新ユダヤ成功の哲学―なぜ彼らは世界の富を動かせるのか/越智道雄

新ユダヤ成功の哲学―なぜ彼らは世界の富を動かせるのか

越智 道雄/ビジネス社



本書は2007年に出版された、アメリカ研究の大家である越智道雄氏によるもの。

ユダヤ関係の読書はハズレ率の高さがハンパないジャンルで、クリスチャン右派や保守派による宗教的敵意が基本となっていたり、また、彼らを親にもっているせいか、一見違っているようで、マインドはほぼ同様の宇宙風味の「ニューエイジ」系に支持されている「ユダヤ陰謀論」か、

もしくは、その「陰謀史観」を否定している(副島隆彦氏と越智道雄氏以外のほとんど)バカバカしさすらない「本の形をしたゴミ」か、

多くのビジネスマンが通勤時に読んで、そのまま一生、電車通勤を止められない「成功哲学」ものの、いずれかなんですが、

本書は、普通のビジネスマン向けの「成功哲学」ではなく、ビリオネアレベルの成功に興味があるビジネスマン向けで、ユダヤ人の成功マインドについても、ユダヤの長い歴史を振り返った本格的なもののうえに、非常に凝縮された編集がされていて、

「成功哲学」を経済的に成し遂げなくても、、と思う「読書家」にとっても価値のある内容で、私は図書館で借りた後、購入しました。

価値ある内容については、目次をご覧になっていただければわかると思いますので、
個人的に興味深いと思った箇所を少しだけメモしておきます。(省略引用)


◎成功遺伝子8「選民思想」マインドセット

普通、民が神を選ぶものだが、ユダヤ教は神がすべての民族の中からユダヤ民族を選んだ。したがってユダヤ教徒は「選ぶ自由」はなく、「選ばれる宿命」しかなかった。この世界史上でも異例の信仰体系が、ユダヤ教徒をヒューマニズム(人間中心主義)、その延長である民主主義という近代化の主流思想との相克に巻き込んでいく。

「選民」という言葉はユダヤ教の原典にはなく「神にえり抜かれた(ブハルタまたはアム・セグラー)という動詞で表現されている。後者はセグラーだけだと「神の宝物」という意味でもある。ブハル(選ぶ)という語の旧約での使用頻度は175回で、それほど多くはない。

つまり「選民」という人間側の優越性ではなく、あくまで「神がえり抜く」という神の絶対的主体性、ユダヤ教徒の絶対的受動性が強調されているのだ。しかもすべての戒律を「殺すな」「姦淫するな」と動詞でビシビシ差し付けてくるこの神の有無を言わさぬ単純かつ鋭い鮮烈な激しさは戦慄的といえる。  

申命記7〜6〜8、新共同訳バイブルの「貧弱」は、原文では「最も少数」となっている、今日世界でわずか1450万人程度のユダヤ系は、選ばれた当時はもっと少数だった。(遺伝子の定義より)


(中略)その後、ユダヤ教徒らがヨーロッパでゲットーやシュテートルに囲い込まれたことが「選民思想」をカバラ思想の形で彼らの間に増殖させた。しかし、選民思想がイエスの優位を奪うことを直感したキリスト教徒の疑惑から、ユダヤ教をモダナイズするアメリカのユダヤ教少数派「再建派(リコンストラクショニズム)」などのように、シナイ山頂でのモーセの受戒や選民思想を否定する宗派も登場した。

ただ、神が否応なく民を選んで信徒にした世界史上でもきわめて特異な例ゆえに、ヤハウエは「事ごとに人事に介入する神」である。今日のユダヤ系の41%がそれを信じている(在米団体「ユダヤ連合会議(CJF)」による1990年度調査。この調査で「ユダヤ系の定義は国籍や文化でなく宗教だ」とするユダヤ系は75%に達した)

介入する神とは何者か? YHWH(ヤハウエ)とは語義的に動詞の「to be(成ること)」である。つまり、ユダヤ教の神は名詞よりも動詞なのだ。したがってユダヤ系を「約束の地」へとせき立てた神の「トゥー・ビー」(動詞性)とは、「われはなんじとともにその地へ赴くであろう」(I'll be there with you)となる。あるいは「われはなんじらにこれこれのことを引き起こす者である」(I am be who cause〈things〉to be)となるのである。

この神自身の痛烈な「動詞性」ゆえに、ユダヤ系自身「動詞的」たらざるをえなかった。

「コンピューターは情報を動詞化する」とは非ユダヤのビル・ゲイツの言葉だが、コンピューターの開発者の多くはユダヤ系だったのである。(「介入」する神より)

ピューリタンの選民思想は、しかし、他民族社会特有の「民族性」の強調が強まってくるにつれて削ぎ落されていき、ユダヤ系は自らの選民思想と文化多元主義的なアメリカの間で苦悩することになった。ユダヤ教三派のうち、左派の改革派、前述の再建派、いや中道の保守派すら、基本的には選民思想の没主体性(逆にユダヤ教の絶対性)をアメリカン・デモクラシーの主体性(逆に他民族集団同士の相対性)とどう折り合いをつけるかに悩み、その案配の違いが、宗教間の違いと特徴を形づくることになるのである。

私註)ラビ・シュムリーはWikipediaによれば、戒律遵守に厳しい「正統派(Orthodox)」。ユダヤ教は、やや厳しい「保守派(conservative)」ゆるやかな「改革派(Reformism)」「再建派(Reconstructionism)」と、「特定宗派なし派(No Label)」に分かれているらしい。

◎成功遺伝子9「ヘブライ的時間の貫徹」
なぜユダヤ系にとって「歴史は繰り返さない」のか?


ヘレニズム的(ギリシャ的)時間」は季節ごとに円周を描く、ゆとりのある時間だが、反復だから厳密な意味で何一つ新しいものはなく、したがって個人もなく、人は生まれ変わるだけで(輪廻転生)、歴史はつくられない。

他方、「ヘブライ的時間」は創世から終末へと非可逆的に流れる厳しい時間だが、刻々に新しい展開が発生、個人は生まれ変わらず(輪廻転生なし)、したがって個人はあくまで個人であり(人生の一回性)、それらの個人が歴史を構成していく。

ヘブライ的時間は、世界とともに時間を創出したヤハウェが最終的にはユダヤ教徒を自らが生息する「時間の外(永遠)」へと回収するまで非可逆的に流れ続ける運動率をもつ。だからこそヤハウェとは「成る to be」を意味し、「物事を引き起こす」という動詞的機能をもつのだ。

ユダヤ系が創出した古代ではまったく新しかったこの時間概念こそ、ユダヤ文化の成功遺伝子の基幹染色体を形づくった。(遺伝子の定義より)

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◎[参考ブログ]お金学

☆少し似たタイトルですが、副島氏と副島研究所メンバーによる、
こちらのユダヤ本も知的好奇心が刺激されて「金儲け」に興味がない人にもお奨め!

◎[Amazon]金儲けの精神をユダヤ思想に学ぶ




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by yomodalite | 2012-09-11 20:03 | 宗教・哲学・思想 | Trackback | Comments(0)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


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