マイケル・ジャクソンの顔について(36)You Rock My Would

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☆(35)のつづき

[21]からの『Invincible』期の考察で、これまでとは異なる見方をしている『Unbrakable』のSF制作が出来なかった件も、所属レコード会社によるプロモーション妨害と、MJ側の反発である「ソニーウォーズ」の件も、まだ納得された方は少ないと思います。

これは、その後の『Living with MIchael Jackson』から、二度目の幼児虐待疑惑、裁判へという、一般的には、マイケル最大の受難の時期に対して、当時はまったくそう見えなかったけど、振返って見て「本当はこうだったんじゃないか」と思うようになった、わたしの「仮説」の一部で、

確固たる証拠を挙げて説明することが困難なことと、何度か迷った部分が多いせいで、自分で読み返しても、さっぱり要領の得ない文章に呆れてはいますが、

ただただ一生懸命考えて、自分にとってできるだけ矛盾の少ない結論について考えているもので、真実を求める方は、私が匙を投げた部分なども、充分ご注意のうえ、是非また別の「解釈」を試みてくださいませ。



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では、SF『You Rock My Would』の一応の解説編なんですが、

このSFの内容に関して[31]から、色々と思いつく限りのことを探ってきましたが、残念ながら、すべてが解明できたとは言えない状況です。

ただ、このSFが、MJのこれまでの作品の集大成になっているだけでなく、マーロン・ブランドの歴史も重ね合わされているということを、少しでも感じてもらえたら、

ブランドが演じるギャングのボスの役を、当初はロバート・デ・ニーロに依頼したということが疑わしいことや、

ブランドと、MJのセリフも今後連作されていくはずだった物語がなくても、意味が通じるものであったことは、なんとなく、ご理解いただけたでしょうか。



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これまで、コンセプトやストーリーよりも、その曲のシングルヒットのポテンシャルにこだわって、アルバム収録曲を決定してきたように思えるMJですが、

アルバム『Invincible』は、最終的に収録されなかった曲と比較したとき、過去のどのアルバムより「無敵」というテーマと、ミレニアムを意識した、新たな自分の創造にこだわって選曲されていて、

わたしには、ここから、これまでのように、何曲もシングルヒットを目指すのではなく、むしろ、そういったレコード制作を一旦終了して、新たな別のスタートを切ったように思えるんです。

だから、彼はこれまで、“自分の世界を揺さぶったもの”(You Rock My Would)をシングルカットし、今までの集大成のようなSFにしたんじゃないかと思うんですね。

“You Rock My Would”の歌詞は、運命の女への愛を歌っているようなのですが、SFでは「運命の女」の意味は希薄ですし、マイケルが語っているような子供への愛とも無縁です。(「You Rock My Would」の歌詞の別の意味 →[26]参照)

SFでは、通りで見かけただけの、名前も知らない女によって、ギャングとの抗争にも巻き込まれますが、この女性はかつての『The Way You Make Me Feel』のような、女とは異なり、どこか救いを求めている不完全な大人(Dark Child)の象徴にも感じられ、



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もっと象徴的なのは、ステージと思われるような場所で、女性ダンサーの前を通り過ぎるところですね(このダンサーは、酒場に入っていくきっかけになった女性とのひとり二役)

これまで、共演者との「禁欲」姿勢を貫いてきたMJですが、この通りすぎ方には「一般的な男女の愛」と「ステージ」との、両方の意味を感じます。



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(MJは30周年記念コンサートの後「Dangerous」パフォーマンスを2回行ったのみで、その後はダンスパフォーマンスを封印した)

◎American Bandstand 50th Anniversary(Dangerous live 2002)
◎Every Vote Counts(Dangerous Live 2002)

このSFは、集大成でありながら、これまでの自分との「決別」もテーマになっていて、

これまで、街のワルたちに『Beat It』では逃げろと言い、『Bad』ではダンスで対抗し、ガンジーか、MJかというぐらい、暴力には「非暴力主義」で対抗してきたMJですが、ここでは「No FIGHTING」にグラスを投げつけ、ギャングたちと素手で戦います。



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もちろん、暴力を肯定する意味はないと思いますが、この映像の後半部は「戦う姿勢」や「男ぽさ」を、かつてないほど表現し、これまでの「ピーターパン」や「優等生」イメージとの決別を謀っているように見えます。

また、このSFには、何枚かトランプが登場しますが、トランプには、カードやマークによって、色々な意味があると言われていますよね。

◎ダイヤ:貨幣、財産(商人)
◎ハート:愛、感情(聖職者)
◎クラブ:仕事、知性(農民=一般人)
◎JOKER : 道化師、切り札



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テーブルの上にあった「ダイヤのKING」にお札を投げ、バーカウンターの壁の「クラブのKING」と「ハートのKING」にグラスを投げつけていますが、その上には「ジョーカー」があります。

