日本のリアル(PHP文庫)/養老孟司

本書は、今年(2012年)の10月に出版された本で、サブタイトルは「農業、漁業、林業、そして食卓を語り合う」。

地球や、南極や、アマゾンの原生林や、アフリカのこどもたちのビジュアルとともに、カタカナ混じりで語られる環境問題をネタにした「経済活動」ではなく、日本の農業や、林業の健全化が、私たちの健康を守り、環境をも守ることなのではないでしょうか。

下記は「まえがき」から(省略して引用しています)。

私は敗戦時に小学校二年生だった。あの社会的な価値の転換をみてしまうと、モノに直接携わることの大切さがしみじみとわかる。モノに関わらないと、むしろ不安でしょうがない。お金のやりとりだけでは、自分が宙に浮くような気がする。その気分に拍車をかけているのは、インターネットの普及である。こういう時代に、モノに携わったり、ごくふつうの日常を研究している人に会うと、ホッとする。そういう人たちを選んで、対談させてもらったのが本書になった。

(引用終了)

対談者は、下記の4名の方で、

・食卓を研究している岩村暢子氏(アサツーディケイ200Xファミリーデザイン室室長)
・田んぼには肥料も農薬も要らないという、岩澤信夫氏
・山と川に手を入れれば、漁業は復活するという、畠山重篤氏
・林学がない国の森林を救う、鋸谷茂氏

私が一番興味があった田んぼについて語られ、
対談後に亡くなられた、岩澤信夫氏との対談から、大幅に省略・抜粋して紹介します。

(引用開始)

養老:不耕起栽培、つまり、耕さない農法について知ったのは、アメリカの科学雑誌を読んだのがきっかけでした。当時アメリカでは、農業の一割がすでに不耕起になっていて、じゃあ、今までの農業は何だったんだ、という……。

岩澤:今ではアメリカの全耕地の50%以上が不耕起栽培のようですね。大型機械が導入されたことで、畑の表土が失われてしまったのですが、耕さなければ土に粘性を与えるグロマリンが働くことがわかって…(中略)

養老:1993年の大冷害のときの田んぼの様子は『究極の田んぼ』に掲載された写真で見ました。あぜ道を挟んで、不耕起の田んぼと慣行農法の田んぼがあって、違いがはっきりわかります。

岩澤:あのときは「おてんとう様が顔を出さないから冷害が起きた」と農家も学者も口をそろえて言いました。しかし、私たちの田んぼでは完全に実が入ったのですから、おてんとう様のせいではないんです。やり方を変えれば、天候が悪くてもコメはちゃんととれます。

私の不耕起栽培は、冬期湛水という農法とセットになっています。

会員の田んぼで生き物調査をしました。そうすると、イトミミズが10アール当たり、1500万匹もいる田んぼがあることがわかりました。そういう田んぼでは、イトミミズの糞がトロトロの層になって積み重なり、雑草の種を覆っています。もっとすごいのは、このトロトロ層に膨大な肥料分が含まれていることです。肥料は一切使わなくていいんです。生き物の活動だけでお米ができてしまいます。

養老:不耕起冬期湛水農法は、植物としてのイネの強さを生かす農法なのですね。

岩澤:不耕起冬期湛水の田んぼからは、何万匹というアキアカネが飛び出します。地面には、すき間がないほどタニシが棲みつきます。ドジョウもメダカもものすごく増えます。田んぼが生き物だらけになるんです。

(引用終了)

こんな素晴らしい人々がいることがわかって安心するものの、
今、変化していかないと、、と焦ってしまう内容もいっぱい。

☆食や、環境問題に興味がある方に!

◎[参考書評]ダ・ヴィンチ電子ナビ

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by yomodalite | 2012-12-07 08:46 | 科学・環境問題 | Trackback | Comments(0)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


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