チャップリンのスピーチ

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このスピーチは、映画『独裁者』の最後のシーンで行われたものです。以前、歴史的に有名な映画として、これを聞いた(見た)ときは、独裁者に操られて、戦争に行くのではなく、わたしたち自身のために、立ち上がろうというメッセージを訴えたものだと思ってました。

それが間違っていたとは思っていませんが、この数年、MJのことを考えない日はないぐらいの毎日を過ごしてきたせいか、今日あらためてスクリプトを読んで、自分なりに訳してみて、なんだか全然わかっていなかったという気持ちと、やっぱり、そうだったのかなぁという気持ちも半分あって、結局のところ、すごく泣いてしまいました。

私は、チャップリンを歴史的偉人として知っている世代なのですが、この映画のチャップリンを批判したのは、戦争執行者たちや、支持者たちだけではなく、彼のファンや、映画評論家からも、決して評判がいいものとはいえなかった。

そこに至るまでの、コメディ演技の素晴らしさに対して、ラストの演説シーンはなかった方が良かったという感想は、今でもよく見られます。

そういった感想を抱く人は、この映画が公開されたとき、多くのユダヤ人が実際に収容所に送られ、ドイツ国民もその政策を支持し、日本はドイツの同盟国として、戦争に参加していたということの想像ができないのでしょうか? 

ヒトラーは、実際にこの映画を観たそうで、チャップリンは是非その感想が聞きたいと言ったという。私は、これが、心優しく人々を楽しませてきたコメディアンが行った演説だということを絶対に忘れたくないと思います。

映画の日本語字幕も、熱いスピーチに見合った素敵なものだと思いましたが、

◎独裁者(ラストの演説・DVDをコマ送りしながら、書き起こしてみた)

チャップリンの最後の映画が、マーロン・ブランドが主役で、MJの最後のSF(実質的に)にも、ブランドが登場しているという繋がりを強く感じ始めてから、チャップリンとMJの類似は、それを感じるだけでなく、ときどき突き刺さって来るような感覚を感じて......

それで、英文スクリプトから自分でも訳してみました。




I'm sorry but I don't want to be an Emperor, that's not my business. I don't want to rule or conquer anyone. I should like to help everyone if possible, Jew, gentile, black man, white.

申し訳ないが、私は皇帝になどなりたくない。そんなことはごめんだ。私は誰も支配したくないし、征服したくもない。私は、できるなら、すべての人を助けたい。ユダヤ教徒も、キリスト教徒も、黒人も、白人も。


We all want to help one another, human beings are like that. We all want to live by each other's happiness, not by each other's misery. We don't want to hate and despise one another. In this world there is room for everyone and the earth is rich and can provide for everyone.

私たちはみんな、お互いに助け合いたいと思ってる。人間とはそういうものなんだ。私たちは、お互いの不幸でなく、お互いの幸せによって暮らしたいんだ。憎み合ったり、軽蔑し合ったりなどしたくない。この世界には、だれにでも暮らせる場所がある。この大地は豊かで、誰にでも恵みを与えてくれる。


The way of life can be free and beautiful. But we have lost the way. Greed has poisoned men's souls, has barricaded the world with hate;
has goose-stepped us into misery and bloodshed.

人生は、自由で美しいはずなのに、私たちは進むべき道を見失っている。強欲によって精神は毒され、世界には憎悪の壁が築かれる。私たちは歩調を合わせ、悲惨と流血への道を行進している。


We have developed speed but we have shut ourselves in :
machinery that gives abundance has left us in want.
Our knowledge has made us cynical, our cleverness hard and unkind.

私たちは、スピードを発達させたことで、逆に閉じこもりがちになり、機械化は、私たちを豊かさにすると同時にさらに欲張りにし、私たちが得た知識は、私たちを皮肉にし、賢さは、私たちを冷たく、不親切にしている。


We think too much and feel too little :
More than machinery we need humanity ;
More than cleverness we need kindness and gentleness.

私たちは、多くを考えて、感じることが少なくなっている。機械化よりも人間性が大事で、賢くなるよりも、親切や思いやりの方が必要なんだ。


Without these qualities, life will be violent and all will be lost.

こういった本質を失ってしまったら、人生は暴力的になり、なにもかも失ってしまう。



The aeroplane and the radio have brought us closer together. The very nature of these inventions cries out for the goodness in men, cries out for universal brotherhood for the unity of us all.

飛行機やラジオは、私たちを近づける。こういった発明の本質は、人々の良心に呼びかけることだ。私たちみんなが普遍的な人類愛でひとつになろうと呼びかけるのだ。


Even now my voice is reaching millions throughout the world, millions of despairing men, women and little children, victims of a system that makes men torture and imprison innocent people. To those who can hear me I say "Do not despair".

今、私の声は世界中の何百万という人たちに届いている。絶望の淵にある男性や、女性、そして、幼い子供たち、罪のない人々を拷問にかけ、拘束するシステムの犠牲者に届いている。彼らに私は伝えたい。「希望を失ってはならない」と。


The misery that is now upon us is but the passing of greed, the bitterness of men who fear the way of human progress : the hate of men will pass and dictators die and the power they took from the people, will return to the people and so long as men die [now] liberty will never perish. . .

私たちは、今、悲惨な現実を味わっている。でも、強欲も、人間の進歩を恐れる男性の辛さも、一過性のものだ。憎しみはいずれは去り、独裁者たちは死ぬ。そして、彼らが人々から奪った力は、人々に戻るだろう。人類が絶滅しない限り、自由が絶滅することはない。


Soldiers : don't give yourselves to brutes, men who despise you and enslave you, who regiment your lives, tell you what to do, what to think and what to feel, who drill you, diet you, treat you as cattle, as cannon fodder.

