ソニー ドリーム・キッズの伝説/ジョン・ネイスン

ソニー―ドリーム・キッズの伝説 (文春文庫)

ジョン ネイスン/文藝春秋



今頃「SONY伝説」という気持ちもありつつ、2012年に読んでもすごく面白い本でした。

本書は、多くの日本企業がグローバル戦略を考えざるを得なくなった現在より遥か前に、その先頭に立ち、輝かしいジャパン・ドリームをアメリカで成し遂げた「SONY」を、アメリカ人が描いたもので、その描き方は「プロジェクトX」的な創りとは、大きく異なり、日米のSONY関係者100人以上にインタビューを行い、それらの人々の感情のこもった言葉を引出した内的なドキュメンタリー。

SONYは、著者が希望する人物には誰でも会えることを保証したうえ、出来上がった原稿を検閲したり、承認する権利を放棄することにも同意しています。

また、著者のジョン・ネイスンは、ハーバード大学の学生時代にライシャワーに日本史を学び、三島由紀夫の評伝(『三島由紀夫―ある評伝』)や、大江健三郎の小説を英訳をし、ドキュメンタリー映画の作家として、エミー賞も受賞しています。日本から世界に羽ばたいた企業がたどった苦闘の歴史を、こういったレベルの人が描くという奇跡が、もうこの後、何年もないだろうということが、ひしひしとわかる人には、今からでも必読の書。

訳者のあとがきには、本書の紹介に「ニューヨーク・タイムス」は、大きなスペースを割き、評者は「何度も涙を禁じ得なかった」と告白、「素晴らしいシーンの連続で、終わるまで椅子にくぎづけにされた」との記述がありましたが、私は何度も涙ではなかったものの、釘付けは同感でした。(原著のタイトルは『SONY:The Private Life』

歴代のカリスマたちが、アメリカで成功するために歩んだ道は、文化の違いとの戦いで、それを、現在の日本企業が克服したかと言えば、むしろ、後退しているのではないでしょうか。そのことを、これほど教えてくれる本も他にはないような気がしました。

と、ここまでが、本書の検索で訪問された方用の紹介で、

ここからは、無理矢理(笑)、MJに関連づけて書きます!

本書は、“ソニーウォーズの別の意味”で引用させていただいたサイトで参考にされていた本で、それがきっかけで読んでみたのですが、こちらのとてもとても素敵なサイトでも、言われているように、MJはほとんど出てきません。また「ソニーウォーズ」に関して、マイケルとソニーは、5者の力関係の問題で、


・ソニー創業家(盛田家)


・日本のソニーの意思決定者


・ソニーアメリカ代表


・ソニーの音楽部門代表


・マイケル・ジャクソン



これらの関係は、3つの観点で説明でき、


①ソニー内の政治抗争の道具としてのマイケル・ジャクソン


②投資対象としてのマイケル・ジャクソン


③ソニー創業者とマイケル・ジャクソンの関係

単にトミー・モトーラとマイケルの個人的な諍いや、マイケルが勝ったと考えるのは間違い。というのは、とても素敵な解釈なんですが、私には、また別の感想が浮かびました。

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タイトルであるドリームキッズというのは、歴代のソニーのカリスマ達のことで、井深大を「トランジスタ・キッズ」、盛田昭夫を「ウォークマン・キッズ」、大賀典雄を「CDキッズ」、出井氏は「デジタル・ドリーム・キッズ」になろうとしたと、本書の最終章「出井社長はかく誕生した」には書かれているのですが、

1999年の原著の出版から、10年以上経っている今、出井氏は「デジタル・ドリーム・キッズ」になれず、SONYは、その輝きを取り戻せないまでに「落ちた」と、多くの人が感じているでしょう。本書には、なぜ、出井氏が「デジタル・ドリーム・キッズ」になれなかったのかについては、年代的に触れられていませんが、その判断を検証するうえでも、重要な示唆に富んでいるように感じました。

かつての、SONYが現在のアップルのような存在で、どれほどスティーブ・ジョブズが、盛田昭夫の死を悼み、AppleをSONYにしたかったか、

◎なぜAppleはSONYになれたのか?

