GOSICK - ゴシック/桜庭一樹

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ライトノベルって、これまで読んだことなかったんですが、ラノベ出身の作家さんて、岩井志麻子、小野不由美、中村うさぎ氏などなど、博学で、筆力があり、個性的な方も多いので、きっと豊潤な世界に違いないと思っていた矢先、

ジョセフ・ヴォーゲル氏の『Man in the Music(コンプリート・ワークス)』の368ページに、「Ghosts」は、かつてエドガー・アラン・ポーが「魂の恐怖」と呼んだ探求の曲だ。マイケルが恐怖やパラノイア、変容、超自然現象、グロテスクさといったテーマに興味を示していることはよく知られており、そのため批評家は、彼を「世界初のゴシック・スーパースター」と呼ぶようになった。

マイケルが天才である所以の一部は、ゴシックの歴史を理解しただけでなく(彼はゴシックについてかなり熱心に勉強していた)、それを新たな興味深い方法で自分流に取り入れたことにある。「Thriller」や「Ghost」などの曲とミュージックビデオによって、彼は本質的にゴシック・ポップとも言うべきポップミュージックの新たなジャンルを開拓したのである。

この破壊の美学を通して、マイケルは自分をモンスターだとか、変人呼ばわりする世間に挑んでいた。彼が人生や作品をどのように「ゴシックとして具体化した」かについては、多くの学術的調査がなされている。

ネバーランドという謎めいた「城」に始まり、変容し続けるアイデンティティ、楽曲に常につきまとうパラノイア、恐怖というモチーフまで、マイケルはこの世代の最も顕著なゴシック・ヒーローであり、また悪役なのだ。
(引用終了。この後も面白いのだけど…)

という記述を読み、そういえば、桜庭一樹氏と言えば、『THIS IS IT』を観た編集者から「マイケル・ジャクソンが、桜庭さんにそっくりだった」と言われたお方。そうか、そんなところでも繋がりが、、とまぁ何かと、MJに絡めて勢いづいてしまう私なんですが、

ついに、この本を読むときが来た。と思ってしまいました。


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武田日向氏のイラストによる、アニメ版DVD



冒頭のことば

野原をよこぎって追いかけてゆくと、ウサギがいけがきの下の大きなウサギあなにとびこむのが見えました。すかさずアリスもそのあとからあなにとびこみましたが、そのときはあなからでてこられるかどうかなど、まったく考えてもみませんでした ー 『不思議の国のアリス』ルイス・キャロル 楠悦郎訳 新樹社刊

プロローグ ー 野兎を走らせろ!

大きくて黒いものが ーー
横切った。
犬だ、と子供は思った。宵闇にまぎれる。闇のように黒い犬。猟犬だ。その四肢はつややかに黒く、二つの目が、闇の中で燃える青い炎のように揺らめいていた。

子供は、黒い森を抜けて、ようやく村道を歩き出したところだった。お使いにしては遅過ぎる時間だった。はやく暖炉の燃える暖かな我が家に帰りたかった。近道しようと、村外れののその屋敷の庭に一歩入った途端、その猟犬に遭遇したのだった。子供は思わず、数歩、後ずさった。ーー ぐしゃり。

足の裏に、いやな感触がした。柔らかく、生暖かい液体をふくんだなにかを踏んだ。足下を見下ろすと、ぐじゃぐじゃになった小さな肉塊が落ちていた。赤い肉。血の滴を跳ね返す、茶色い毛皮がところどころ見えていた。長いふわふわした耳が肉塊の中から覗いていた。そして、それに埋もれたガラス玉のように丸い瞳。夜空の暗黒を写して、暗く虚しくこちらを見上げていた。

…… 野兎だ、と気づいた。

顔を上げた。猟犬の閉じた口蓋から、一筋の生々しい血がぼとりと、落ちた。
こいつが食殺したんだ…… !

(後略)
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迷宮、黒い犬、黒い森、ゴシック・ワールドへの完璧な導入部のあと、ライトノベルに必要不可欠な魅力的なキャラクターが登場する、第一章「金色の妖精」から

それから十年後ーー。
ヨーロッパの小国、ソヴェール王国。
山脈の麓に構えられた、名門聖マルグリット学園の、豪奢な石造りの校舎の一角で……。(中略)

ーー聖マルグリット大図書館。
学園の敷地の隅にひっそりと建つその建築物は、200年以上の時を刻んだ、欧州でも指折りの書物庫の1つである。(中略)角塔型の大図書館は、壁一面が巨大な書棚になっていた。中央は吹き抜けのホールで、遥か上の天井には荘厳な宗教画が輝いている。そして書棚と書棚のあいだを、まるで巨大迷路のように、細い木の階段がいかにも危なっかしくつないでいた。(中略)

