マイケルと神について「ジョン・レノン Part 2」

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☆「ジョン・レノン Part 1」の続き

Part 1で紹介した「God」は、1970年に発売された『ジョンの魂』(原題:John Lennon / Plastic One Band)に収録された曲。

心理学者アーサー・ヤノフが書いた『Primal Scream』という本に影響を受けたジョンは、ヨーコとともに「プライマル・セラピー」と呼ばれる精神療法を体験。パラノイアックなまでに、自分の過去を否定したアルバムとも称された『ジョンの魂』は、その治療の影響を強く受けたものでした。

◎ジョンの魂(Wikipedia)
◎プライマル・セラピー(原初療法)

下記は『ジョンの魂』発売後、1970年12月に行なわれた「ローリングストーン」の編集長ヤーン・ウェナーによるインタヴューをまとめた『レノン・リメンバーズ』(『回想するジョン・レノン』『ビートルズ革命』改題)から、

ビートルズの音楽出版権売買へのジョンの関与や、ビートルズ解散問題に疲れ、それをヨーコの責任とするメディアやファンにも怒りを募らせている当時の心情を率直に吐露したインタヴュー部分を、省略・要約して抜粋しています。

◎[Amazon]『レノン・リメンバーズ』
☆尚、著作ではなく、雑誌掲載のインタヴュー原文はこちらで読めます。


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Q:これまでの自分をみんな取り消してしまいたいという気はありますか?

自分が漁夫かなにかになれるのであれば、取り消しますね。アーティストであることは、少しも楽しくないですからね。わかるでしょう、たとえば、ものを書くにしても、楽しいことではなくて、責め苦ですよ。

ほかの人たちが、私たちを死ぬまで吸い尽くしてしまうのです。私たちにできることといえば、せいぜいが、サーカスの動物みたいにやっていくことくらいのものなのです。わたしは自分がアーティストであることに憤慨していますし、そういう意味では、なにも知らない馬鹿な人たちのためにパフォームすることに憤りを覚えます。

Q:公演旅行に出るということは、どういうことなのですか?体の不自由な人たちがやってきて、というような話を読みましたけど。

たとえばイギリスでは、私たちがどこへ公演にいっても、体の不自由な人たちとか車椅子に乗っている人たちのために、どこでも、いつも席がいくつかあけてあるのです。私たちは、有名であるがために … そういう人たちに対して私たちはなんというか愛想よくしなければならないのだ、と思われていたのです。

ひとりでいたいですし、それに、何を喋っていいかわからないのです。そういう人は、たいていは「わたしはあなたのレコードをもっていますよ」と言ったことしか喋らないか、あるいは、なにも喋れなくて、ただ手を触れてみたいだけなのですね。

それに、いつも、その人たちのお母さんとか看護婦さんとかが、そういう人たちを私たちに押し付けてくるわけなのです。私たちがキリストかなにかのように。。私たちには、普通の人とはちがったなにか特別なものがあり、手で触れてくることによってその特別なものが自分にも乗り移るみたいな感じで... そうでなければならないと決めてかかっているみたいでしたね。そのようなことに対して、私たちは、なんと言えばいいのか、冷淡な態度でいたのです。

Q:あなたが、そのような人に対して持っていると考えられていた能力のことを自分で思ってみても、その時点では、あなたは仰天したりしなかったのですね?

私たちが、体の不自由な人たちを直す力を持っているというのが、仲間うちのジョークのようになっていました。私たちが言いそうな、、残酷な言葉ですからね。私たちも、そのような人々に対して気の毒には思うのですが、ずっと取り囲まれていると気まりが悪いみたいなこともあります。

私たちが有名になればなるほど、私たちが接するアンリアリティは大きくなっていき、たとえば、市長の奥さんと握手をしないと彼女は怒鳴りはじめ、セッションの後、眠っていると、市長の奥さんがやってきて「起こさなければ、新聞記者たちに喋ってしまうわよ」と脅し、自分たちの馬鹿な娘に私たちが会わないなら、不利な情報を流すと、、

このアルバム(『ジョンの魂』)で、私が言っているのは、、私は二度と再びおまえたちにひっかかりはしない、ということなのです。

Q:アーサー・ヤノフについてちょっと話をしましょう。あなたがサンフランシスコに出てきたとき「プライマルこそ…!」と、あなたは言いたがっていましたね。
When you came out to San Francisco, you wanted to take an advertisement to say, “This Is It!”(註1)


