製鉄天使/桜庭一樹

製鉄天使 (創元推理文庫)

桜庭 一樹/東京創元社




本書は『赤朽葉家の伝説』の登場人物で、漫画家になった赤朽葉毛毬の漫画を小説に仕立てたスピンオフ作品。主人公の赤緑豆小豆と穂高菫は、『赤朽葉家の伝説』の毛毬と蝶子と彷彿させ、蹴鞠が、自らのレディース時代の思い出を漫画にしたようなストーリーになっています。

桜庭氏の小説は、これが3冊目。何を読もうか思案していたところ、桜庭氏の特攻服姿にヤラレてしまって、こちらを読んでみました。

◎『製鉄天使』特集サイト

多くのレヴューで賛否両論の作品なのですが、わたしも正直に言えば、この内容にしては、少し長過ぎるかなぁという印象で、何度も挫折しそうになったのですが、それでも無視できないと思ってしまうのは、やっぱり、他にはない「少女」の描き方でしょうか。

「少女」は、多くの文学作品のテーマになっているのだけど、桜庭氏の“少女”は「なでしこジャパン」に似ていると思うんです。少女の純粋さと、女子のバルサと言われるような老練なテクニックを持ち合わせているところが....

彼女たちが、努力を続けてきたことが、あれほど美しかったのは、目指す目標の純粋さが他では感じることのできないものだったからだと思うのだけど、桜庭さんの少女へのこだわりもそれに近い。

『製鉄天使』で、そのテクニックを抑えたのは『赤朽葉家の伝説』で、直木賞候補になり『私の男』で、ついに受賞を果たした桜庭氏が、自分の原点に戻るために、少女のきらめきを何よりも重視したからではないでしょうか。

創作年の確認を疎かにし、『赤朽葉家の伝説』から『製鉄天使』までに発表された『私の男』も『ファミリーポートレイト』も未読なんですが、(追記:この後、読了。素晴らしかった!)

宮間あやが、ワールドカップの金メダル受賞後すぐに、東京の取材陣には目もくれず、岡山・美作の地元チームに帰ったように、桜庭氏も、直木賞受賞作家としての階段を昇ったり、頑張るという言葉が、つまらない上昇志向とイコールになっていることに、本人だけが気がついていないような「努力」に埋没しないように、

「時なんて、越えるぜ。だって、あたしら、えいえんなんだ」

と、どうしても言いたかったんじゃないかな。。。

アリゾナ砂漠みたいに広かった中国地方の制覇.....岡山は製鉄天使の面々にとっては都会過ぎた.....岡山ごときで退散していたら、広島山口という大都会をいったどうやって潰すのだ....

といった表現を笑える人間には「制覇」はできないのだ。世界で金メダルを手にした宮間だって、きっとそう思ってきたし、桜庭氏も、澤穂希ぐらいめげない人だと思う。

作品としては、ちょっぴり不満が残るものの、著者への愛おしさは増したので、また次の作品も期待して読んでみます。

◎『製鉄天使』書評(asahi.com)
◎『製鉄天使』(アマゾン)
_____________

[内容紹介]198×年、灼熱の魂が駆け抜ける――。辺境の地、東海道を西へ西へ、山を分け入った先の寂しい土地、鳥取県赤珠村。その地に根を下ろす製鉄会社の長女として生まれた赤緑豆小豆は、鉄を支配し自在に操るという不思議な能力を持っていた。荒ぶる魂に突き動かされるように、彼女はやがてレディース〈製鉄天使〉の初代総長として、中国地方全土の制圧に乗り出す──あたしら爆走女愚連隊は、走ることでしか命の花、燃やせねぇ! 中国地方にその名を轟かせた伝説の少女の、唖然呆然の一代記。里程標的傑作『赤朽葉家の伝説』から三年、遂に全貌を現した仰天の快作! 一九八×年、灼熱の魂が駆け抜ける。東京創元社 (2009/10/29)

[著者のことば]『赤朽葉家の伝説』の最初の原稿から、ある夜、こつぜんと(?)消えた、幻の真っ赤な第二部「エドワード族の最後」(いや、最初は、ほんとうにこういうタイトルでした…)
暴走族の抗争部分があまりに長かったために、100枚ほど削って、べつのエピソードを入れて「巨と虚の時代」として改めて完成したのですが、その幻の“赤朽葉毛毬の中国地方制覇の物語”を、このたびこうして、スピンオフ“赤緑豆小豆の物語『製鉄天使』”として一冊の本にまとめることができました。
「時なんて、越えるぜ。だって、あたしら、えいえんなんだ」
小豆っ子の後をついて、天使チャンの仲間となり、ひと時、ともにぱらりらぱらりらと4649号線を爆走していただければ、幸いです。行くぜぃ、天使チャン達!
ーーー桜庭一樹
[PR]
トラックバックURL : http://nikkidoku.exblog.jp/tb/16366533
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
名前
URL
削除用パスワード

※このブログはコメント承認制を適用しています。ブログの持ち主が承認するまでコメントは表示されません。

by yomodalite | 2011-08-03 17:50 | 文学 | Trackback | Comments(0)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


by yomodalite