2012年 04月 07日
[読書メモ]帝国解体、誰がオバマを大統領に選んだのか |
◎帝国解体 ー アメリカ最後の選択/チャルマーズ・ジョンソン、雨宮和子(翻訳)
著者は、1982年に『通産省と日本の奇跡』で、戦後日本の高度経済成長が通商産業省主導による産業政策を通して達成された点を指摘し、リヴィジョニズム(日本異質論)の主唱者だった方。
☆[参考サイト]80年代リヴィジョニズム
2001年アメリカ同時多発テロの予言書として話題になった『Blowback』(『アメリカ帝国への報復』)や、ブローバック(「911」が米国がこれまで世界で行ったことへの報復であるという意味)三部作と呼ばれる『The Sorrows of Empire』(『アメリカ帝国の悲劇』)『Nemesis』(『帝国アメリカと日本武力依存の構造』)の出版以降、ロサンジェルス・タイムズ紙に執筆されたもの。2010年に79歳で死去した著者の遺作。
ブローバック三部作と同様、アメリカが自滅の道を歩んでいるのは、全世界に張り巡らせている基地の存在であり、基地を解体し、帝国主義による支配構造を終わらせなければ、アメリカは自滅するというもの。
第3部「基地の世界」浪費する基地帝国から、省略して引用。
57年以上も自国に駐屯している米軍に、高額な出費をしている日本はどうか。最近になって、日本政府はアメリカ政府と、アメリカ海兵隊の一部を沖縄にある基地からアメリカ領のグアム島に移設するという合意に達した。しかし、その過程で、日本は海兵隊移設費用のみならず、グアム島の基地建設費用まで分担させられることになったのだ。
この場面で日本もキルギスタン政府を見習って、アメリカに対し、あなたたちの負担で出て行けと言ってみたらどうだろう。いや少なくとも、日本女性を(毎月2件の割合で)レイプしたり、沖縄に38もある米軍基地周辺に住む地元民に迷惑をかける米兵に助成金などはもう出さないと言ってみたらどうだろう。
こういう要求こそ、アメリカが1945年にやって来て以来、沖縄住民がずっと望んできたことだ。自分の国に存在する米軍にうんざりしている国々に提案したい。手遅れにならないよう、今のうちに基地からお金を取っておきなさい、と。もっと金を出すか、でなければ出て行けとアメリカにいうべきだ、と。私がそう進めるのは、アメリカの基地帝国は近いうちにアメリカを破産させるからだ。(中略)
もちろん、これはアメリカの債務に融資している中国やその他の国がすでに気づいていることだ。彼らは、ただ自分たちが米ドルをたっぷり持っているあいだは米ドルが暴落しないように、あわてず騒がずそっと金に換えているだけだ。しかし、惑わされてはいけない。出血はドクドクなのか、それともジワジワなのか、いずれにしてもアメリカが基地帝国とそれに付随する軍事基地に固執すれば、いまわれわれが知っているアメリカという国が終焉を迎えることは間違いない。(引用終了)
第5部 解体事始め「帝国解体」から、省略して引用。
われわれが帝国を解体しなければ、帝国がわれわれを解体するはめになる。そうなる理由を3つここにあげよう。
1:支えきれない拡張政策
バラク・オバマは新内閣の数人の閣僚を発表する演説の中で「われわれは地球上で最強の軍隊を維持しなければならない」と当然のことのように述べた。
アメリカは自分の破産問題を本気で考えていないのだ。破産はもちろんのこと、節約さえしたがらないアメリカは、現実を見つめられないことを露呈している。ティモシー・ガイトナーは財務長官として初めて公式に中国に訪問した際、北京大学の学生の前で講演したが、そこでアメリカに投資した「中国の資産は大変に安全だ」と保証した。新聞報道によると、そのとき学生たちは大笑いしたそうだ。当たり前だ。
(中国の学生はまともだなぁ。。米国の大学教授から「正義の話」を聞こうとする日本の大学のことも、大笑いされてなきゃいいけど。無理かも。)
2:アメリカを破産に追い込むアフガニスタン戦争
アフガニスタンでの戦略でアメリカがおかした深刻な大失敗の1つは、イギリスとソ連がアフガニスタンの人々を抑えつけようとして悲惨な失敗に終わった過去とおなじことを自らがしていることに気がつかなかったことだ。イギリスもパキスタンも、結局この地域を支配下に置くことはできなかった。著名な歴史家類ス・デュプレーがその著書『アフガニスタン』で述べたように「パシュトゥーン部族は何世紀にもわたってよそ者に抵抗し、よそ者がいないときは仲間同士で闘いあってきた。彼らは生まれつきのゲリラ戦熟練者であり、大英帝国を苦しめた」
3:基地帝国の隠された恥
2009年3月のニューヨーク・タイムズ紙で論説コラムニストのボブ・ハーバートは「レイプを始めとする女性に対する性暴力は米軍の大きな恥であり、このおぞましい問題は目に見えないところで隠されたままにされており、減っているという証拠はどこにもない」と述べた。『孤独な兵士』の著者へレン・ベネディクトは、軍隊内の性暴力に関するペンタゴンの2009年の報告の中にある数字を引用している。つまり軍隊内のレイプの90パーセントはまったく通報されず、されたとしても、加害者が罰せられることはごくわずかなのだ。(引用終了)
[参考サイト・日本政治研究の学者たち]
☆チャルマーズ・ジョンソンとジェラルド・カーティス(1)古村治彦
☆チャルマーズ・ジョンソンとジェラルド・カーティス(2)古村治彦
内容紹介/逼迫した経済状況にもかかわらず、軍備拡大を続けるオバマ政権下のアメリカ。著者は、長年にわたって、沖縄の米軍基地やイラク、アフガニスタンへの軍事侵攻、自らも内情にくわしいCIAのありかた、さらには民間企業の軍事への参入などを厳しく批判してきた。この本は、歯切れのいい文体と膨大な文献などとともに、いま、アメリカがなすべきことを説く、渾身の遺著である。最晩年にロサンジェルス・タイムズ紙に執筆した、普天間への思いを綴った論文、そして人生のパートナー、シーラ・ジョンソン夫人による、日本版への書き下ろしも収める。岩波書店 (2012/1/28)
◎誰がオバマを大統領に選んだのか/越智道雄
内容紹介/2008年のアメリカ大統領選挙ほど、アメリカの抱える人種・地域・女性・宗教・階層をめぐる文化的価値観の対立と分裂を明らかにしたものはない。この対立と分裂の先に見えるのは、20世紀の覇権国アメリカの衰退の兆しなのか? WASPは黒人大統領に国家の「未来」を託した。二〇〇八年アメリカ大統領選挙で繰り広げられた「文化戦争」の帰結が意味することとは。NTT出版 (2008/12/19)
☆[参考サイト]新世界読書放浪
☆[参考サイト]ありがとうを百万回
by yomodalite
| 2012-04-07 18:57
| 政治・外交
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