少は心が癒された。


ローマ人の「パンとサーカス」とか、富の分配とか、
その時代の奴隷制と比較して、、とかね(泣)

もうひとつ癒されたのは、12月に行ったジャクソンズのコンサートでも歌われ、
マーロンのツイートに、今もよく書いてある
Study PEACEという言葉が登場する「Man of War」という曲。




大雑把な和訳ですが。。。

Man of War

You think your way is the best way for all
You don't know everything so you don't know it all
You got respect a man for the way that he feels
And you can't make people do things against their will

あなたは、自分の方法が正しいのだと思っているけど
あなたはすべてを知らないし、何もわかっていない
人の感情を尊重し、人々の意志に反することをしてはいけない


Man of war, don't go to war no more
Why don't you, why don't you study peace?
Man of war, don't go to war no more
Study peace 'cause peace is what we need

戦争をする人々、もう戦争をするのはやめにして
なぜ、平和を学ぶことをしないんだ
戦争をする人々、もう戦争をするのはやめて
平和を学ぼう。ぼくたちが望んでいるのは平和なんだから


Just because your army gives you strength, gives you might
Truth is gonna win, wrong will never conquer right
Every man has the right to think and be free
You're like a spoiled brat, you want everything, you see

軍隊をもって、強さと力を得られても
真実はいずれ勝利する。間違った権利を主張しても正義は得られない
どんな人にも自由に、自分で考えるという権利がある
君たち(戦争をする人々)は甘やかされ過ぎて、
見えるものは何でも欲しがってるみたいだ


Man of war, don't go to war no more
Why don't you, why don't you study peace?
Man of war, don't go to war no more
Study peace 'cause peace is what we need

戦争をする人々、もう戦争をするのはやめにして
なぜ、平和を学ぶことをしないんだ
戦争をする人々、もう戦争をするのはやめて
平和を学ぼう。ぼくたちが望んでいるのは平和なんだから


You think your bombs guns, and planes make you a big man
When you attack and invade on another man's land
Tryin' to make him be what you want him be
Make him do what you want him to
Make him say what you want him to say
It wasn't meant to be that way

爆弾とか銃とか、飛行機をもっていたら、強い男になれるなんて
他の奴の土地を攻撃して、侵略したいのさ
人を自分の思いどおりに動かして、
自分の言うとおりにしたいんだろう
そんなことに、どんな意味があるんだ


You think your way is the best way for all
You don't know everything so you don't know it all
You got respect a man for the way that he feels
You can't make people do things against their will

あなたは、自分の方法が正しいのだと思っているけど
あなたはすべてを知らないし、何もわかっていない
人の感情を尊重し、彼らの意志に反することをしてはいけない


Man of war, don't go to war no more
Why don't you, why don't you study peace
Man of war, don't go to war no more
Study peace 'cause peace is what we need

戦争をする人々、もう戦争をするのはやめにして
なぜ、平和を学ぶことをしないんだ
戦争をする人々、もう戦争をするのはやめて
平和を学ぼう。ぼくたちが望んでいるのは平和なんだから


◎歌詞参照 http://www.metrolyrics.com/


適当な知識で意見をいうより、学べ!自分。

そんなわけなので、
この虚しさをバネに、ミケランジェロを読もうと思う。

あきらめるな、自分!

☆巨大資本に操られるインチキ政治運動、デマだらけの中傷CMをぶつけ合う選挙戦、暴走する過激メディアまで日本人が知らない「アメリカの内戦」を徹底レポート。


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Tracked from 本読みの記録 at 2013-11-25 00:01
タイトル : 外からは見えない米国国内政治:99%対1% アメリカ格差..
99%対1% アメリカ格差ウォーズ作者: 町山 智浩出版社/メーカー: 講談社発売日: 2012/09/20メディア: 単行本(ソフトカバー) 米国の国家戦略や、共和党・民主党それぞれの”公式な”思想など米国政治の”上流”部分は日本語に訳されている書籍も多く、いろんな人が解説しているので本を読む人には簡単に情報が手に入る。 だが、実際にどういった人が、どのような思考回路で政治を動かしているのか?という面については、実際に住んでいる人しかわからないし、外国人には理解しづらい部分も多い。 語弊を恐れ...... more
Commented by かっちゃん at 2013-01-26 16:37 x
 とにかく、すごいですね!どこかの大学で「アメリカ現代史」の
講義を聴いているような気分になりました。 以前、木暮実千代
の話を読みましたが、書評でも一流ですね。
Commented by yomodalite at 2013-01-26 21:08
かっちゃんさん、コメントありがとうございます。
どこかの大学??そ、そんなこと書いてたっけ。しかも書評にもなってないようなものを書いたはずだったのに、、と、読み直してみて、ちょっと顔が赤くなりました。

かっちゃんさんも、木暮さんのファンなのですか? 古い日本映画を見て、素敵な女優さんを発見することは多いですけど、木暮さんはなんか違ってて、日本の女優とは思えないというか、エリザベス・テーラーと、グレン・クローズの両方の魅力があって、、メリル・ストリープに近いのかなぁって思っていたら、黒川氏の本で、彼女のスケール感が思ってたとおり!で嬉しかったんですよね。
Commented by かっちゃん at 2013-01-29 16:51 x
 私は日本の俳優さんでは森繁久弥と木暮実千代、外国人では
ジャック・レモンとイングリッド・バーグマンのフアンです。木暮実千
代は、私の郷里・下関の生まれです。詳しいことは上記のURLの
私の掲示板に書いています。お暇があれば見てください。

 マイケル・ジャクソンについて、ここに書いていましたら途中でど
こかに飛んでいってしまいました。またの機会に。
Commented by yomodalite at 2013-01-29 22:15
「木暮実千代の会」創立総会!今でもそんなに熱いファンの方がいらっしゃるなんて、スゴいですね。私は「帰郷」はまだ観たことがないです。

それと、、森繁久弥さん。森繁さんは、とても重要な方だと思うのですが、まだ出会えてなくて、残念に思っている方なんです。かっちゃんさん、森繁のおすすめの1本をぜひ教えてください。また勝新との共演作をご存知ではないですか?

>マイケル・ジャクソンについて
ああ、それは残念!そちらも次回ぜひ!
Commented by かっちゃん at 2013-01-30 09:36 x
 
 私の掲示板に「オスカー・ピーターソン」の事を書いていますが、
まぁ、この程度の感想ですから、知れています。ご参考までに転
載します。
    
  オスカー・ピーターソンは、ジャズ・ピアニストとして大変有名な人
で、その方面では神様のよう存在だ、と誰かがいっていました。私は、
そもそもジャズは門外漢ですから、その神様のような人がどんなに素
晴らしい演奏をするのか、まったく知りませんでした。

 先日たまたま、「かなり早いテンポで曲芸的な演奏という感じでし
た。ジャズですから曲は、自分で作り出すのでしょうが、何だか適
当に弾いているように感じました。ふと、この人にショパンの「ノクター
ン」や、モーツアルトの「ピアノ・コンチェルト」を楽譜どうりに弾
いてもらったら、どんな音楽になるのかな、と思いました。

 私は、ジャズは即興曲だと聞いていましたので、ショパンの「幻想
即興曲・嬰ハ短調」の連想がありました。これは大変美しいメロデ
で、O・ピーターソンの曲とはだいぶ違います。


 
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by yomodalite | 2013-01-08 08:00 | 現代文化・音楽・訳詞 | Trackback(1) | Comments(5)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


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