マイケルに起きた真実/レオナルド・ロウ

マイケルに起きた真実 ― The Michael Jackson's Story

レオナルド・ロウ



本書の著者は、1974年24歳でエンターテイメント業界に参入。1979年にジャクソンズの50都市での最初の全米ツアーをプロモートし、

その後、マイケルの人気上昇と、黒人という理由により、プロモーターとしての立場から追放され、1996年にブラック・プロモーターズ・アソシエーション会長に選任。

2009年に、再びマイケルの依頼により、契約代理人を務めていた方。あの日の早朝、MJが救急隊員によって病院に運ばれたことをランディからの電話で知り、死亡確認後、キャサリンママから「病院にすぐに来て」と言われたこと、

マイケルファンには、実際何が起きたのかを伝えたいという思いで出版されたと「はじめに」には書かれていて、

本書には、MJとAEGが交した契約書も掲載されているなど、扇情的な内容の同類の本と比べて、資料面が充実していて「良書」と言えると思います。

ただ、これまで、ジャスティス系には、ちょっぴり冷めた感情を吐露して来た、当ブログですが、実は、人一倍、愛にも、正義にもウルサい方だったりするせいか、

共感できる部分は限定的でした。

以下の青字の文章は省略引用(遺言状と思われる写真は本書のものではなく真偽不明)

◎P74
マイケルの死因について、マレー医師以外の誰も調べようとしなかった。わたしは調査官に尋ねた。「ランディ・フィリップスが怒りを爆発させてないのはおかしいと思いませんか?AEGはマイケルの健康状態を監視してもらいのに毎月15万ドルという法外な料金を支払っていたのに?」マイケルは当時そんな大金をもっていなかった。ということはAEGが払っていたのだと思う。


マレー医師は一般的な健康管理のためではなく、MJの睡眠を確保するために雇われていたと思います。睡眠を麻酔でというのは非常識ですが、それ以外に眠ることができないほどの睡眠障害なら、コンサート成功のために、それを選択したことを責めることは出来ないでしょう。でも、専門の麻酔医師ほど、そのリスクの大きさがわかるため、専門外であまり優秀でなくお金を必要としていたマーレーのような人物以外は雇いようがなかった(ただし、マーレーは生死に直結する心臓の専門医。MJのようなセレブが本当のヤブ医者に出会うことはないと思います)

お金を払っていたのが、AEGなのかMJなのかがわからなくても、使用していた麻酔薬を考えれば、それを望んだのは、MJ自身だと思う。AEGは、MJが亡くなってもリスクを負わなくてもいい契約にはなってはいましたが、成功しても儲かることは変わらないのだから、あえて「殺人」のリスクを負う理由はないし、また、仮に計画があったなら、マーレーのような事後の計画性のない行動は理解できない。

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著者は、自分なら、50回のチケットを全部売って、ものすごい利益を得たら、MJの健康でいてくれるように何でもすると思うと書いていますが、AEGは、まさにそういうことをしたのでは?

支払いがAEGであった場合、こういった目的で医師を雇うというのは、企業として正式に認めることは出来ないものの、法外な金額から、その目的には気がついていた可能性はあると思います。

◎P77
マイケルは死の2日前にリハーサルの撮影を許すように説得された。なぜか?彼の死後に映画が作られることになっていたからだろう。


MJが宣言したように、これは彼の最後のツアーでした。死後でなくてもライブDVD発売は充分あり得るし、特典としてリハ影像が付録されることは極自然なこと。また、リハ影像は2日前だけでなく遺されているはずですし、過去のツアーリハーサルも、Youtubeでたくさん観られます。

第二章 マイケルとAEGの契約に関する再考察、
第三章 マイケルとAEGの契約書


この章の内容は専門的で、著者がありえないと言っていることに反論することはできませんが、

◎P108
AEGとマイケルの契約には、マイケル・ジャクソン合同会社は担保物件の一部という契約権が含まれている。


こういった例から、著者は何度も、これらの契約がどれほど酷いものであるか、自身のプロモーター経験を通してありえないと評していますが、

メディアによりあり得ないほど貶められ、何年もの間CD発売をしておらず、借金生活と見なされていたアーティストが、これほどの公演を決行できることも、またそれが記録的なチケット売上げを期待されるということも、まったく「ありえない」ことで、

それは、著者と違ってw、AEGのような大規模ツアーに慣れているプロモート会社ですら、我を忘れるほどの「儲け」の機会でありながら、また何かあれば、とてつもない負債を置いかねない「契約」だったはず。