「ジョーカー」には、ビル・ブレイや、姉のラトーヤが、MJのことをそう呼んでいたり、多くのファンが知っていた彼の真面目さとは、別に、親しい友人たちが証言している彼の面白さと、この後、大どんでん返しを実行した、彼のトリックスターとして「自己像」も関係しているのかもしれません。



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3枚のKINGを切ったのは「KING OF POP」への決別(一旦休止するという意味ですが)とも思えますし、常にNo.1を目指すという彼が見つけた、新たな標的への意思表示とも思えます。

『You Rock My Would』の歌詞のように、完璧を求めて、見つけられたのは「エンターティナー」や「レコーディングアーティスト」としての自分ですが、彼が、目標としていたのは「シンガー」や「ダンサー」だけではありませんでした。だから、そこで満足したくない彼は、それを一旦捨て去る必要があったのではないでしょうか。彼は、

Greatest Actor, Singer, Dancer of all time and Entertainer, The Best.

と書くような男ですから・・([34]参照)

「僕は、マーロン・ブランドより偉大な俳優になって、世界一のシンガーで、フレッド・アステアを越えるダンサーのうえに、お笑いも出来るようになって、そうでなければ、チャップリンを越えられないし、まだその先だって・・と、思っていたんじゃないでしょうか。



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MJが非常に優れたエンターティナーであることは、誰でもすぐに感じることですが、時代を創ったレジェンド級のダンサーやエンターティナー達にとって、真に驚異的に思えるのは、自分のスタイルを創りだしたほどのダンサーでありながら「自ら作曲もしている」という点が大きいと思います。

MJは、世界中でNo.1ヒットを記録した“Singer”として、誰も比べようがないのですが、一応、アステアも当時ヒットチャートを賑わせていますし、サミー・ディビス・Jrは、歌手としても超一流ですけど、アステアや、サミー以上に、個性的なスタイルを自らの力で創り上げられるようなエンターティナーが、作曲もこなしたというのはめったになく、それが後世に遺るようなレベルで出来たのは、MJとチャップリンだけです。

加えて、チャップリンは、映画史に遺るような映画に、主演・監督し、音楽も担当した、世界でたった1人のアーティスト。

わたしは、MJが最後まで「映画」にこだわっていたのは、それが一番の理由で、

数々の大きな目標を実現したMJにとって、新たに興味があったのは、Greatest Actorや、映画を創ることであって、『INVICIBLE』から後、新たなアルバムが創られなかった理由に、所属レコード会社との確執の影響は少ないと思っています。



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でも、MJが、マーロン・ブランドのことを偉大な俳優として尊敬しているのは、間違いないのですが、『You Rock My Would』にブランドが登場したのは、

『バンドワゴン』で、慣れないバレエ風の振付や、演技指導に不満を募らせたアステアが「ぼくはニジンスキーでもなけりゃ、マーロン・ブランドでもない」と言ったせいで、MJの「超負けず嫌い」がうづいた可能性もありますね。(←[35]参照)

『バンドワゴン』の中で(「Girl Hunt」)では、アステアは、ハンフリー・ボガートのパロディをやっていましたが、MJは『THIS IS IT』のライブ用に新たに創った「Smooth Criminal」のSFでは、ボガートも登場させています(笑)

しかも、またもや、不思議な顔で....(笑)

本当にどんだけ負けず嫌いで「お茶目」なのか。。

創る創ると言っていた『Unbrakable』のSFは「自分は何があっても負けない」という、ものすごく大真面目なメッセージで、世界中を巻き込んだゲームの始まりでもあったと思いますが、実は簡単に割れてしまうレコードのような「嘘」でもあって(←[35]参照)



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2000年以降の彼は、ときどき、なかなかの「悪党w」だったようにも感じられ、わたしには、MJが『Unbrakable』のSFを創るのに、メル・ギブソンと共演とか、絶対にジョークとしか思えないんですけど、、(←[24]参照)

そう思うのはわたしだけでしょうか?

