丘の上のパンク ー 時代をエディットする男、藤原ヒロシ半生記/川勝正幸

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2009年に出版された、川勝正幸氏の最後の著書。『サブカル・スーパースター鬱伝』を読んで、読まなくてはと思った本です。

藤原ヒロシ氏と仕事をした人々約70名の証言を中心に構成されていて、著者も書いているのですが、60年代文化の名著『イーディ』のようなスタイルの本で、

ともに時代を創ってきた大勢の人々が藤原氏のことを語っているのですが、驚くのはそのすべての人、中でも、藤原氏が20代の頃、すでに成功者で年長者だったいとうせいこう氏、近田春夫氏や、桑原茂一氏までもが藤原氏のことを非常に尊敬していること。

また、海外ミュージシャンとの交流では、エリック・クラプトンが一番多く語っていて、クラプトンは、テクノロジーの流行には頑固ジジイのような考え方を持っていたにも関わらず、藤原氏が小さなラップトップで遊んでいるのを見て「僕も持たなきゃ」と思われたそうです。

藤原氏のしてきた仕事は本当に様々なんですが、近田春夫氏は、

「王道」で、欲がなく、邪心も、下心もなく、戦略もない、メッセージ的でなく、モードであって、意味を伝える武器として利用しない、本当に自分が好きなこと、いいと思うことを一切軸足を変えずに、身体で半分形にしている。。。あいつが大成功しても、誰も嫉妬しないんだよ。徳なんじゃない。礼儀もあるし、無神経じゃないでしょ。本当に心の優しい人だから、あいつのこと嫌いな人いないんじゃない?

と証言されていて、他の証言者の方すべてが、それを証明しているといった内容。

それで、すっかり「洗脳」されてしまったからでしょうか。この本を読んでから、すっかり買わなくなっていた洋服を買いたくなってきたり、それと、DJにもなりたいと思ってしまいました!どーしよーw

下記は「INTRODUCTION」から省略して引用。

本書の英語タイトル「TINY PUNK ON THE HILLS」について

本書の日本語タイトル『丘の上のパンク』を見て、山田太一の素晴らしい小説/TVドラマ『丘の上の向日葵』を思い浮かべる方もいらっしゃると思う。しかし、直接の関係はない。英題「TINY PUNK ON THE HILLS」を和訳する際に、参考にさせてはいただいたのだけど。。。

そう、この本の英語のタイトルは、ビートルズの名曲として有名なポール・マッカートニーが作詞・作曲した「FOOL ON THE HILL」のもじりである。

まず、“TINY PUNK” とは、藤原ヒロシが、82年、18歳のとき単身ロンドンへ遊学し、ヴィヴィアン・ウェストウッドや彼女の店〈ワールズ・エンド〉の店員たちと親しくなっていく流れの中で付けられた愛称だ。意味としては「山椒は小粒でもピリリと辛い」「恐るべき子供」と同義だったのではないだろうか。

そして、“HILLS” と “HILL” が複数になっているのには、2つの意味がある。

ひとつは、藤原ヒロシのプライヴェート・スタジオがヒルズの上の方にあるという洒落からだ。

もうひとつは、藤原ヒロシが、2002年夏、オープンしたばかりの〈BAPE CAFE!?〉で、幻となったある雑誌のインタヴューのために、筆者に語った人生の流儀からである。

「僕はお山の大将ではなくて、言ってみれば小山の大将だと思う。小さな山のてっぺんまで登って、飽きたら次の小さな山を探して、またてっぺんまで登って… 。それを繰り返していく。でも1度も登った小山を自ら崩すことはしないんだけど」

小山という表現はあくまで藤原ヒロシ目線であって、エクストリームなスポーツの分野ならスケートボード、スノーボード、ピスト、音楽の分野ならリミックスDJ、ヒップホップ、ハウス、アンビエント・ダブ、DJ出身の音楽プロデューサー、ストリート・ファッションの分野なら日本初のストリート・ファッション・ブランド〈グッド・イナフ〉、日本初のダブルネーム・ブランドと言ってよい吉田カバンとの〈ヘッドポーター〉〈NIKE〉初の非アスリート系クリエイティブ・コンサルタントと、日本初、または始めた時期が早い行為が多く、しかもそれぞれのクオリティは高い。

しかも、藤原ヒロシは、これらの「小山」を極めるにあたって、ヴィヴィアン・ウエストウッド、マルコム・マクラーレン、ショーン・ステューシー… ら、頂点の人々と、最短距離で邂逅してきた。

