マイケル・ジャクソンの顔について(35)You Rock My World

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☆(34)のつづき

注:『VISION』の日本語字幕は(英語字幕は私がつけたもの)下記です。
私の訳とは、いずれもニュアンスが違うのでご注意くださいね。

Brando : You’re pretty cute in there.(久しぶりだな)
Michael:I know who you are.(あんたか)
Brando : Bing bang(そうとも)
Brando : Later(またな)



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また、『VISION』の西寺氏の解説には ー 壁に飾られた黒人ボクサーの写真が、マイケルの父親ジョーの若い頃の写真であることを考えると、マイケルに「お前が誰か知ってるぞ」と言われた、マーロン・ブランドの若き日のボクサー時代の写真が映るのは、どのような因縁を象徴しているのだろうか? ー と書かれていいますが、それは間違いです

探索の末、http://nikkidoku.exblog.jp/16291516/ ←こちらのコメントで、「エド・ルイス」というレスラー(白人)と、ジャック・ジョンソン(黒人)だという情報をいただきました。他の写真も確認してみましたが、ほぼ確定かと。)


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(エド・ルイス)



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こちらは、おそらくジャック・ジョンソンの若い頃。
彼の名は、MJのインタヴューにも登場しています)



そろそろ解説編に進みたいところですが、ボクサー探索をしているうちに溜った「妄想」について、もう少しだけ。。。

(31)から、SF『You Rock My Would』の解剖を始めたとき、わたしは、あの特徴的なダンスや、これまでの批評などから集大成的作品ではあるものの、(33)で紹介したレヴューと同様、やはり、一番近い作品は『Smooth Criminal』という印象をもっていたのですが、何度も観ているうちに『Billie Jean』との類似性の方が気になってきました。

(26)で、“You Rock My World”は、“Billie Jean”のアンサーソングだと言いましたが(今確認したらそんな風には言ってませんでした!言ってるつもりだったんだけど...)、SFでも、この両作品は似ていると思うんですね。



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SF『You Rock My World』が、SFの実質的最終作品で集大成だとすれば『Billie Jean』は、その青写真というか、計画案だったというか.....





『Billie Jean』には、MJに常につきまとうカメラや、「アニマル柄の布」を探偵が拾う(MJが靴を磨いた布)という『バンドワゴン」(「Girl Hunt」)と同様のシーン、コイン投げ、HOTEL、探偵、ハードボイルドという『Smooth Criminal』との類似もあるのですが、白い猫がゴミ箱を通り過ぎると茶猫になったり、布から本物の虎になったり...(『Black Or White』)、

ホテルの階段のところの壁は、SFに何度も出てくる「レンガの壁」「落書き」...息を潜めて階段を昇り、ベッドを見つめているシーンでは、「彼は誰と(男?女?子供?)ベッドで寝ているのか?」という彼につきまとった疑惑さえも先取りし、、、数多くの伝説的天才が目を見張った、MJの驚くほどの「天才性」に、あらためて気づかされるような気がします。(ここでは警察に捕まるのはパパラッチですが....)

そういえば『ゴッドファーザー』のような看板も登場しますね(0:58〜)


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また、アステアのように女と一緒に踊ることはありませんが、MJが踊る場面は、2人の女の看板が出てくる路上。そこで、彼はまさに「マイケル・ジャクソン」というべきダンスを決めます。



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この2人の女の看板には「Louisa」と書かれていますが、『バンド・ワゴン』で歌われている曲にも"I Love Louisa''という曲があります。




この曲は『バンド・ワゴン』のウィキペディアによれば、「イギリス人はウィスキー、フランス人はワイン。でもドイツ人はビールが好き、そしてルイーザが好き」という歌詞で(←この記述は日本版ウィキのみ。『バンド・ワゴン』のDVDをお持ちの方で、ここの歌詞全部わかる方います?)コメディタッチの曲なんですが、“Louisa”は、登場人物の名前ではありませんし、MJが、SF『Billie Jean』で、看板に入れた意味も不明。

☆mari-koさんが日本語歌詞を教えてくださいました!(コメント欄参照)


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私がミュージカル嫌いで、他のアステア作品に詳しくないせいなのかもしれませんが、MJはアステアに関しては『バンド・ワゴン』にばかり集中してこだわっているような.....
(『バンド・ワゴン』自体が集大成的作品だからかなぁ...)

