2011年 11月 03日
よく生きる智慧 ー『預言者』/カリール・ジブラン、柳澤桂子(訳)[1] |
これから『預言者』を読もうと思っている人と、一応読んでみたけど....という人へ。
マイケルも、ステラ・アドラーも、読めと言っていた『預言者』ですが、この本を読んで『Dancing the Dream』を読むと『Dancing the Dream』がより味わい深くなると思います。
と言っても、わたしも『預言者』を、『Dancing the Dream』 よりもずっと前から読んでいたにも関わらず、なかなかわからなかったんですが、永江朗氏がインタヴューで「なるべく断定して、間違っていたら謝れ」と言われていたことを見習って『預言者』のベスト翻訳本を断定することにしました。
では....
マイケルも、ステラ・アドラーも、読めと言っていた『預言者』ですが、この本を読んで『Dancing the Dream』を読むと『Dancing the Dream』がより味わい深くなると思います。
と言っても、わたしも『預言者』を、『Dancing the Dream』 よりもずっと前から読んでいたにも関わらず、なかなかわからなかったんですが、永江朗氏がインタヴューで「なるべく断定して、間違っていたら謝れ」と言われていたことを見習って『預言者』のベスト翻訳本を断定することにしました。
では....
本書はステラ・アドラーと出版社アプローズ・ブックスのグレン・ヤングとの交流から生まれたものだ。(中略)以下、ヤングの言葉を引用しよう。
「僕はいつも、戯曲に書かれていることの本当の意味や、この場面でこうなるのはなぜなのか、この人物はなぜこうなるのか、ということを考えていた。ただ漠然と興味があったのではなく、具体的な疑問がいくつもあった。それらを重ね、目に見えない粒子のようなレベルで戯曲を分析したかった。だから彼女の興味を引けたのだと思う。僕たちは分子レベルで理解し合い、深い交流ができた。
僕たちの関係が変化したのは、僕が彼女の本に意見を出した時だ。当時、ステラ・アドラー名義で本が出版されようとしていた。それより、もっといい本ができるんじゃないかと僕が言ったのだ。
ステラを知る人は皆、彼女の精神の豊潤さ、バロック的なところに、たくさんの方面に同時に手を伸ばそうとする大胆さを知っている。演劇は歴史や哲学、経済、心理学、色彩と光の合流点。そう主張したのが、ステラ・アドラーだ。
彼女の思考はこれ以上ないほど研ぎすまされ、安っぽくされるのを拒む。何に対しても、非常に堅古な思考が返ってくる。
また、彼女には華やかさがある。彼女は生徒にも華やかさを求める。知性の面での華やかさ、贅沢を持ちなさいと生徒を導く。ところが、目の前にある本は、僕が思うに、それとは正反対の内容だった。
冷たくて、ちっちゃくて、メカニカルな感じのする本だった。ステラが放つ炎のような感じや、冒険的なところも全部抜け落ちていた。過激な言葉はみな、お行儀の良い表現に書き換えられていた。
彼女を取り巻く全員がその本を賞賛していた。反対意見を唱えたのは僕が初めてだと思う
そして、グレン・ヤングの使命は僕の使命にもなった。ステラ・アドラーの教えを書き起こすだけでなく、彼女の声のトーンまで伝えろと。(中略)
本書は普通の「ハウツー」本ではない。ステラ・アドラーが最も嫌うのがハウツーだ。彼女にとって、演技の技法は世界についての思索と一体である。彼女いわく、この世界は堕落している。旧約聖書の預言者も、同じことを言うかもしれない。(引用終了)
彼女の素敵な言葉は、他にもいっぱいあって、ホント紹介しきれないんですが.....この本であらためて実感したのは、
偉大なひとのことは、偉大なひとを通してでしかわからないということと、
偉大なひとは、偉大なひとから学んでいるということ。
マイケルのことを最初に「もの凄い読書家」だと思ったのは、2005年の裁判のときの写真を見たときなんですが、それは、大きな苦しみや逆境を乗り越えていけるひとは、必ず、偉大な先人の教えを学んでいるということと、
あのときの彼の態度は、逆境を冷静に乗り切る以上に、スゴく魅力的だったことから、彼の読書について、ますます興味が尽きなくなってしまいました。
