人の子イエス/カリール・ジブラーン (著)、小森健太朗 (翻訳) [1]

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本書は、マイケルの愛読書として知られている『預言者』の著者である、カリール・ジブランの英語で書いた著作の中では、唯一の長編で『預言者』に次ぐ、第二の代表作と言える作品。

この作品をMJが愛読していたという記事を読んだことはないのですが、ジョン・レノンは、箴言集『砂と泡』(Sand and Form)を『ジュリア』に引用し、ラジニーシは、「ジブランの著作は、真のイエスを表現することにおいて、きわめて近くまでいっている」と評価し、愛読書として9冊も挙げるなど、西洋の読書家にとって、ジブランの英語著作である7冊は必読本であること、

加えて『預言者』の著者が描いた「イエス」を、MJが読んでないわけがない。という私の判断から、本書を「MJの愛読書」と断定します。

下記は、訳者のあとがきから(省略して引用)


◎『預言者』の刊行

ジブランは、ニーチェの『ツァラトゥストラかく語りき』に出会っていたく感動し、詩的な表現の様式の理想をニーチェに見出した。書簡集でみても、この頃に知り合った女友だちには「ニーチェを読んでいないのなら、読んでから来てください。ニーチェの『ツァラトゥストラ』の話をしましょう」と書いている。


◎『人の子イエス』について

本書でのジブラーンの文体は、現代の口語文でなく、シェークスピアの時代に近い、古雅な英語で書かれている。翻訳に際し、文語調に訳すのが原著の味わいにふさわしいかもしれないが、本書では、主にイエスの語りを特化させるため文語調に訳すことで、コントラストをつけることにした。

本書は全部で79の小節からなり、イエスの同時代人による歌や証言で構成されている。ただし、この作品を「78人がそれぞれに語るイエス像」とするのは、いささか不正確で、重複する語り手を勘定すれば、語り手は72人である。

本書のイエス像は、新訳聖書の福音書を通して伝えられるイエス像と、似て非なるものがある。ジブラーンの描くイエスの教えには、苛烈な裁き手としての側面はほぼ払拭されている。本書のイエス像の特徴は「神の子」としてのイエスではなく「人の子」としてのイエスを強調する側面が大きいことである。

そのため、イエスの奇蹟などは描かれていない。「神の1人子」としてのイエスを否定し「人の子」としてイエスを肯定的に描くというのが、基本的なジブラーンのスタンスのようである。

このようなジブラーンのイエス像には、ジブラーンが傾倒していたニーチェのイエス観が反映されているだろう。たとえばニーチェは『善悪の彼岸』4章の164節で次のように述べている。

イエスは彼のユダヤ人たちに言った。「律法は奴隷のためのものであった。私が神を愛する如くに、神の子として神を愛せよ! われわれ神の子らにとって、道徳など何の関わりがあろう!」(木場深定訳)

道徳の教師として矮小化されているイエス像を、ニーチェは救い出し、道徳を超越して神を愛することを説いたイエス像を提示しようとしている。ニーチェを通してイエスは、神の1人子でなく、人みなが神の子であると宣べ、その姿勢は、ジブラーンを通した本書でのイエス像に受け継がれている。

ジブラーンの親友ナイーミによるジブラーン評伝中でも、本書のイエス像はニーチェの超人を模したものだと述べられている。

ジブラーンは種々あるイエス像がどれも気に入らないと列挙していて、キリスト教徒の描くイエスは従順な子羊のようで弱者にすぎるし、神学者の描くイエスは、あまりのジャーゴン、専門用語にイエスを閉じ込めすぎである。最近のアメリカ人作家によるイエス伝では、現代のアメリカのビジネスマンのようにイエスが描かれている。

どのようにしてイエスを描くつもりかというナイーミの問いに対して、ジブラーンは、何人もの同時代人の眼を通して語られる多面的なイエス像という構想を語った(引用終了)


マイケルへの興味から『聖書』を読んでみようと思われた方は少なくないと思いますし、私も、MJきっかけで読んでみて、ようやく、ちょっぴりわかったとか、理解が深まったという本が一杯あるので、今度こそ「よくわかる聖書」とか「面白いほどわかる聖書」とか「日本人にもわかる聖書」とか(不思議とこういった本に限って、さっぱりわからない本が多い)、そんな感じの本じゃなくて、実際の『聖書』を読んでやるぅ!という“野望”はあるんですが、

これまでの何十年間の読書経験でも、特に「新約聖書」に関しては、どーゆーわけか、旧約よりわかりにくいという印象がありました。(新約聖書を新書にした『新約聖書Ⅰ・Ⅱ』[文春文庫 解説:佐藤優]は、画期的だと思いました)

でも、

本書は、イエスのことを知りたいと思ったときに、聖書の難解なうえに「してはいけないこと」ばっかり言ってるイメージから逃れられ、尚かつニーチェの本質にも触れられるかもしれない....

そんな「お得な内容」については、

☆人の子イエス/カリール・ジブラーン (著)、小森健太朗 (翻訳) [2]につづく

☆ジブラン自身が描いたイエスの表紙も素敵。。
◎『人の子イエス』カリール・ジブラーン(アマゾン)
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[BOOKデータベース]同時代人七十数名の証言でえがくイエスの生涯。祈りの風土を知るレバノン生まれの詩人が甦らせた「地上を歩むイエス」。使徒たち、マグダラのマリア、総督ピラト、ペルシアの哲学者、ユダヤの大祭司、ナザレの隣人など、同時代人七十数名の証言のかたちで描くイエスの生涯。イエスの言葉と行いが、福音書の記述と異なっていたこともあったろう。

笑い、夢み、愛したイエス。その語りは人の心の中心を射抜いた。憎まれ、侮蔑され、十字架上で死んだイエス。彼は武装したローマ帝国と伝統を固守するユダヤ社会を前にひとり立った。「人の子」イエスは、人の飢え渇きをわが身で知っていた。本書の登場人物たちの孤独、苦痛と怖れ、悲しみ、執着、情熱と憧れは、わたしたちのものでもある。

著者ジブラーンは、初期キリスト教発展の地レバノンのマロン派の家に生まれ、渡米。ジョン・レノンにも愛唱された、米国で今も最も著名なアラブ系詩人である。読者は頁の中で、今も地上を歩む「人の子」イエスに出会うだろう。 みすず書房 (2011/5/21)




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by yomodalite | 2011-12-23 15:40 | ☆マイケルの愛読書 | Trackback(1) | Comments(0)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


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