アメリカが作り上げた素晴らしき今の世界/ロバート・ケーガン、古村治彦(翻訳)

アメリカが作り上げた“素晴らしき"今の世界

ロバート・ケーガン/ビジネス社



著者は、ネオコンと分類されるアメリカの政治・外交評論家で、ブルッキングス研究所の上級研究員にして「ワシントン・ポスト」のコラムニストとしても活躍している。2008年の共和党大統領候補マケイン上院議員の外交顧問を務め、現在は、2012年の共和党大統領候補として名前が挙がっているロムニーの外交顧問で、さらに重要なのは、

現在、ヒラリー・クリントン国務長官の外交政策委員会の委員であるということ。

ネオコンは、オバマ大統領の前、ブッシュ政権時に外交・安全保障政策で脚光をあびた政治思想ですが、オバマになっても、また次の選挙でオバマが敗れても、そのブレーンには何の変化もないのでしょうか?

本書で、ケーガンは「アメリカが衰退している」という主張に反論し、経済、軍事、ソフトパワーの面でも力を失っていないと主張、オバマ大統領もケーガンの「アメリアは衰退していないし、これからも世界に対して影響力を持ち続けるべきだ」という主張に賛同し、今年(2012年)の「一般教書演説」でも、彼の主張に言及し、メディアの注目を集めました。

☆下記は、監修者である副島隆彦氏による序文から

(大幅に省略して引用しています)

本書は、アメリカのネオコン派の論客ロバート・ケーガンの最新刊の翻訳書である。ネオコン派は、ユダヤ系の凶暴な政治知識人の集団である。彼らは若い学生の頃は「ソビエト打倒、世界同時革命」を唱えた過激な左翼活動家だった者たちだ。学歴としても超秀才の頭脳たちである。彼らが成長して、アメリカの対外政策、軍事路線を動かす政策集団になった。

ネオコン派は、ブッシュ政権の終焉と共に消え去った、はずだったのだ。ところが、そうではなかった。ネオコン派は、オバマ政権の中にも密かに潜り込み、他の政治集団の思想、行動にまで影響を与えていたのである。この本は、そのネオコン派の主要人物で代表格の1人であるケーガンによって書かれたものだ。

しかも、大統領選挙の年であるこの2012年に入って、決意も新たに、世に問うたものだ。

本書の原題は「The Would America Made」である。「現在の世界体制はアメリカが作り上げたものなのだから、これからもアメリカが支配する権利と義務を負っている」という考えを正直かつ露骨に表明している。だから本書は、アメリカの軍事・外交政策への包み隠しのない最新の野心的提言の書となっている。

ブッシュ政権はのっけから911事件(2001)を合図にして、アフガニスタンとイラクに侵攻した。「戦争で経済を刺激する」という、まさしく戦争経済 War Economy の戦略図のとおりである。ディック・チェイニーとポール・ウォルフォビッツを筆頭にして、これらの強烈な政策を実行した。ケーガンは、ブッシュ政権に閣僚として入らず、ネオコン派の論客として政権を外側から支えた。

ところが、彼らの計画は狂った。アメリカはアフガニスタン戦争(2001〜)と、イラク戦争(2003〜)という泥沼に足を取られることになった。ネオコン派に対する批判が国内で大きくなり、「バグダット(イラン)ーカブール(アフガニスタン)枢軸」でアラブ・イスラム世界に巨大な楔を打ち込んで、イスラム世界に歴史的な大打撃を与えようとした世界戦略は、ここで一敗地にまみれた。

現在でも、アメリカ国内におけるネオコンに対する警戒心は強い。共和党のロムニー候補の外交政策アドバイザーまで、ネオコンと関係が深い人物が多いので心配だという論調が見られる。軍事力で世界を管理しつくせる、などまさしく幻想だった。ネオコン思想は現実の前に敗北した。ところがそれでも「ネオコン」は生きている。

ケーガンが上級研究員であるブルッキングス研究所(純然たる民主党系のシンクタンク)の所長は、ストローブ・タルボット(Storobe Talbott 1946〜)。タルボットは、ビル・クリントン元大統領がローズ奨学生としてオックスフォード大学に留学したときのご学友で、クリントンの側近中の側近である。クリントン政権時代は、8年間にわたし国務副長官を務め、政権を支えた。

ビル・クリントンの側近と言えば、現在オバマ政権の国防長官をしているレオン・パネッタ(Leon Panetta 1938〜)も忘れてはならない。彼は今でもオバマ政権で国防予算の削減に血だらけの大ナタを振るっている。

オバマ政権のこの4年間の外交を見てみると、初期の現実主義的な姿勢(CFR=米外交問題評議会的リアリズム)から、ヒラリーを中心とする人道主義的強硬介入派に肩入れし、諸外国への介入の度合いを強め、

とりわけ「アラブの春」を画策している。

外国への介入主義という点で、ヒラリー派とかつてのネオコン派は同じことをやろうとしているのである。

『イスラエル・ロビーとアメリカの外交政策1・2』の著者の1人、スティーブン・ウォルト(Stephan Walt)ハーバード大学教授は、オバマ政権のこの外交姿勢の変化を指摘して「オバマは、ジョージ・W・オバマになった」と評している。また、本書の訳者の最新作『アメリカ政治の秘密』でも、オバマ外交の変質が精密に取り合げられている。日本では最重要論文である。