そういう願望は、プライマル療法の初期におこってくることなのだと思います。というのは、プライマル療法によると、自分自身について発見するわけですが、その発見が自分にとって、あまりにも驚愕すべきことなので、こういう療法はまだ誰も知らないだろう。これはたしかにかなりのものだ、と思うようになるのです。

私がアーサー・ヤノフを宣伝したいと言った裏には、どこに行くにしても、私は行くための理由が欲しいのです。ヤノフの宣伝を行なうのだ。という理由で、ひとつの目標ができます。でも、マハリシのときのように、大げさで派手なことにはしたくありません。この療法について宣伝みたいに喋ることはやめなさいと、あなたは言いましたけど、それは正しかったわけで、私があそこでなにを体験したか知りたい人がいれば、その人には、自分で調べて知って欲しい。こういうふうに言っておかないと、また、マハリシのときみたいなことになってしまいますからね。

Q:パラノイドとしての状態は、やわらいでいますか?

いいえ。しかし、自分自身の恐怖を私は感じることができるようになったのです。自分自身の苦痛が感じ取れますから、以前よりもその苦痛にうまく対処できるという、それだけのことですね。私はおなじ私ですけど、ひとつチャンネルが余計に出来て、それによって、私の苦痛が私のなかにとどまってはいずに、動き回れるようになったのです。以前よりも楽になりました。

誰もが、私たちをひどい目にあわせました。特にヨーコに対してひどかったですね。(中略)あまりにも苦痛をあたえつづけられるので、なんとかする必要があったのです。それで、ヘロインになったのです。ビートルズとその同類たちが私たちふたりにひどいことをしたからですよ(中略)意図的に私たちに対してひどいことを行なったわけではないのですが、、とにかく、私は忘れません。

◎[参考サイト]P.S. I Hate You : The Angry John Lennon Letters

Q:『セクシー・セディ』(☆)は、マハリシのことですか?

マハリシよ。おまえはなにをしてくれたのだ。みんなをいっぱいかついだな」とは書けなかったのですが、いまならはっきりそう言えます。

Q:マハリシにかつがれているのだ。と気づいたのは、いつですか?

わかりません。なんとなく見抜けたのです。(中略)マハリシがミア・ファーローを強姦しようとしたり、ミア・ファローだけでなく他にも … というようなことに関して大きな騒ぎがあったのです。徹夜して「それはほんとうだろうか嘘だろうか」と話し合い、それから私たちはマハリシのところへ行ったのです。(中略)「私たちは帰ります」と私は言いました。「なぜですか」マハリシは聞き返していました。そこで私は「あなたが自分でおっしゃるように広大無辺な存在であるなら、私たちがなぜ帰るのか、その理由もわかるでしょう」と答えました。マハリシ自身、それに、彼の右腕的な存在の男たちがみんないつも、マハリシは奇跡がおこせるのだ、とほのめかしていましたからね。

だから、私は「理由は、おわかりになっているはずです」と言ったのですが、彼は「私にはわかりません。教えてください」と私は言い続け、彼は「この野郎、殺してやるぞ」というような顔をしました。彼がそんな顔で私を見たときに、私にはマハリシの正体が見えたのです。

私註:後に、他のメンバーはマハリシへの誤解をとき、彼への支持を表明しています。また、ジョンのマハリシへの感情は、今後のインタヴューも参考にしてください。

ヨーコ「マハリシに対する期待が大きすぎたのね」

ぼくは、いつもそうなんだ。人に対する期待が大き過ぎる。たとえば、いつも自分にとって母というものを期待していながら、結局は手に入らなかったというような、そういうことがいつもあるわけです。母とか両親とか。自分というものに関して、そのへんまではわかっているのです。

Q:ニューヨークへ来て、マハリシを弾劾する必要があると考えたのはいつのことですか?