AEGの契約は、MJにとって過酷なものですが、そうでなければ、プロモーター側に多額の負債を抱えるリスクがあることを、同業者である著者が理解できないのは、近代的なプロモーターの世界を生き抜けなかったせいでしょうか。

わたしには、キャサママの態度も、MJが最終的にこの著者との契約を諦め、AEGサイドを信用したのは仕方がないことのように感じました。

著者は、MJがこれほどのスターでありながらも、搾取されたことを「人種差別」に結びつけていますが、その差別感は、黒人ではない種族にとっては「強欲」の思想に結びつき、著者が拠り所としている「アフリカ系」に違和感を感じる黒人も大勢います。
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第五章 マイケルの遺言状偽造に関する考察

著者は、エステートの管理人である、ブランカとマクレインを批判し、特にブランカに対しては、横領行為によりMJが解雇した事実をあげ、遺産の管理人として絶対にありえない相手と表しています。

本書にあるように、2002年の7月7日の署名には疑わしい点があるとわたしも思います。

ただし、MJは最後のスタジオアルバム『INVINCIBLE』(’01)発売後のこの時期に、自分が遺すものについてかなり真剣に考えていたはずで、その財産の一番重要な部分は、彼がありったけの精魂を込めて創っていた「作品」だったはずです。
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そして、子供をどんなに愛していたとしても、3人の子供によって作品が分割されることは望まなかったでしょう。

遺産から、父親を無視したなどとも言われましたが、両親や兄弟に財産を残す責任はありませんし、アーティストが作品の分割を嫌がるのは当然で、そのことと愛情を結びつけるのはナンセンスです。(岡本太郎が岡本敏子を妻としてではなく、養子としたことも同様の理由といわれています)

彼のアーティストとしての財産がポップミュージックであることを考えれば、遺産管理人として、当時、ブランカとマクレインに依頼したことは、事実であって不思議ではないと思いますし、当時、他の選択があったとも思えません。
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これは、まったくの推論ですが、

最も価値のある版権をもつMJが、永年付き合いのある、版権ビジネスのNo,1弁護士であるブランカに遺産管理を依頼するのは、当然の選択なので、一旦はブランカに「遺言状」を作らせた可能性は高いと思っています。

でも、何事にも慎重なMJは、ブランカのごまかしに気づき、自分を騙したり、コントロールすることが不可能だと知らしめる意味で、解雇もしましたが、代わりの人間を見つけられないまま、それは放置されたんじゃないでしょうか。

また、亡くなる数日前のブランカとの再契約もありえないとは言えないと思います。そう思う第一の理由は、他に「遺言状」が存在していないからです。
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MJはリサとの結婚直後から、こども誕生にすごく焦っていたこと、また自分が長生きするとはあまり思っていなかったことを考えれば、ブランカ解雇後に新たに「遺言状」を作成していなかったのは、むしろ不思議ですが、

『THIS IS IT』の計画で、経済状態に劇的な変化が訪れることは容易に想像できることですし、MJの常に周到な人生計画を考えれば、そのタイミングは充分ありえると思えるからです。

姉のラトーヤの証言のように「ブランカが大嫌い」だとしても、それは、自分を騙す可能性がある「賢者」への発言であり、プライヴェート秘書的な目線で弟を見守ってきた姉には、その監視の目を持ち続けて欲しいという理由も考えられますが、エステートの権利者としての選択はあるのではないかと、わたしは考えます。

いずれにしても、ブランカの解雇後、代わりの人間を見つけられなかったのも、ソニー以外のレコード会社に移籍できなかったのも、簡単に代案が見つけられる問題ではありません。ブランカは当時もNo,1で、今もそうですから。。

そういう人でなければ、MJエステートは任せられないことを一番よくわかっているのは、MJ自身で、MJがどうしようも出来なかったというのは、彼の「睡眠障害」もそうですが、他の誰にも解決できない問題だからです。

著者は、MJがあらゆることに頭がまわって、脳が休むことができないために「睡眠障害」に苦しんでいたことも、いわゆる「薬物中毒」の症状と混同していますが、他の人に騙されたことが「薬物中毒」だったなら、自分が代理人に選ばれたことも疑うべきでしょう。
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本書のような内容から、MJが、金の亡者のよる強欲、陰謀の世界から逃れることができなかったということに哀しくなる人も多いかもしれませんが、