『預言者』は「世界的なベストセラーで、聖書の次に世界中で読まれている」という本なので、わたしも一応、佐久間 彪氏訳のヴァージョンで読んでいて、2年ほど前に、この本がMJの愛読書だと知って「ああ、そうかぁ」とは思ったんですね。
MJの愛読書として公表されているものは、どれも納得できるものでしたが、『預言者』は『ムーンウォーク』や『Dancing the Dream』 と思想的にも、全体的な雰囲気も一番近い味わいをもつ作品に思えたので。。
とはいえ、それは「そんな感じがした」と言うだけで、何種類かあるアマゾンレヴューを見てもそうなんですが、『預言者』が、MJの他の愛読書に比べると人気がないのは、
この本は、難解ではないのですが、感動することは、むずかしいからだと思うんです。
それで、『預言者』は、わたしの中で「いつかはきっと」のコーナーにずっと置いてあったんですが、ステラの言葉、
このエッセイの中からあなたが引きつけられる章をひとつ選び、わかりやすく自分なりに言い換えてきてください。自分の言葉を使って書き直してみましょう。
で、精神にキックが入ったので、全部の翻訳本を読み比べてみました。
古典の翻訳物には、2、3行であっても、何を書いてあるのかわからないような、難解な文章も多いのですが、こちらは、どれを選んでもそんなことはないですし、薄い本なので原書で買われた方も多いと思います。
たしかに、英語が苦手なわたしでも「MJ愛」と「聖書の次にベストセラー」の理由があれば、なんとか・・と思うぐらいの厚みなんですが、よほど、英語に堪能でなければ、これは日本語で読んだ方がいいと思います。だって、そうじゃないと、
テキストを読みこなし、作者の思考に取組みなさいということよ。思考のないテキストなんて存在しない。読んで、読んで、読んでいるうちに意味がわかり始めて来ます。
ということが出来ないでしょう?
ステラの言葉でようやく気づいたんですが、母国語で読んでいる人でも「わかりやすく自分なりに言い換える」ことが必要なんだから、そうでない人は、もっと「自分なりに言い換えることが必要」で、
何度か読んで思ったんですけど、、これは読んだだけでは「来ない」本なんです。
古典にはそーゆーの多いですよね。そもそも、聖書がすんなり読めたら、教会もいらないですしね。
『預言者』の翻訳本は下記の6種類(タイトルと翻訳者のプロフィール)
◎船井幸雄(『預言者』有名経営コンサルタント、スピリチュアル系の著書多数)
◎佐久間 彪(『預言者』カトリックの神父)
◎有枝 春(『預言者のことば』)
◎柳澤桂子(『よく生きる智慧』生命科学者、エッセイスト)
◎神谷美恵子(『ハリール・ジブラーンの詩 』ハンセン病治療に生涯を捧げた精神科医)
◎池 央耿(『ザ・プロフェット』)
この中で、物語の導入部に効果的な「ことば」があるのは、柳澤氏と、神谷氏のもので、神谷美恵子氏の『ハリール・ジブラーンの詩』は、預言者だけでなく、他のジブランの作品からも抜粋した本で(神谷氏の訳では『予言者』)、この本には、最初に本書の構想が説明されているので、下記に一部引用します。
初めの「船の到着」のところで意味が深いと思ったのは、巫女の願いに対して予言者が次のように答えていることです。
「オルファリーズの人々よ、あなたがた自身の魂の中で今、動いているものについて語るほか、ほかの何について私が語ることができようか」
人生についての知恵とは結局、万人の心にあるものにほかならない。ただ一般の人はそれをうまく自覚することも表現することもできない。みなに代わって自覚し、これを新しく表現するのが予言者、詩人の役割だというのでしょう。(引用終了)
『預言者』を未読の方は、ピンと来ないかもしれませんが、この最初の「船の到着」の意味を、自分に惹き付けて読むことができない本が多いんですね。
柳澤氏の本は、冒頭がエッセイになっていて、神谷氏の本よりも、ずっと長い導入部分があるのですが、
わたしは、柳澤桂子氏の本をお奨めします。
紫の表紙に白い薔薇の装幀も、邦題「よく生きる智慧」も、なんだか宗教くさくて、最初の印象では、もっとも感覚的に違うなぁと思いましたし、本文が始まる前に氏の闘病期も交えて語られていたりして、わたしは通常、映画でも本でもあまり解説を見たくない方ですし、特に、自分が見たり読む前は避ける方なんですが、