本書の日本語サブタイトル「時代をエディットする男」について

エディットは、クラブ・ミュージック用語の「EDIT」と言う意味で使っている。藤原ヒロシがコレクションしてきたものはレコードだけでなく多岐に渡り、エディットしてきたのは音楽だけでなく、物から人にまで及んでいる。ブランド物やステイタスのある物が好きなんだけど、それを地に落とすっていう、とにかく普通のブランド物好きやコレクターとはちょっと違う。

藤原ヒロシの収集/募集には独自の美学があり、反権威という言葉が大げさならば天の邪鬼とでも呼びたい精神に貫かれている。自分が飽きたから、あるいは、自分が理想とする状態でなくなったからとキッパリ辞めた例が多く、その引き際は鮮やか、いや、鮮やか過ぎであり、時に周りの人々を驚かせ、困惑させてきた…

(引用終了)

ひとつのことを一生やり続けるということは、なかなか出来ないようでいて、実は、多くの人が選ぶ道であり、特に「プロフェッショナル」な世界では、そのほうが「楽な道」ではないでしょうか。藤原氏は、そういう意味で、軽やかに「前人未到」の道を行く方なんだなぁと思いました。

☆藤原氏の素敵なミックスはいっぱいありますが、究極の名曲という「王道」で!


Fujiwara Hiroshi





Happy remix





MICHAEL JACKSON & JAKSON 5 REMIXES by Hiroshi Fujiwara & K.U.D.O.





Jackson 5 - I Want You Back [HF & K.U.D.O. Dub Mix]


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Commented by hiziri_1984 at 2012-11-24 16:11
どうもはじめまして。
よく拝見させてもらっています^^

本ブログ記事の
「ひとつのことを一生やり続けるということは~
 《中略》そのほうが「楽な道」ではないでしょうか」
というのは、とてもおもしろいと思いました。

私事ですが、
最近読んでいた本と共鳴する部分がありまして、
ハッとさせられました。
恐縮ですが、ちょっとだけ引用させて頂きます。

  何事も分類化され、
  専門化された偏狭な時代に生きる我々は、
  プロフェッショナルになることを期待され、
  単調にこつこつと働くことを要求される。
  そこでついつい忘れてしまうのだが、
  かつて人々はもっともっと生彩があって多才だった。
    《『哲学の冒険 マトリックスでデカルトが解る』
             著・マークロランズ/監修・筒井康隆》

かつて、デカルトが、哲学者であり、科学者であり、
数学者であり、傭兵だったことを引き合いに
上記の文章が書かれていました。
(全体の主旨からは多少脱線する箇所ではありますが)

Commented by hiziri_1984 at 2012-11-24 16:11
ここでは「生彩」という言葉が新鮮で、
その感覚はもしかすると『丘の上のパンク』にも
あるのではないかと思い、
機会をみて本書を手にとってみようと思いました。

たいへん興味深い記事でした!
またお邪魔致させて頂きます。
(また、2つのコメント欄に及ぶ長文
 失礼いたしました!)
Commented by yomodalite at 2012-11-24 21:20
hiziri_1984さん、はじめまして。

お名前リンクからブログにお邪魔して、会田誠とミケランジェロの記事をとても興味深く拝見し、カテゴリ「瀆書体験」から「人に本を薦めるとき」を読み『三角砂糖 ショートショート20人集』が、すっごく読みたくなりました!

>2つのコメント欄に及ぶ長文…

コメントをくださるほとんどの方が、2コメ欄以上なんです。どーゆーわけだか…w

>何事も分類化され、専門化された… 生彩があって多才だった。

ものすごく共感する言葉ですね。私はかつて「プロフェッショナル」という言葉を、
自分によく称えていたんです。その言葉で鼓舞したり、自重したりして…

でも、今は、多少でもクリエイティブなことをしている自覚があるなら、そんなこと言い出した時点で「終わってる」と「あの頃の自分」に叱りに行きたいぐらいだなぁ。。(つづく)
Commented by yomodalite at 2012-11-24 21:21
「丘の上のパンク」も大勢の人が証言しているのに、すべてが賞賛コメントという本なんですが、「批評」とか「批判」も混ぜないというバランス感覚も「プロフェッショナル」でツマラナイと最近よく思うんです。

それは「プロフェッショナル」じゃない「素人」にも蔓延してるけど、無駄ですね。ときめくことだけに向かって行けばいいと思う。

私も、hiziri_1984さんと同じく、どこかにひとりはいるかもしれない誰かに向けて書いているんですが、本当にいてくれたことがわかってホッとして、

『哲学の冒険 マトリックスでデカルトが解る』という本も
読んでみようと思いました。また、お会いしましょう!
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by yomodalite | 2012-11-17 13:21 | 現代文化・音楽・訳詞 | Trackback | Comments(4)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


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