その他にも『バンド・ワゴン』には「UNBREAKABLE」と書かれたレコードも登場しますよね。(“壊れない”と書かれているにも関わらず、すぐに割れてしまう)



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「Girl Hunt」に登場するブロンドの女のドレスには(シド・チャリシーが、不吉なブルネットの女 "She came at me in sections. More curves than a scenic railway''と、脅えるブロンドの女 "scared as a turkey in November'' の二役を演じている)「Butterflies」の刺繍もあったりして.....



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とにかく、MJの『バンド・ワゴン』へのこだわりは尋常ではないというか、全面的にフレッド・アステアへ捧げられている印象の『Smooth Criminal』より以前の、MJショート・フィルムの実質的な第一作目である「Billie Jean」から、最後のスタジオアルバム『INVINCIBLE』にまで、執拗な引用がされているようにも見えるのですが、

『You Rock My Would』を何度も観て、マーロン・ブランドのことを考えているうちに、MJは『バンド・ワゴン』だけでなく、ブランドのこともずっと意識してきたような・・。

ブランドの映画を観ていないひとには、わかりにくいと思いますが、何かの機会にご覧になることがあれば、こんな想像もありかなという感じでお読みいただきたいのですが、


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MJは『Bad』で、ブランドの初期の傑作「欲望という名の電車」と「波止場」のエリア・カザン監督の直系とも言える、マーティン・スコセッシを監督に選び、『Billie Jean』も、MGM作品の全般にいえる特徴ともいえますが、ストリートの雰囲気が「野郎どもと女たち (Guys and Dolls)」(MGM制作)に似ています。

ブランドの息子、ミコ・ブランドは、ショートフィルムの実質的な3作目にあたる『Thriller』や、映画「ムーンウォーク」内の『Speed Demon』に出演し『You Rock My Would』にも親子で出演していますが、MJのSFに最多出演・・というか、多大な影響を落としていたのは・・・そういえば『Speed Demon』も、『乱暴者 The Wild One』だったのかも・・・。


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他にも“HOTEL”から『欲望という名の電車』や、また「Louisa」と書かれた2人の女の看板ですが、MJは1999年のMTVのインタヴューで『Billie Jean』のSFに対し、

あの作品で僕が口を出したのは、ちょっとばかり踊れる場面が欲しい、ということだけ。ダンス場面はなし、と彼は言っていてね。僕は、ほんのちょっとでいいから、って。だから、あの長い道路の、女の子が2人写ってる看板が出てくる場面──片方がビリー・ジーンなんだけど──あそこで僕は踊ってるんだよ。僕が貢献したのはそこだけだね」(11 December 1999, MTV)(→引用元)

◎MTV complete interview 1999 1of2
◎MTV complete interview 1999 2of2(←上記のインタヴューは3:00〜)

と、謎の発言をしていて、ずっと意味がわからなかったのですが、もしかしたら、ブランドが主演・監督した『片目のジャック One-Eyed Jacks』に登場し、リオ(ブランド)の子を宿してしまう女(Louisa)が関係しているのかも。

主人公リオ(ブランド)は銀行強盗を生業にするような無宿の男で、宿場宿場に女をつくってしまうような男なのですが、Louisaは純真な女で、2人は互いに結ばれるので『Billie Jean』のように騙したわけではなく、また、子供が出来たことも、リオ(ブランド)になかなか告げることが出来ない。

だから、MJが言うように、2人の女の1人が「Billie Jean」で、そうでない1人が「Louisa」なら『バンド・ワゴン』の「I Love Louisa」より意味が通じる気もします。


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MTVのインタヴューは、テキスト起こしが見つからず、わたしにははっきりと聴き取れないのですが、こちらのとてもとても素敵なブログでは

この長いストリートと2人の女の子のビルボード、ビリージーンたちの1人と僕が踊ってる、あのセクション全体──僕が考えたのはそのパートだけだよ。

という訳になっています。どちらがより近いのか、わたしには判断できませんが、

覚えの無い子供への責任だけでなく、責任がとれない子供が生まれてしまう可能性にも『Billie Jean』当時のMJの、女にかかわっている暇はないんだと言わんばかりのストイックさを表現しているのかもしれません。

☆Meeさんが、テキスト起こしをしてくださいました!(コメント欄参照)

また、これも「こじつけ」だと思って聞いてもらいたいのですが、このときのストイックさと『You Rock My Would』で、ダンサーの前を通り過ぎるMJは、類似しているように見えますし、(→[31]参照)



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さらに妄想を膨らませれば『片目のジャック』という意味は、トランプのハートとスペードのジャックの顔が片面しか見えないように、人間には見えない裏の面があるということで、それが2つ揃って、映画のストーリーでは、更なるドラマが生まれているんですが、

MJもそれに倣って2人にこだわったような気もしますし、女の2つの顔と考えれば『Who Is It』が思い出されたり....