この本に関しては、この導入部の説明はすごく必要だと思いました。
☆よく生きる智慧 ー「預言者」[2]につづく
とはいえ、それは「そんな感じがした」と言うだけで、何種類かあるアマゾンレヴューを見てもそうなんですが、『預言者』が、MJの他の愛読書に比べると人気がないのは、
この本は、難解ではないのですが、感動することは、むずかしいからだと思うんです。
それで、『預言者』は、わたしの中で「いつかはきっと」のコーナーにずっと置いてあったんですが、ステラの言葉、
このエッセイの中からあなたが引きつけられる章をひとつ選び、わかりやすく自分なりに言い換えてきてください。自分の言葉を使って書き直してみましょう。
で、精神にキックが入ったので、全部の翻訳本を読み比べてみました。
古典の翻訳物には、2、3行であっても、何を書いてあるのかわからないような、難解な文章も多いのですが、こちらは、どれを選んでもそんなことはないですし、薄い本なので原書で買われた方も多いと思います。
たしかに、英語が苦手なわたしでも「MJ愛」と「聖書の次にベストセラー」の理由があれば、なんとか・・と思うぐらいの厚みなんですが、よほど、英語に堪能でなければ、これは日本語で読んだ方がいいと思います。だって、そうじゃないと、
テキストを読みこなし、作者の思考に取組みなさいということよ。思考のないテキストなんて存在しない。読んで、読んで、読んでいるうちに意味がわかり始めて来ます。
ということが出来ないでしょう?
ステラの言葉でようやく気づいたんですが、母国語で読んでいる人でも「わかりやすく自分なりに言い換える」ことが必要なんだから、そうでない人は、もっと「自分なりに言い換えることが必要」で、
何度か読んで思ったんですけど、、これは読んだだけでは「来ない」本なんです。
古典にはそーゆーの多いですよね。そもそも、聖書がすんなり読めたら、教会もいらないですしね。
『預言者』の翻訳本は下記の6種類(タイトルと翻訳者のプロフィール)
◎船井幸雄(『預言者』有名経営コンサルタント、スピリチュアル系の著書多数)
◎佐久間 彪(『預言者』カトリックの神父)
◎有枝 春(『預言者のことば』)
◎柳澤桂子(『よく生きる智慧』生命科学者、エッセイスト)
◎神谷美恵子(『ハリール・ジブラーンの詩 』ハンセン病治療に生涯を捧げた精神科医)
◎池 央耿(『ザ・プロフェット』)
この中で、物語の導入部に効果的な「ことば」があるのは、柳澤氏と、神谷氏のもので、神谷美恵子氏の『ハリール・ジブラーンの詩』は、預言者だけでなく、他のジブランの作品からも抜粋した本で(神谷氏の訳では『予言者』)、この本には、最初に本書の構想が説明されているので、下記に一部引用します。
初めの「船の到着」のところで意味が深いと思ったのは、巫女の願いに対して予言者が次のように答えていることです。
「オルファリーズの人々よ、あなたがた自身の魂の中で今、動いているものについて語るほか、ほかの何について私が語ることができようか」
人生についての知恵とは結局、万人の心にあるものにほかならない。ただ一般の人はそれをうまく自覚することも表現することもできない。みなに代わって自覚し、これを新しく表現するのが予言者、詩人の役割だというのでしょう。(引用終了)
『預言者』を未読の方は、ピンと来ないかもしれませんが、この最初の「船の到着」の意味を、自分に惹き付けて読むことができない本が多いんですね。
柳澤氏の本は、冒頭がエッセイになっていて、神谷氏の本よりも、ずっと長い導入部分があるのですが、
わたしは、柳澤桂子氏の本をお奨めします。
紫の表紙に白い薔薇の装幀も、邦題「よく生きる智慧」も、なんだか宗教くさくて、最初の印象では、もっとも感覚的に違うなぁと思いましたし、本文が始まる前に氏の闘病期も交えて語られていたりして、わたしは通常、映画でも本でもあまり解説を見たくない方ですし、特に、自分が見たり読む前は避ける方なんですが、
この本に関しては、この導入部の説明はすごく必要だと思いました。
☆よく生きる智慧 ー「預言者」[2]につづく
by yomodalite
| 2011-11-03 11:37
| マイケルの愛読書
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