毒婦。 木嶋佳苗100日裁判傍聴記/北原みのり

毒婦。 木嶋佳苗100日裁判傍聴記

北原 みのり/朝日新聞出版



毒婦。 木嶋佳苗100日裁判傍聴記 (講談社文庫)

北原 みのり/講談社

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ネットで知り合った男性たちから、1億円以上のお金を受け取り、周囲は不審死が絶えなかったという、彼女が実際に殺害したとすれば、前代未聞の女性犯罪者である、木嶋佳苗の裁判傍聴記。

週刊朝日が、この裁判の傍聴記に白羽の矢を立てたのは、コラムニストで、女性のセックストイショップ「ラブピースクラブ」の代表、北原みのり氏。私は、事件を扱った書籍は結構読んでいるのですが、本書は、

容疑者の罪の妥当性や、容疑者の生い立ち、パーソナリティー、事件に至るまでの歴史や、事件の社会性などを探りながら、取材を重ねていくジャーナリストや、

事件の冤罪疑惑や、メディア報道とは、まったく別の容疑者の顔を垣間みることが多い、弁護士による著作ともまったく違った印象でした。

裁判傍聴記がメインになっていて、木嶋佳苗の犯行に関して、新たな事実が盛り込まれているわけではないのですが、読者が読んで面白いと感じるのは、やはり、著者の女性ならではの目線ですね。

女性ジャーナリストにも、女性弁護士にも、女性検事にも、女性特有の視線を感じることはありますが、著者は、彼女たちとは違って、犯罪に対してではなく、木嶋佳苗という女性そのものに注目しているところが新鮮で、本書の第一章は、次のような記述から始まります。(省略して、部分的に引用しています)

約2年4ヶ月の勾留を経た37歳の木嶋佳苗に、そういった陰は見えなかった。というより…… ナマ佳苗は、生き生きと、キレイだった。

決して美しいとはいえない佳苗の容姿はセンセーショナルに報道されてきた。腫れぼったい目、肉付きの良過ぎる体、全体的に不潔そう…そんなイメージを持った人は多いはずだ。が、実際に数メートルの距離で見るナマ佳苗から、だらしなさや、不潔さや、醜さは、全く感じなかった。

シミ一つない完璧な白、絹のような美肌だ。なにより意外だったのは、佳苗の小ささである。155センチあるかないか、特別に太った女というほどでもない。そして、なんといっても、声だ。それはあまりにも優しく上品だった。

実際、ナマ佳苗を見、声を聞いた男性記者たちが休廷中に「思ったほどブスじゃない」「声、可愛くないか?」「十分イケル」「見ているうちに、どんどん可愛くなってきた」とひそひそ話しているのを耳にした。

ボールペンは100円のノック式のものだが、ノックの仕方が、なんていうか、優雅なのだ。ひとつひとつの所作がきれいだ。

(引用終了)

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木嶋佳苗のブログ(表紙はこの写真からデザインされているようですね)



たぶん、著者は「決して美しいとはいえない」佳苗が魅力的に見えたのは、なぜだろうという視点で、佳苗の一挙手一投足を見ているので、彼女の魅力をより発見してしまうという点もあるのだとは思います。

でも、彼女は、婚活サイトで出会った「冴えない男性」を惑わせただけでなく、お金目当てでなく付き合った男性の中には、取材で訪れた女性記者に「ジャージ姿なのに、とてもセクシー」と思われるような男性もいたり、しかも、そのセクシーな男性は、強気なモテ男だったにも関わらず、やはり、佳苗に振り回されている。

本書を読んで、木嶋佳苗にどこかシンパシーを感じてしまうという女性は意外と多いと思う。彼女に同情したくなる点は、まったく見られないにも関わらず、なぜかそう感じてしまうのは不思議ではあるのだけど、

おそらく、その理由は、本書に彼女の犯行についてのページが少なく、また、女性にとっては、この事件の被害者たちに同情できる部分がないからでしょう。

彼女は、自分の魅力を最大限に生かし、男から金を貢がせるために、頭脳も神経も総動員し、大変なエネルギーを使っている。一方、彼女に貢がされた男性はと言えば、、、たぶん、彼らは自分をバカだとは思っておらず、自らが選ばれるという視点もない彼らは、なぜか、女性を見る目があると思っている。

彼らが女性にできることと言えば「お金」しかない。

と、決して少なくはない数の女性は思うだろう。

しかし、クリエイティブな嘘をつくことができる、佳苗の犯罪には、殺害という、どう考えてもリスクが大きく、彼女の「頭の良さ」とは正反対の「闇」があって、たぶん、そこが、女性が木嶋佳苗に興味をもってしまう点ではないでしょうか。

木嶋佳苗に対し、かなり好意的に書かれている著者の連載を読んだ、佳苗はこれを嫌ったという。そして、著者はそこから「私のことは、私が書きますから」というメッセージを受け取ったようです。

確かに、かなりの文学好きを感じさせる、佳苗自身による手記は、確実に読んでみたいと思わされました。(死刑判決後の手記全文は下記にリンクしました)この事件が華やかに報道されていた時期はほとんど興味がなかったのだけど、本書を読むと、佐野真一氏の男性目線で書かれた『別海から来た女』も読みたくなってきました。

◎[Amazon]毒婦。 木嶋佳苗100日裁判傍聴記

☆参考サイト
◎毒婦について(北原みのりコラム)
◎憧れは「松田聖子」な木嶋佳苗、ブスでデブなのにモテるワケ
◎参考書評「極東ブログ」
◎死刑判決・木嶋佳苗被告の手記


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by yomodalite | 2012-07-18 08:51 | 裁判・法律・犯罪 | Trackback | Comments(0)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


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