また、ここまで、SFには3枚のKINGが登場していますが、まだ登場していない「スペードのKING」に関しては、

☆(37)につづく


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Commented by mari-ko at 2011-07-18 21:00 x
>本当にどんだけ負けず嫌いで「お茶目」なのか。。

このSFを観てると、最近感情の整理ができなくなってきます。。
心から「すげー!」って思ったり、「かっこいい」って思ったり、何も言えなくなったり。何度も再生して一時停止して凝視して悩んだり。そして今「大爆笑」しそうになってる自分がいるんですけど。。「な、なんでこの内容をその顔で?ぎゃはは!ほんとどんだけだよ!」って。自分大丈夫かな(汗)でもまさか「You rock~」のSFで爆笑できる自分がいるとは、初めて観た時には想像できなかったです。けっこう大真面目なんですけどね。

自分の中で2000年以降のMJが今一番やっぱり「キテル」なと思います。
Commented by yomodalite at 2011-07-19 22:26
mari-koさん、ボクサー探しから、DVDの字幕まで、色々とご協力
頂いてありがとうございました!

>2000年以降のMJが今一番やっぱり「キテル」.....

「キテル」よねーーー!!! 今後も、他の時期は、他のファンブログの方にお任せして、「インヴィンシブル」期以降にこだわっていきますっ!

あと、ブランドに夢中になった勢いで、ケーリー・グラントとか、グレゴリー・ペックにも挑戦しようかな。。
Commented by mari-ko at 2011-07-20 21:34 x
>「インヴィンシブル」期以降にこだわっていきますっ!

是非!!!!お願いします。ワクワク♡(あ、でもyomodaliteさんのテンポで♡)「beatleg」も読んだんですが2000年以降の写真ててもにやにやしてしまう。。こんなに「来る」なんて予想外です。。

>ケーリー・グランドとか、グレゴリー・ペックにも挑戦しようかな。。

ブランドの自伝、今読み始めたばかりですけど、面白いです。俳優の自伝って結構面白いなと思います。私は全然詳しくないですが、ケーリー、グレゴリーもいいですね。今まで興味がなかったことが急に景色が違って見えてきて、ほんと面白いなって思います。

Commented by みぶ真也 at 2015-10-04 19:01 x
はじめまして。
マーロン・ブランド崇拝の俳優です。
白人の方はボクサーではなく、往年のプロレスラー エド・ストラングラー・ルイスだと思います。
Commented by yomodalite at 2015-10-05 18:22
みぶ真也さま、コメントありがとうございます!

この疑問を、ブランドを崇拝する俳優の方に教えていただけるなんて光栄です。

エド・ストラングラー・ルイス!
https://ja.wikipedia.org/wiki/エド・ルイス

まったく知らなかったのですが、確かに、この写真(http://nikkidoku.exblog.jp/16244664/)と同じ写真は見つからなかったものの、これはかなり似てますね。→ http://www.bloodyelbow.com/2012/7/1/3130402/wrestling-with-the-past-the-legacy-of-ed-the-strangler-lewis

こちら、http://1.bp.blogspot.com/-VJS8io-O_lM/USfjFZfckEI/AAAAAAAABjo/WgmEmwVvup0/s1600/Strangler+Lewis.jpg も含めて、確定のような気がします。

でも、「波止場」は1954年の映画ですし、1920年代のヘビー級チャンピオンをなぜセレクトしたんでしょうね? ルー・テーズが、20世紀最高のレスラーは自分ではなく、ルイスだと語っている。みたいなことなんでしょうか? また、ブランドとの関わりについて何か思い当たる点はありますか?
Commented by みぶ真也 at 2015-10-05 21:38 x
ブランドとルイスの共通項は思いつきませんが、「野郎どもと女たち」のデイモン・ラニヨンの原作には「あの絞め殺し屋のルイス」というセリフがあったように思います。
Commented by yomodalite at 2015-10-05 23:03
「野郎どもと女たち」のデイモン・ラニヨンの原作!!!!

原作までご存知とは、すごいですぅーー!

何はともあれ、ずっとわからなかったボクサーが、レスラーで、エド・ルイスという伝説の人だったことがわかって、ほんの少しだけ、前に進んだ気がします。本当にありがとうございます!

それと、もうひとりの黒人ボクサーなんですが、こちらも良く見る写真とは少し異なるものの、ジャック・ジョンソン「確定」でいいですよね?

それと、もし良かったら、
みぶさまが、今一番好きなブランド作品をひとつ教えて下さいませ。
Commented by みぶ真也 at 2015-10-06 09:41 x
ブランドの作品は全て好きですが、一番は自分で監督した「片目のジャック」です。
Commented by yomodalite at 2015-10-06 21:07
質問にも答えてくださってありがとうございます!

『片目のジャック』は、印象深い作品ですよね。
あの雰囲気は、今でも新鮮な気がしますし、、MJの「Billie Jean」や、この記事の「You Rock My World」と、どこか近い作品のように思えるんですよね。

しばらく観ていなかったので、近々また観たくなってきました!
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by yomodalite | 2011-07-18 18:05 | マイケルの顔について | Trackback | Comments(9)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


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