兵士たちよ。あなたを軽蔑して、奴隷にするような人間に従うな。彼らは、君たちが、何をして、どう思い、何を感じるべきかまで指示し、君を、家畜のように扱って、砲弾の餌食として利用しようとしている。


Don't give yourselves to these unnatural men, machine men, with machine minds and machine hearts. You are not machines. You are not cattle. You are men. You have the love of humanity in your hearts. You don't hate, only the unloved hate. Only the unloved and the unnatural. Soldiers: don't fight for slavery, fight for liberty.

君たちは、機械でも、家畜でもない、心に愛と尊い人間性をもっている人間だ。だから憎んだりしない。愛のない者だけが憎むのだ。愛されず、不自然な者だけが。兵士たちよ!奴隷として戦うのを止めて、自由のために戦うのだ!


In the seventeenth chapter of Saint Luke it is written:
"The kingdom of God is within man"
Not one man, nor a group of men, but in all men; in you, the people.

ルカの福音書17章には「神の国は人々の中にある」と記してある。ひとりの男の中にではなく、特定の集団にでもなく、すべての人々の中に、そして、君自身の中に存在すると。

You the people have the power, the power to create machines, the power to create happiness. You the people have the power to make life free and beautiful, to make this life a wonderful adventure.

あなた方人々は、力を持っている、その力は機械を創造し、幸福も創造する。あなた方人々は、この人生を素晴らしい冒険にし、自由で美しくする力もある。


Then in the name of democracy let's use that power, let us all unite. Let us fight for a new world, a decent world that will give men a chance to work, that will give you the future and old age and security.

民主主義の名のもとに、この力を使い、団結しよう。新しい世界のために、働く機会が平等に与えられる世界のために戦おう。それは、君たちに未来を、古い世代には安全を与えるだろう。


By the promise of these things, brutes have risen to power, but they lie. They do not fulfil their promise, they never will. Dictators free themselves but they enslave the people. Now let us fight to fulfil that promise.

これらを公約をすることで、彼らは政権をもった。でも、彼らは嘘つきだ。彼らは約束を果たさない、絶対に。独裁者たちは自分自身を自由にし、人々を奴隷化する。私たちは、本当に約束のために共に戦おう。


Let us fight to free the world, to do away with national barriers, do away with greed, with hate and intolerance. Let us fight for a world of reason, a world where science and progress will lead to all men's happiness.

自由な世界のために、国境を無くし、強欲や憎しみや不寛容を追放するために、戦おう。科学や進歩がすべての人の幸せのためになる、そんな世界のために共に戦おう!


Soldiers! In the name of democracy, let us all unite!

戦士たちよ!民主主義の名のもとに、団結しよう!


(下記は恋人ハンナへのメッセージ)



Hannah, can you hear me? Wherever you are, look up, Hannah. The clouds are lifting. The sun is breaking through. We are coming out of the darkness into the light. We are coming into a new world. A kind new world where men will rise above their hate and brutality.

ハンナ、聴こえるかい? 君がどこにいたって、見てごらん!ハンナ、雲は上がり、太陽が現われる。暗闇の中に、明るい光が射し始め、新たな世界がやってくる。新たな世界は、人々が憎しみや暴力を克服して生まれるんだ。



The soul of man has been given wings, and at last he is beginning to fly. He is flying into the rainbow, into the light of hope, into the future, that glorious future that belongs to you, to me and to all of us. Look up, Hannah. Look up.

人の魂は翼を与えられている。そして、ようやく飛び立とうとし、虹の中に飛び立った。明るい希望をもつ未来の中に、輝かしい未来は、君にも私にも、私たちすべてにやって来る。上を向いて、ハンナ!


◎『独裁者』(ウィキペディア)


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写真は、晩年期のチャップリン


ヒストリー・ティーザーは、この『独裁者』の演説を発展させたものだと思います。

◎[関連記事]マイケル・ジャクソンの顔について(14) “HIStory”

チャップリンも、MJも「正義」のためには戦わない。

正義は、善と悪を分けようとし、善人と悪人を作り出す。だから、必ず「憎しみ」が生まれるし、その感情に囚われてしまう。そして、それを「独裁者」は支持する。独裁者がいても、殺人を実行する多くの人々がいなければ、戦争を起こすことはできないから。

罪のない人が拘束され、裁判は「無罪」を勝ち取らなくてはいけないという「システム」によって、善と悪が決定される。だから、MJは、いつも裁判のときにおどけていたのだ。

やっぱり、忘れてはいけないのは、あのときのMJの「スマイル」だと思う。






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Commented by やんちゃ at 2011-12-21 20:23 x
直感で、素直に同感。
Commented by yomodalite at 2011-12-21 23:20
サンキュっです!
Commented by jean moulin at 2011-12-27 18:02 x
昨日、独裁者も見直したの
で、やっぱり笑えなかったんだけど・・。
その理由が解った。
完璧すぎるんだ。
こんなに完璧におもしろい事やられても、笑えないもの。
Commented at 2012-11-06 06:19 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by yomodalite at 2012-11-06 08:04
skywalkerさん、はじめまして。ご指摘ありがとうございます!自分でも信じられないようなミスでお恥ずかしい限りです。でも、そんな驚くような「うっかり」を常にしてしまいがちではあるので、またお気づきの点がありましたら、よろしくお願いします!
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by yomodalite | 2011-12-20 23:50 | マイケルジャクソン資料 | Trackback | Comments(5)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


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