現在のアメリカは、景気が後退し「中国に追い抜かれてしまうのではないか」という重苦しい雰囲気に包まれている。こうした中で、アメリカの衰亡を否定し「アメリカはこれからも強力であり、世界を支配し続ける」という宣言をケーガンは本書ではっきり行なっている。その主張をオバマ大統領が賞賛している。これが今のアメリカの「ぶれない決意」なのである。

共和党と民主党の双方を中間点で取り結んでいる(ネオコンのまま)というケーガンのこの特異な政策立案者としての顔が、今のアメリカ政治の生態を観察する上で、私たち日本人に重要な多くの示唆を与える。これからの数年のアメリカ外交がどのように行なわれるかをさぐり当てることができる。読者諸氏の慧眼とご高配を賜りたい。

2012年7月 副島隆彦拝

(引用終了)

国際社会の安定のために、常にアメリカはやってきたんだと、被害者意識にくわえ、孤独感をもにじませて語る著者には「いや、もう結構ですから」とか「よく言うよ」とか「まだ、やる気?」など、うんざり以外の感想を抱くことがむずかしく、

恩を忘れたのか?と言われても「返しましたけど、まだ何か?」と言いたくなり、アジアから出てってやる。には「どうぞ。どうぞ」としか思わないのですが、

ヒラリーが、活発に、海外に出かけるたびに、どうしてそんな仕事に、そこまで夢中になれるの?と不思議で仕方ない人にも、少しはその気持ちが理解できる部分も、、ないこともないので、、知りたい方はぜひ!


◎Amazon『アメリカが作り上げた素晴らしき今の世界』

_________

[内容]

副島隆彦による序文

はじめに

アメリカが世界を現在の形に作り上げた
世界秩序は永続しない

アメリカの衰退は世界に何をもたらすのか?

第1章 アメリカの存在しない世界はどうだったろうか

各時代の最強国が世界秩序を作り出してきた

戦争を正当な外交政策と考えるアメリカ人

アメリカ人は民主政治以外の体制が許せない 

アメリカは嫌々ながら他国に干渉している

アメリカの行動が世界に対する不安定要因となっているという矛盾

首尾一貫した外交ができない国が作った世界秩序

第2章 アメリカが作り上げた世界

ヨーロッパが嫌がるアメリカを引き込んだ

アジアから戦争をなくすことはできなかった
人間は脆弱な民主政治よりファシズムを求めた

第二次大戦は民主政治の勝利ではなかった 

20世紀末に突然、巻き起こった民主化の第三の波 

首尾一貫しなかったアメリカの方向転換 

カーター、レーガン、ブッシュ政権の積極的な関与 

ソ連の崩壊と東欧・中欧で起こった民主化の津波 

19世紀半ば、仏英は他国の自由主義者たちを見捨てた 

追い落とした独裁者たちの後に民主主義政権が成立するとは限らない 
覇権国が望まなければ国際秩序は強化されない 

19世紀、イギリスが作り上げた世界 

アメリカが覇権を握り、世界に史上最高の繁栄をもたらした 

自由市場経済は強国のためのシステム 

大国間の戦争は今後起こりうるか? 

国家指導者たちは野心と恐怖心から非合理的な行動をする 

アメリカが大国間の平和を維持してきた 

軍事力行使は世界秩序維持のための奉仕活動 

アメリカの軍事力行使を止められる国はない  

同盟国や国連の反対などアメリカは意に介さない 

世界各国がアメリカの軍事力を受け入れる理由 

アメリカによる中国包囲網 

紛争の火種は世界各地に存在している 

現在、戦争は現実的な選択肢ではない  

第3章 アメリカ中心の世界秩序の次には何が来るのか?

アメリカ衰退後、世界は多極化するのか?  

民主化の波を阻む大国、ロシアと中国 

新興大国は自由経済を守れるのか? 

次の超大国・中国の問題点 

中国は世界秩序の維持という重責を担うのか? 

多極化した世界が安定する保証はない 

中国とロシアは脅威となるのか? 

超大国へと急成長する国が戦争を引き起こす 

民主主義国家と独裁体制の大国の協調できるのか? 

結局、国際ルールで縛れるのは弱小国だけ 

覇権国の軍事力によって維持されてきたリベラルな秩序 

行の国際ルールは覇権国の衰退とともに崩壊する 

国連が直面する「ゆっくりと起こっている危機」 

第4章 結局のところ、アメリカは衰退に向かっているのか? 

大国の衰退はゆっくりと進行する 

経済力、軍事力ともにまだアメリカが優位を保っている 

友好的な新興国の急成長はアメリカに利する 

覇権国が常に世界をコントロースできたわけではない 

力を誇示するアメリカは憎悪の対象となった 

冷戦下の世界で反アメリカ主義が世界を席巻した 

アメリカは中東をコントロールできなかった 

70年代の失速と90年代の勝利 

二極化、多極化した世界こそ不自由な世界という皮肉 

中国が覇権国となるには、アメリカとの競争に勝たねばならない 

覇権国の地位を維持するコストと利益 

アメリカの最大の懸念は財政危機

それでも世界はアメリカのリーダシップと関与を必要としている 

第5章 素晴らしき哉、世界秩序!

衰退という選択と覇権の移譲に対する条件 

アメリカのハード・パワーとソフト・パワー  

アメリカ国民にとって現在の世界秩序は必要か? 



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by yomodalite | 2012-10-22 11:41 | 政治・外交 | Trackback | Comments(0)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


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