マハリシを弾劾するとは?(中略)あれは、アップルの発表だったのです。(中略)本当のことがなにもわかっていないのにいろいろ喋りまくる、ということをみんなよくやりますが、今の私もそうなのかもしれません。

他の人たちは、私が言うことをそのまま受け止めるわけですけど、私は人から聞かれた色んなことに対して、ただ、答えていくだけで、ある部分は意味をなしているかもしれませんが、(中略)私が覚えているのは、アップルについて喋ったということだけです。

Q:ポールが「私はビートルズをやめる」と発表したときは…

私がそれをやりたかったのです。しかし、そのころは、ノーザンソングス(ディック・ジェームズとブライアン・エプスタインが取締役のビートルズの曲を管理する音楽出版社)とか、その他、いろいろな問題があって、難しいことがたくさんありました。

Q:ディック・ジェームズ(註2)が自分の持株を売ってしまっていた、とわかったときにはどんな気分でしたか?

彼は、ちょっとジョージ・マーティン(ビートルズの音楽プロデューサー)みたいなところがあり、ビートルズをつくりあげたのは自分だと思っているのですが、本当はそうではないのです。ディック・ジェームズの音楽とやらを聞いてみたいですね。ジョージ・マーティンの音楽というものも聞いてみたいです。そんなものが存在するなら。

ディック・ジェームズは、ビートルズをつくったのは自分だと言ったのです。実際は、私たちが彼らのような人間をなんとかしてあげていたのに、一般の人たちは、彼らによって私たちがつくられたのだと、錯覚しているのです。

Q:ディック・ジェームズが、どんなふうにあなたに喋ったのですか?

喋ったのではなく、リュー・グレード(註3)に売り込んだのです。私たちはそのことを新聞で読んだのだと思います。ビジネスマンという人たちは、人種が違うのだと、一般の人たちは考えているようですが、私たちが音楽を演奏するのとおなじように、ビジネスマンたちは、ビジネスをやるのです。

たとえばアレンですが、彼はとてもクリエイティブな男です。彼はいろんな状況をつくり出し、その状況がまた、彼らのような人たちが動き回るためのポジションをつくりだしていきます。ビジネスマンたちは、みんなこれをやります。私たちもまた、役割を演じたわけで、どちらの側も、役割を演じたのです。

Q:あなたは、どのようなことをやったのですか?

どんなふうに表現すればいいのでしょうか… 私は、人を操作したのです。リーダーはそういうことをやるのです。座り込んで色々考え、他の人たちとの関係の中で、自分に利益があるような状況をこしらえだすのです。要するに、すべては、そんなふうに単純で、私もまた人から操作されていて、アレン・クライン(註4)を、アップルに入れるために動かなければなりませんでした。ぼくも動いたし、君だって動いたのだ。

ヨーコ:あなたは本能的に行なったのよ。

それはやめてくれ、ヨーコ。それは言わないでくれ。要するに、操作なのだから。はっきり言うようにしよう。意図され計算されつくした操作によって、たとえばあるひとつの状況を、いかにして自分の望むようにもっていくか、ということなのだから。ちがうかな。そうだろう?

ヨーコ:つまり、あなたは、かなり本能的な人なのよ。

アレンだって本能的だし、ディック・ジェームズも、リュー・グレードだってそうだ。みんな本能的で、彼だってそうだろう。やはり、操作なんだ。操作したりされたりすることを恥ずかしがる必要はない。人を操作し、自分も人に操られているのだという事実を、いさぎよく認めることが大事なのだ。「同胞よ、神の恵みがありますように、ハレ・クリシュナ」などと言いながら、この世に既得権なんかありえないような顔をしていては、いけない。

ヨーコ:落ちるところまで落ちた、くだらない次元でアレンをつかまえてくるのではなく、あなたは、アップルのような話にアレンは飛びついてくる男だ、と本能的に見抜いたうえでアレンを手にいれてくる、という違いがあるのよ。

しかし、それは、問題の中心からはずれている。アップルやビートルズの周囲に、アレンが入ってこれるような状況をつくりだす、ということについて僕は話している。いま喋っていることの意味はそういうことなんだ。もし僕がそのような操作をしなかったら、アレンは入って来なかったに違いない。君のおこなった操作がなくても、やはりアレンは入って来なかっただろう。君だって、決定に参加したのだから。

Q:どのようにしてアレンを加えたのですか?

自分が欲しいと思っているものを手に入れるときと同じ、あなたが欲しいものを手に入れるときと同じです。要所要所に電話して自分が考えているとおりにすればいいのです。

Q:ポールの反応は、どうでした?

