東京大学で世界文学を学ぶ/辻原登

東京大学で世界文学を学ぶ (集英社文庫)

辻原 登/集英社



辻原登氏が、2009年の春から夏にかけて、東京大学大学院人文社会系研究科現代文芸論研究室で、14回にわたって行われた「近現代小説」と題した講義をもとに構成された本。

学生への講義が、本としてまとめられているので、興味深い話題が取り上げられていることもそうですが、「その1」~「その3」まである「長いまえがき」から、期待を膨らませられ、最近読んだ『熊野でプルーストを読む』とは、また、ひと味違った、辻原氏の個性が伝わってきて、深い内容なのに読みやすいという、とても素敵な本でした。


第1講義 我々はみなゴーゴリから、その外套の下からやってきた
第2講義 我々はみな二葉亭四迷から、その「あひゞき」から出てきた
第3講義 舌の先まで出かかった名前―耳に向かって書かれた“声の物語”
第4講義 私をどこかへ連れてって―静かに爆発する短篇小説
第5講義 燃えつきる小説―近代の三大長篇小説を読む
(1)セルバンテス『ドン・キホーテ』
第6講義 燃えつきる小説―近代の三大長篇小説を読む
(2)フローベール『ボヴァリー夫人』
第7講義 燃えつきる小説―近代の三大長篇小説を読む
(3)ドストエフスキー『白痴』
第8講義 物騒なフィクション―ラシュディ『悪魔の詩』と冒涜するフィクション
第9講義 自作『枯葉の中の青い炎』は、どのようにして書かれたか
第10講義 ヘンリー・ジェイムズの『ねじの回転』をどう読み、
どうパスティーシュするか


この目次を見て、ゴーゴリとか、二葉亭四迷とか『ドン・キホーテ』とか、あんまり興味ないんですけど、と思った、私と似たような方も読んでいるうちに『ドン・キホーテ』がそんなにスゴい作品だったとは… と唸ってしまうかもしれません。

面白い箇所が、たくさんあり過ぎる本なのですが、読了後、ペラペラとめくって「近代」とか「聖書」とか「神話」の文字が目についたところから、ちょっぴり引用します。

第8講義「物騒なフィクション」

神話から宗教、歴史という大きな物語は、一元的な物語といっていいかもしれません。神なら神、聖書はまさに聖なるテキストですから、批判を許さない。世界の読みは1つしかない。(中略)何度も取り上げた『ドン・キホーテ』は、まさに騎士道物語をからかい、批判する物語です、物語の中で物語を批判する。そのことが、この『ドン・キホーテ』という小説の構造をつくっています。

騎士道物語は、ドン・キホーテにとっては聖なる書です。すべての生き方を、アマディースに従って、そのとおりに生きていくというテキスト。これを聖書になぞらえると、まさにキリストにならって生きる。そのことをからかう。パロディ化する。(中略)だからこそ『ドン・キホーテ』が近代小説の嚆矢であり、かつ完成であるといってもいいのです。

ここで、近代でなければ生まれなかった小説のジャンル、探偵小説について少しお話しようと思います。すべての近代小説は、探偵小説であると言われることがあります。

探偵小説というのは、謎解き小説ですが、これは近代になって初めて登場してきたジャンルです。本、あるいは新聞という器が登場して初めて成立するジャンル。つまり、読むということが物語を鑑賞する中心になったときに、初めて成立する物語のジャンルです。というのも、探偵小説というのは… 

(引用終了)

「ストーリー」に関する講義は、このあと、まだまだ続きます。

上記の目次にはありませんが、長い長い「まえがき」には、予定されていた講義も書かれていて、そこには、

『ユダの福音書』の発見とボルヘス、そしてまたまたチェーホフ

という講義もありました。それは、時間の都合で、今回は割愛せざるを得なかったとのこと。早く、本にならないかなぁ。。(次は、辻原氏の小説を読まねば。。)

◎[Amazon]東京大学で世界文学を学ぶ

______________

[BOOKデータベース]自作原稿を焼却したゴーゴリの数奇な生涯。漢語の輸入から日本文学の成熟へ、神話から始まって聖書へ―物語の歴史を考察する。短篇小説の跳躍について。近代の三大小説『ドン・キホーテ』『ボヴァリー夫人』『白痴』を細部まで読み解く要約の妙技。言霊信仰から『悪魔の詩』までの物騒なフィクションの話。小説の誕生から、その構造や手法をめっぽう面白く解説する。小説を通して見ると、人生と世界がつながる。目からうろこの文学講義。集英社 (2010/11/5)



[PR]
トラックバックURL : http://nikkidoku.exblog.jp/tb/17646319
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
名前
URL
削除用パスワード

※このブログはコメント承認制を適用しています。ブログの持ち主が承認するまでコメントは表示されません。

by yomodalite | 2012-06-12 09:03 | 文学 | Trackback | Comments(0)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


by yomodalite