恥ずかしい読書/永江朗

恥ずかしい読書

永江 朗



読書にまつわる素敵なエッセイ集。

著者の「まえがき」によれば、本についての本というよりも、本を読むことについての本、本の読み方についての本である。そうです。

でも、どーしてこれが『恥ずかしい読書』なのか? それは、もしかしたら読書に耽溺しているタイプの人にしか感じない感覚かもしれません。

下記は、永江朗氏のステキなエッセイの雰囲気が、ちょっぴり伝わる「あとがき」から

この本の制作作業を大詰めを迎えた2004年10月20日、私は道後温泉にいた。カンヅメになって原稿を執筆....していたのではなく、たんに食って飲んで温泉につかっていたのである。(中略)

私はもっぱら、エミリー・ブロンテの『嵐が丘』(鴻巣友季子訳、新潮文庫)を読んで過ごした。以前、姫野カオルコさんから、鴻巣訳の『嵐が丘』がすばらしいと、いう手紙をいただいて購入した本だ。たしか『嵐が丘』は中学校か高校生のころに父の本棚にあったものを読んだはずだが、そのときとはまるで印象が違っていた。

あまりに面白くて、一気に読むのはもったいない。途中でやめて、土砂降りのなか、妻と散歩に出た。(中略)

宿の裏手にある子規記念博物館に入った。(中略)新しいもの好きで、とくに当時はまだほとんど知られていなかった野球に夢中になった子規。果物が好きで、とくに柿が大好きだった子規。自分の墓碑銘について書いた手紙では、そう長く生きられないことを自覚していて、かわいそうになった。

記念館を出ると、雨は小振りになっていた。宿に戻り、また『嵐が丘』の世界に入った。私にとっての『嵐が丘』は、道後温泉の『嵐が丘』であり、私にとっての正岡子規は、台風の正岡子規だ。

翌日の新聞で、この台風で多くの犠牲者が出たことを知った。

東京に戻ってから、『漱石・子規 往復書簡集』(岩波文庫)をパラパラと拾い読みした。また『嵐が丘』の翻案というかリメイクというかカバーというか、あらすじはそのまま舞台を日本を移した小説である水村美苗の『本格小説』をパラパラと読み返した。(中略)

書名については、3人で相談した。私は『百億円稼ぐ読書術』というのはどうかと提案したが、ほとんど相手にしてもらえなかった。本を読むだけで100億円稼げたらいいのになぁと思うが、そんなことはありそうにない。

『幸福になる読書の方法』とか『気持ちが軽くなる本の読み方』なんていうのはどうだろう。でも、歯磨き読書で幸福になったり、カメラのファインダー越しに写真集を見て、気持ちが軽くなったりはしない。

いろいろあって、『恥ずかしい読書』になった。(引用終了)


第1回の「歯磨き読書」は、古典など、難易度の高い本に苦しんでいる私にとっては、デキル先輩から届いた助言というか、優しく包み込んでくれるような、救いの書のような感じで読みました。

作家のひとも、編集者のひとも、本を仕事にしている方が、どれぐらい本を読んでいるかを、ちょっぴり垣間見たことがあったり、その分野の巨匠と言われるような作家からのメールがもの凄かったこととかを経験して....

とにかく、本のプロ達の「読書」の凄さには、畏怖を抱いていましたけど、、そんなプロの方が、難解な本を読むことが、難解だと言ってくれて、それでも諦めない気持ちというか、精神を指し示してくれているような気がして、、

わたしが、ジャーナリストとか、新聞記者が大嫌いな理由と逆で、やっぱり、本物のプロは、嘘をつかないし、謙虚で.....ステキ!!!

図書館の人も、この本を「自分磨き本」として、ピックアップするなんて、センスあるぅーー!

この本に出会っていなかったら『田中小実昌エッセイ・コレクション』とか、殿山泰司の『JAMJAM日記』とか読まずに死んじゃうとこでしたし、

『嵐が丘』の新訳にも気づいてませんでした。海外古典を読むのに、何度も、新訳に期待してしまうとか、ジョニー・デップも丸谷才一訳でジョイスを読んでみたら....とか、チラっと思っていたけど、年代ごとに再読する、新たな楽しみになっていいかも。。と考えを改めることにしよう。

待ってて!ヒースクリフ!!!
♪Heathcliff, I'ts me Cathy. Come home. I'm so cold!
Let me in a your window♫

◎Kate Bush - Wuthering Heights

◎『恥ずかしい読書』(アマゾン)

[目 次](小見出しは部分省略)

第1回「歯磨き読書」
中身は難しくてもページを開くことはカンタンだ/「絶望的な気分」の正しさ/秘訣は歯磨き粉の分量にあり/1日3回、哲学書でギアチェンジ.....

第2回「強化年間」
読書にあわせて服を変える?/安岡章太郎と過ごした2002年/私の日常に作家が入り込む....

第3回「本に線を引く」
線引き読書の無意味さ.....

第4回「年表と地図を手元に置いて」
漢字が読めないと落ち着かない?/リンクしていく読書....

第5回「本を裸にする」
脱がせて良かった!/そして、はなぎれは残った....

第6回「写しながら読む」
書いた人のリズムや呼吸を感じる/書き写して理解する/書き写すと喧嘩する?....

第7回「トイレと読書」
読むのか、拭くのか/記憶の排泄と密接なかかわり.....

耽溺ルポ Part 1「失われた本棚を求めて」

第8回「本を逆さに読んでみる」
無重力状態で月をみる/地図をひっくり返す.....

第9回「東京ブックトリップ」
若手思想家たちを支えた池袋リブロ/千駄木往来堂、「文脈棚」を読み解く楽しみ/そして神保町。東京堂の「軍艦」を目指せ.....

第10回「散歩と読書」
散歩に持っていくならこんな本/身体にいい読書はあるか.....

第11回「本をよく読む本屋、本を読まない本屋」
忙しいから読まない?/本屋の動体視力.....

第12回「キーワード的官能と哲学」
検索の日々/官能小説の恥ずかしさを乗り越える方法.....

第13回「書店は変わる」
本は出会う環境で変わる......

耽読ルポ Part2「目にいい読書を求めて」

第14回「本を汚す、本を捨てる」
本は美しくなくていい/読んでいない本は売れ.....

第15回「スクラップ考」
愛と挫折の青春スクラップ.....

第16回「手紙と読書」
私信あなどるなかれ/ワンランク上の書簡集/文豪同士の手紙作法/マナーより激情

第17回「本に密着する」
「読まない」理由のあやうさ/1人になる/本を真剣に選ぶ楽しみを.....

第18回「学校の図書館」
私も人の目を気にします/図書館の物語......

☆恥ずかしいブックリスト
__________

[BOOKデータベース]時間がない、お金がない、は理由になりません。難しい、面白くない、も理由になりません。本は、いかようにも読めるのです。いつでも、どこでも、読書する。哲学書から官能小説まで、読書する。ひっそり、ふむふむ、読書する。「読書」という淫靡な快楽を徹底追求したら…こんなことになってしまいました。 ポプラ社 (2004/12)


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by yomodalite | 2011-10-27 10:34 | 文学 | Trackback | Comments(0)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


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