戦後史の正体/孫崎享

戦後史の正体 (「戦後再発見」双書)

孫崎 享/創元社



このところ、出版直後の本を読むことも、ブログに書くことも少なかったのですが、発売前から大評判の本書は、久しぶりに急いで読みました。

本書の「はじめに」には、

「孫崎 享です。たくさんの本の中から、この本を選んでもらってありがとうござます。いま、あなたが手にとってくださったこの本は、かなり変わった本かもしれません。というのは本書は、これまでほとんど語られることのなかった〈米国からの圧力〉を軸に、日本の戦後史を読み解いたものだからです。こういう視点から書かれた本は、いままでありませんでしたし、おそらくこれからもないでしょう。「米国の意向」について論じることは、日本の言論界ではタブーだからです」

とあります。確かにTVや新聞では「タブー」かもしれませんが、読書家にとってはそうではないはずです。日本の政治が、日本人ではなく、米国の意向で動くということは、副島隆彦氏を始め、すでに多くの著作があるでしょう。

でも、原発をきっかけに、より多くの人が政治に不信感をもつようになり、これまでの対米従属に大きな不満をもつことなく過ごしてきた人々にも、現在の野田首相の対米追随は異常なレベルだと感じる人が多いせいなのか、本書は現在Amazonベストセラーで6位(2012年7月27日)という、この手の本としては異例の売れ行きのようです。

著者が本書について語った動画は下記をご覧下さい。

◎[動画]著者が語る「戦後史の正体」について
◎[動画]著者が鳩山グループ勉強会で語る「戦後史の正体」
◎上記の動画「鳩山グループ勉強会」書き起こし

下記は「序章 なぜ “高校生でも読める” 戦後史の本を書くのか」から、
省略して引用します。


この本はもともと、出版社のかたから、「孫崎さん。日米関係を高校生でも読めるように書いてみませんか。とくに冷戦後の日米関係を書いてほしいのです」と相談されて、スタートしたものです。(中略)

私が日米関係を真剣に学ぶきっかけとなったのは、イラク戦争です。2003年3月20日、米軍はイラク攻撃を開始し、まもなくサダム・フセイン政権を崩壊させました。(中略)

私は15年ほど前の1986年から89年にかけて、イラン・イラク戦争の最中にイラクに勤務しています。ですからサダム・フセインについてはかなりの知識をもっていました。2003年の段階で、イラクが大量破壊兵器を大量にもっていることなどない。アルカイダとの協力関係もない。それはイラクについて研究していた人間にはすぐにわかることです。(中略)

私は外務省時代、国際情報局長でしたし、駐イラン大使も経験しています。官僚や経済界のなかにも多くの知り合いもいます。ですから、そうした人たちに対して何度も、

「米国のイラク攻撃の根拠は薄弱です。自衛隊のイラク派遣は絶対にやめたほうがいい」と進言しました。数ヶ月して、経済官庁出身の先輩から次のようにいわれました。「孫崎、君の言い分を経済界の人たちに話してみたよ。みな、よくわかってくれた。でも彼らは『事情はそうだろうけど、日米関係は重要だ。少々無理な話でも、協力するのが日本のためだ』という。まあ、そういうことだ。説得はあきらめたほうがいい」

「少々無理な話でも。軍事面で協力するのが日本のためだ」

これは本当にそうなのだろうか。そうした疑問から、日米関係をしっかり勉強し直そうと決めたのです。勉強の成果は『日米同盟の正体』として形になりました。本書の編集者も、この本を読んで、同じ内容を「高校生でもわかるように、やさしくていねいに書けないか」と依頼されてきたのです。

(引用終了)

私は、高校生でもなく、『日米同盟の正体』も読んでいますが、それでも、本書には新鮮な印象を覚えました。それは、本書の内容が、

自主独立か、対米追随か、この2種類に完璧に分類して、戦後の歴史を読み直しているからだと思います。

戦後一貫して、対米追随派が主流だったものの、現在ほど、あらゆる判断から、それが感じられる時代もなかったように思います。「日本が属国である」ことを、十分わかっている人の間でも、そんなことですら拒否できないのか。。という気分が蔓延している中、

著者が「自主独立」を目指す立場で、終戦後から現在まで、現在の状況がいかにして起きたかを、わかりやすく解説した本書は、読むやすいうえに、読み応えがあり、日本人必読の書だと思いました。

しかしながら、政、官、業が、ここまで雪崩のように「対米追随」に傾いているのは、現在の世界不況から、日本が「戦争に巻き込まれていく」ことが不可避だと「歴史的に判断」しているからであって、、、という私個人の絶望感は、本書の力をもってしても、なかなか拭い去ることが出来ず、そうでない人が大勢いるといいなぁと願うばかりです。臆病者の私は、最近、不幸の中で、自分が冷静でいるためには。。とか、そんなことばかり考えているような気がします。

☆☆☆☆☆(満点。現代日本人の必読書!)

◎[中田安彦氏による論評]孫崎享『戦後史の正体』を読む

◎[Amazon]戦後史の正体

目次
はじめに
序章 なぜ「高校生でも読める」戦後史の本を書くのか
第一章 「終戦」から占領へ
第二章 冷戦の始まり
第三章 講和条約と日米安保条約
第四章 保守合同と安保改定
第五章 自民党と経済成長の時代
第六章 冷戦終結と米国の変容
第七章 9・11とイラク戦争後の世界
あとがき
______________

[内容紹介]日本の戦後史は、アメリカからの圧力を前提に考察しなければ、その本質が見えてこない。元外務省・国際情報局長という日本のインテリジェンス(諜報)部門のトップで、「日本の外務省が生んだ唯一の国家戦略家」と呼ばれる著者が、これまでのタブーを破り、日米関係と戦後70年の真実について語る。創元社 初版(2012/7/24)



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Commented by jean moulin at 2012-07-27 18:23 x
政治の事は全くよく解らなくて、こういう本もあまり読まないんだけど、これは、読んでみようかなと、思いました。
Commented by yomodalite at 2012-07-27 19:37
昔の人の文語体の日記も、口語訳にして引用されてるし、本当に、読みやすくて、読み応えがあって、政治好きなひとにも、そうでない人にも、力がある本だと思う。お奨め!
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by yomodalite | 2012-07-27 14:06 | 政治・外交 | Trackback | Comments(2)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


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