不滅のキング・オブ・ポップ Michael Jackson : Auction/アルノ・バニ[3]

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☆[2]の続き

私が今更ながら、この本に興味を持ったのは、本書の文章をじっくり読んだうえで、MJ自身が選んだ4枚の写真と、それ以外の写真を比較してよく見てみたかったからですが、撮影時の「物語」は、かつて、広告業界の末端にいた者として、23歳でこのプロジェクトに参加したアルノ・バニの気持ちが、手に取るようにわかるような気がして興奮してしまいました。

専属メイクのひとの「ツイート」では、この撮影はジャケット撮影ではなく「It was just an experimental photo shoot. 」と言っていたり、青い目は何を表現しているのか?という質問にも「It did not represent anything.」と非常にそっけなかったので、

本書がこれらの写真を「ジャケット用の撮影だった」と言っていても、オークション用に「盛った表現」の可能性も疑っていたんですが、

撮影前の長い準備期間、レコード会社幹部も含めたミーティングを何度も行ない、最終的な撮影現場には、それまでの制作スタッフも撮影に同行していることから、これが「ジャケット用の撮影」だったことは間違いないし、専属メイクのひとも、バニとの撮影は、ワトソンよりも前だったと言っていて、バニも、この撮影は7月の初めだと言っているので

「7月3日~4日、マイケルはニューアルバムのため、パリ郊外のスタジオ内でほとんどの時間を費やし、7月3日にはニューアルバムのジャケット用写真の撮影をしました」

という[Legend of MOONWALK 99年8月5日発行分]の記述も、バニとの撮影のようですね。

ただ、ポーズをとっているのではなく、撮影のために想像力あふれる「ストーリー」を組み立てて挑んだ撮影に対し、自分が参加していないからといって「It did not represent anything.」と言ってしまうメイクのひとは、専属美容師として、個人に雇われている期間が長過ぎて、クリエーターとして作品を創造する人の気持ちがわからなくなっているのでしょう。

バニは、自分が出来たことを誇りに思うと同時に、出来なかったことを残念に思っているけど、自分のメイクが採用されなかったのは「会社のせい」としか思っていない彼女は、永年、MJの好みを知り尽くしてきたから、そう思ってしまうのでしょうか。

彼女には、ロンドンのデモで、社長をクビにするほどの力がありながら、どーして「ジャケット」を自分で選ぶくらいのことが出来なかったのか? という疑問を、まずは感じて欲しい。。でも、

彼女も、『THIS IS IT』にわだかまりがある人も、

人が生きている。ということが一番重要だと考えているひとが多いからなのかなぁ。。。

そういった「死生観」の違いで「真相」の見え方は異なりますからね。。


わたしは、死ぬよりツラいことや、生きるよりも大切なことは、たくさんあると思ってます。

この写真が、アルノ・バニの元に戻った経緯に関しては、本書でも詳しい説明がなく「マイケル・ジャクソンは怖れも遠慮もなく、その写真をアルバムに使わずにアルノの手に戻そうと決心し」た経緯についてもこれ以上は書かれていないけど、あの、ヘルンヴァインにさえ、1枚しか「作品」として認めていないMJが、時限装置つきとはいえ、4枚も作品とすることを認めている…

その理由を、私なりに想像すると、

ヘルンヴァインの写真が、当時の「マイケル・ジャクソン」の肖像写真であるのに対し、バニには、フォトグラフィストとしての能力で、今後の「マイケル・ジャクソン」を描いてもらいたいという要望があったからでしょう。

MJセレクトの4枚は、


L' CEIL BLEU《片目にブルーのメイクをしたマイケル・ジャクソン》
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FOND ROUGE《深紅の緞帳を背景にしたマイケル・ジャクソン》
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LA CAPE D'OR《金色のケープを羽織ったマイケル・ジャクソン》
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LA MAIN D' ARGENT《銀色の手をしたマイケル・ジャクソン》
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他にも、
IN THE STUDIO《スタジオのマイケル・ジャクソン》
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というテーマの写真があるけど、下記の2つは「ベタ焼き」しか残されていない。

LE MIME《パントマイム》
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BLACK OR WHITE《ブラックオアホワイト》
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☆ベタ焼きとは?

写真家で、しかも加工を前提とした作風のバニが「ベタ焼き」を公表するなんて、ありえないことで、MJとの仕事のあとも、業界的な仕事になじまず、先鋭的なキャリアを積んできたバニが、これを出品したのも「お金のため」じゃない。

MJに選ばれた4つのテーマは、選ばれなかったテーマよりも、より絵画的な世界で、その中から、さらに「人間的な表情から遠い顔」を、彼は選んでいる。

また「銀色の手」と「金色のケープ」の顔は、彼の哲学原理を表した詩「ARE YOU Listening?」の一部が描かれている肖像画の顔や、ショートフィルム「You Rock The Wourld」で、マーロン・ブランドが演じる「ボス」と対峙した後の顔ともよく似ていて、

これらを選んだのは、やっぱり「アンブレイカブル」や『インヴィンシブル』を意識していたからじゃないかな。

◎[参考記事]マイケルジャクソンの顔について(38)スペードのKING

肖像画を書いたデイヴィッド・ノーダールは、絵の完成に期限が設けられたのはこの絵だけだった。と語っているので、あの絵もアルバムに関連して考えられていたのかなぁ...