世の中にはいろんな人がいます。ディック・ジェームズのような人、デレク・タイラー(ビートルズの広報担当)みたいな人たち、ピーター・ブラウン(ビートルズのアシスタント)のような男たち、それに、ニール・アスピノール(ビートルズが設立した、アップルの代表)とか、みんな自分たちこそビートルズだと思っているのです。そういう連中は、糞でもくらえですよ。天才たちと一緒に10年、15年と仕事をしていると、そんな連中は、実は自分たちの方が天才なのだと思い始めるのです。


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Q:あなたは自分を天才だと思いますか?

ええ、天才というものがあるとすれば、私は天才です。

Q:そのことをはじめて意識したのは、いつですか?

私が12歳のときでした。自分は天才にちがいないと、いつも考えていたのですが、私が天才であることに誰も気がつかない。私は天才だろうか、それとも狂人だろうか、と私はよく考えたものです。天才とは一種の狂気で、私たちはみんなそうなのです。

詩をつくったり、絵を描いたりしながら、ビートルズが成功したり、あるいは私が有名になって、それで私がひとかどになったというのではなく、私はこれまでずっとこうだったのです。天才であることも苦痛です。ただ、単に苦痛です。

Q:ビートルズに繋がっている人たちに対しては、どう感じていますか?

彼らはビートルズの過去の夢の中で生きているのです。彼らはビートルズとはいったいどういうことだったのかということに関して、ひどくねじ曲がった見方をしているのです。

Q:自分たちの生活が、あなたの生活と、もはや解きほぐすことができないほどに、からみあっているのだ、と感じているでしょうね。

もし、そうだったら、もっと成長してそんな状態からは抜け出すべきですね。自分こそビートルズなのだと思い込んだまま生き続けるわけにはいかないのです。彼らの現在の状況は、だいたい、このあたりにとどまっているのです。わかっていないのですよ。つまり、このインタヴューが活字になって出て、いまの私の話が載っているのを読んだら、その人たちは、ジョンは少しおかしい、と思うのでしょうけど、とにかく、連中は、いまだに過去のなかに生きている、という状態なのです。

Q:あなたは、デレク・タイラーと、いっしょにトロントに行き「BED PEACE」もトロントで行なったのでしたね?

ええ、それも、いま私が言ったのと同じことなのです。つまり、当時はわたしも過去のなかに生きていました。そのときの状態をひきつづき維持しながら、私たちの生活のなかにヨーコを持ち込んでくることができるのではないかと、考えていたのです。しかし、現実には、私がビートルズと結婚したような状態になってしまうか、あるいは、ヨーコとそうなるかのどちらかをとらなくてはいけないようだったので、私はヨーコの方をとったのです。私の選択は間違っていませんでした。

Q:あなたが初めてヨーコを連れてきたとき他の人たちの反応はどうだったのですか?

みんな彼女を軽蔑していました。私とヨーコが一緒だったこの二年間、私たちに関するパブリシティのアップルでの扱い方、それに、私たちに対する人々の態度、すべてが私たちをパラノイド扱いする方向にむかっているのです。しかし、そういう人たちこそ、ビートルズが解散した本当の理由はヨーコだとかアレンだとか、考える馬鹿な人たちなのです。

___________

(註1)
☆こちらに、ジョンの “This Is It!” 発言について、少し書かれています
◎ヤノフの妻へのBBCインタヴュー(ジョンの父の妻・ポーリーン・レノンの記述など)

(註2)
ディック・ジェームズ/ビートルズがもっている経済的成功の可能性に最初に目を向けた人物。彼とビートルズとの間に設立された音楽出版社がノーザン・ソングスで、レノン&マッカートニーの全作品を管理し、ジェームズは株の50%近くをもっていた。レノン&マッカートニーの作品に生じる各種の版権を押さえているだけでも非常に儲かるため、ジェームズの持株を買いたいと言う話が各方面から常にジェームズのところへ持ち込まれていて、テレビ会社のATVが提示した価格に動かされたジェームズは、自分の持株をATVに売り、これによってATVはノーザン・ソングスの筆頭株主となり、事実上の乗っ取りが行なわれたことになった。

(註3)
リュー・グレード/英国のショービジネス界で有力なテレビ会社、ATVの経営者。

(註4)
アレン・クラインはジョンがスカウトした人材で、ビートルズの持株をディック・ジェームズが売った倍の価格でATVに売り、決着をつけた。

☆「ジョン・レノンPart 3」に続く

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by yomodalite | 2012-10-17 20:43 | マイケルと神について | Trackback | Comments(0)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


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