更なる妄想.....「片目のジャック」と言えば『ツイン・ピークス』に登場するカジノ&バー。ネヴァーランドとシカモアツリー、『マルホランド・ドライブ』と“Hollywood Tonight”の話などは.....当分しないから安心して(笑)

「Smooth Criminal」も、映画『ムーンウォーカー』の一編で、廃墟と化していた30年代のクラブが、MJが入場すると突然息を吹き返し、それまでの子供向けファンタジーの雰囲気に退廃的なムードが漂い、さらにそこから一歩外に出ると、今度はSFの世界に突入するといった、目まぐるしいものでしたが、

「Beat It」「Bad」「The Way You Make Me Feel」は共に「ウエストサイド・ストーリー」の影響が強い作品ですが、「Beat It」は、ストリートギャングの抗争が、MJの出現とダンスだけで治まったり、「Bad」は、社会派リアルドラマが、突如として「ミュージカル」になったり、

「The Way You Make Me Feel」も、最初は仲間の中で地味な存在だったのが、年老いた男の大したことのない助言だけで、急に積極的になって、無理目の女の唇を奪ったり、

同じく長編の「Thriller」「Ghosts」も、ホラー映画とダンスムービーの合体、「Black Or White」も、ファミリー向けコメディに挑発的で暴力的な影像を組み合わせるという、MJのSFには、シュールな「合体技」が多いですよね。

『Billie Jean』以降は、MJは、人がもっている見えない別の面を「奇跡」や「エンターテイメント」として見せたかったように思いますが、『Billie Jean』でのMJの表情は、1人でいるときのものというか、思索しているときの感じで、このときの表情に近い作品は『You Rock My Would』同様、他にはないような気がします。


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また(33)で、ジーン・ケリーが断ったために、ブランドが抜擢されたことや、ケリーの「フレッド・アステアがダンス界のケーリー・グラントだとしたら、私はマーロン・ブランドだ」という発言も紹介しましたが、

『バンド・ワゴン』には、慣れないバレエ風の振付や演技指導に不満を募らせた、トニー(アステア)の、「ぼくはニジンスキーでもなけりゃ、マーロン・ブランドでもない。」というセリフもあります。

(「ぼくは、ニジンスキーであり、フレッド・アステアで、マーロン・ブランドでもあり、チャップリンでもある」と、MJは言いたいんじゃないかな。)

そんなわけで(どんなわけだよ)、ボクサーの正体がわかっても、わからなくても、今度こそ、一応の解説編へ(たぶん....)


[映画情報]

これから、若い頃のブランドの映画を観てみようと思われた方には、『欲望という名の電車』をお薦めします。



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モノクロですけど、ヴィヴィアン・リーと、ブランドは共に、この作品を舞台で評判を得た後、映画に参加していて、原作で脚本も担当したテネシー・ウィリアムスは、ブランドの演技を観たときのことを、家族に手紙で遺していて、

......ブランドは、まさに神の恵みとしか言いようがない。(中略)この役を若い俳優に演じさせることに、これほど素晴らしい効果があるとは思いもしなかった。(中略)不道徳な中年男ではなく、若さゆえの獣性や非常さをもった人物が生まれるのだ。私は『欲望という名の電車』を罪悪感に焦点をあてた芝居にする気はないし、特定の人物に比を負わせたくない。(中略)彼はすでにして深みのある人物に成長しているようだ。いわば、若き復員兵にみられるたぐいの深みである。(中略)ブランドの契約が決まれば、『欲望という名の電車』には非のうちどころのない4人のスタアが顔をそろえることになる。これ以上の顔ぶれは望むべくもないし、今までの苦労が報われるというものだ。