彼が考える『インヴィンシブル』とは、ミケランジェロが「ダヴィデ像」で表現したように、

千年先をも見据えるような「怒り」を表現しつつも、


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「子供の無邪気さ」も同居させなくてはならない・・


そんな、相反する2つの顔を、MJは、いくつかの作品で演じ分けるという俳優のような表現ではなく「マイケル・ジャクソンの顔」としたい。とずっと考えていた。

「アンブレイカブル」は、MJの最後の作品にとって、どうしても形にしたいテーマで、彼はその表現に悩み抜いていたけど、それは、どこか自分でも納得がいかなかったし、理解もされなかった。

でも、

それから、2度目の幼児虐待疑惑により、裁判にかけられたり、この時代最高のアーティストとして、誰よりも苦しんで、それでも負けなかった。それで、ようやく、MJは、

これが「アンブレイカブル」なんだと言いたくて、「THIS IS IT!と言ったのだ。

どうしても、彼が、誰かによって追い込まれたと思わずにはいられない人に、共感できるようなことは書けそうにないけど、、結局それらの真相は「死生観の違い」なんだと思って「マイケルと神について」を書き始めた。

当時のわたしは「お花畑」も「サーカス」の世界も好きではなかったけど、今は、セレクトされなかった《パントマイム》や、薔薇の絨毯を歩いている《ブラックオアホワイト》の大きな写真が見たいと思う。


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最終的に「作品」になったものより、そのままの写真が、もっと、もっと見たかった。

でも、この頃、MJは、今までの彼に近い写真は封印し、人間らしくない表情の「顔」を選ばずにはいられなかった。


彼が思い描いた「アンブレイカブルな男」には、それぐらい前例がなかった。。

ということでしょうか。



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Commented by jean moulin at 2012-12-03 18:34 x
「不滅のキング・オブ・ポップ」届いたよ!
(ただ、どうしてもこの日本語版のタイトルには違和感が・・)

まだ、細かくテキスト読んだわけじゃないけど、この写真集すごくいい!
MJが選んだ4枚は、ジャクソンズ以来、絵画的な完成度に拘ってきたMJとしては、まさにぶれない「Yes」な感じだけど、それ以外の写真と合わせてみると、バニとMJの創ったストーリー性が明確になって、本当にすばらしい。
yomodaliteさんいうように、「アメリカン」な要素が全くなくて、MJの新しい可能性を広げる写真達だよね。
小さなベタ焼きの写真からも、MJの表情を覗いたり、物語を読み取れたりできるしね。
バニとMJの世界観が相乗的に広がってゆくのが感じられるね。
これ、お宝決定!
Invincibleのジャケットも好きだけれど、ドニ版Invincible見たかったなあ。

ちなみに「月のオペラ」はフランス語版をみつけたので、そちらに挑戦の予定。
Commented by yomodalite at 2012-12-03 22:25
私ね、初めて、映画館で見た名画が『天井桟敷の人々』だったんだけど、ずっと忘れてて、久しぶりにジャン=ルイ・バローが演じた、バチストっていうパントマイミストの顔を思い出しながら「つきのオペラ」を読んで、MJのちっちゃなベタ焼き写真を見てたら、もう泣きそうだったんだけど、、でも、MJはそれだけで納得できる境地じゃなかったんだろうね。

選ばれた4枚だって、バニも、MJも、ただ好きに選んだってわけじゃなくて、、色々考えてるうちに、ああなったという部分もあると思うけど、、それでも楽しい経験だったって感じが、写真だけを見てるときよりわかって良かったなぁ。

チャイコフスキーの曲で、数々の名プリマが踊り、ドヴュッシーには、ニジンスキーが、、でも、MJのように、歌手としても、作曲者としても、ダンサーとしても、肩を並べる人がいないレベルで、尚かつ、アイドルで、ビジネス感覚も抜群で、これまで誰も経験したことのないようなマスメディアの狂騒に耐えて…

そんな境地に立って、そこから、また、大勢のひとに受け入れられるために。なんて、どれだけ深いジレンマなの。
Commented by yomodalite at 2012-12-03 22:26
でも、最終的に「会社」の意見を聞いたのは、会社の「売るため」の論理は、結局は大勢のファンに受け入れられるためだからで、、小さなこどものファンをも視野に入れてる、MJだからこそだしね…(泣)

MJは「インヴィンシブル」は10年経てばって言ってたわけだし、ずっと後になって公開されて良かったよね。あのとき、これが選ばれてても、どうせ、また「整形」だの「修正し過ぎ」だとか言われたに決まってるし、、痛烈でありながら、ファンタスティックさも大事にするサヴィニョンのような人もいてくれたしね。

>「月のオペラ」はフランス語版をみつけたので、そちらに挑戦の予定。

それ正解かも!「不滅の~」(違和感ないなぁ、だってまんまじゃんw)の方も、ところどころ、原文で確認したい箇所があったけど、これは絵本だし、プレヴェールは言葉の音にもこだわってそうだし「Chanson dans la lune」(ミシェル・モランのうた)の仏語も知りたいよねっ
Commented by Jean moulin at 2012-12-04 22:21 x
大勢のひとに受け入れられるために
ほんとU、ここがMJのすごいところでもあり、抱え込んでしまった事でもあるよね。
この4枚の写真の選択、そして、結果的に使われた「インヴィンシブル」の写真からも感じるよね。

でも、yomodaliteさんいうように、結果的に今として、ものすごく物語性を帯びてこの写真と出会えたのは、良かったかも。

あの、小さな写真の中の、いろいろな表情のMJは、なかなか気に入ったしね
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by yomodalite | 2012-12-02 19:02 | ☆マイケルジャクソン書籍 | Trackback | Comments(4)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


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