お金による強欲、陰謀の世界から逃れられないのは、MJの音楽を聴くことのできる、世界中の人々に共通していることです。


わたしは、この著者が、MJを救えなかったと感じることに、自身の過大評価を感じざるを得ませんでした。結局この著者は、MJの偉大さをわかっていないんじゃないでしょうか。

ファンは、MJが関わった企業や人々を「悪魔」だと非難するより、自分自身を見つめ直してみるべきではないでしょうか。天使も悪魔も大抵はひとりの人間に同居していて、彼のファンのすべてを愛しているという言葉は、本当に重みのある言葉だと思います。

救われなかったのは、MJではなくて、

反省しないメディアだけでもなく、自分の不満を「義憤」に転じて騒ぐだけで正義行動だと思っていたり、目一杯広告を表示して、メディアの欺瞞をなげくブロガーだったり....

マイケル・ジャクソンは、神に愛されて生まれ、世界中で一番愛されたアーティストでした。

本当に救われていないのは、わたしたちだと言うことに気がつかなくてはね。

....It all begins with forgiveness,
because to heal the would,
we first have to heal ourselves.

ー Michael Jackson(Oxford Speech 2001)


すべては許すことから始まる。
世界を癒すためには、まず自分を癒すことから始めなくてはならない


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______________________

[著者序文より]マイケル・ジャクソンのファンの方々へ、マイケルに感銘を覚えた方、心を動かされた方、そして彼を愛したファンの方々へこの著書を捧げる。マイケルはファンをとても大切にし、ステージに立つ際には常にファンのことを考えていた。 彼の楽曲からもそれは分り「Heal the world」「Black or White」「You are not alone」「They don't really care about us」 等はそのほんの一部である。 彼は本当に世界の重要性を背負っていたと信じている。 「世界を癒し、より良い場所とするために」 従って過去であろうが現在であろうが、マイケルのファンである人々にこの著書を捧げたい。彼の音楽と伝説が、世界を変える足掛かりになることをいつまでも忘れないでほしい。 この著書を読まれるに当って、マイケル・ジャクソンがステージ上と同様にステージ外でも注目すべき生涯を送ったという貴重な部分を垣間見てもらいたい。 世界中のマイケルのファンに言いたい、彼は本当にあなた達を愛していた。そして常にあなた達ファンのことを考えていた。 彼が病の際、ステージに向う途中で私が「あまり無理をするな」と声をかけた時に、マイケルは私を睨みつけ、「それはできない。彼ら(ファン)の前では全力を尽くさなくてはならない」と言い放ったのを覚えている。それがマイケル・ジャクソンのファンに対する振る舞いなのだ。 「The True King of Pop」マイケル・ジャクソンの誠実で、彼に愛されたファンの皆様にこの著書を捧げる。 さんが出版 (2011/6/25)


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Commented by mari-ko at 2011-08-13 10:04 x
この時期、テレビで甲子園を見ているせいか、高校球児並み、もしくはそれ以上の重いストレートを投げ込まれて、私の心のミットに「ドスッ」と重い音とともにyomodaliteさんの言葉が収まりました。

最近のテレビ番組に笑えない、文句を言ってしまうのは、テレビのせいじゃなく、自分が笑えなくなってしまっているんじゃないかとだんだん思うようになり、自分が面白くなくしてしまっているような気がします。

はじめは、MJの事が知りたくてこちらを拝見してましたが、最近はyomodaliteさんを通してMJを感じてますって意識が強くなってます。
そこから、MJ以外の世界も見えてきたり。。でも、分かっているけど時々ぶれてしまうときもあったり。。自分はまだまだだなって思います。
Commented by yomodalite at 2011-08-14 12:12
>yomodaliteさんを通してMJを感じて....

わたし自身が、あまりにもMJから強い球投げ込まれてるからなぁ。。なんかどーしよーもないって感じなの。

>自分が笑えなくなってしまっているんじゃないかと...

わたしはもう楽しいことしかしないって決めてるんだけど、、それは暇になったからなのね。たぶん、mari-koさんは、まだ忙しい時期なんじゃないかな?
Commented by mari-ko at 2011-08-14 22:47 x
ああ~言われてみれば、忙しい時期ですね。。最近常に、「on」状態が続いてて、前より上手く息抜きできてないって思ってたとこで。。なのについついMJ聴いてしまい、戦闘モードに(笑)

>どーしよーもないって感じなの。

なんかそこに「愛」を感じます!

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by yomodalite | 2011-08-11 23:08 | ☆マイケルジャクソン書籍 | Trackback | Comments(3)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


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