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と書いています。脚本、俳優、監督、すべてが完璧。これが面白くなかったら(明るい結末ではないですが)、あとは観ない方がいいかも。人生には、好き嫌いもタイミングも重要ですから。。




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Commented by mari-ko at 2011-07-08 22:54 x
>「バンドワゴン」のDVDお持ちの方で~

「I Love Louisa」日本語字幕

ビールが大好き
もっとビールを
ビールのつまみはビールさ
もっとビールを
ビールを飲んで思う「人生はビールさ」
でもビールより好きなものだってある

*それはルイーザ 彼女も僕が好き
メリーゴーラウンドでルイーザにキス
するとルイーザも僕にキス
僕らは幸せ 邪魔者はいない
あの子はとってもかわいいルイーザ
だから好きなんだ絶対誰にも渡さない
いつかきっとルイーザを僕のものにしてみせる(2nd time end)

フランス人はワイン好き
もっとビールを
イギリス人はウィスキー
もっとビールを
ビールの泡を払ったら
大好きなドイツの娘に乾杯だ
*くりかえし

Commented by Mee at 2011-07-09 01:24 x
>テキスト起こし

"It's kind of surreal and it's different. I didn't come up with that concept. It was — I think a British fellow — Steve Barron — and I thought he had wonderful ideas but I let him go with it. The only part I wrote in the piece was — I said: "I just want a section." I said: "Give me a section here I could dance on." 'Cause he said no dancing in the whole piece — so the whole section where you see this long street and this billboard of these two girls, one of them Billie Jean and I'm dancing — that's the only part I contributed."
Commented by yomodalite at 2011-07-09 15:14
mari-koさん、いつもありがとうございます!!!

軽い気持ちでつい言ってしまったのに、書き起こして頂いて....(泣)
「バンドワゴン」て、これまでの作品の集大成のような感じや、色々日本人にはわからないジョークやパロディも一杯ありそうで、わたしには、さっぱりわかんないんだけど、、どうなのかなぁ.....どう思う?
Commented by yomodalite at 2011-07-09 15:17
Meeさん、テキスト起こしありがとうございます!!!!!

もしかしたら、これは、Meeさん自ら聞き書きしてくださったものですね(感激)

これを見ると、私だったら、、彼女たちのひとりがビリー・ジーンって訳すかなぁ。2人の前で踊ってるし。。Meeさんは、どうでしょう?

でも、2人共「Louisa」だから、もし『片目のジャック』由来だとすれば、、やっぱり相当用心深いというか、若い頃から「決意」が違うというか、、あと、シド・チャリシーもジンジャー・ロジャースも必要としないっていう意味もあるかなぁ。。
Commented by mari-ko at 2011-07-10 10:30 x
>ジョークやパロディーも一杯ありそうで

私も分からないけど、当時の舞台人にしかわからない内輪ネタもありそう。。はじめは、MJが「バンドワゴン」にこだわってるのは、アメリカエンターテイメントへのメッセージと、違う分野のダンサーが同じダンスを踊ることとか、、が、重要なのかなとか、ぼんやり思ってました。。あとそこに黒人がいないなとか、、。(最初に靴磨きの黒人との歌があるけど)
あと、なんでケリーじゃなくアステアなんだろうとか。。

Commented by yomodalite at 2011-07-10 15:29
>あとそこに黒人がいないなとか、、

そこは、きっとすっごくあったよね。この頃のダンスも歌も、今から見ると、ファンキーじゃないっていうか、歌いだしとか、リズムとか、どこか「ダサイ」もんね。黒人的なセンスをもっと取入れたら、もっと良くなるのにっていうのは、絶対感じてたと思うなぁ。。。

>なんでケリーじゃなくアステアなんだろうとか。。

ケリーの名前もずっと挙げてたから、彼のこともすごく尊敬してたと思うけど、結果的にアステアの方が、自分の殻を破ってダンススタイルも変えたり、老人になってから俳優としても再評価されたり、、MJは「サヴァイバー」好きだからなぁ。
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by yomodalite | 2011-07-08 18:47 | マイケルの顔について | Trackback | Comments(6)

旧「読書日記と着物あれこれ」。歴史/文学/お笑いを好み、着物生活をしていたはずが、いつしかマイケルジャクソンのように本を読もうになってしまったブログ。永年暮らした東京を離れ、現在は大阪を満喫中。


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