一説によると、この大図書館は十六世紀初頭、聖マルグリット学園の創始者である国王によって建設された、らしい。恐妻家でもあった国王は、愛人との逢い引きにひたるため、大図書館のいちばん上に秘密部屋をつくった。そして階段を迷路上に配置したのだ、と……。(中略)

迷路階段を、上る、上る。……まだまだ上る。(中略)そこには……。

植物園があった。

大図書館のいちばん上の秘密の部屋は、国王と愛人のためのベッドルームではなく、緑生い茂る温室に建設され直していた。(中略)その温室から階段の踊り場に、半身を投げ出したように、大きな陶人形が置かれていた。(中略)その陶人形は口にパイプをくわえ、ぷかり、ぷかり、と吸っていた。白い細い煙が天窓に向かって上っていく。

一弥はスタスタとその陶人形……いや、人形そのものに思える美貌の少女に近づくと、

「返事ぐらいしろよな、ヴィクトリカ」

少女の緑色の瞳は、床に並べられた書物の上を忙しく行き来していた。彼女の頭部を中心点として放射線状に並べられた書物は、古代史から、最新の科学、機械学、呪詛に錬金術……。英語からフランス語、ラテン語に中国語と、書かれた言語もさまざまだ。

それらを無造作に流し読みしていた少女ーーヴィクトリカが、ふっと我に返り、顔を上げた。一弥の不満そうな顔を見上げると、一言、「なんだ、君か」(中略)「天気がいいからって、花壇で逢い引きか?」

「いや、逢い引きじゃなくて、ただ喋ってただけだよ。あのね、無人の豪華客船〈QueenBerry号〉って怪談を聞かされ、て……って、(中略)よく当てるよね……。感心しちゃうよ……」

ヴィクトリカはしばらく返事もせず、書物を読み進めていたが、ようやく一弥の言葉が脳に到達したらしく、「ああ」とうなづいた。

「それはだね、君。五感を研ぎ澄まし、この世の混沌(カオス)から受け取った欠片たちを、わたしの中にある“知恵の泉”が、退屈しのぎに玩ぶのだよ。つまり再構成するのだ。

気が向けば、君のような凡人にも理解できるよう、さらに言語化してやることもある。まぁ、たいがいは面倒なので黙っているがね」

(引用終了)

ヴィクトリカの様々な書物から得た知識の話は尽きることがないのだけど、九城一弥という、日本から来た優秀な留学生という「凡人」に説明しているうちに、彼女は、耐えがたい退屈を感じて頭を抱えてしまう。慌てた一弥君は、聞いたばかりの「奇妙な事件」の話をしだし、

そこに、三つ揃いのスーツに、派手なアスコットタイ、扉の桟に体重をかけて、斜めに立つというナイスポーズを決めた、犯罪好きの貴族出身の警部、ド・ブロア警部が現れ、

なんだかんだあって、ド・ブロア警部と、帝国軍人一家の三男で、成績優秀な留学生、九城一弥と、久しぶりの“外出許可”を得たヴィクトリカは、週末、ヨットで一泊旅行の旅に出発する。〈QueenBerry号〉と書かれた、豪華な船で。。。

という、まるで、シャーロック・ホームズが、身長140センチぐらいのツンデレ少女になったような、大人も子供も楽しめそうな作品で、力のある作家が、少年少女のために、気合いを入れて書いたことがよくわかる完成度の高いエンタメ小説。

(私の頭の中では、一巻を読んでるときは「Ghosts」よりも「Smooth Criminal」だったかな。。)

これまで、掃除とか、洗濯を終えると、すっかり『天守物語』の天守夫人になっていた私ですけど、今夏のバカンスは、ソヴュール王国に行って、聖マルグリット学園の大図書館のいちばん上で、書物に囲まれて過ごす予定です。。

◎[Amazon]GOSICK - ゴシック(角川文庫)

☆『GOSICK』は、まだ第一巻を読んだところですが、この続きを「アニメ」で観るのもいいなぁと思いつき、こちらも借りてきてしまいました!(文庫版の[1]の完結は、DVDの[2]の半分で終了)
◎DVD『GOSICK - ゴシック』

本で読むか、アニメで観るか、迷うところですけど、、

☆アニメ版は予想以上にチャーミングな出来で、また、小説の描写から想像していた以上に、ド・ブロア警部が変な髪型だったりして、、アニメ版は全部観てしまいそう。(Amazon評価は、1巻に2話収録という短さなど、1巻で物語が完結しないという点さえなかったら、もっと高かったはず…)
◎[Amazon]DVD『GOSICK』

☆私が実際に読んだのはこちら。著者による長い「あとがき」も面白かった!
◎[Amazon]ゴシック(富士見ミステリー文庫)

◎[関連記事]Michael's Horror Story



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by yomodalite | 2012-07-29 20:10 | 文学 | Trackback | Comments(0)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


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