おてんばルル/イヴ・サンローラン

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アルノ・バニが撮影し、MJが選んだ、L' CEIL BLEU(青い眼)、FOND ROUGE(深紅の緞帳)の写真には、サン・ローランの衣装が使われていて、それで、このモード界の帝王と言われた、サン・ローランの本が読みたくなりました。

サン・ローランについて詳しいことは知りませんが、日本のどんな田舎でも、YSLマークのスリッパがあった時代を思い出すと、その名は「マイケル・ジャクソン」という名と同じぐらいの知名度があり、ふたりの共通点は、

とてつもなく有名でありながら、まったく理解されていない点だと言えないでしょうか。

そして、もうひとつ共通点は、

ものすごく繊細で、才能にあふれた天才でありながら、
帝王としての重責を担わされた。ということ。


ファッションの世界は、頂点に立つ、デザイナーと、その他大勢の無名の縫製者たちによる、完璧なピラミッド型の世界。

サン・ローランのような、トップモードを生み出すファクトリーでは、デザイナーのクリエイションを実現化するために、大勢の人が昼夜を問わない仕事を余儀なくされている。容赦のない「直し」の指示が、何度も、何度も繰り返され、体力と、気力を振り絞り、その要求に応えるスタッフたちにとって、それは「お金のため」だけではないでしょう。

でも、彼らの生活を支えるためにも、彼らの仕事の満足感を満たすためにも、
モード界の帝王は「お金のこと」を考えなくてはならない。
そして、彼は「フランスを救った」とまで言われたのだ。

マイケルも同様に、一流のプロデューサー、一流のミュージシャン、一流のエンジニア… を自分のアルバムのためだけに、何年も拘束し、一流の彼らですら、勘弁して欲しいと思うぐらい、何度も、何度も「ダメ出し」をし、作品を創ってきた。

だから、売らなければならないし、
それが自分ためだけではないということで、力も得るのだ。


「オフザウォール」の地点で、当時のレコード業界を救ったといわれるほど、MJのソロ時代は、最初から音楽業界の衰退期に入っていた。にも関わらず、その流れと逆行するように、売上げを伸ばし、また、その記録を超えることを目指したMJは、どんなアーティストより「売る」ことを考えてきた。

その姿勢は、業界にとっては救世主でありながら、批評家たちには不評で、音楽業界全体で、売上げが落ちているにも関わらず、常に、MJだけは、彼の人気や作品の質のバロメーターとして、売上げ数が語られる。

低予算で創られたPV「Smells Like Teen Spirit」が世界的に大ヒットし、グランジミュージック全盛期に、あのとてつもない派手な広告宣伝を行なった『HIStory』を発表したMJは、「金持ちミュージシャン」として、若者からも、批評家からも批判され、

音楽がネットで配信されるようになった、あの時代に、最高傑作をと考えていた「帝王」が、『インヴィンシブル』で、どれだけ深く悩んだかは想像するだけで、胃が痛くなる。

MJは、自分よりも「お金が好きな」彼らが、
自分よりも「売ることを考えていない」ことに、苛立っていたのだと思う。


最高のクリエイションと、お金のこと、そのふたつには、深い矛盾があるけど、トップアーティストであるための条件でもあって、だから、彼らは、それに耐えるために、もうひとつの才能が必要になる。

それは、MJも、常に大事にしてきた「笑い」と「いたずら」。

『おてんばルル』は、サン・ローランが、まだ、クリスチャン・ディオールの元で働いていた、20歳の頃に書かれた、最初で、最後の絵本。

初版は1967年で、パリの有名セレクトショップ「コレット」が限定販売した復刻版が人気を集め、2003年に復刊された、

おてんばで、かわいいけど、下品で、エッチで「いけないこと」が大好きな女の子の話。


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すべて赤と黒の2色使いで描かれた、おしゃれで、エスプリが効いた、大人の絵本です。

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Commented by jean moulin at 2012-12-10 18:40 x
珍しい本のご紹介ありがとう!

ちょっと気になって、原書のレビューを見てみたんだけど・・。
えらく酷くてね。
「絶対買うな」とか、「捨ててしまえ」的な感じなの。
宗教的にもすごくひっかかるみたいで・・。
悪魔儀式みたいな事も書いてあったりするの?

「vilaine」を「おてんば」っていうのも、かなりかわいく訳しているみたいだし。

次の、「サンローランへの手紙」の記事をみると、わからないでもないけどね。

Commented by yomodalite at 2012-12-10 21:12
mourinさんのコメントで気になったので、私も Amzon.fr に行ってみたよ。ホントだね。5人がひとつ☆で、それはちょっと酷すぎると思ってくれたひとりが5つ☆って感じ。

フランス語よくわかんないけど、なんとなく、MJへの性的虐待疑惑と似てるっていうか、これを、どう読んだら幼児のポルノグラフィーになるのか、わかんないけど、っていう「批判」みたい。。

>「vilaine」を「おてんば」っていうのも、、

うん。。「いけない」ことは、確かなんだけど、ちょっと「大げさ」過ぎると思うな。なんか「こども」に関して、神経質すぎるチェックが横行してるみたいね。それとね、ファッション界はものすごく「イジワルな世界」だから、、というようなこともあるのかも。

「サンローランへの手紙」は、ジュネとか、ボードレールが大好きなベルジュが、赤裸々に言っちゃってる部分も多少はあるけど。。でも、若い頃のサンローランの感じと、ベルジュの手紙のテイストは全然ちがうと思うけど。。
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by yomodalite | 2012-12-08 09:00 | 現代文化・音楽・訳詞 | Trackback | Comments(2)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


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