小飼弾氏は、その理由を「個人が利用する製品を個人に売り、買った本人から代価を得ているから」で、

◎書評 - 僕がアップルで学んだこと

Jobsの一番えらかったのは、それを「自分の責任」にしたことにある、と言う。

出井氏は「デジタル・ドリーム・キッズ」を目指しつつも、ウィンドウズを搭載したPCを創り、ハードではなく、ネットでコンテンツを売るというモデルを構築するには至らなかった。

しかし、そのことを、たぶん、誰よりも深くわかっているからこそ、出井氏は、「スティーブ・ジョブズの死はマイケル・ジャクソンと似たところがある」と、言っているような気がします。

SONYの変換期に社長になった、出井元会長にとって、アップルにとってのジョブズが、SONYにとっての盛田昭夫と同様に感じられるのは、よく理解できますが、そのジョブズを、自社の子会社のアーティストと似ていると思うのは、MJが単に所属しているアーティストだったからではなく、

ソニーウォーズが起こった頃、SONY本体にとって、ソニー・ミュージックは赤字が増大した子会社でしたが、MJはSONYの「ドリームキッズ」で、出井氏にとって、井深や、盛田、そしてジョブズと同様に、超えられなかった「カリスマ」だったと感じるからではないでしょうか。

でも、出井氏も凡庸な経営者だったわけではなく、家電企業からIT企業への転進という大きな夢を追い、世界企業としてのSONYに相応しい「カリスマ」を備えていなかったわけではなかった。

1989年、SONYは60億ドル近くを要して、コロンビア映画を買収しましたが、それはハリウッドに撮影所を持ちたいという創業者、盛田昭夫の永年の夢でした。しかし、その夢に支払った金額は大きく、授業料は高くついた。この損失処理が長引いたことが、技術者出身でない出井氏に繋がった可能性は無視できないでしょう。

映画への夢は、ベリー・ゴーディーも、盛田昭夫も果たせなかった夢で、2000年以降のMJもそれを強く語っていました。

私は、グランジ全盛時代に、3億円の費用をかけた「You Rock My World」を創って、広告が足らないというのも「おかしな話」だと思いますし、また、ソニー・ミュージックが気づくよりも、ずっと前に版権の価値を知っていたMJが、トミー・モトーラを自分を意図的に貶めようとしているソニーの有力者だと認識していたというのは、SONY本体の社長だった、出井氏の発言から考えても「変」で、

辞めさせる力があったMJが、その力を行使したと考える方が、私にとっては矛盾が少ないですね。

また、2001年の「ロックの殿堂」スピーチでの「ベリー・ゴーディー!×4」「Tommy Mottola is a devil!」は、繋がっていると思っているので、その件はまたいずれ。

☆本書には、マイケル・ジャクソンがほとんど登場しないだけでなく、スティーブ・ジョブズも登場しないのでご注意ください。
◎ソニードリーム・キッズの伝説(アマゾン)

☆本書の参考サイト
◎藤沢烈 BLOG
◎中島孝志のキーマンネットワーク

☆関連記事
◎迷いと決断ーソニーと格闘した10年の記録/出井伸之
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[日経ビジネスによる紹介]伝説の男たちを米国人が描く/米国の日本研究者が今日のソニーを築き上げた故・井深大氏、故・盛田昭夫氏、大賀典雄氏、現社長兼最高経営責任者(CEO)出井伸之氏らの素顔を描き出そうと試みたドキュメンタリー。約2年間に及ぶ取材、大賀、出井両氏はもちろん国内外のキーマンに延べ105回のインタビューを敢行したという著者の執念が、ほかの「ソニー本」とは全く異質で、しかも感動的な「成功秘話」を浮き彫りにする。

「コロンビア映画買収の真相」の章にこんなくだりがある。「(撮影所をもつことが盛田氏の"夢"であったために、ほぼ言い値の買収を決定したことは)ソニー・コーポレーションが昔から仕事をしてきた環境が公的でなく私的であり、合理的でなく感傷的であったことの、さらなる劇的な証拠である」。

こうした視点は全編に貫かれ、盛田氏の章では家族との関係や盛田邸内の様子までを子細に追う。「伝説の経営者」の内面に迫る試みだ。

また、米国ソニーの成功に深くかかわった2人の外国人の足跡と日本サイドとの間に生じた信頼、確執を初めて紹介している点も興味深い。ビジネス書として、また一級の人間ドラマとして楽しめる1冊だ。単行本(2000年6月)、文庫版(2002年3月)


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by yomodalite | 2012-04-26 09:20 | MJ考察系 | Trackback | Comments(0)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


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